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第一章 JK将軍誕生
ヒャッハー
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「決めたぜ、小僧……ぶっ潰してやる!」
モヒカン頭が進之助に向かって突進する。
「はっ、返り討ちにしてやるぜ!」
進之助が迎え撃とうとしたその時、
「喧嘩は駄目よ‼」
葵が素早く二人の間に割って入った。カフェの店頭に立ててあった旗竿を薙刀代わりにして、二人を同時に牽制しようと試みた。予期せぬ乱入者の登場に一瞬戸惑ったモヒカン頭は突進を急停止させたが、すぐに気を取り戻した。
「邪魔だ! 女!」
モヒカン頭はその丸太のような太い腕を勢いよく振りかぶり、進之助に向かって殴りかかった。進之助の前に立つ葵を巻き添えにしても構わないと言わんばかりだ。
「危ねぇ!」
進之助が葵を抱きかかえるようにして、真横に飛んだ。二人は2、3回転程勢い良く転がった。モヒカン頭の渾身の攻撃は空を切り、そのままバランスを崩して倒れ込んだ。
「あ、ありがとう……!」
「いや……!」
素直に感謝の言葉を口にした葵と、彼女の無事を確認した進之助だったが、お互いの顔が急接近していることに気付き、慌てて顔を離し、起き上がった。
「な、何なんだよ、おめぇは⁉」
進之助が顔を赤らめながら、葵に問いかける。
「わ、私は貴方に喧嘩を止めさせようと……」
葵も戸惑いながら自身の目的を告げる。
「無粋な真似は止めろい!」
「な……⁉」
進之助の思わぬ発言に葵は面食らった。
「祭りと喧嘩はお江戸の華よ! その華をおめぇさんが摘み取ってしまうっていうのかい? そんな馬鹿げたことはあるめぇよ!」
「ば、馬鹿ですって~⁉ 私は貴方の為を思って……」
「そもそもどこの誰なんだよ、おめぇさんは⁉」
「わ、私は……」
「おい、赤毛小僧! 無視してんじゃねえぞ!」
モヒカン頭が進之助に向かって叫ぶ。進之助もゆっくりと立ち上がり、自身より一回り大きい体格の男を睨み据える。
「そういやあ、てめぇ、さっきこの女に向かって殴りかかりやがったな……女に手を上げるたぁ、無粋の極みの下衆野郎だな」
「喧嘩売ってきたのはてめぇだろ!」
「てめぇのそれが出す騒音や排気ガスがこの通りの店や通行人に迷惑だと思ったからちょいと一言注意してやったんだよ」
そう言って、進之助は路肩に止めてあったバイクを指差した。そのバイクはモヒカン頭の所有物のようだが、通常のバイクとは形状など大きく異なっている、いわゆる「改造バイク」であった。
「うるせぇ! 人の趣味にケチつけんじゃねぇ!」
「人様に迷惑掛けるのは粋じゃねえな……」
「黙りやがれ!」
モヒカン頭が再び進之助に向かって殴りかかる。巨体に似合わず、素早い動きである。しかし、進之助は慌てる素振りを見せず、冷静にその一撃を躱してみせた。さらに避けざまに足を掛けて、モヒカン頭を転ばせた。
「ぐぉ! ぐぬぬ……」
逆上したモヒカン頭が更に二度三度と進之助に殴りかかったが、対する進之助は先程と同じ要領で、向かってくる巨体を華麗にいなしてみせた。モヒカン頭は成す術もなく、地面に転がった。
「粋じゃねえ奴とはこれ以上喧嘩しねえよ……」
そう言って、その場から颯爽と立ち去ろうとした進之助の前に、葵が両手を広げて立ち塞がった。
「ちょっと待って、赤宿進之助君。貴方に話があるの」
「だから誰なんだい、おめぇさんは? どうしてオイラの名前を知っていやがる?」
「私は将愉会会長の若下野葵よ!」
「は? しょうゆ会?」
葵の発言に近くにいた爽と小霧が思わずずっこけそうになった。
「あ、葵様……」
「今日立ち上げたばかりの会の名前をおっしゃっても……」
「うん? 待てよ、おめぇさんの顔、どこかで見たような……」
進之助が身を屈めて、葵の顔をマジマジと見つめる。
「ぐおおーー! 俺はもう完全にキレたぜ!」
叫び声の先に振り返ると、モヒカン頭が改造バイクに跨り、エンジンを吹かしている。その右手にはバイクのカウルにでも隠していたのか、釘バットが握られている。
「覚悟しろや赤毛!」
モヒカン頭がバイクの向きを変え、進之助たちのいる所に向かって、今にも突っ込んでこようとしている。
「ちっ、完全に逆上していやがる……おめぇさんたち! オイラから早く離れ……⁉」
進之助は己の目を疑った。葵がモヒカン頭の前に自ら進み出ていったのだ。
「卑怯者‼」
「な、何だと……?」
「生身では到底叶わないからって、そうやって道具に頼る訳? 喧嘩だからって何をやっても良いと思っているの? 誇りもなにも無いのね……あなたには下衆野郎という言葉すら勿体ないわ、はっきり言ってそれ以下の屑よ!」
「こ、このアマ、言わせておけば……!」
モヒカン頭が葵に向かってバイクを発進させた。
「危ねぇ!」
「葵様!」
「若下野さん!」
進之助たちが口々に叫ぶ。しかし、葵は微動だにしない。流石のモヒカン頭もひるんだのか、バイクの進路を僅かにずらそうとした。そして次の瞬間、
「ぬおっ‼」
モヒカン頭のバイクの前輪に何者かが投げた、カフェの旗竿が絡まったのだ。これにより車体のバランスを失ったバイクは乗り主であるモヒカン頭を振り落として、カフェへと突っ込んでいった。暫しの間の後、バイクから漏れたガソリンが何かに引火したのか、店内から火の手が上がった。
「火事だ!」
周囲から驚きの声が上がる、火の回りは思っている以上に早く、あっという間に2階建てのカフェほぼ全体を包み込んでしまった。人々はパニック状態になりかけた。
「落ち着け!」
進之助が大声を上げる。周りの皆の注目が彼に集まった。
モヒカン頭が進之助に向かって突進する。
「はっ、返り討ちにしてやるぜ!」
進之助が迎え撃とうとしたその時、
「喧嘩は駄目よ‼」
葵が素早く二人の間に割って入った。カフェの店頭に立ててあった旗竿を薙刀代わりにして、二人を同時に牽制しようと試みた。予期せぬ乱入者の登場に一瞬戸惑ったモヒカン頭は突進を急停止させたが、すぐに気を取り戻した。
「邪魔だ! 女!」
モヒカン頭はその丸太のような太い腕を勢いよく振りかぶり、進之助に向かって殴りかかった。進之助の前に立つ葵を巻き添えにしても構わないと言わんばかりだ。
「危ねぇ!」
進之助が葵を抱きかかえるようにして、真横に飛んだ。二人は2、3回転程勢い良く転がった。モヒカン頭の渾身の攻撃は空を切り、そのままバランスを崩して倒れ込んだ。
「あ、ありがとう……!」
「いや……!」
素直に感謝の言葉を口にした葵と、彼女の無事を確認した進之助だったが、お互いの顔が急接近していることに気付き、慌てて顔を離し、起き上がった。
「な、何なんだよ、おめぇは⁉」
進之助が顔を赤らめながら、葵に問いかける。
「わ、私は貴方に喧嘩を止めさせようと……」
葵も戸惑いながら自身の目的を告げる。
「無粋な真似は止めろい!」
「な……⁉」
進之助の思わぬ発言に葵は面食らった。
「祭りと喧嘩はお江戸の華よ! その華をおめぇさんが摘み取ってしまうっていうのかい? そんな馬鹿げたことはあるめぇよ!」
「ば、馬鹿ですって~⁉ 私は貴方の為を思って……」
「そもそもどこの誰なんだよ、おめぇさんは⁉」
「わ、私は……」
「おい、赤毛小僧! 無視してんじゃねえぞ!」
モヒカン頭が進之助に向かって叫ぶ。進之助もゆっくりと立ち上がり、自身より一回り大きい体格の男を睨み据える。
「そういやあ、てめぇ、さっきこの女に向かって殴りかかりやがったな……女に手を上げるたぁ、無粋の極みの下衆野郎だな」
「喧嘩売ってきたのはてめぇだろ!」
「てめぇのそれが出す騒音や排気ガスがこの通りの店や通行人に迷惑だと思ったからちょいと一言注意してやったんだよ」
そう言って、進之助は路肩に止めてあったバイクを指差した。そのバイクはモヒカン頭の所有物のようだが、通常のバイクとは形状など大きく異なっている、いわゆる「改造バイク」であった。
「うるせぇ! 人の趣味にケチつけんじゃねぇ!」
「人様に迷惑掛けるのは粋じゃねえな……」
「黙りやがれ!」
モヒカン頭が再び進之助に向かって殴りかかる。巨体に似合わず、素早い動きである。しかし、進之助は慌てる素振りを見せず、冷静にその一撃を躱してみせた。さらに避けざまに足を掛けて、モヒカン頭を転ばせた。
「ぐぉ! ぐぬぬ……」
逆上したモヒカン頭が更に二度三度と進之助に殴りかかったが、対する進之助は先程と同じ要領で、向かってくる巨体を華麗にいなしてみせた。モヒカン頭は成す術もなく、地面に転がった。
「粋じゃねえ奴とはこれ以上喧嘩しねえよ……」
そう言って、その場から颯爽と立ち去ろうとした進之助の前に、葵が両手を広げて立ち塞がった。
「ちょっと待って、赤宿進之助君。貴方に話があるの」
「だから誰なんだい、おめぇさんは? どうしてオイラの名前を知っていやがる?」
「私は将愉会会長の若下野葵よ!」
「は? しょうゆ会?」
葵の発言に近くにいた爽と小霧が思わずずっこけそうになった。
「あ、葵様……」
「今日立ち上げたばかりの会の名前をおっしゃっても……」
「うん? 待てよ、おめぇさんの顔、どこかで見たような……」
進之助が身を屈めて、葵の顔をマジマジと見つめる。
「ぐおおーー! 俺はもう完全にキレたぜ!」
叫び声の先に振り返ると、モヒカン頭が改造バイクに跨り、エンジンを吹かしている。その右手にはバイクのカウルにでも隠していたのか、釘バットが握られている。
「覚悟しろや赤毛!」
モヒカン頭がバイクの向きを変え、進之助たちのいる所に向かって、今にも突っ込んでこようとしている。
「ちっ、完全に逆上していやがる……おめぇさんたち! オイラから早く離れ……⁉」
進之助は己の目を疑った。葵がモヒカン頭の前に自ら進み出ていったのだ。
「卑怯者‼」
「な、何だと……?」
「生身では到底叶わないからって、そうやって道具に頼る訳? 喧嘩だからって何をやっても良いと思っているの? 誇りもなにも無いのね……あなたには下衆野郎という言葉すら勿体ないわ、はっきり言ってそれ以下の屑よ!」
「こ、このアマ、言わせておけば……!」
モヒカン頭が葵に向かってバイクを発進させた。
「危ねぇ!」
「葵様!」
「若下野さん!」
進之助たちが口々に叫ぶ。しかし、葵は微動だにしない。流石のモヒカン頭もひるんだのか、バイクの進路を僅かにずらそうとした。そして次の瞬間、
「ぬおっ‼」
モヒカン頭のバイクの前輪に何者かが投げた、カフェの旗竿が絡まったのだ。これにより車体のバランスを失ったバイクは乗り主であるモヒカン頭を振り落として、カフェへと突っ込んでいった。暫しの間の後、バイクから漏れたガソリンが何かに引火したのか、店内から火の手が上がった。
「火事だ!」
周囲から驚きの声が上がる、火の回りは思っている以上に早く、あっという間に2階建てのカフェほぼ全体を包み込んでしまった。人々はパニック状態になりかけた。
「落ち着け!」
進之助が大声を上げる。周りの皆の注目が彼に集まった。
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