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第一章 JK将軍誕生
しょうゆうこと
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万城目が助け舟を爽に求めた。爽が即座に答える。
「校内数か所に『目安箱』を設置したいと考えています。そこに寄せられた生徒たちからの諸々の相談、悩み事を我々将愉会が一つ一つ丁寧に解決していきたいと思っています」
「学園内のトラブルシューティングを請け負うということですか?」
「簡単に言えばそうなりますね」
「ふむ……」
万城目は顔の前で両手を組み、しばし考えた。
「お三方は良いとして、そちらのお二人はどうなのですか?」
「い、いえ、何分突然の話ですし……」
「当然やりますわ!」
「ええっ⁉」
難色を示した景元に対し、小霧は即答した。
「将愉会の評判も上がれば、上様の株も上がる。学内選挙でも勝てるはず……あの人を外様大名の娘だと散々馬鹿にしてきた、氷戸……さんや五橋……さんの鼻も明かせる……こんな面白そうな機会をみすみす逃す手はありませんわ!」
「高島津さんはやる気満々。大毛利くんは如何ですか?」
「選挙云々はまあともかくとして……学園生活をより良くすることはとても良いことだと思います。僕も加わります」
「……分かりました」
「では、会長?」
「『将軍と愉快な仲間たちが学園生活を大いに盛り上げる会』、通称『将愉会』の設立を承認いたします」
「ありがとうございます! 一生懸命頑張ります! それでは失礼致します!」
そう言って、葵たちはそそくさと部屋を後にした。
「勢いに圧されて承認してしまいましたが……はてさて、どうなることやら……」
残された万城目はそう呟きながらお茶を一口飲んだ。
波乱の学園二日目を終えた葵は、お気に入りのパジャマに着替えると、ベッドに大の字になって寝ころんだ。体は眠いのだが、妙に目が冴えて、なかなか寝付けなかった。そこで独り言のように今日の出来事を思い返していった。
「いや~生徒会長に呼び出されたのは正直ビビったなぁ~」
「なかなかの曲者という噂ですからね」
「? しかし、氷戸さんと五橋さん、絵に描いたような嫌な性格の人たちだったなぁ~」
「あれで外面は良かったりするのがまた厄介な所ですね」
「……だけど彼女、いきなりビンタしてこようとしたのは驚いたなぁ~」
「自分は上様の回し蹴りに驚きました」
葵は枕元に置いてあった愛用の薙刀を静かに手に取った。
「あの『将愉会』の文字、秀吾郎が書いたの? 達筆だねぇ」
「いえいえ、恐れ入ります。自分などまだまだですぅ⁉」
葵が袋に包んだままの薙刀を天井に向かって思い切り突き上げると、天井が勢いよく回転し、屋根裏に仰向けでへばり着いていた秀吾郎と向き合うかたちとなった。
「……何やってるの、貴方?」
「う、上様に何かあってはと思い、こうして屋根裏で息を潜めておりました」
「何かってプライバシーの侵害が発生してんじゃない⁉ 大体思いっ切り私と会話しちゃっているし! 全然忍べてないし! っていうかそもそも忍ばなくていいから! 何を人の部屋、勝手にプチ忍者屋敷に改造しちゃってくれてんのよ⁉」
「上様に近づく脅威を排除するのが、我々御庭番の務めでございまして……」
「目下貴方が最大の脅威なのよ! 良いから出て行ってよ!」
「は、ははっ⁉ 失礼致しました!」
そう言って、秀吾郎はさっと部屋から姿を消した。
(昨夜とほぼ同じじゃない……ビンタから守ってくれた時は少しドキッとしたけど……)
葵は何ともいえないモヤモヤとした感情のままやがて眠りに就いた。
「校内数か所に『目安箱』を設置したいと考えています。そこに寄せられた生徒たちからの諸々の相談、悩み事を我々将愉会が一つ一つ丁寧に解決していきたいと思っています」
「学園内のトラブルシューティングを請け負うということですか?」
「簡単に言えばそうなりますね」
「ふむ……」
万城目は顔の前で両手を組み、しばし考えた。
「お三方は良いとして、そちらのお二人はどうなのですか?」
「い、いえ、何分突然の話ですし……」
「当然やりますわ!」
「ええっ⁉」
難色を示した景元に対し、小霧は即答した。
「将愉会の評判も上がれば、上様の株も上がる。学内選挙でも勝てるはず……あの人を外様大名の娘だと散々馬鹿にしてきた、氷戸……さんや五橋……さんの鼻も明かせる……こんな面白そうな機会をみすみす逃す手はありませんわ!」
「高島津さんはやる気満々。大毛利くんは如何ですか?」
「選挙云々はまあともかくとして……学園生活をより良くすることはとても良いことだと思います。僕も加わります」
「……分かりました」
「では、会長?」
「『将軍と愉快な仲間たちが学園生活を大いに盛り上げる会』、通称『将愉会』の設立を承認いたします」
「ありがとうございます! 一生懸命頑張ります! それでは失礼致します!」
そう言って、葵たちはそそくさと部屋を後にした。
「勢いに圧されて承認してしまいましたが……はてさて、どうなることやら……」
残された万城目はそう呟きながらお茶を一口飲んだ。
波乱の学園二日目を終えた葵は、お気に入りのパジャマに着替えると、ベッドに大の字になって寝ころんだ。体は眠いのだが、妙に目が冴えて、なかなか寝付けなかった。そこで独り言のように今日の出来事を思い返していった。
「いや~生徒会長に呼び出されたのは正直ビビったなぁ~」
「なかなかの曲者という噂ですからね」
「? しかし、氷戸さんと五橋さん、絵に描いたような嫌な性格の人たちだったなぁ~」
「あれで外面は良かったりするのがまた厄介な所ですね」
「……だけど彼女、いきなりビンタしてこようとしたのは驚いたなぁ~」
「自分は上様の回し蹴りに驚きました」
葵は枕元に置いてあった愛用の薙刀を静かに手に取った。
「あの『将愉会』の文字、秀吾郎が書いたの? 達筆だねぇ」
「いえいえ、恐れ入ります。自分などまだまだですぅ⁉」
葵が袋に包んだままの薙刀を天井に向かって思い切り突き上げると、天井が勢いよく回転し、屋根裏に仰向けでへばり着いていた秀吾郎と向き合うかたちとなった。
「……何やってるの、貴方?」
「う、上様に何かあってはと思い、こうして屋根裏で息を潜めておりました」
「何かってプライバシーの侵害が発生してんじゃない⁉ 大体思いっ切り私と会話しちゃっているし! 全然忍べてないし! っていうかそもそも忍ばなくていいから! 何を人の部屋、勝手にプチ忍者屋敷に改造しちゃってくれてんのよ⁉」
「上様に近づく脅威を排除するのが、我々御庭番の務めでございまして……」
「目下貴方が最大の脅威なのよ! 良いから出て行ってよ!」
「は、ははっ⁉ 失礼致しました!」
そう言って、秀吾郎はさっと部屋から姿を消した。
(昨夜とほぼ同じじゃない……ビンタから守ってくれた時は少しドキッとしたけど……)
葵は何ともいえないモヤモヤとした感情のままやがて眠りに就いた。
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