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第一章

第12話(1)ヨッパライ、本領発揮

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「タ、タイヘイ殿⁉ 今までどこに⁉」

 カンナが驚きの声を上げる。

「悪い、迷った」

「ま、迷った⁉」

「王宮広いんだもんよ……メンゴ、メンゴ」

 タイヘイが右手を挙げて謝る。

「そ、そんなことで済む問題では……!」

「ギリギリ間に合ったから良いだろう?」

「間に合っていますか……?」

「まあ、とにかくこっからは俺に任せな。話はなんとなくだが聞こえていた。とにかくコイツをぶっ飛ばしちまえば良いんだろ?」

 タイヘイがフンミをビシっと指差す。フンミが顔をしかめる。

「……なんだあ、てめえは?」

「俺はタイヘイだ」

「いや、名乗られても分かんねえよ」

「そこの姫さんと同盟関係を結んでる」

 タイヘイがカンナを指差す。

「同盟関係だあ?」

「ああ」

「『亜人連合』のもんか?」

「違えよ」

「『妖』の国か? それとも……」

「国を造んだよ、これから」

「!」

 タイヘイの言葉にフンミは目を丸くする。

「……知らねえか?」

「はっ、そういえば小耳にはさんだな、そんなバカが出てきたって……」

「バカだと?」

「なんだ? アホって言った方が良かったか?」

「いや、どっちでもいいさ……人の国を掠め取ろうとする、心底ダセえセコセコ野郎に何を言われたって響かねえ……」

「ああん?」

「おっと、怒ったか? セコセコ野郎?」

「……これまで俺にそんな舐めた口を利いた奴は片っ端からぶっ飛ばしてきた……」

「……ってことは、結構舐められてんだな、お前」

「‼ ……殺す!」

「……やれるもんならやってみろよ」

 タイヘイが構える。

「……ひっく!」

 フンミが酒を飲む。タイヘイが首を傾げる。

「そんなんで戦えんのかよ……」

「はっ!」

「うおっ⁉」

 フンミがあっという間に距離を詰め、タイヘイに正拳突きを繰り出す。鋭い一撃だったが、タイヘイはかろうじてガードする。フンミが感心する。

「へえ、良く反応したじゃねえか……」

「……これくらいなんてことねえよ」

「とはいえ、そんな体でいつまでも耐えられねえだろう?」

「体格は似たようなもんだろうが」

「一発一発の重さが違うぜ……」

 フンミが右手をヒラヒラとさせる。

「まあ、それはそうかもな……」

「分かったか?」

「それなら重さを増すまでだ……」

「なに?」

「ふん!」

 タイヘイが上半身を大きく膨らませる。フンミが驚く。

「な、なんだ⁉」

「ウホッ!」

「どはっ!」

 タイヘイのラリアットを食らい、フンミは後方に勢いよく吹っ飛ぶ。

「ゴリラのパワーはどうだ?」

「ゴ、ゴリラだと……?」

 かろうじて受け身を取ったフンミがゆっくりと立ち上がりながら呟く。

「ああ」

「なるほど、『人』と『獣』のハーフか……」

「なにをブツブツ言ってやがる!」

「む!」

「おらあっ!」

「ぐっ!」

 タイヘイのパンチをフンミがガードする。

「へえ、よく止めたな! これならどうだ!」

「‼」

「ウホッ! ウホッ! ウホッ!」

「がはっ! ぐはっ! ごはっ!」

 タイヘイがラッシュをかける。スピードとパワーを兼ね備えた猛攻にフンミは耐え切れず、ガードを崩されてしまう。タイヘイが笑みを浮かべる。

「とどめだ! ウホホッ!」

「げはあっ!」

 タイヘイの強烈なパンチが顎に入り、フンミはさらに後方に吹っ飛ぶ。

「はっ、こんなもんか……」

 タイヘイが両手をパンパンと払う。

「みゃ、みゃて……」

「お?」

 フンミがゆっくりと立ち上がり、口を開く。血が滴り落ちる。

「ひゃ、ひゃってくれんひゃねえか……」

「顎砕けてんじゃねえのか? 無理に喋んねえ方が良いぞ?」

「ふ、ふん、しゃけがにゃがし込めれば充分だ……」

 フンミがひょうたんを取り、口に流し込む。タイヘイが顔をしかめる。

「うわ……傷に染みんじゃねえか?」

「……ぷはあっ! ふん……」

 先程よりも酒を飲んだフンミが口元を拭って構えを取る。タイヘイも構えを取る。

「おいおい、まだやる気か? 無理すん……な⁉」

 一瞬で距離を詰めたフンミの拳がタイヘイの顔を捉える。今度はタイヘイが倒される。

「無理すん……なんだって?」

「て、てめえ、なにを……?」

「話は聞こえていたんだろう? 俺は酔えば酔うほど調子が良いんだよ……!」

「それにしたって……さっきとはケタが違う!」

「ちょっと舐めたくらいだからな、ちゃんと飲めばこんなもんよ……」

「か、活舌が治ってるのはどういうこった?」

「故事によれば、『酒は百薬の長』っていうからな……」

 フンミはドヤ顔で顎をさする。

「アルコールで誤魔化してるだけだろう……がはっ⁉」

 フンミの攻撃がまた決まる。見ていたカンナが驚きながら呟く。

「な、なんて速さなの……!」

「故郷の東部の酒を飲んだからな……速さ特化の『青龍の型』ってやつだ」

 フンミが龍の姿を模した構えを取る。
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