上 下
16 / 50
第1笑

4本目(3)ネタ『女三人寄れば』

しおりを挟む
「はい、どーも~2年の凸込笑美で~す」

「2年の能美礼明で~す!」

「2年の能美礼光で~す!」

「『セトワラ』、今回はこの三人でお届けします、よろしくお願いしま~す」

「「お願いしま~す!」」

 双子の揃った挨拶に拍手が起こる。ひと呼吸おいて笑美の右隣に立った礼明が話し出す。

「いや~本当もうね……いきなりなんだけど」

「お、突然どうしたん? 礼明ちゃん?」

「かしましたい!」

「は?」

「かしましたいのよ!」

「な、何を言うてるの?」

 首を傾げる笑美の肩を左隣に立った礼光がドンドンと叩く。

「笑美ちゃん! 笑美ちゃん!」

「れ、礼光ちゃん、そ、そないドンドン叩かなくてもええから! 聞こえているから!」

「『女三人寄れば姦しい』とかって言うでしょ?」

「ああ……」

「礼明ちゃんは姦しい感じを味わいたいのよ!」

「あ、かしましたいってそういう意味⁉」

「そうよ~! 『姦しい』って形容詞と、『~たい』という希望・願望の表現を組み合わせた礼明ちゃんの造語よ、知らない?」

「造語やったら知る由もないがな!」

「かしましたいわ~! あ~かしましたい!」

 礼明が声を上げながら、シャドーボクシングを始める。それを見て笑美が戸惑う。

「身振り手振りが乱暴者のそれなんよ……なんかところ狭しと歩き始めたし……」

「礼明ちゃんがこう言うってことは、もうすっかりそういう時期なのね~」

「え? そんな季節恒例のことなん?」

「こうなったらね、笑美ちゃん」

 礼光が笑美の両手を握る。

「う、うん」

「礼明ちゃんのかしましたいって願望を叶えてあげないといけないわ」

「か、叶えてあげる?」

「そうよ、もし叶えてあげないと……これ以上は言えないわ」

「なんやそれ⁉ 気になるな……」

「とにかく、姦しい感じを出しましょう」

「姦しい感じって……」

「礼明ちゃん~!」

「なに? 礼光ちゃん?」

 礼光が礼明をステージ中央まで招き寄せる。

「こっちに来て、一緒にかしましりましょう!」

「ええっ⁉ かしましれるの⁉」

「ええもう! かしましまくりよ!」

「かしましり、かしましらせられるの?」

「そうよ~かしましるわよ~」

「造語変格活用のオンパレード! 全然わけが分からん!」

 二人に挟まれた笑美が思わず声を上げる。二人が黙る。

「……」

「………」

「あっ、ご、ごめん、いきなり大声出してもうて……」

「……良いかしましりね~」

「あ、合うてたんや⁉」

「え? 笑美ちゃん、中学とかでやってた?」

「やってない、やってない! そんな部活ないから! 『かしましい部』とか……」

「じゃあ、この三人で女子トーク、かしましって行きましょう!」

「イエーイ!」

 礼光の言葉に、礼明が反応する。笑美が戸惑いながら呟く。

「女子トークって言うたな……とりあえず女子っぽいトークをすればええんやな?」

「さば味噌がさ~」

「さ、さば味噌⁉ どんな話題⁉」

「あっ、ちょっとお手洗いに……」

 礼光がステージからはける。礼明が小声で笑美に語りかける。

「ねえ、笑美ちゃん、礼光ちゃんって、空気が読めないところあるわよね~?」

「え?」

 礼光が戻ってくる。

「お待たせ~なに話していたの?」

「いや、別に……あ、ちょっとお手洗いに……」

 今度は礼明がステージからはける。礼光が小声で笑美に語りかける。

「ねえ、笑美ちゃん、礼明ちゃんって、男子に媚びるところあるわよね~?」

「ええ?」

 礼明が戻ってくる。

「お待たせ~何を話していたの?」

「ううん、別になにもないわ……」

「……」

 両隣から礼明と礼光が笑美を見つめる。

「い、いや、ウチはいかへんよ、お手洗い! だって絶対悪口言うやん!」

「笑美ちゃん……」

「う~ん、全然かしませてないな~!」

 礼明が髪を激しくかきむしりながらステージを右往左往する。

「礼明ちゃん! 思う様にかしませないとああいう禁断症状が出るのよ~」

「禁断症状⁉」

「うあ~!」

「もうすぐ限界がくる! 私たちでなんとかしないと!」

「いや、しかるべき医療機関に相談しようや!」

「限界まであと一分!」

「急すぎる!」

「なにかかしましい感じを出さないと! 手遅れになるわ!」

「あ、そ、そういえばあそこの島にええ感じのカフェが出来たの知ってる⁉」

「!」

「礼明ちゃんの動きが止まった! いいわよ、笑美ちゃん!」

「そこのおすすめスイーツが絶品で、パティシエもすごいイケメンやねん!」

「そうそう、笑美ちゃんの言うとおりよ!」

「ス、スイーツ……パ、パティシエ……イ、イケメン……」

「礼明ちゃんの動きがかしましさを取り戻しつつあるわ!」

「かしましさって何?」

「ううっ……」

「ああ、でも礼明ちゃんまだ苦しんでいるわ! もっとかしましさパワーを送らないと!」

「かしましさパワー……?」

 礼光が両手を広げて念じる。

「かしまれ~かしまれ~……笑美ちゃんも一緒に!」

「ええっ⁉ かしまれ~かしまれ~……どういう状況なん! これは!」

「はっ!」

「あっ、良かった、正気を取り戻したみたいやわ、良かったね、礼光ちゃん?」

「あ~かまびすしたい!」

「えええっ⁉」

「礼光ちゃんのかまびすしたいって願望を叶えてあげないと! かまびすしいパワーを!」

「いや、こんどはこっちかいな! もうええわ!」

「「「どうも、ありがとうございました!」」」

 笑美と礼光と礼明がステージ中央で揃って頭を下げる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

旦那様に離婚を突きつけられて身を引きましたが妊娠していました。

ゆらゆらぎ
恋愛
ある日、平民出身である侯爵夫人カトリーナは辺境へ行って二ヶ月間会っていない夫、ランドロフから執事を通して離縁届を突きつけられる。元の身分の差を考え気持ちを残しながらも大人しく身を引いたカトリーナ。 実家に戻り、兄の隣国行きについていくことになったが隣国アスファルタ王国に向かう旅の途中、急激に体調を崩したカトリーナは医師の診察を受けることに。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつまりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。 だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。 そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。 そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

処理中です...