僕は君のボディガード

ちみぞう

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僕は君のボディガード

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■登場人物
・九条雄一
関東一円を取仕切る九条会の息子。高校1年生。183cm。
恵まれた体躯と、実戦で鍛えられた筋肉が醸し出すオーラは、大人もたじろぐ程。刃物のような目つきは周囲を圧倒し、隙が無く、学校で九条の笑顔を見た者は誰一人いない。昔は組の跡取りとなることに反発していたが、今は組の部下、そして井上稔を守るため、ヤクザとして生きることを覚悟している。昔から一緒に育った稔だけには心を開いており、友人は稔一人で十分だと思っている。いつも組の事か、稔の事を考えている。稔と二人っきりになった時にだけ、誰にも見せない一面を無意識に覗かせる。勉強も学校も嫌い。

・井上稔
九条雄一のボディガードとして育てられた。高校1年生。178cm。
小学2年生の時に、父親が九条会から借金をし、蒸発。支払い能力が無いなら体で払えと、九条会の用心棒として育てられる。苦しい環境にあったが、元来は明るく自由奔放な性格であったため、組のメンバーに可愛がられる。また、体術の素質や自頭の良さが会長の目に留まり、雄一と同じ歳であったこともあり、雄一のボディガードに任命される。昔は九条会へ憎しみを持っていたが、いつしか実の父親が全ての元凶であると気づき、今は殺さずに育ててくれた九条会へ恩義を感じている。稔の全ては雄一を守ることに注がれていて、一番楽しいことは雄一を笑顔にすること。頭もよくなんでも器用にこなし、人当たりも良いので学校では友達も多い。


■あらすじ
ヤクザの息子である九条雄一と、そのボディガードとして育てられた井上稔は、互いが互いを唯一の親友と思い、助け合ってきた。雄一の生意気な態度のせいで、学校では毎日誰かに喧嘩を売られていて、稔は雄一を守るために日々奮闘している。二人の生い立ちを知るものは学校にはおらず、稔は雄一の舎弟もしくは金魚のフンだと思われている。主従関係の雄一と稔だが、二人っきりになった時だけは関係性が変わり、雄一は稔に甘える。次第に、雄一と稔の間には、友情以上の感情が膨らんでいく、、、、。


■プロット
【シーン1】~学校~
・学校での喧嘩シーン

【シーン2】~家~
・家でのシーン
・組長に叱られる九条
・互いを庇うシーン

【シーン3】~部屋~
・雄一の部屋で、稔が雄一の怪我を手当てするシーン
・稔の前で態度が全く変わり甘えだす雄一
・稔は最近自分がドキドキしていることに気づく

【シーン4】~学校~
・稔が告白されているシーン
・雄一がそれを目撃してしまい、黙りこくる
・帰り道で雄一の様子がおかしいことに気づく稔
・怒って稔にキスをする雄一

【シーン5】~家~
・夜中、雄一の部屋を訪れ、キスの真意を確かめに行く稔
・稔は自分から雄一に抱きつき、気持ちを確かめ合う

■本編
【シーン1】
場所:朝、登校時の出来事。

雄一「おら!纏めてかかってこい」

   登校途中に他校のヤンキーに絡まれ、応戦する二人。

   ドス(殴る音)

稔 「雄一、ほどほどにな、死んじまうぞ」

雄一「こいつは、、お前の顔に傷つけやがった、ただじゃ帰さねえ」

稔 「まったく、、、、」

稔 関東一円を仕切る九条会の息子はやっぱり血の気が多い。
  九条雄一がヤクザの息子だということは周囲に明るみにはなっていないが、
  それでも常人には醸し出せない雄一のオーラが、腕試しをしたいヤンキー達
  を引き寄せるようで、毎日毎日飽きずに喧嘩を仕掛けてくる。
  まるで常夜灯に群がる蛾みたいだな、、こいつら。(ため息)

稔 「よし、こいつで最後だ。早く教室に行こう。授業に遅れる」

雄一「おう」

稔 雄一は中3の頃に一気に身長が伸びて、最近180㎝の大台を突破したと
  言っていたなあ。小2で出会った時には対等な距離で見つめ合っていたのに、
  今では俺が少し雄一を見上げる形になった。

  ヤクザに借金したバカな親のせいで俺は九条会に身売りされ、
  ずっと用心棒として育てられてきた。組長に目をかけてもらい、歳も近く気が
  合った雄一のボディガードを拝命してから、365日、24時間、寝食を共にして
  兄弟同然に生きてきた。何も持っていない俺にとって、雄一を守ること、
  それだけが生きる意味だった。


場所:教室

   ガラ(ドアが開く音)

雄一「ふう」

稔 「おい、突っ伏すなよ!1限目から寝るなって!」

雄一「朝から動いて眠いんだよ、、、寝かせろ」

稔 「はあ、、、、」

稔 ふてぶてしい態度で教室に入り、乱暴に椅子に座るまで、
  教室中の視線が雄一に集まっていたが、当の本人は全く関心がないみたいだ。
  雄一に対するクラスメイトの印象は最悪だ。皆怖がって、
  本当の雄一を知ろうとはしない。前に一度、「友達作れ、少しは笑ってみろ」と
  言ってみたことがあったが、雄一は「お前が居ればそれでいい」と言い放った。
  本当は叱るべきだったのに、その一言が嬉しくて、俺だけのモノにしたいと言う
  矛盾した感情が頭をもたげたことに自分でも驚いた。
  もちろん、雄一には一言も言わなかった。

  キンコーンカーンコーン(終業チャイムの音)

雄一「稔、帰るぞ」

稔 「おお」

【シーン2】
場所:九条家 入口

組長 「てめえ雄一、また喧嘩したんだってな」

    通りがかった組長に、帰宅した雄一と稔が話しかけられる。

雄一 「俺から仕掛けたことはねえ。しかも今日は、稔の顔に傷つけやがった」

稔  「組長、すみません。俺がついていながら」

雄一 「お前が謝ることはねえ、なんにも悪いことはしてねえだろ」

組長 「稔、しっかりこいつを見張っとけ。ボディガードとしての役割を忘れるな」

雄一 「おい、親父。こいつはボディガードなんかじゃねえ」

稔  「雄一!いいから」

組長 「ボディガードじゃあねえっつうなら何だってんだ。
    稔も組も守るんだったら、冷静になることも覚えるんだな」

雄一 「ちっ。行くぞ。稔」

稔  「あ、、、雄一。すみません、失礼します」

   ドタドタ(足音)
   雄一は乱暴に稔の手を引いて、部屋に向かう。


【シーン3】
場所:九条家 雄一の部屋

雄一 「痛っ!もっと優しくしろ。稔」

稔  「うるさい、黙ってろ。腕も血が滲んでる。消毒液染みるぞ」

稔  掴んだ雄一の腕は筋肉が引き締まっていて、その先にある拳も大きくて
   男らしくて、そのくせ指は長くて、綺麗だなあとついつい見惚れてしまう。

雄一 「稔。手ばっか見てどうした」

稔  「ああ、、、ごめん。デカいなあと思って」

雄一 「稔の手も見せろ」

稔  「あ、、、」

雄一 「お前も、男の手だが、、、白くてきれいだ」

稔  「そういうことは男に言うな」

雄一 「、、、稔、親父の言ったこと。気にしないでくれ」

稔  「どこの部分?冷静になれってところ?」

雄一 「茶化すな。ボディガードとか思ってねえから」

稔  「じゃあ、、、なんだと思ってるの、、、、」

雄一 「そこんとこが難しい。兄弟とかいう簡単なモノじゃない。
    お前は誰よりも大切なんだ」

稔  「恥ずかしいこと言うな」

雄一 「、、、稔、お前はどうだ?」

稔  「俺だって、、、そうだよ」

稔  そんなに嬉しそうな顔をするなよ。切なくなってついつい雄一の頭を
   撫でてしまう。外では狂犬さながらなのに、二人っきりになると
   甘えたがりになる。雄一のこんな姿本当は誰にも見せたくない。
   俺だけに見せてくれればそれでいい。
   いつからか、雄一と二人でいると鼓動が早くなって、
   体が熱くなるのを感じるようになった。


【シーン4】
場所:学校 教室

稔 「、、、ごめん。俺今は付き合うとか考えてないんだ」

  放課後の教室で告白される稔。
  バタバタ(足る足音)

稔 告白なんて勇気がいるのに、かわいそうなことをしてしまったな。
  足早に立ち去る女子の後姿をぼんやり見やった。小柄でいい匂いがして、
  線が細くて、、、一般的に美人の部類に入る女の子だった。

  なのに俺は、デカくて男臭い、雄一のことをいつも目で追っている。
  ボディガードだからとか、そんなのは表向きの理由だ。
  本当は、誰よりも強くて責任感があって、心の広い雄一が大切で仕方がない。
  子供の頃、組に売られて怯えてた俺を、守ってくれたのはあいつだ。
  あいつこそ俺のボディガードなんだ。


稔 「え、、雄一!見てたのか」

   教室から出ようとしたときに、入口に佇む雄一と目が合う。

雄一「告白されたのか?」

稔 「うん、、、断ったけど」

雄一「そうか、、、帰れるか」

稔 「うん、帰ろう」

  帰り道黙りこくる二人。

稔 「なんで黙ってるんだよ」

雄一「、、、別に。話すことねえ」

稔 いつも他愛もない話をして帰る時間が好きだった。
  今日の雄一はどこか近寄り難くて、、目が合わない。

稔 「なあ、なんか怒ってる?」

雄一「怒ってねえ」

稔 「いや、怒ってる。何かしたか俺が!?」

雄一「っ!うるせーついてこい」

稔 「痛っ!」

  ドン(壁にぶつかる音)
  路地裏に稔を連れ込む雄一。

稔 「な、なんでこんな路地裏に?」

雄一「告白なんて、、、されてんじゃねえよ!」

稔 「んんっ!!」

  抱きしめられキスをされる稔

稔 「はあっ、、、。なんで、、なんでキスなんか、、、」

  戸惑う稔

雄一「クソっ!!、、、、」

稔 「雄一!どこ行くんだ!」

稔  雄一はそのまま足早に去っていった。

【シーン5】
場所:九条家 稔の部屋

ベッドで横たわりながらぼーっとする稔

稔 「はあ、どうやって家まで帰ってきたか覚えてないなあ」

稔 さっきのキスの事を考えると、体が一気に熱くなって、
  顔が真っ赤になるのを感じた。雄一に、男に、キスをされたのに
  気持ち悪くもなんともなかった。寧ろもっと欲しいと考えていた。
  悶々と先程の出来事を反芻していたら、居てもたってもいられなくなった。

  ギシギシ(歩く音)
  コンコン(ノック音)

稔 「雄一、、、、起きてるか?ごめんこんな遅くに」

雄一「、、、、、、、」

稔 「入るよ、、、?」

稔 「雄一?寝てるの?」

  ギシギシ(歩く音)

  ベッドまで向かう稔

稔 「うわ!!」

雄一「大きい声出すな、誰かに聞かれる」

稔 「お前、寝たふりしやがって!
   しかもベッドに引きずり込みやがったな、、、」

雄一「稔、、、、、ごめん」

稔 「何が?」

雄一「今日、キスしたこと。嫌な思いさせてごめん」

稔 「なんでキスしたの?」

雄一「、、、お前が誰かのモノになるなんて想像したら、堪らなくなった。
   俺のものだと証明したくて、気づいたらキスしてた」

稔 暗がりでよく見えないけど、雄一にはいつもの不遜な態度は微塵も無くて、
  今にも泣きそうな顔で、じっと俺の瞳の動きを見つめていた。
  その表情にぎゅっと胸が締め付けられ、雄一を抱きしめた。

稔 「うん。俺はお前のものだよ。昔からずっと」

雄一「良いのか、、、?俺はそういう意味でお前のことが好きなんだ」

稔 「うん、俺もそうだったんだ。やっと気づいた」

雄一「、、、、これからも俺がお前を守るから」

稔 「俺にも守らせてよ。俺はボディガードなんだ。無職にしないでくれ」

雄一「ははは。お前には負けるよ。これからもずっと隣で守ってくれ」

稔 「うん」

~終わり~
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