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本編

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フィオナ視点

「はぁ…」

仲睦まじいのはいいんですけど…まさか空中にいるとは思いませんでしたわ。…番様の体が冷えてしまったかも…湯の用意をしなければ。

「あ、いたいた。今から湯の用意をしてくれるかしら。番様と…もしかしたら竜王様も入られるかもしれないから2人の湯の手伝いを呼んでおいて」
「はい」

そしてわたくしは気づいた。今指示を出したメイドの手に小さな切り傷があることに。

「ちょっと待った。あなた、その傷どうしたの?」
「あ…これはさっき手を滑らせちゃって」
「番様に見せないように。…ご自分を傷つけてまで治そうとしてしまうから」
「はい…」
「今日だけよ。今日だけ見せなければいいの。それぐらいだったら明日には治っているでしょう?」
「…はい」

あの子は番様の衣装係だったのだけど…開封の際使うナイフで怪我をしたのかしらね。竜族といえど雌の肌の硬さはほとんど人族と変わらないもの。紙で切れることはない…というぐらい?刃物なら簡単に切れてしまうわ。

「あぁ…もうすぐ婚礼の儀があるのですから番様が体調を崩すなどあってはならないことなのに」

まだ何も教えられてませんわ。ダンスは省略するとして…礼儀作法に食事のマナー。挨拶も教えなければ。

「わたくしだけでは限界がありますわね…」

でも…竜王様が許してくださるかどうか…。家庭教師…はダメかしら?

「フィオナ」
「はい。なんでしょう竜王様?」

いきなり呼ぶのはやめてほしいのですが…いくら隣の部屋にいるとはいえびっくりしますわ。番様の声では届きませんもの。…扉、厚いわけではありませんのに。

「湯の用意を」
「もうさせましたわ。番様の体調はどうです?夕飯のメニューを変えましょうか?」
「いや…温かいスープを飲ませてやれ」
「かしこまりましたわ。…竜王様?どこかへ行かれるんですか?」
「リオに旅行の約束をしたからな。リオが寝ている間になるべく仕事を終わらせてくる」
「そうですか…」

番様は今寝ているんですね?よかった。…ふふ、オイルマッサージ…してもよろしいですよね?寝たまま湯に入れてしまいましょう。決して起こさぬように伝えておかなくては。

「番様、どんどん綺麗になりましょうね」

竜王様が焦るくらいに。
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