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本編
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どれくらい…経っただろうか。お兄さんは崖の少し突き出た所に降りた。
「ふぃー久しぶりに抱えたまま走ったから疲れたっす…」
「…さっき…え?…走…飛ん…え?」
「あぁ。途中飛んだっすけど大丈夫っすか?」
「大…丈夫…です」
「んじゃもうちょっと歩くっすよー」
お兄さんは暗い洞窟の中へと進んでしまった。
こ…こういう所って…ブラウドウルフとか…いるんじゃ…。
「何してるんすかー!!早く来るっす!!」
「は…はい」
壁に手を当てながらゆっくりと奥へ進んでみる。
不思議なことに奥に進むほど光が溢れてくる。
壁が光る。これから先行く道も光が漏れている。
「…ちゃんと来れたっすね」
「あの…ここは…?」
「竜の血を受け継ぐものしか通れない秘密の抜け穴っすよ。…君マリネっしょ?」
「…マリネット…ですけど…」
「やっぱり。…んーでもその反応…まだ聞いてなかったっすか?」
「聞くって…?」
村長が…前に言おうとしてたことかな。でも僕が眠くなっちゃって…それで明日にしようって言われて…でも明日になった時には…僕は勇者様に…。
「…辛いこと思い出しちゃったっすか?」
「…大丈夫です」
「君はマリネっすからもっとわがままでいいんすよ」
「マリネって…?」
「まぁそれは歩きながら説明するっす」
お兄さんがスタスタ歩き出してしまったため僕は慌ててその後を追いかけた。
「君は多分教えられる前に連れ去られた竜王様の花嫁っすよねー」
「りゅうおう…?」
「君の住んでた村は…んー説明難しいな…簡単に言うと…竜の血族の集まる村なんすよ」
「りゅうの…けつぞく…」
「竜の血を継ぐ者が何故かあの場所に集まるんす。それが次第に増えていって今の村になったんすよ」
「…村長も言ってた…気がします」
何回目かの授業で言っていた…村の成り立ち。あまり理解できなくて本を貸してもらったけどやっぱり分からなかった話。
「で、俺ら竜はその村から代々花嫁を選んでるんすよねー」
「はなよめ…」
というか…お兄さんもりゅうなんだ…。
「と言っても俺らが選ぶ訳じゃなくて本能的に感じるんすけどね。それは村の人にも分かるらしくて花嫁になる子には代々マリネって名付けてるんす。まぁ仮名ならどんなのでもいいっすからねー」
「かめい…?」
「マリネって言うのは古い竜の言葉で花嫁って意味なんす。竜の一族はその言葉だけは覚えておき、自分のマリネを探すんすよ」
「僕は…マリネット…です」
「マリネの男名っすね。さすがにマリネなんて女みたいな名前だと可哀想ってことで数年前から男のマリネはマリネットと言われてるっす」
…村の中に僕と同じ名前の人はいなかった…。でも…マリネって女の人はいた。…あの人も…はなよめ…?
「お、もう着くっすよ」
一際光が大きくなってきた。
「ふぃー久しぶりに抱えたまま走ったから疲れたっす…」
「…さっき…え?…走…飛ん…え?」
「あぁ。途中飛んだっすけど大丈夫っすか?」
「大…丈夫…です」
「んじゃもうちょっと歩くっすよー」
お兄さんは暗い洞窟の中へと進んでしまった。
こ…こういう所って…ブラウドウルフとか…いるんじゃ…。
「何してるんすかー!!早く来るっす!!」
「は…はい」
壁に手を当てながらゆっくりと奥へ進んでみる。
不思議なことに奥に進むほど光が溢れてくる。
壁が光る。これから先行く道も光が漏れている。
「…ちゃんと来れたっすね」
「あの…ここは…?」
「竜の血を受け継ぐものしか通れない秘密の抜け穴っすよ。…君マリネっしょ?」
「…マリネット…ですけど…」
「やっぱり。…んーでもその反応…まだ聞いてなかったっすか?」
「聞くって…?」
村長が…前に言おうとしてたことかな。でも僕が眠くなっちゃって…それで明日にしようって言われて…でも明日になった時には…僕は勇者様に…。
「…辛いこと思い出しちゃったっすか?」
「…大丈夫です」
「君はマリネっすからもっとわがままでいいんすよ」
「マリネって…?」
「まぁそれは歩きながら説明するっす」
お兄さんがスタスタ歩き出してしまったため僕は慌ててその後を追いかけた。
「君は多分教えられる前に連れ去られた竜王様の花嫁っすよねー」
「りゅうおう…?」
「君の住んでた村は…んー説明難しいな…簡単に言うと…竜の血族の集まる村なんすよ」
「りゅうの…けつぞく…」
「竜の血を継ぐ者が何故かあの場所に集まるんす。それが次第に増えていって今の村になったんすよ」
「…村長も言ってた…気がします」
何回目かの授業で言っていた…村の成り立ち。あまり理解できなくて本を貸してもらったけどやっぱり分からなかった話。
「で、俺ら竜はその村から代々花嫁を選んでるんすよねー」
「はなよめ…」
というか…お兄さんもりゅうなんだ…。
「と言っても俺らが選ぶ訳じゃなくて本能的に感じるんすけどね。それは村の人にも分かるらしくて花嫁になる子には代々マリネって名付けてるんす。まぁ仮名ならどんなのでもいいっすからねー」
「かめい…?」
「マリネって言うのは古い竜の言葉で花嫁って意味なんす。竜の一族はその言葉だけは覚えておき、自分のマリネを探すんすよ」
「僕は…マリネット…です」
「マリネの男名っすね。さすがにマリネなんて女みたいな名前だと可哀想ってことで数年前から男のマリネはマリネットと言われてるっす」
…村の中に僕と同じ名前の人はいなかった…。でも…マリネって女の人はいた。…あの人も…はなよめ…?
「お、もう着くっすよ」
一際光が大きくなってきた。
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