普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です｡帰らせて｡

幼児編

65

｢…ほえ｣
｢これなぁに？まっくろいかばんだね｣
｢ランドセルだよ｡学校指定のものだけど｣
初めて見た｡
校章付きのランドセル｡
普通のよりひらべったいし横に長くない？
｢柚は…持てるかな｣
｢しんぱいしすぎ｣
僕だってこれぐらい…これぐらい…｡
僕は空のランドセルを背負って…すぐに座り込んだ｡
え？
待って？
空…なんだよね？
何も入ってないよね？
重いんだけど｡
｢…やっぱり｡樹､送迎お願いできるかな｡その分給料は上乗せしておくから｣
｢かしこまりました｣
｢旦那様､私は？｣
｢睦樹も一応｡夏が…というより樹のサポートをお願い｣
｢かしこまりました｣
…ランドセルすら持てない…｡
僕って…そんなに非力だっけ？
｢柚!!落ち込まなくていいんだよ！？最近ちょっと寝たきりだったから筋力が落ちてるだけで!!｣
｢…ぼく…だめなこじゃない？｣
｢違うよ｣
｢ゆずとがっこうたのしみー!!｣
…あ｡
でも受験あるって言ってたのに｡
｢とうさん､じゅけんは？｣
｢終わったよ？｣
｢｢え？｣｣
僕は夏と一緒に首をかしげた｡
だってそんなのやった覚えないもん｡
｢2人とも覚えてないの？…翔がなんかプリントやるように言わなかった？｣
えっと…言ってた!!
30分以内に解いてって｡
調べちゃいけないし相談もだめって｡
｢合格したんだよ｡柚が首席で夏は次席｡よく頑張ったね｣
｢しゅせき？｣
｢じせき？｣
首席が1番だよね？
次席って…なんだっけ｡
｢柚が1番で夏が2番だったんだよ｣
｢いちばん｣
｢にばん｡…むぅ､まけた｣
｢えへん｣
僕は胸を張った｡
…でもあのプリントが受験用だったんだ｡
思ってたより簡単だね｡
面接とかしないんだ｡