17 / 50
星影のセレナーデ
エピローグ
しおりを挟む
二人で着替えが終わると、先輩はベッドの下から楽器ケースを取り出し、美雨と手をつないで外へと歩き出す。
小鳥も眠っている真夜中の庭園の中を、音を立てないように、二人は静かに歩いてゆく。先輩は美雨の手を引いて、さらにずんずんと道を歩きすすむと、やがて小高い丘に出た。
先輩は、少し開けたところに置かれた石のオブジェに美雨を座らせると、楽器ケースからバイオリンを取り出し、満天の星の下で、美雨の為だけの演奏会を始める。
その音色は、今まで聞いたどんな楽曲よりも美しくて、先輩が紡ぎ出す優しく華やかなメロディーに、美雨はうっとりと夢見心地になった。
やがて、演奏が終わると、美雨は夢中で拍手を送る。
「こんな素晴らしい曲、初めて聞きました!何という曲ですか?先輩」
「これは僕の祖父が、恋人だった祖母の為に作曲した曲で、曲名は“星空のセレナーデ”。世間には未発表で、普段は家族の前でしか弾かないんだ」
(家族のための特別な曲を、僕のために弾いてくれたんだ……)
美雨は嬉しくて、涙がこぼれそうになる。
「この曲、本当はもう少し早く美雨に披露する予定だったんだけどね……」
先輩は少し恥ずかしそうに、髪をかきあげる。
「先ず、美雨と友人として親しくなって、少しずつ慎重に親密になっていこうと、綿密に計画してたのに、美雨があまりにも可愛いすぎるから……順番が色々と逆になっちゃって、本当にごめん」
先輩は、まだうっとりとしている美雨の目の前に立ち、真剣な眼差しと、少し緊張した面持ちで跪き、その手を取る。
「美雨、僕の恋人になってくれますか?」
驚いた美雨は、ポロポロと大粒の涙を流しながらも、頷いて
「はい」
と返事をする。
先輩は、にっこりと微笑むと、美雨のサクランボのような赤い唇に、そっと唇を重ねる。
星空に祝福されながら、二人はいつまでも抱き合って、甘いキスを交わしつづけていた。
『星影のセレナーデ』/終
※次ページから、『ロミオの純情』です
小鳥も眠っている真夜中の庭園の中を、音を立てないように、二人は静かに歩いてゆく。先輩は美雨の手を引いて、さらにずんずんと道を歩きすすむと、やがて小高い丘に出た。
先輩は、少し開けたところに置かれた石のオブジェに美雨を座らせると、楽器ケースからバイオリンを取り出し、満天の星の下で、美雨の為だけの演奏会を始める。
その音色は、今まで聞いたどんな楽曲よりも美しくて、先輩が紡ぎ出す優しく華やかなメロディーに、美雨はうっとりと夢見心地になった。
やがて、演奏が終わると、美雨は夢中で拍手を送る。
「こんな素晴らしい曲、初めて聞きました!何という曲ですか?先輩」
「これは僕の祖父が、恋人だった祖母の為に作曲した曲で、曲名は“星空のセレナーデ”。世間には未発表で、普段は家族の前でしか弾かないんだ」
(家族のための特別な曲を、僕のために弾いてくれたんだ……)
美雨は嬉しくて、涙がこぼれそうになる。
「この曲、本当はもう少し早く美雨に披露する予定だったんだけどね……」
先輩は少し恥ずかしそうに、髪をかきあげる。
「先ず、美雨と友人として親しくなって、少しずつ慎重に親密になっていこうと、綿密に計画してたのに、美雨があまりにも可愛いすぎるから……順番が色々と逆になっちゃって、本当にごめん」
先輩は、まだうっとりとしている美雨の目の前に立ち、真剣な眼差しと、少し緊張した面持ちで跪き、その手を取る。
「美雨、僕の恋人になってくれますか?」
驚いた美雨は、ポロポロと大粒の涙を流しながらも、頷いて
「はい」
と返事をする。
先輩は、にっこりと微笑むと、美雨のサクランボのような赤い唇に、そっと唇を重ねる。
星空に祝福されながら、二人はいつまでも抱き合って、甘いキスを交わしつづけていた。
『星影のセレナーデ』/終
※次ページから、『ロミオの純情』です
6
お気に入りに追加
303
あなたにおすすめの小説
異世界立志伝
小狐丸
ファンタジー
ごく普通の独身アラフォーサラリーマンが、目覚めると知らない場所へ来ていた。しかも身体が縮んで子供に戻っている。
さらにその場は、陸の孤島。そこで出逢った親切なアンデッドに鍛えられ、人の居る場所への脱出を目指す。
【R18】お嫁さんスライム娘が、ショタお婿さんといちゃらぶ子作りする話
みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。
前話
【R18】通りかかったショタ冒険者に襲い掛かったスライム娘が、敗北して繁殖させられる話
https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/384412801
ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで
いらないと言ったのはあなたの方なのに
水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。
セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。
エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。
ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。
しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。
◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬
◇いいね、エールありがとうございます!
僕のユニークスキルはお菓子を出すことです
野鳥
BL
魔法のある世界で、異世界転生した主人公の唯一使えるユニークスキルがお菓子を出すことだった。
あれ?これって材料費なしでお菓子屋さん出来るのでは??
お菓子無双を夢見る主人公です。
********
小説は読み専なので、思い立った時にしか書けないです。
基本全ての小説は不定期に書いておりますので、ご了承くださいませー。
ショートショートじゃ終わらないので短編に切り替えます……こんなはずじゃ…( `ᾥ´ )クッ
本編完結しました〜
【R18】らぶえっち短編集
おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
調べたら残り2作品ありました、本日投稿しますので、お待ちくださいませ(3/31)
R18執筆1年目の時に書いた短編完結作品23本のうち商業作品をのぞく約20作品を短編集としてまとめることにしました。
※R18に※
※毎日投稿21時~24時頃、1作品ずつ。
※R18短編3作品目「追放されし奴隷の聖女は、王位簒奪者に溺愛される」からの投稿になります。
※処女作「清廉なる巫女は、竜の欲望の贄となる」2作品目「堕ちていく竜の聖女は、年下皇太子に奪われる」は商業化したため、読みたい場合はムーンライトノベルズにどうぞよろしくお願いいたします。
※これまでに投稿してきた短編は非公開になりますので、どうぞご了承くださいませ。
【書籍化決定! 引き下げ予定】私を嫌う公爵令息がツンから極デレに進化して溺愛してくる ~一夜限りのはずなのに、媚薬の効果が切れません!~
宝羽茜
恋愛
※書籍化決定しました。10/25にKADOKAWAジュエルブックス様より発売予定。
書籍化にあたって、アルファポリスからは引き下げる予定です。
「俺に助けられるのが嫌なら――おまえが俺を助けろ」
騙されて媚薬を飲んだシェリイ・ロット男爵令嬢に手を差し伸べたのは、初恋の公爵令息オリヴァー。
嫌われているのはわかっていたが、自身も媚薬を飲んだオリヴァーを救うために一夜限りの関係を持つ。
しかし翌朝、元通り嫌われて終わりのはずが、オリヴァーがとんでもないことを言い出した。
「正式にロット男爵に婚約を申し込んだ。これでシェリイは俺の婚約者だ」
媚薬の効果が切れていないことに焦ったシェリイは元に戻す方法を模索するが、オリヴァーはそれまでの態度が嘘のようにデレデレに……いや、極デレに進化して溺愛してきた。
媚薬で極デレ進化した公爵令息と効果が切れないことに焦る男爵令嬢の、すれ違いと勘違いのお話です。
※小説家になろう(ムーンライトノベルス)にも掲載しています。
【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される
鈴木かなえ
恋愛
第17回恋愛小説大賞にエントリーしています。
レティシア・マークスは、『妖精姫』と呼ばれる社交界随一の美少女だが、実際は亡くなった前妻の子として家族からは虐げられていて、過去に起きたある出来事により男嫌いになってしまっていた。
社交界デビューしたレティシアは、家族から逃げるために条件にあう男を必死で探していた。
そんな時に目についたのが、女嫌いで有名な『氷血公爵』ことテオドール・エデルマン公爵だった。
レティシアは、自分自身と生まれた時から一緒にいるメイドと護衛を救うため、テオドールに決死の覚悟で取引をもちかける。
R18シーンがある場合、サブタイトルに※がつけてあります。
ムーンライトで公開してあるものを、少しずつ改稿しながら投稿していきます。
清く正しく美しくをモットーに生きてます!
ユウ
恋愛
子爵家令嬢フレデリカは下級貴族出身でありながらも芸術に精通し政治が語れ、詩が読める優秀な令嬢だった。
しかし、社交界では保守的な男性からは疎まれていた。
男尊女卑が未だに根強い国では、女性が学問や政治に興味を持つ事ははしたないとされていたからだった。
特にフレデリカの婚約者のローガスは事あるごとに蔑んだ目を向け、親友の妹のアマンダと比較をしては蔑んで来た。
「淑女が学問をするなどはしたない。少しはアマンダを見習ったらどうだ」
男爵令嬢のアマンダは妖艶な容姿で社交界では有名だった。
対するフレデリカは社交界で地味令嬢と言われ馬鹿にされていた。
「お前さえいなければ俺はこんな惨めな思いをする必要はなかったんだ!」
事あるごとに自分は犠牲になったとフレデリカを責めるローガスについに耐え切れなくなったフレデリカは婚約解消を考えていた矢先、王命により婚約が解消されると告げられた。
ローガスは両手を上げて喜んだのだが、婚約解消には裏があることを知らなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる