上 下
3 / 50
星影のセレナーデ

3

しおりを挟む
「お、おじゃまします…… 」

 九条先輩の部屋は、一年生の自分達の部屋よりもずっと広くて綺麗に整頓されていた。

 ブックシェルフには、英語だけでなく、フランス語やドイツ語の本が並び、部屋の隅にはアーチ型のアッパーライトがさり気なく置かれてる。

(わー、先輩の部屋、まるで高級マンションのモデルルームみたい! 本当に同じ学院の寮なの?)

 悠斗が乱雑に散らかす窮屈な僕たちの部屋とは大違いだと、美雨はため息をつく。

「その辺に適当に座ってて」

 言われて、美雨はキョロキョロすると、とりあえず部屋に置かれていた黒革のソファーに、ちょこんと腰掛ける。


 やがて、部屋に備え付けのミニキッチンから九条先輩がジノリのマグカップを二つ手にして戻り、「はい」、と美雨に紅茶の入ったカップを手渡して、美雨の隣にトスンと腰掛ける。

 ふんわりと、九条先輩の甘い香りが辺りに漂った。

 お祖父さんがフランスの有名な作曲家の九条先輩は、その整った顔も、高い背も、日本人離れしていて、モデルのように完璧な容姿で、美雨はドギマギする。

(ち、近い! 先輩、近いです……!)

 緊張で少し震えながらカップを口に運ぶと、突然、ガシッと肩を九条先輩に抱き寄せられる。

「そんなに、緊張しなくていいから」

 耳元で優しく囁かれて、美雨は気を失いそうになる。

「美雨、初めてで緊張するかもしれないけど、僕が色々と教えてあげるから安心して」

 九条先輩の声は、とてつもなく色っぽかった。

「な、何をですか……?」

 あんなことや、こんなこと……?

 美雨の頭の中に色々とアブナい妄想が、アレコレと行き来する。

 お人形さんのような可愛い容姿をしているとはいえ、美雨だって男の子だ。

 Hな事を想像してしまうことだって、たまにはある。

「勉強に決まっているだろう」

 そう言うと、九条先輩はスクッと立ち上がる。

「さあ、美雨、教科書を出して。夏休みが終わった後に成績が落ちたなんて事になったら、僕の面目丸つぶれだからね」

「で、ですよねー…… 勉強の事ですよね!」

(僕、先輩に対してHな事を想像しちゃって、恥ずかしい……) 

 動揺を隠しながら、美雨は窓際に置かれた先輩の机の上にテキストを出すと、九条先輩と並んで座って勉強を始める。

 先輩が何か話す度に体と体が触れ合って、先輩の胸元から甘やかな香水の香りが漂い、その度に美雨の集中力は途切れた。

「ねぇ、美雨。辛かったらいつでも出していいんだからね」

「な、何をですか?」

「それ」

 九条先輩の目線が自分の足の間に注がれていて、美雨も思わず自分のそこを見ると、そこは立派に膨らんでしまっていた。

「せ、先輩… こ、これは……」

 とっさに美雨は自分のふくらみを両手で隠す。

「出すの、手伝おうか…… ?」

 からかう顔の九条先輩に、美雨は下を向いてふるふると頭を横に振る。

 恥ずかしさで泣きたい気分だった

「ごめん、ごめん。美雨が可愛いから、ついからかいたくなった。ほら、お手洗い行って出しておいで」

 先輩に優しく肩を叩かれて、バスルームを指さされる。

「…だ、大丈夫…です… 」

 恥ずかしさと、パンパンにふくらんでしまったソコのせいで、すっかりと腰が立てなくなってしまっていたのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界立志伝

小狐丸
ファンタジー
 ごく普通の独身アラフォーサラリーマンが、目覚めると知らない場所へ来ていた。しかも身体が縮んで子供に戻っている。  さらにその場は、陸の孤島。そこで出逢った親切なアンデッドに鍛えられ、人の居る場所への脱出を目指す。

【R18】お嫁さんスライム娘が、ショタお婿さんといちゃらぶ子作りする話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 前話 【R18】通りかかったショタ冒険者に襲い掛かったスライム娘が、敗北して繁殖させられる話 https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/384412801 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

僕のユニークスキルはお菓子を出すことです

野鳥
BL
魔法のある世界で、異世界転生した主人公の唯一使えるユニークスキルがお菓子を出すことだった。 あれ?これって材料費なしでお菓子屋さん出来るのでは?? お菓子無双を夢見る主人公です。 ******** 小説は読み専なので、思い立った時にしか書けないです。 基本全ての小説は不定期に書いておりますので、ご了承くださいませー。 ショートショートじゃ終わらないので短編に切り替えます……こんなはずじゃ…( `ᾥ´ )クッ 本編完結しました〜

【R18】らぶえっち短編集

おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
調べたら残り2作品ありました、本日投稿しますので、お待ちくださいませ(3/31)  R18執筆1年目の時に書いた短編完結作品23本のうち商業作品をのぞく約20作品を短編集としてまとめることにしました。 ※R18に※ ※毎日投稿21時~24時頃、1作品ずつ。 ※R18短編3作品目「追放されし奴隷の聖女は、王位簒奪者に溺愛される」からの投稿になります。 ※処女作「清廉なる巫女は、竜の欲望の贄となる」2作品目「堕ちていく竜の聖女は、年下皇太子に奪われる」は商業化したため、読みたい場合はムーンライトノベルズにどうぞよろしくお願いいたします。 ※これまでに投稿してきた短編は非公開になりますので、どうぞご了承くださいませ。

【書籍化決定! 引き下げ予定】私を嫌う公爵令息がツンから極デレに進化して溺愛してくる ~一夜限りのはずなのに、媚薬の効果が切れません!~

宝羽茜
恋愛
※書籍化決定しました。10/25にKADOKAWAジュエルブックス様より発売予定。 書籍化にあたって、アルファポリスからは引き下げる予定です。 「俺に助けられるのが嫌なら――おまえが俺を助けろ」 騙されて媚薬を飲んだシェリイ・ロット男爵令嬢に手を差し伸べたのは、初恋の公爵令息オリヴァー。 嫌われているのはわかっていたが、自身も媚薬を飲んだオリヴァーを救うために一夜限りの関係を持つ。 しかし翌朝、元通り嫌われて終わりのはずが、オリヴァーがとんでもないことを言い出した。 「正式にロット男爵に婚約を申し込んだ。これでシェリイは俺の婚約者だ」 媚薬の効果が切れていないことに焦ったシェリイは元に戻す方法を模索するが、オリヴァーはそれまでの態度が嘘のようにデレデレに……いや、極デレに進化して溺愛してきた。 媚薬で極デレ進化した公爵令息と効果が切れないことに焦る男爵令嬢の、すれ違いと勘違いのお話です。 ※小説家になろう(ムーンライトノベルス)にも掲載しています。

【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される

鈴木かなえ
恋愛
第17回恋愛小説大賞にエントリーしています。 レティシア・マークスは、『妖精姫』と呼ばれる社交界随一の美少女だが、実際は亡くなった前妻の子として家族からは虐げられていて、過去に起きたある出来事により男嫌いになってしまっていた。 社交界デビューしたレティシアは、家族から逃げるために条件にあう男を必死で探していた。 そんな時に目についたのが、女嫌いで有名な『氷血公爵』ことテオドール・エデルマン公爵だった。 レティシアは、自分自身と生まれた時から一緒にいるメイドと護衛を救うため、テオドールに決死の覚悟で取引をもちかける。 R18シーンがある場合、サブタイトルに※がつけてあります。 ムーンライトで公開してあるものを、少しずつ改稿しながら投稿していきます。

清く正しく美しくをモットーに生きてます!

ユウ
恋愛
子爵家令嬢フレデリカは下級貴族出身でありながらも芸術に精通し政治が語れ、詩が読める優秀な令嬢だった。 しかし、社交界では保守的な男性からは疎まれていた。 男尊女卑が未だに根強い国では、女性が学問や政治に興味を持つ事ははしたないとされていたからだった。 特にフレデリカの婚約者のローガスは事あるごとに蔑んだ目を向け、親友の妹のアマンダと比較をしては蔑んで来た。 「淑女が学問をするなどはしたない。少しはアマンダを見習ったらどうだ」 男爵令嬢のアマンダは妖艶な容姿で社交界では有名だった。 対するフレデリカは社交界で地味令嬢と言われ馬鹿にされていた。 「お前さえいなければ俺はこんな惨めな思いをする必要はなかったんだ!」 事あるごとに自分は犠牲になったとフレデリカを責めるローガスについに耐え切れなくなったフレデリカは婚約解消を考えていた矢先、王命により婚約が解消されると告げられた。 ローガスは両手を上げて喜んだのだが、婚約解消には裏があることを知らなかった。

処理中です...