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㉑
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「……え、麻衣香ちゃん?」
玄関に立っていたのは、制服姿の麻衣香だった。もう学校が終わった時間になったのか。
母さんが「最近女の子のお友達がよく来るわね」と呑気に呟く。
「ねぇ、ちょっと外で話そうよ」
麻衣香は母さんに頭を下げてから、僕を外に誘った。ドアを開けると、すっかり日が差していた。
家の前のアスファルトはまだ湿っている。
少し歩くと、この時間は誰も使っていない有料の駐車場があった。麻衣香は縁石ブロックの上に立ちながら、話を始める。
「あんた、さっきまで泣いてた?」
「え、泣いてないけど」
「へぇ……いや、さっきまで大雨だったから」
ああ……あの大雨、僕のせいだと思われてしまっていたのか。
何回も言っているように、どんなに悲しいことがあっても、僕は簡単に泣かない。
否定した僕の顔から、麻衣香は自分の右手に持っていたスマホに視線を移した。そして、メッセージの画面を僕に見せてくる。
「あんたの降らせる雨は、優しいもんね」
麻衣香がそう言った後に、文字がくっきりと目に入ってきた。
それは早織と麻衣香のやり取り。麻衣香が『今、大雨降ってきた。優雨が大泣きしてるんじゃない(笑)』と送信すると、その返信が、『そんなことないよ。だって優雨君が降らせる雨、すごい優しいもん』という内容だった。
「早織ちゃん……」
僕の涙と、共に降らせた雨のこと、早織はまだ覚えていたんだ。
麻衣香は「ほら、まだ続きあるよ」と言って、メッセージの続きを見せてくる。
早織と麻衣香のやり取りは、ほとんどが僕の話だった。
『今日、優雨君学校来てる?』
『昨日病院に来てくれたみたいなんだけど、お母さんが酷いこと言ったみたいで』
『優雨君の気持ち、無下にしちゃった……』
麻衣香に質問と相談を矢継ぎ早に送っている。
早織……僕のことを心配してくれていたんだ……。
「虹山ヶ丘に連れて行きたいって、早織のお母さんに言ったんだってね」
「……うん」
「それで、諦めるの?」
「そうだね。諦めるしかないと思う」
「……結局、昔のあんたと何も変わってないってことか」
キリッとした目つきで、僕の方を睨む。
昔の僕……麻衣香が言う、弱っちい僕ってことだろう。まあ、そうか。否定はしない。
僕は無言のまま下を向いた。
「それでいいんだ? このまま早織がいなくなっても、後悔はないのね?」
「……いなくなる?」
思わず、顔を上げてしまう。
いなくなるって、どういうことだ? ジトッとした嫌な汗が首筋に滲み出てくる。
一歩だけ、麻衣香に近づいて聞いた。
「早織……中学を卒業したら、アメリカに行っちゃうの」
玄関に立っていたのは、制服姿の麻衣香だった。もう学校が終わった時間になったのか。
母さんが「最近女の子のお友達がよく来るわね」と呑気に呟く。
「ねぇ、ちょっと外で話そうよ」
麻衣香は母さんに頭を下げてから、僕を外に誘った。ドアを開けると、すっかり日が差していた。
家の前のアスファルトはまだ湿っている。
少し歩くと、この時間は誰も使っていない有料の駐車場があった。麻衣香は縁石ブロックの上に立ちながら、話を始める。
「あんた、さっきまで泣いてた?」
「え、泣いてないけど」
「へぇ……いや、さっきまで大雨だったから」
ああ……あの大雨、僕のせいだと思われてしまっていたのか。
何回も言っているように、どんなに悲しいことがあっても、僕は簡単に泣かない。
否定した僕の顔から、麻衣香は自分の右手に持っていたスマホに視線を移した。そして、メッセージの画面を僕に見せてくる。
「あんたの降らせる雨は、優しいもんね」
麻衣香がそう言った後に、文字がくっきりと目に入ってきた。
それは早織と麻衣香のやり取り。麻衣香が『今、大雨降ってきた。優雨が大泣きしてるんじゃない(笑)』と送信すると、その返信が、『そんなことないよ。だって優雨君が降らせる雨、すごい優しいもん』という内容だった。
「早織ちゃん……」
僕の涙と、共に降らせた雨のこと、早織はまだ覚えていたんだ。
麻衣香は「ほら、まだ続きあるよ」と言って、メッセージの続きを見せてくる。
早織と麻衣香のやり取りは、ほとんどが僕の話だった。
『今日、優雨君学校来てる?』
『昨日病院に来てくれたみたいなんだけど、お母さんが酷いこと言ったみたいで』
『優雨君の気持ち、無下にしちゃった……』
麻衣香に質問と相談を矢継ぎ早に送っている。
早織……僕のことを心配してくれていたんだ……。
「虹山ヶ丘に連れて行きたいって、早織のお母さんに言ったんだってね」
「……うん」
「それで、諦めるの?」
「そうだね。諦めるしかないと思う」
「……結局、昔のあんたと何も変わってないってことか」
キリッとした目つきで、僕の方を睨む。
昔の僕……麻衣香が言う、弱っちい僕ってことだろう。まあ、そうか。否定はしない。
僕は無言のまま下を向いた。
「それでいいんだ? このまま早織がいなくなっても、後悔はないのね?」
「……いなくなる?」
思わず、顔を上げてしまう。
いなくなるって、どういうことだ? ジトッとした嫌な汗が首筋に滲み出てくる。
一歩だけ、麻衣香に近づいて聞いた。
「早織……中学を卒業したら、アメリカに行っちゃうの」
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