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三日目

ずっとそばに①

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「兄貴! このまま消えるなんて、許さないからな! 何だよ、俺にずっと優しかったのに、我慢してたなんて……そんなのずりぃよ!」

「リュウ、本当にすまなかった。お前のことが、羨ましくて仕方なかったよ……」

「羨ましかったり悔しかったなら、何でその時言ってくれなかったんだ! 一人で暗くなって、壁作ってさ……そんなん反則だろ! 誰も踏み込めねぇよ!」

「僕のせいで……リュウの人生を邪魔したくなかったからな」

「はぁ? 邪魔なんか思うかよ! 俺はもっと……兄貴と一緒に居たかったのに……」

 感情がぐじゃぐじゃになったリュウは、嗚咽が止まらなくなっても尚、言葉を続けた。
 表情が崩れようが、唾が飛ぼうが、リュウにとっては関係ない。
 今はとにかく、兄である巴先輩に、一年分の鬱憤をぶつけるしかないから。
 恵那も、リュウの後に続いて言葉を届けたいと思うけど、リュウの勢いが凄くて入れる隙がなかった。
 ただ、リュウと同じくらいの涙の量を、部屋の床に垂らしてはいる。

「リュウ、今までありがとう。僕はもう死んでいるんだ。お前に何を言われようと、戻ることはできない」

「……くそ」

「だけど、浮遊霊になれて良かった。もう一度、リュウと恵那ちゃんに会えたからね」

「本当に、消えちまうのかよ」

「ああ、もう時間だ。店長さん、どうすればいいんですか?」

 リュウとの言い合いを無理矢理にも終了させて、藤沢に成仏の仕方を聞く巴先輩。
 これ以上リュウと話しても、心をすり減らすだけだと感じたのだろう。
 恵那がリュウの代わりにまだ言葉を送ろうとするけど、またしても藤沢が会話の主導権を握った。

「巴様、テーブル中央にあるアロマディフューザーに顔を近づけてください。蒸気に顔を当てて、鼻から吸い込んだら、きっと成仏されるでしょう」

「この蒸気にですね? わかりました。それでは……」

「あ、まだ待ってください。その前に、丸井の方からも話したいことがあるみたいですよ」

「え、恵那ちゃんもですか?」

 パッと見られると、言葉を飲み込んでしまう。
 何の気遣いかわからないけど、藤沢が恵那に話すチャンスをくれた。
 リュウはもう話す気力がないのか、目を瞑ったまま動かなくなっている。
 藤沢が話を振るということは、きっと前に話したことを、実行しろという命令だろう。
 巴先輩に会えたら、いっそのこと告白してしまえという、藤沢が恵那に言った無茶なアドバイスを……。

「巴先輩、私は……今日巴先輩に会うまで、ずっと巴先輩を想って生きてきました」

「恵那ちゃん……」
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