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3章 人気の合わせ味噌 ~焼きネギと舞茸入り贅沢豚汁~
④
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「あら、早かったのね」
「はい! 人の家でシャワーを浴びることなんて、滅多にないので」
「ソワソワしたでしょ? ゆっくりで良かったのに」
元々薄化粧のアキは、すっぴんでも気にしない。
すっきりした表情で席に座った。心まで洗われた気分になって、久しぶりにリラックスできていると実感する。
生きるか死ぬかの瀬戸際が続いていて、心の中はずっと殺気立っていたのだ。
それもこれも、このお店に出会えたから。
「なんか良くしてもらって、ありがとうございます……」
気づいたら感謝の声をあげていた。
サリは「かしこまっちゃって」と言いながらニコッとさせる。
座ってから数分後に、出汁巻き卵と小ぶりのおにぎりがセットで置かれた。
「はい、これ朝ご飯。中は鮭ね」
「え! いいんですか?」
「もちろんよ! あとみそ汁も。さっきのシジミ汁だけど」
見るからにフワフワしている艶のある出汁巻き卵。
柔らかくて熱々。そして出汁の香りがまた絶妙に良い。
長皿の上に出汁巻き卵、おにぎり、大根おろし、たくあんが綺麗に配置されている。
「いただきます!」
しなっとしている海苔と米が美味い。塩加減が食欲を加速させた。
たくあん、おにぎり、一旦みそ汁を挟んで、その後に卵……綺麗に食べ進めていく。
鮭の脂身が甘くて、塩分と絡んで美味しかった。最高の朝食を前に、生きているという現実を実感した。
「本当に、美味しそうに食べるな」
猫神様が隣に来る。アキの食べっぷりに感心するように首を傾けた。
今まで寝ていたからか、エネルギーが有り余っているように見える。
「昨日もたくさん食べたのに、どうしてお腹って空くんでしょうね」
「ははは……お前さん、それが生きるってことなんだぞ」
猫に説得されるなんて……と心で思いつつも、中身は神様だ。アキは頷きながら、みそ汁の優しさにまた包まれた。
全部食べ終わると、猫神様はサリに呼ばれた。
小皿の中に出汁が入っていて、それをペロペロ舐めている。
「今日は何の出汁なんですか?」
長い舌で嗜んでいる猫神様に聞いてみると、一言「うむ」とだけ返してくれた。
昨日も食事中だと怒られた気がしたので、あんまり話しかけない方がいいんだと悟る。
その代わりにサリが話し相手になってくれた。
「はい! 人の家でシャワーを浴びることなんて、滅多にないので」
「ソワソワしたでしょ? ゆっくりで良かったのに」
元々薄化粧のアキは、すっぴんでも気にしない。
すっきりした表情で席に座った。心まで洗われた気分になって、久しぶりにリラックスできていると実感する。
生きるか死ぬかの瀬戸際が続いていて、心の中はずっと殺気立っていたのだ。
それもこれも、このお店に出会えたから。
「なんか良くしてもらって、ありがとうございます……」
気づいたら感謝の声をあげていた。
サリは「かしこまっちゃって」と言いながらニコッとさせる。
座ってから数分後に、出汁巻き卵と小ぶりのおにぎりがセットで置かれた。
「はい、これ朝ご飯。中は鮭ね」
「え! いいんですか?」
「もちろんよ! あとみそ汁も。さっきのシジミ汁だけど」
見るからにフワフワしている艶のある出汁巻き卵。
柔らかくて熱々。そして出汁の香りがまた絶妙に良い。
長皿の上に出汁巻き卵、おにぎり、大根おろし、たくあんが綺麗に配置されている。
「いただきます!」
しなっとしている海苔と米が美味い。塩加減が食欲を加速させた。
たくあん、おにぎり、一旦みそ汁を挟んで、その後に卵……綺麗に食べ進めていく。
鮭の脂身が甘くて、塩分と絡んで美味しかった。最高の朝食を前に、生きているという現実を実感した。
「本当に、美味しそうに食べるな」
猫神様が隣に来る。アキの食べっぷりに感心するように首を傾けた。
今まで寝ていたからか、エネルギーが有り余っているように見える。
「昨日もたくさん食べたのに、どうしてお腹って空くんでしょうね」
「ははは……お前さん、それが生きるってことなんだぞ」
猫に説得されるなんて……と心で思いつつも、中身は神様だ。アキは頷きながら、みそ汁の優しさにまた包まれた。
全部食べ終わると、猫神様はサリに呼ばれた。
小皿の中に出汁が入っていて、それをペロペロ舐めている。
「今日は何の出汁なんですか?」
長い舌で嗜んでいる猫神様に聞いてみると、一言「うむ」とだけ返してくれた。
昨日も食事中だと怒られた気がしたので、あんまり話しかけない方がいいんだと悟る。
その代わりにサリが話し相手になってくれた。
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