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2章 出汁なしみそ汁 ~新ジャガと黒コショウソーセージ
⑦
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倉持が「死神……?」と首を傾けて呟いた。
疑問はすぐに目の前のチャーハンにかき消され、倉持はそれを追求することなくレンゲで一口頬張る。
死神がどうのこうの、今は関係ないくらいに……この湯気が立ち溢れるチャーハンを食べたかったのだ。
それはアキも一緒だった。
「あーこれも美味しい」
最初にその感想が口から出たのはアキだった。
米粒にマヨぽんと醤油の香ばしさがコーティングされており、噛めば噛むほど旨味が押し寄せてくる。
倉持もアキの声に頷きながら死神飯をかき込んでいた。
「どれもこれも美味しいなぁ。本当に、良いお店に出会うことができたよ」
炭水化物を食べたことによりお腹が膨らんだのか、倉持は十分に満足そうな顔をしている。
張っている腹部を擦りながら、ネトに感謝の意を伝えた。
そして……ネトは本題に入った。
「腹ごしらえが済んだところで……そろそろ話をしようか」
ネトの目が鋭くなる。
倉持も状況を飲み込んだのか、深く腰掛けていた椅子から一度立ち上がって、今度は浅めに座り直した。
「そうだな……こんな不思議な酒場にやって来れたのは、神様の仕業ってやつなのかい」
薄ら笑いでネトに聞く。
倉持はどこまで知っているのだろうか。アキは心底疑問に思っていた。
アキは春風に紹介されてこの店に来たという経緯がある。
でも倉持はどうだろう。
それが気になっているアキは、チャーハンの残りを食べながら二人の会話に耳を澄ましていた。
「倉持さんも気づいているだろう。ここはただの食堂じゃない。生と死の狭間にある、神様の食堂だ」
「神様の食堂……か。どうりで、ここに来た一連の記憶がすっぽり抜けているわけだ」
記憶が抜けている……アキにはなかった症状。
倉持もまた、不思議な縁でこの『みそ汁食堂 めいど』にやってきた。
誰かに紹介されたとか、そういうのではないのだろうか……。
アキはそれが気になっていた。
もしかしたら、倉持にこのお店を紹介したのも、春風だっていう可能性がある。
「倉持さん、一旦整理してみよう。あなたの人生に、何があったのかを」
疑問はすぐに目の前のチャーハンにかき消され、倉持はそれを追求することなくレンゲで一口頬張る。
死神がどうのこうの、今は関係ないくらいに……この湯気が立ち溢れるチャーハンを食べたかったのだ。
それはアキも一緒だった。
「あーこれも美味しい」
最初にその感想が口から出たのはアキだった。
米粒にマヨぽんと醤油の香ばしさがコーティングされており、噛めば噛むほど旨味が押し寄せてくる。
倉持もアキの声に頷きながら死神飯をかき込んでいた。
「どれもこれも美味しいなぁ。本当に、良いお店に出会うことができたよ」
炭水化物を食べたことによりお腹が膨らんだのか、倉持は十分に満足そうな顔をしている。
張っている腹部を擦りながら、ネトに感謝の意を伝えた。
そして……ネトは本題に入った。
「腹ごしらえが済んだところで……そろそろ話をしようか」
ネトの目が鋭くなる。
倉持も状況を飲み込んだのか、深く腰掛けていた椅子から一度立ち上がって、今度は浅めに座り直した。
「そうだな……こんな不思議な酒場にやって来れたのは、神様の仕業ってやつなのかい」
薄ら笑いでネトに聞く。
倉持はどこまで知っているのだろうか。アキは心底疑問に思っていた。
アキは春風に紹介されてこの店に来たという経緯がある。
でも倉持はどうだろう。
それが気になっているアキは、チャーハンの残りを食べながら二人の会話に耳を澄ましていた。
「倉持さんも気づいているだろう。ここはただの食堂じゃない。生と死の狭間にある、神様の食堂だ」
「神様の食堂……か。どうりで、ここに来た一連の記憶がすっぽり抜けているわけだ」
記憶が抜けている……アキにはなかった症状。
倉持もまた、不思議な縁でこの『みそ汁食堂 めいど』にやってきた。
誰かに紹介されたとか、そういうのではないのだろうか……。
アキはそれが気になっていた。
もしかしたら、倉持にこのお店を紹介したのも、春風だっていう可能性がある。
「倉持さん、一旦整理してみよう。あなたの人生に、何があったのかを」
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