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2章 出汁なしみそ汁 ~新ジャガと黒コショウソーセージ

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 倉持が「死神……?」と首を傾けて呟いた。
 疑問はすぐに目の前のチャーハンにかき消され、倉持はそれを追求することなくレンゲで一口頬張る。
 死神がどうのこうの、今は関係ないくらいに……この湯気が立ち溢れるチャーハンを食べたかったのだ。
 それはアキも一緒だった。

「あーこれも美味しい」

 最初にその感想が口から出たのはアキだった。
 米粒にマヨぽんと醤油の香ばしさがコーティングされており、噛めば噛むほど旨味が押し寄せてくる。
 倉持もアキの声に頷きながら死神飯をかき込んでいた。

「どれもこれも美味しいなぁ。本当に、良いお店に出会うことができたよ」

 炭水化物を食べたことによりお腹が膨らんだのか、倉持は十分に満足そうな顔をしている。
 張っている腹部を擦りながら、ネトに感謝の意を伝えた。
 そして……ネトは本題に入った。

「腹ごしらえが済んだところで……そろそろ話をしようか」

 ネトの目が鋭くなる。
 倉持も状況を飲み込んだのか、深く腰掛けていた椅子から一度立ち上がって、今度は浅めに座り直した。

「そうだな……こんな不思議な酒場にやって来れたのは、神様の仕業ってやつなのかい」

 薄ら笑いでネトに聞く。
 倉持はどこまで知っているのだろうか。アキは心底疑問に思っていた。
 アキは春風に紹介されてこの店に来たという経緯がある。
 でも倉持はどうだろう。
 それが気になっているアキは、チャーハンの残りを食べながら二人の会話に耳を澄ましていた。

「倉持さんも気づいているだろう。ここはただの食堂じゃない。生と死の狭間にある、神様の食堂だ」
「神様の食堂……か。どうりで、ここに来た一連の記憶がすっぽり抜けているわけだ」

 記憶が抜けている……アキにはなかった症状。
 倉持もまた、不思議な縁でこの『みそ汁食堂 めいど』にやってきた。
 誰かに紹介されたとか、そういうのではないのだろうか……。
 アキはそれが気になっていた。
 もしかしたら、倉持にこのお店を紹介したのも、春風だっていう可能性がある。

「倉持さん、一旦整理してみよう。あなたの人生に、何があったのかを」
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