101 / 114
最終話 相武ミオの春
⑬
しおりを挟む
「あの……お客様ですか」
「え?」
声の方に振り返ると、私よりも少し年上らしき男の人が立っていた。黒髪のサラサラヘアーが風によって靡いている。人気の声優さんみたいな塩顔のイケメン。今テレビで人気を得ている俳優さんにも似ている。どうやら、このお店の人みたいだ。
「すいません、綺麗なお店だったので、つい覗いてしまいました」
「いえいえ、お客様でしたらありがたい限りです。最近飛び込み営業の人がよく来られるので……セールスとかじゃなくて良かったです」
とはいっても、私はお客ではないのだけど。たまたま近くを通って、特異なお店の雰囲気に惹かれただけだ。
「大変ですね。勧誘とかもよく来るなんて」
「ええ、大変です。お客様のような若い女性様がお客を装って来ることが多いですね。リフレクソロジーに興味があるように見せかけて、最終的にはウォーターサーバーなりコーヒーメーカーなりを押し売りしてきます」
「装って来るって……計算高いですね」
「向こうも仕事ですからね。でも、立派なお客様で良かった。あ、今お店開けますね。どうぞ中へお入りください」
ちょっと話したら、すぐ帰るつもりだったのに。何故かリフレクソロジーサロンの中に案内されている。
「すごい……いい香りですね」
外観はレンガ造りなのに、店内の壁や床は木でできている。改装したばかりなのか、古さはまったく感じられなかった。むしろ新しい木材の香りもほのかに感じる。しかし、店内のほとんどの香りを、柑橘系の爽やかな匂いで満たしていた。
「アロマディフューザーで香りを出しています。本日は気分的に、レモングラスの香りをチョイスいたしました」
「あ、アロマの香りでしたか。すごく落ち着きますね」
「それは良かったです。では中へどうぞ。リクライニングチェアがあるので、そちらにお掛けください」
「え? 中へと言われましても……」
「せっかくなので、施術を受けていってください。大丈夫です、サービスしますので」
受付の奥の薄暗い空間。何だか怪しい方へ進むことを促された。しかもサービスとは。疑いの目をかけずにはいられない。
「え?」
声の方に振り返ると、私よりも少し年上らしき男の人が立っていた。黒髪のサラサラヘアーが風によって靡いている。人気の声優さんみたいな塩顔のイケメン。今テレビで人気を得ている俳優さんにも似ている。どうやら、このお店の人みたいだ。
「すいません、綺麗なお店だったので、つい覗いてしまいました」
「いえいえ、お客様でしたらありがたい限りです。最近飛び込み営業の人がよく来られるので……セールスとかじゃなくて良かったです」
とはいっても、私はお客ではないのだけど。たまたま近くを通って、特異なお店の雰囲気に惹かれただけだ。
「大変ですね。勧誘とかもよく来るなんて」
「ええ、大変です。お客様のような若い女性様がお客を装って来ることが多いですね。リフレクソロジーに興味があるように見せかけて、最終的にはウォーターサーバーなりコーヒーメーカーなりを押し売りしてきます」
「装って来るって……計算高いですね」
「向こうも仕事ですからね。でも、立派なお客様で良かった。あ、今お店開けますね。どうぞ中へお入りください」
ちょっと話したら、すぐ帰るつもりだったのに。何故かリフレクソロジーサロンの中に案内されている。
「すごい……いい香りですね」
外観はレンガ造りなのに、店内の壁や床は木でできている。改装したばかりなのか、古さはまったく感じられなかった。むしろ新しい木材の香りもほのかに感じる。しかし、店内のほとんどの香りを、柑橘系の爽やかな匂いで満たしていた。
「アロマディフューザーで香りを出しています。本日は気分的に、レモングラスの香りをチョイスいたしました」
「あ、アロマの香りでしたか。すごく落ち着きますね」
「それは良かったです。では中へどうぞ。リクライニングチェアがあるので、そちらにお掛けください」
「え? 中へと言われましても……」
「せっかくなので、施術を受けていってください。大丈夫です、サービスしますので」
受付の奥の薄暗い空間。何だか怪しい方へ進むことを促された。しかもサービスとは。疑いの目をかけずにはいられない。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
どうして隣の家で僕の妻が喘いでいるんですか?
ヘロディア
恋愛
壁が薄いマンションに住んでいる主人公と妻。彼らは新婚で、ヤりたいこともできない状態にあった。
しかし、隣の家から喘ぎ声が聞こえてきて、自分たちが我慢せずともよいのではと思い始め、実行に移そうとする。
しかし、何故か隣の家からは妻の喘ぎ声が聞こえてきて…
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる