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最終話 相武ミオの春

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「あの……お客様ですか」
「え?」
 声の方に振り返ると、私よりも少し年上らしき男の人が立っていた。黒髪のサラサラヘアーが風によって靡いている。人気の声優さんみたいな塩顔のイケメン。今テレビで人気を得ている俳優さんにも似ている。どうやら、このお店の人みたいだ。
「すいません、綺麗なお店だったので、つい覗いてしまいました」
「いえいえ、お客様でしたらありがたい限りです。最近飛び込み営業の人がよく来られるので……セールスとかじゃなくて良かったです」
 とはいっても、私はお客ではないのだけど。たまたま近くを通って、特異なお店の雰囲気に惹かれただけだ。
「大変ですね。勧誘とかもよく来るなんて」
「ええ、大変です。お客様のような若い女性様がお客を装って来ることが多いですね。リフレクソロジーに興味があるように見せかけて、最終的にはウォーターサーバーなりコーヒーメーカーなりを押し売りしてきます」
「装って来るって……計算高いですね」
「向こうも仕事ですからね。でも、立派なお客様で良かった。あ、今お店開けますね。どうぞ中へお入りください」
 ちょっと話したら、すぐ帰るつもりだったのに。何故かリフレクソロジーサロンの中に案内されている。
「すごい……いい香りですね」
 外観はレンガ造りなのに、店内の壁や床は木でできている。改装したばかりなのか、古さはまったく感じられなかった。むしろ新しい木材の香りもほのかに感じる。しかし、店内のほとんどの香りを、柑橘系の爽やかな匂いで満たしていた。
「アロマディフューザーで香りを出しています。本日は気分的に、レモングラスの香りをチョイスいたしました」
「あ、アロマの香りでしたか。すごく落ち着きますね」
「それは良かったです。では中へどうぞ。リクライニングチェアがあるので、そちらにお掛けください」
「え? 中へと言われましても……」
「せっかくなので、施術を受けていってください。大丈夫です、サービスしますので」
 受付の奥の薄暗い空間。何だか怪しい方へ進むことを促された。しかもサービスとは。疑いの目をかけずにはいられない。
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