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第一話 臼井スミレの夏
⑯
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気がついたら、若干涙目になっている自分がいた。可愛がっていた後輩に裏切られたのが、相当ショックだったから。
たとえ悪ふざけだったとしても、許されることではない。取り乱している私の顔を、弘中君は目を丸くさせながら見ている。
「何その表情? どうして弘中君が困った顔しているの?」
「……あの夜のこと、臼井先輩忘れちゃいました?」
「え、あの夜って?」
頭の中がグルグル回る。弘中君は悲しそうな目をしながら、あの夜の説明をし始めた。その反応によって、目の潤いがサッパリと引いていった。
「臼井先輩、あの飲み会の後、僕たちはホテルに行きました」
「……嘘でしょ?」
「本当です。先輩、相当酔っていたみたいでしたし、僕が介抱しないといけないと思って」
「ど、どうしてそんな流れになったのよ?」
声が震える。私が弘中君とホテルに? 彼女がいる弘中君とそんなことがあったら、この会社にはいられなくなる。しかもタチが悪いのが、私自体が覚えていないということだ。
もし酔った勢いで弘中君と寝てしまったとしたら、そりゃ責められて当然のことになるから。
「駅までの道中で、臼井先輩気持ち悪くなっちゃって。とりあえずってことで、通りかかったホテルに入りました」
「弘中君が連れてってくれたのね?」
「はい、その通りです。でも……」
「で、でも?」
「そういう流れになったのは、臼井先輩からですよ」
ま、まさか? 激しく動揺する私。とりあえず、一旦冷静にならないと、この後感情的になってしまいそうだ。ドリンクホルダーにある緑茶を飲んで、心を落ち着かせた。
本当に私が、弘中君をベッドに誘ったのか。
「え、えーと、私が弘中君を誘ったのね?」
「そうです」
「い、いや、どうして弘中君は抵抗しなかったの?」
「だって、僕だって男ですし……その時は臼井先輩のこと、愛おしいって思ったので」
たとえ悪ふざけだったとしても、許されることではない。取り乱している私の顔を、弘中君は目を丸くさせながら見ている。
「何その表情? どうして弘中君が困った顔しているの?」
「……あの夜のこと、臼井先輩忘れちゃいました?」
「え、あの夜って?」
頭の中がグルグル回る。弘中君は悲しそうな目をしながら、あの夜の説明をし始めた。その反応によって、目の潤いがサッパリと引いていった。
「臼井先輩、あの飲み会の後、僕たちはホテルに行きました」
「……嘘でしょ?」
「本当です。先輩、相当酔っていたみたいでしたし、僕が介抱しないといけないと思って」
「ど、どうしてそんな流れになったのよ?」
声が震える。私が弘中君とホテルに? 彼女がいる弘中君とそんなことがあったら、この会社にはいられなくなる。しかもタチが悪いのが、私自体が覚えていないということだ。
もし酔った勢いで弘中君と寝てしまったとしたら、そりゃ責められて当然のことになるから。
「駅までの道中で、臼井先輩気持ち悪くなっちゃって。とりあえずってことで、通りかかったホテルに入りました」
「弘中君が連れてってくれたのね?」
「はい、その通りです。でも……」
「で、でも?」
「そういう流れになったのは、臼井先輩からですよ」
ま、まさか? 激しく動揺する私。とりあえず、一旦冷静にならないと、この後感情的になってしまいそうだ。ドリンクホルダーにある緑茶を飲んで、心を落ち着かせた。
本当に私が、弘中君をベッドに誘ったのか。
「え、えーと、私が弘中君を誘ったのね?」
「そうです」
「い、いや、どうして弘中君は抵抗しなかったの?」
「だって、僕だって男ですし……その時は臼井先輩のこと、愛おしいって思ったので」
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