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第一話 臼井スミレの夏
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先日母が亡くなった。遺品整理の際、母の財布の中から出てきた謎のサロンの回数券に、私は目を奪われたのだ。母は決して、自分に投資をするような人間ではなかったから。すぐにインターネットでリフレクソロジーを検索した。
よくテレビで見るような、罰ゲーム的な足ツボマッサージとはまた違う。英国式のリラクシングな施術……私の知らないところで、母は癒しを求めていた。
思えば、母のことなんて僅かばかりも考えたくはなかった。そもそも考えないようにしていた。母のせいで私は過酷な生活を強いられたし、恩義なんて一切感じたことはない。
仕事ばかりの人生で、私のことなんて一ミリも想ってくれなかった母のことなんて、考えたくなかったけど、この回数券だけは不思議と興味が持てた。
私でも利用しないようなリフレクソロジーサロンに、どうして通い始めたのか。ちょっとだけそれが知りたくなって、柄にもなく母の人生を辿ってみたのだ。
「スミレ様も、色々思うことがあるみたいですね」
「え?」
「顔に書いてありますよ。お母様に、恨みがあると」
「……母から、何か聞いていますか?」
元井さんはきっと、母から私の話を聞いている。元井さんの話し方で、何となくそれが伝わった。
元井さんは私の問いに答えることなく、一つだけ咳払いをした。少し間を明けた後、一言だけ小さい声で返してくれる。
「詳しい話は、施術をしながらにいたしましょう」
剥き出しになっていた素足には、いつの間にかタオルが巻かれていた。どうやら施術開始の準備が整ったようだ。
確かに、会話をしながらサービスを受けた方が、逆にリラックスできるかもしれない。納得したようにお願いしますと告げると、巻いたタオルをすぐに剝いでくれた。またすぐに、両足が露になる。
「まずはウエットティッシュで両足を拭いていきますね。少しヒヤッとしますよ」
足の甲、足の裏、指の間。順番に手際よく足全体を拭いていく。元井さんは拭きながらも私の足を観察しているみたいだった。早速、目視で得た情報を確認してくる。
「スミレ様、こちらは触っても大丈夫ですか?」
よくテレビで見るような、罰ゲーム的な足ツボマッサージとはまた違う。英国式のリラクシングな施術……私の知らないところで、母は癒しを求めていた。
思えば、母のことなんて僅かばかりも考えたくはなかった。そもそも考えないようにしていた。母のせいで私は過酷な生活を強いられたし、恩義なんて一切感じたことはない。
仕事ばかりの人生で、私のことなんて一ミリも想ってくれなかった母のことなんて、考えたくなかったけど、この回数券だけは不思議と興味が持てた。
私でも利用しないようなリフレクソロジーサロンに、どうして通い始めたのか。ちょっとだけそれが知りたくなって、柄にもなく母の人生を辿ってみたのだ。
「スミレ様も、色々思うことがあるみたいですね」
「え?」
「顔に書いてありますよ。お母様に、恨みがあると」
「……母から、何か聞いていますか?」
元井さんはきっと、母から私の話を聞いている。元井さんの話し方で、何となくそれが伝わった。
元井さんは私の問いに答えることなく、一つだけ咳払いをした。少し間を明けた後、一言だけ小さい声で返してくれる。
「詳しい話は、施術をしながらにいたしましょう」
剥き出しになっていた素足には、いつの間にかタオルが巻かれていた。どうやら施術開始の準備が整ったようだ。
確かに、会話をしながらサービスを受けた方が、逆にリラックスできるかもしれない。納得したようにお願いしますと告げると、巻いたタオルをすぐに剝いでくれた。またすぐに、両足が露になる。
「まずはウエットティッシュで両足を拭いていきますね。少しヒヤッとしますよ」
足の甲、足の裏、指の間。順番に手際よく足全体を拭いていく。元井さんは拭きながらも私の足を観察しているみたいだった。早速、目視で得た情報を確認してくる。
「スミレ様、こちらは触っても大丈夫ですか?」
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