41 / 112
意識してしまう
12
しおりを挟む
本屋を出た後、駅の近くにあるショッピングモールに僕達は来ていた。普段あまり人混みの多い場所で買い物をしない僕と、こういう場所に望んで来る事がなかった様子の彼は少し興奮していた。
「人多くて避けていたけど此処のモール色々あるんだね。服とか何か買ったりしようかな」
そう言って歩き出そうとすると「待って」と不意に肩に手を置く晴也。
振り返ると、右手にスッと自分の手を絡めて繋いでくる。「はぐれるからね」と繋いだ手を掲げて見せた後、特に気にしない様子で前を向き直る。対して僕はぷるぷると顔を真っ赤にして震えていた。
(な、何それ。ていうか、手....繋いだの初めてなんだけど)
あまりにもさらっと繋がれたから一瞬何が起きたのか分からなかった。
「......」
繋がれた自分の手をジッと見つめる。
手がただ触れているだけなのに。
あったかい。
....あったかいのはこいつの手の体温が高いから?
それだけじゃない気がする。
同じ男なのに自分より一回り大きな手。
ゴツゴツし過ぎず、男らしさを残した角ばった綺麗な指。
すべすべで気持ち良い──とは絶対に言わないでおこう。
「祐樹の手、繋いだの初めて」
思考を読まれたのかと思い「へぁっ」なんて変な声が出てしまう。ハッとして「た、確かにそうだね」と冷静さを必死に取り繕う。バレていませんように...なんて内心思いながら程よく手の力を抜く。何でただ触れているだけなのにこんなに手汗が...タイミングを見計らって解こうとした矢先──
「....柔らかくて色白で、いい匂い」
すん、と軽く手の甲の匂いを嗅ぐ晴也。
びっくりして何も言えずに真っ赤になり硬直する。
ショッピングモールのど真ん中でイケメンが男の手の甲にキスする勢いで顔を近付けている光景を目の当たりにした周辺の客達は黄色い声を上げながら僕達を観察していた。
注目を浴びてしまった僕達。慌てて彼の腕を引っ張り、その場から足早に立ち去り、取り巻きがいなくなった所で「ばか!」と軽く背中を叩く。
「人多くて避けていたけど此処のモール色々あるんだね。服とか何か買ったりしようかな」
そう言って歩き出そうとすると「待って」と不意に肩に手を置く晴也。
振り返ると、右手にスッと自分の手を絡めて繋いでくる。「はぐれるからね」と繋いだ手を掲げて見せた後、特に気にしない様子で前を向き直る。対して僕はぷるぷると顔を真っ赤にして震えていた。
(な、何それ。ていうか、手....繋いだの初めてなんだけど)
あまりにもさらっと繋がれたから一瞬何が起きたのか分からなかった。
「......」
繋がれた自分の手をジッと見つめる。
手がただ触れているだけなのに。
あったかい。
....あったかいのはこいつの手の体温が高いから?
それだけじゃない気がする。
同じ男なのに自分より一回り大きな手。
ゴツゴツし過ぎず、男らしさを残した角ばった綺麗な指。
すべすべで気持ち良い──とは絶対に言わないでおこう。
「祐樹の手、繋いだの初めて」
思考を読まれたのかと思い「へぁっ」なんて変な声が出てしまう。ハッとして「た、確かにそうだね」と冷静さを必死に取り繕う。バレていませんように...なんて内心思いながら程よく手の力を抜く。何でただ触れているだけなのにこんなに手汗が...タイミングを見計らって解こうとした矢先──
「....柔らかくて色白で、いい匂い」
すん、と軽く手の甲の匂いを嗅ぐ晴也。
びっくりして何も言えずに真っ赤になり硬直する。
ショッピングモールのど真ん中でイケメンが男の手の甲にキスする勢いで顔を近付けている光景を目の当たりにした周辺の客達は黄色い声を上げながら僕達を観察していた。
注目を浴びてしまった僕達。慌てて彼の腕を引っ張り、その場から足早に立ち去り、取り巻きがいなくなった所で「ばか!」と軽く背中を叩く。
201
お気に入りに追加
592
あなたにおすすめの小説
花婿候補は冴えないαでした
一
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
俺にとってはあなたが運命でした
ハル
BL
第2次性が浸透し、αを引き付ける発情期があるΩへの差別が医療の発達により緩和され始めた社会
βの少し人付き合いが苦手で友人がいないだけの平凡な大学生、浅野瑞穂
彼は一人暮らしをしていたが、コンビニ生活を母に知られ実家に戻される。
その隣に引っ越してきたαΩ夫夫、嵯峨彰彦と菜桜、αの子供、理人と香菜と出会い、彼らと交流を深める。
それと同時に、彼ら家族が頼りにする彰彦の幼馴染で同僚である遠月晴哉とも親睦を深め、やがて2人は惹かれ合う。
【運命】に捨てられ捨てたΩ
諦念
BL
「拓海さん、ごめんなさい」
秀也は白磁の肌を青く染め、瞼に陰影をつけている。
「お前が決めたことだろう、こっちはそれに従うさ」
秀也の安堵する声を聞きたくなく、逃げるように拓海は音を立ててカップを置いた。
【運命】に翻弄された両親を持ち、【運命】なんて言葉を信じなくなった医大生の拓海。大学で入学式が行われた日、「一目惚れしました」と眉目秀麗、頭脳明晰なインテリ眼鏡風な新入生、秀也に突然告白された。
なんと、彼は有名な大病院の院長の一人息子でαだった。
右往左往ありながらも番を前提に恋人となった二人。卒業後、二人の前に、秀也の幼馴染で元婚約者であるαの女が突然現れて……。
前から拓海を狙っていた先輩は傷ついた拓海を慰め、ここぞとばかりに自分と同居することを提案する。
※オメガバース独自解釈です。合わない人は危険です。
縦読みを推奨します。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
もう一度、誰かを愛せたら
ミヒロ
BL
樹(Ω)涼太(Ω)豊(α)は友人であり、幼馴染みだった。樹は中学時代、豊に恋している事を涼太に打ち明け、応援されていた。
が、高校の受験前、涼太の自宅を訪れた樹は2人の性行為に鉢合わせしてしまう。信頼していた友人の裏切り、失恋による傷はなかなか癒えてはくれず...。
そして中学を卒業した3人はまた新たな出会いや恋をする。
叶わなかった初恋よりもずっと情熱的に、そして甘く切ない恋をする。
※表紙イラスト→ as-AIart- 様 (素敵なイラストありがとうございます!)
頑張って番を見つけるから友達でいさせてね
貴志葵
BL
大学生の優斗は二十歳を迎えてもまだαでもβでもΩでもない「未分化」のままだった。
しかし、ある日突然Ωと診断されてしまう。
ショックを受けつつも、Ωが平穏な生活を送るにはαと番うのが良いという情報を頼りに、優斗は番を探すことにする。
──番、と聞いて真っ先に思い浮かんだのは親友でαの霧矢だが、彼はΩが苦手で、好みのタイプは美人な女性α。うん、俺と真逆のタイプですね。
合コンや街コンなど色々試してみるが、男のΩには悲しいくらいに需要が無かった。しかも、長い間未分化だった優斗はΩ特有の儚げな可憐さもない……。
Ωになってしまった優斗を何かと気にかけてくれる霧矢と今まで通り『普通の友達』で居る為にも「早くαを探さなきゃ」と優斗は焦っていた。
【塩対応だけど受にはお砂糖多めのイケメンα大学生×ロマンチストで純情なそこそこ顔のΩ大学生】
※攻は過去に複数の女性と関係を持っています
※受が攻以外の男性と軽い性的接触をするシーンがあります(本番無し・合意)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる