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七鳴鐘楼モンペルク、月蝕は混沌の影を呼び編
開けてはいけない扉が開く2
しおりを挟むちょっと怖い起動音を立ててディスクを読み込み始めるゲーム機は、数秒の時間を置いてスタート画面を映し出す。
今となってはテレビにコードを繋ぐのも面倒な接続機がいるゲームだが、それでも尾井川にいくつか恵んで貰ったソフトは今でも俺の宝物だった。
「コレは序盤にちょっとえっちなイベント絵があるんだ~」
「レトロな絵柄だな。RPGか?」
「そうそう、俺こういうのなら出来るのよ」
「格闘ゲームやパズルゲームは負け通しのくせにな」
「シベうるさいっ」
俺が弱いんじゃないやい、お前らが遠慮しなさすぎるんだよ。
ゲーセン行って負け通しでジュース驕らされる身にもなって見ろ。ちくしょう。
特に尾井川は遠慮なしだからなぁ……音ゲーとかシューティングとかでも勝ったコトなんてまぐれ勝ちの数回しかないし。何でアイツはあんなにゲームが上手いんだ。
柔道やってるから反射神経とかが凄いのかな。
いや、俺はクーちゃんやシベにも負けてるから関係ないか……。
どうかしたらゲーム慣れしてないヒロにも負けるしな、俺……ははは……。
「あ……そっか、ゲームセンターのゲームと一緒?」
おっ。
ヒロは持ち前の頭の良さでゲーセンのと似たようなのだと気付いたようだな。
いつの間にか俺のすぐ背後に遠慮がちに座るヒロに肯定を返すと、相手はえへへと素直に照れる。だけど、テレビゲームのことは未だによく解ってないみたいなので、おっかなびっくりしてるみたいだった。
「そうそう、そういう感じ。でもコレはアールピージーって言って、えーと……お芝居の主人公を自分で動かして行動させられるゲームなんだ」
「へ、へぇっ、そんなのあるんだ……!」
うまく説明できたようで、肩越しに振り返ったヒロは少し期待したように目を輝かせている。ふふふ、ヒロも昔っから物語とか大好きだもんな。
尾井川はこういうゲームあんまりやんないから、ヒロならクラフトゲーとかも一緒にやってくれるかも。今度教えてみようかな?
「おい、オープニング始まったけど飛ばすのか?」
「あっ待って待って、これアニメあるんだよ。凄く良いから見て!」
テレビの前に座り込んだ俺のすぐ横には、いつの間にかシベが座っている。
せっかちなのかコントローラーのスタートボタンを押そうとしていたが、そうはいかん。このゲームはオープニングがアニメなのだ。しかも可愛い女の子がいっぱい出てくる。ヒロに盛り上がって貰うためにもキチンと見て貰わないとな!
とか思ってると、シベは盛大に溜息を吐いた。
な、なんだよ。お前もわりとこういうの好きなの俺は知ってるんだからな。
まったくこのムッツリスケベめ……とか思いつつ、ヒロに軽く登場人物を説明して、俺はゲームをスタートさせた。幾つかセーブデータはあるんだけど、序盤のイベントは新たにスタートした方が早いからな。
「なんだお前デフォルト名か。てっきり童貞スケベ猿丸出しで自分の名前つけるのが定番になってるかと思ったのに」
「うるへえ! もうこのトシでそんな事するかよ!」
正直、昔はちょっとやった事があるが、空しくなってやめた。
……とは言えず、俺は二人が見ている前でゲームを進めていく。
途中、戦闘なんかをヒロにやらせてゲームに慣らしたりして、案外ワイワイ言いながら楽しくゲームをしていると……ついに、お待ちかねの場面がやって来た。
それは、主人公の幼馴染である黒髪のヒロインが敵にさらわれて、主人公が探し求める秘宝の手掛かりを吐けと脅されている場面だ。当然、牢屋みたいな暗い場所にいて、周囲にはドット絵の怪しい器具が散らばっている。
……ネットで色々拝見してしまった今見ると、ぜーんぶどんな道具か分かるな。
製作者は全年齢のゲームで一体ナニを考えてんだって感じもするな……よくこれが審査に通って出せたと思うよ……。
今更ながらに大人はきたない……とか思っていると、シベが眼鏡を光らせて、軽く身を乗り出してきた。
「むっ、牢屋で拷問シチュか。……ありきたりだがまあ子供ならコレで充分だろうな」
「とか言って~。シベこの絵柄気に入ってんだろ、こういうの絶対好きなくせに」
「うっ、うるさいな! 良いから早く進めろっ」
慌てているところを見ると図星だな。
ふふふ、昔の絵ってちょっとロリな感じのが多いもんな。二次元限定で貧乳ロリには目が無いシベなら、このゲームのキャラデザに引っかかると思ってたよ。
俺の審美眼も捨てたもんじゃないな、と思いつつ、俺はイベントを進めた。
と――――敵のイケメンキャラの詰問が激しくなり、業を煮やした敵キャラの手で、ついにイベント絵が表示される。
「……あ? 全然エロくないんだが?」
シベがキレ気味に言う。
それもそのはず、イベント絵として画面に表示されたものは、服をボロボロにされ涙を浮かべながらこちらを見ているヒロイン……ただし、肝心な部分やタイツ的な物は一切破れてない健全極まる絵……だったのだから。
内心期待していたらしいシベは、かなりご立腹なのだろう。
所詮はコイツも俺達と同じオタクなのだ、その怒りはごもっともである。しかし、俺が興奮したのはコレではないのだ。
「まあ待てシベ、キレるんじゃない。……実はな、このイベント絵には“とある仕掛け”があって……ここ! ここで文章送りしないまま隠しコマンドを入れると……!」
尾井川に教えて貰った隠しコマンドを昔の記憶と寸分違わず入力する。
そうすると――!
なんと画面が一瞬フラッシュして揺れたと思った瞬間、ヒロインの服やタイツが効果音を立ててビリビリに破れ、もう少しであられもない姿を曝すハメになる恥ずかしげな姿になったではないか!
この変貌に腰を浮かせて俺の肩を掴んだのは、やはりシベだった。
「グッ!」と喉を締めるような声を出したが、どうもシベはこのゲームのちょっとロリ系のキャラデザが突き刺さったらしい。
こんなに興奮したシベは久しぶりに見たな。コイツ、ムッツリなのかあんまり人前で興奮しないからなぁ。
でも、俺の好きなゲームが友達の嗜好に刺さったのは素直に嬉しい。ヒロはどうだろうかと反対側を振り返る。と。
「ひ、ヒロ?」
そこには、画面ではなく俺を凝視しているヒロがいて……いやお前どうした。
なんか瞳孔開いてるけど、そんなに驚いちゃったのか?
でも息は荒いから、興奮はしてる……んだろうか……これはどういう顔なのかよく解らんぞ。一瞬メンチ切られてるかと思ったじゃないか。
あっ、けど画面はチラチラと見てるっぽいな。
あまりに刺激が強すぎて、普段見ている俺の顔を挟むことで精神の安定を図ろうとしているのだろうか。お前はもしやそれほどエロ耐性がないのかヒロ。
心配になって、俺はもう一度ヒロの名前を呼んだ。
「ヒロ、おい……どした……?」
「っ……! あっ、ぅ、い、ぃあっ、あのっ、つ、つーちゃんあの、と、と、トイレどこ?!」
「え? それなら玄関のとこの廊下のドアだけど……」
「か、借りますっ!!」
慌てて立ち上がったかと思えば、ヒロは素早く部屋を出て行ってしまった。
な、なんだかよく分からないが……これはどういうことだ。
…………いや、待てよ。
そういえば、俺に問いかけられて目を見開いた時のヒロ、めちゃくちゃ顔が赤かったような気がしないでもないな。とすると……。
ははーん、さては初めてのお色気に勃起したな?
でもあのくらいで慌てちまうなんて、ヒロってば本当に免疫ないんだなぁ……。
まあ、ヒロのお母さんって超色っぽいけど純粋なお嬢様って感じだったし、お金持ちの家ってのは何となくわかるから……ヒロは、今まで修行僧レベルの色欲と無縁な暮らしをしていたのかも知れない。
だから、これしきのお色気でも我慢が出来なかったんだろう。
でも自分の家のトイレで友達がシコってると思うのヤだな。いや俺が見せたんだし、仕方ないんだけど……いや待てシコったと思うのは早いな。
ヒロの事だから、恥ずかしくて飛び出しちゃっただけかも。気が弱くて、俺相手ですらすぐ顔が赤くなっちゃうからなぁ……。
「…………潜祇、一つ聞きたいんだが」
「え? なに?」
画面を留めたままで、俺はシベに呼ばれて振り返る。
てっきりシベは今でも画面を見ているのだと思っていたが、すぐ横にいる相手は、真剣な……いや、ちょっと怪訝そうな顔をして俺を見つめていた。
な、なんですかその顔は。
まさかお前も勃起したのかよと思いながら眉根を寄せると、シベはジッと俺を見て――それからチラリと画面を見ると、じんわり苦い顔になった。
「アイツ……昔からあんな感じなのか?」
「昔からって……そうだけど……?」
「性格も? お前に対する態度もか?」
「え、えぇ……? まあ……昔と一緒だと思うけど……」
そう言われると少し揺らいでしまうが、ヒロは昔からあんな感じだ。
昔から引っ込み思案で、すぐ泣いちゃうくらい気が弱くて。だからずっと俺の後ろに居たり、引っ付いて来たりしたんだよな。でも、誰より優しかったんだ。
今だってそれは変わらないし、少なくとも俺はそう思っている。
まあ、昔より図体がデカくなってしまったし、高校で再会する前の事は何も知らないんだが……でも、俺の前ではずっと同じだ。
思い出話をすると眉を下げて照れたように笑うヒロは、子供の頃のままだった。
……でも、その……昔みたいに抱き着いて来るのはちょっと困るんだけども。だってもう俺達高校生だし、体格も随分変わっちまったしさ。けど、ヒロが俺に甘えてくるのは、ヒロの家庭環境とか考えると仕方ないと思うし……。
だから、全部変わらないと言えば嘘になるけど、性格は大きく変わって無い。
そんな感じの説明をすると、シベはますます苦虫を噛み潰したような顔をして自分の髪の毛をワサワサと掻き回した。
「ハァ……潜祇、お前……アイツとの付き合いマジで考えた方が良いぞ」
「な、なんで?」
どうしてそんな事を急に言い出すんだと目を丸くするが、シベは不機嫌そうな表情を浮かべたままで俺を見つめている。
……さっきまで、画面の中のヒロインに釘付けだったのに。
そんな相手の態度が何故か俺を緊張させて、思わず言葉が喉に詰まる。
さっきまで、あんなに興奮してたのに。なんでそんな顔で見つめてくるんだよ。
ヒロとの付き合いを考えた方が良いって、どういうことだ。
もう何から言葉を返せばいいか分からなくて戸惑っていると、そんな俺にシベは更によく解らない事を言ってきた。
「アイツは、お前が思ってるほど弱々しいヤツじゃない」
「…………うん……? ま、まあ、ヒロはデカいし、いざってなると腕力もある奴ってのは俺も分かってるけど……」
ヤカラな先輩達から俺を助けてくれたのは、他でもないヒロだもんな。
確かに普段はあんな感じだけど、ヒロだっていざって時は男らしくなるのだ。そんな事は俺も分かっていると言い返したのだが、シベは何故か深い溜息を吐いた。
「そうだけどそうじゃない……! あのな潜祇、その……アイツ、同性にしては異常に近いだろ、距離が……!」
距離。
確かにヒロは距離が近いし、俺もブラックやヒロでなければ「やめろ!」と言いたいレベルだが、しかしそれもヒロの気弱さと繊細さゆえだ。
それに……昔の事もあるし……。
「確かにめちゃくちゃ密着してくるけど、ヒロは昔からああなんだよ。……ちょっと色々あってさ、俺のことライナスの毛布みたいに思ってんの。でも、流石にもう俺達大人になるし……尾井川やシベやクーちゃんと仲良くなって、俺離れが出来るようになって欲しいなっては思ってるけど」
そう言うと、シベは意外そうな顔をしたが、何故か安堵したように息を吐いた。
なんじゃい。どうしてお前にホッとされなきゃならんのだ。
「何でお前がホッとしてんだよ」
「ああ、いや……。ともかく、今後は出来るだけ気を付けろよ。何かあったら俺が助けになるから、絶対に一人で解決しようとするんじゃないぞ。いいな」
「どうしてそんな……あっ。じゃあ、早速聞いて貰って良い?」
この流れならキュウマの事を頼めるかもしれない。絶好のチャンスだ。
そう思って咄嗟に切り出すと、シベはギョッと顔を歪めた。
「な、なんだ。まさかアイツのことで……」
「いや実はさ……ちょっと調べて欲しい人がいるんだ。イオウジ キュウマって人で、多分……俺より前に行方不明になってるはずの人なんだけど……」
そう言うと、シベの顔つきが変わる。
最初は俺の口から知らない人の名前が出て怪訝そうな顔をしていたんだけど、俺より前の“行方不明者”という所に、ただならぬことを見出したらしい。
シベのそういう察しの良さは本当に助かる。
「イオウジ キュウマ……調べるのは可能だが、どうしてソイツを?」
「あ……えっと……ご両親や兄弟が居るのか知りたいんだ。もし見つかったんなら、その……話したいことが有って……」
さすがに「異世界で神様をやってるキュウマのために、両親を探して手紙だけでも渡してあげたい」なんて事は言えない。
それに、こっちの世界じゃ行方不明のままだけど、まだキュウマが帰って来られないと決まったわけじゃないからな。
とにかく、ご両親が存命かだけでも確認したかった。
しかし、事情を詳しく話せない状態で、こんなことを頼めるだろうか。
少し不安に思いながらシベを見つめると――――相手は、さっきの態度とは打って変わって、少し微笑みながら力強く頷いてくれた。
「……分かった。お前が調べて欲しいと言うなら、洗いざらい調べてやる」
「ほ、ホント?! ……その……ありがと、シベ」
くそう、ダチに素直にありがとうなんていうのも気恥ずかしいな。
でも感謝の気持ちは伝えなければ思い、我ながら少々気持ち悪い照れ方をしつつ礼を言うと、シベも少し照れて頬を掻いた。
「あ……ああ、まあ……お前には、色々と借りがあるからな……」
目を逸らしつつシベは言うが、俺はシベに何か貸しただろうか。
むしろ俺の方が色々と助けて貰ってばかりなんだけど……今までの援助でもまだ足りない借りって何だろう。俺そんな壮大な事した覚えがないんだが。
まずい、なんだか段々怖くなってきた。
シベ……お前まさか、友達の俺をマグロ漁船に乗せたりしないよな……?
「なんだよ、何で青ざめるんだお前は。あ゛?」
「あっ、あはは~……おっと、もうお茶がないなあ! あっそうだジュース、ジュースでも飲もうぜシベ! ペプシあるんだよ」
「お前……っていうかそこはコカの方じゃねえのかよ」
「いーじゃんペプシ美味いだろ。じゃあ持ってくるな~!」
話の腰が折れたのを確信して俺は立ち上がり、シベが何かを言う前にさっさと部屋を出てしまった。はぁはぁ、アイツってば本当短気だから困っちゃうぜ。
でも……キュウマの事を調べてくれるのは本当にありがたい。
世話になってばかりなのは、申し訳ないけど……こればっかりは俺一人の力では詳しく探せない事だろうからな。
……シベには、後で何か菓子折りでも持っていくべきかもしれない。
しかし金持ちのシベが喜んでくれる菓子折りなんてあるんだろうか……。
そこが悩ましいなと思いつつ、俺はリビングを突っ切るとキッチンで三人分のコーラを調達すべく冷蔵庫を開けようとした。
――――と、玄関側の廊下の方からガチャリとドアを開ける音が聞こえてくる。
これは玄関ドアではなくて、トイレのドアだな。
ヒロがようやく落ち着いたのだろうか。そんな事を思っていると、足音と共にこちらの部屋のドアを開いて、のっそりと大柄な体が入ってきた。
「つ……つーちゃん……」
入ってすぐ、俺に気が付いたのか、ヒロがこちらへ近付いてくる。
しかし人様の家のキッチンに入るのは躊躇いがあるのか、入口で止まって俺の方をジッと見つめてきた。許可を欲しがっている目付きだ。
まるで叱られた子犬みたいに困っているヒロの姿に俺は苦笑して、おいでと手招きしてやった。すると、ヒロはすぐに明るい表情になってキッチンに入ってくる。
そうして、俺の背後に立つと手元を覗き込んできた。
「なにしてるの?」
「ん? コーラ飲もうと思ってさ。お前も飲むだろ?」
「う、うん。コーラ……つーちゃん、ペプシ好きだったよね……」
「あはは、そうそう。よく覚えてるよなあヒロは」
昔っからそうだから、印象深かったのかな。
そういえば、婆ちゃんの田舎にいるダチともコーラで言い合いしてたもんな。
まあ譲れない争いをしてたのは俺ともう一人だけで、大半は「どっちでもいい」って呆れてたけど……ヒロは、婆ちゃんの家でいつも俺と一緒に飲んでたっけ。
……なんか、あの頃と比べると本当におっきくなっちゃったなあ、ヒロ。
四五年会って無かったせいで、数か月前に再会した時は信じられなかったよ。
まあ、中身はあの頃と同じヒロだったからホッとしたけどさ。
「……つーちゃん、どうしたの? ボクのことジッと見て……」
「いやあ、おっきくなったなーって思って。でも、中身はあの頃と全然変わってないし、今日だって初めてのお色気にノックアウトされてたけど」
苦笑交じりでクスクスと笑うと、ヒロは恥ずかしかったのか顔を赤らめて「も、もうっ、つーちゃん!」と少し強めの口調で怒ってくる。
だけど、全然怖くない。話すのに手が止まってしまった俺を見て、ヒロは赤ら顔で眉を困ったように下げつつ……背後から、ぎゅっと抱きしめてきた。
「おいおいヒロ、どうしたんだよ」
今日は何も悲しい事なんて無かっただろうが、と俺の首回りに回された腕をポンと叩くが、ヒロは構わずに俺を自分の方へ引き寄せようとして来る。
どうやらこれは甘えているらしい。
「つーちゃん……」
…………うーん、今さっきシベにヒロの自立を語ったばかりなのだが、こんなことをしてて良いんだろうか。
でもなあ、拒絶したってヒロを傷付けるだけだし……それに、何か不安に思って俺に安心を求めたのかもしれないし……。
……仕方ない。このまま話を聞いてやるか。
そう思い、俺はヒロの意外に太い腕を宥めるようにポンポンと軽く叩きながら、相手が何を思っているのかを聞き出そうと優しい声で問いかけた。
「んー? なんか不安になった事でもあったのか?」
話してみ、と軽い口調で言うと、ヒロは俺の頭に顔を埋めて数秒ほど黙っていたが、落ち着いたのかようやくボソリと呟いた。
「つ……つーちゃんは……ああいうの、見て……その……お……おっ……オナニー、とか……す、す、する、の……?」
吃音癖で途切れ途切れになった言葉。
一瞬、何を問いかけられているのか理解できなかったが、それは俺が単にヒロの質問に付いて行けなかっただけだった。
――――俺が、アレみたいなのをみてオナニーするのか。だって?
…………だいぶん直球の質問過ぎないか。いや、これはピュアゆえの素朴な質問と言うところなのだろう。俺達の下世話な会話で知っていても、実際に自分がそういう興奮を抱いたら不安になったのかも知れない。
とはいえ、ダチにオナニーするのか聞くのはヒロくらいな気がするな。
普通なら誰だって小さい頃に何かしらの理由でチンコ弄るもんだろうし……。
まあでも、ヒロはお坊ちゃんだし家庭の事情もあるからな。
正しい保健体育を受けていても分からなくなることってのは色々あるのだ。
ならば俺が教師となって、ヒロが初めて女の子と付き合う時に苦労しないように色々な事を伝授してやらねばなるまい。
大事な友達の為だ。
そう思って、俺はコクリと頷いた。
「ああ。……つっても、今はあのゲームより際どいモンで抜いてるけどな」
その答えに、背後にある相手の口がヒュッと息を吸ったが――それがどんな意味を持つのか、俺には想像もつかなかった。
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