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麗憶高原イデラゴエリ、賢者が遺すは虚像の糸編
20.知らぬが仏は後の修羅
しおりを挟む「さてと……お尻が痺れちゃったんだって? ツカサ君たらホントどこもかしこもぷにぷにで筋肉が無いんだねえ。ま、その方が抱き心地がいいんだけど……」
「おい蹴りまわすぞコラ」
「またそんな挑発して……こんないやら……おっと。こんな格好してるのに、生意気なこと言っちゃってえ」
今「いやらしい」って言おうとしたな!?
コンチクショウ、やっぱりお前何かする気だな、スケベなことする気だな!?
それなら俺も断固として拒否するぞ。
ロクが真横に居るのに、なんつうことをしようとしてるんだお前は。
絶対に抗ってやる、と思っていたのだが――そんな俺の鼻息荒い決意を見取ったのか、ブラックはニヤついた声を漏らしつつ太腿の裏をグッと掴んでくる。
「ひあっ!?」
「そんなコト言うなら、お尻ツンツンってつついちゃおっかな~? そしたらツカサ君、お尻痺れてるから大変な事になっちゃうよ~? ロクショウ君に気付かれるかも」
「ぐっ……ひ、卑怯な……!!」
「だから大人しくしてようねっ。まずは足からゆっくりほぐしてあげるから」
語尾にスケベオヤジ的なハートマークが散っている気配がしたが、俯せの状態では後ろを向くのもキツい。なにより、ヘソから下が宙ぶらりんで足を開かされたままなのだ。ブラックが俺の股の間に座っている以上、俺はどうすることもできない。
逃げようにもこの姿勢じゃすぐ捕まっちまうし、暴れたらロクが起きてしまう。
く、くそう……結局俺はブラックのなすがままになるしかないのか。
「ううう……」
「さ~て、まずは患部の周りをほぐそうか。直球で触っちゃったら、ツカサ君のお尻もびっくりしちゃうからね!」
「なにがびっく……っ、ぃ……っ」
ブラックの両手が、俺の太腿をゆっくり揉み始める。
裏腿を親指で回すようにしながら動かしつつ、他の指で左右の足の側面をじっくり指で押す。じりじりと尻に痺れが残っているからちょっと気になるけど、これは……意外と、普通のマッサージみたいでイヤじゃないかも……。
「ほら、今までずっと座りっぱなしだったから気持ちいいでしょ」
「う……うん……」
「ね? 僕に任せて良かったでしょ。痺れた所を無理に触って早く治すのも一つの手だけど、こうやって血の巡りをよくさせたら問題は無いんだよ」
「そうなの? じゃあコレってホントに普通の治療なのか……」
ブラックに言われて気が付いたが、確かにマッサージされると足が温かくなってきたような気がする。心なしか尻の痺れも和らいできたような、そうでもないような。
何にせよ、血行を良くするってのはいいことなのかな?
プラシーボ効果のような気もするけど、とりあえずブラックのマッサージは今のところイヤらしい感じではないので、素直に肯定しておく。
すると、ブラックはエッヘンと自慢げな声を投げかけてきた。
「だから言ったじゃない、僕はこういうのでウソつかないよ!」
「ついてるだろ頻繁に! ったくもう、だから信用できないってのに……」
「まあまあ、でも今度は本当だったでしょ? だから安心して任せてよ。ほらほら、力を抜いて……その方が解れやすいからさ」
「う……うん……」
なんとも疑わしかったが、しかし今回に限っては真面目に揉んでくれるようだ。
この格好は恥ずかしかったけど、そういうことなら我慢しようと思い、俺は黙って手の動くままに任せることにした。……不安が無いでもなかったが、今ここで俺がギャーギャー騒いでも、ブラックを煽るだけだしな。
そんな風に考えて大人しくなった俺に、ブラックは軽く忍び笑いを漏らすと、太腿の裏側を揉む親指を内腿へと移動させ始めた。
う、うう……太腿の裏も人に触られるとぞわぞわするけど、内腿も何度触られたって慣れない……。だってそんなところ、他人が触るような場所じゃないし……そもそも、覚えてる限りだと……ブラックが触ったのが、初めて、だし……。
……いや、考えるな。考えるんじゃない俺。
そうやって一々考えちゃうから余計に反応しちまうんだろ。
今回はただのマッサージじゃないか。前みたいに変な事にはならないはず……俺が意識せずに平然としていれば、きっと大丈夫なはずだ。
つーかそもそも、普通のマッサージで変に気にする方がダメなんだよ。
いかんいかん、最近何かスケベな触られ方ばっかりされてたから、またエロマンガのような展開になるとばっかり思っちまったよ。
大体、ロクがこんなに近くで寝てるのに、変なコトをするわけがないじゃないか。
そうだよ。大事なのは冷静さだ。
よしんばそういう事になったとしても、今みたいに冷静でクールな態度でいれば、きっとブラックも萎えるはず!
「ふへ……ツカサ君、いいね……そのまま力を抜いて……」
「っ……」
ズボンの上から、内腿を親指で擦られる。
大きな指で敏感な部分を触られるのは、布越しでもやっぱり気になってしまう。
けど、かなりゆっくり……指圧みたいな感じで押して貰っているから、そこまで変に思うような感覚は無い。むしろ、力を抜いた事で尻の痺れよりも内腿への指圧の方が強く感じられるみたいで、痺れが更に和らぐような感じがした。
「気持ちいいでしょ」
「ん……」
変な格好をしている自分を思うと恥ずかしさが湧かないでもなかったが、大股開きだからこそブラックが簡単に足を揉めるのだ。
例え……その……急所が、曝け出されていても、べ、別に……触られたりするワケじゃ、ない……し……。
「いいね……足があったかくなってきたよ。これならもう、痺れを解しても大丈夫じゃないかな? このまま触って良い?」
「え……? う、うん……?」
確かに足の血行がすごく良くなったような気がする。
けど、それと同時に何だか、こ……股間も……ちょっと、熱くて。
ブラックにこんな恥ずかしいポーズをさせられたせいなのか、それとも股間を真正面から見据えられているからなのか、俺のおバカな体は今回もこの熱を“あの感覚”だと勘違いし始めている。
でも今日はヤバい所なんて触られてもいないし、揉まれてるのもまあ、その、際どい所を触られてるけど、変な事はされていない。
俺が気にしすぎているだけなのだ。
だから、どうにか熱をやり過ごそうとするんだけど、この格好で居るとそれすら満足に出来そうにない。これじゃ俺の方がスケベ野郎になっちまうじゃないか。
ち、違うぞ。俺は興奮してるんじゃない。まだ勃起しそうな感覚じゃないし、ちょっと下半身が熱っぽいだけだ。だから……
「だいぶんマシになっただろうけど、ここはじっくり解さないと……ねっ」
「ひやあっ!?」
へっ、変な声でたっ。
いやだバカ、いきなりケツを下から掴んでくるやつがあるか!!
痺れてるって言ったのに何でそんなコトするんだよ。じりじりと残ってる痺れが、一気に上まで伝ってきちまったじゃねえか!
こ、こんなんじゃ解れるどころか……っ、ううっ、そのまま揉むな!
うわっ、ひっ、し、痺れで体が勝手に動くっ、お前このっ、やめろって、痺れてるとこ触られるのキツいんだってばあっ!
「あははっ、ほらほらツカサ君あんまり暴れないでぇ~。うーん、もしかしてまだ揉みが足りなかったかな? ツカサ君がこの格好恥ずかしそうだったから、ちょっと早めにしてみたんだけど……失敗しちゃったね!」
「うぁあっ、ひっ、ひ、ぃ゛っ、も、わかったっ、わっあぐっ、わがっだから゛っ!! ダメ、も、もう揉むのやめてぇっ!」
「でもここまで来たら揉んだ方が痺れもコリも解れるよ? ほら、我慢我慢」
「う゛ぅう゛う゛う゛~~~~ッ!!」
バカバカバカブラックのスケベオヤジ意地悪オタンコナス!!
こんな、い、痛みとは違うイヤな感覚に俺が暴れてるってのに、なんでお前はそうも朗らかに鬼畜な事を言えるんだよ!
チクショウ、お前の足が痺れた時は絶対俺が指でつつき回してやる!
泣いたってやめないんだからな、いや泣いたらさすがにやめるけど……でも、そんくらいまで許してやんないんだからなあ!!
「ほ~らツカサ君、お尻が柔らかくなってきたよ~。まあいつも通りの気持ちいいメス尻だけど。でも、揉み解したから痺れもすぐに取れてきたでしょ?」
「う゛ぃい゛っ、ぃっ、うう゛……っ」
まだ取れきってないやい。
でも、さ、さっきよりは、ちょっとだけ楽になってきたかも……。
しかしこれは本当にブラックのおかげなんだろうか。どう考えても、さっきのふとももマッサージとケツ揉みは痺れの除去に役立ってないんじゃないか?
いや、血行は良くなったけど、それは別の部位だけだし……。
「後々の事を考えてしっかり揉んでおかないとねえ……」
「っ……ぇ……の、のちのち……?」
「んー? こっちの話だよぉ、ふへへ……それにしても……ツカサ君のお尻って本当、ズボンの上からでも柔らかくてたまんないなあっ」
「うぎゃっ!?」
なっ、なんか急に尻に何か乗っかってき……いや、何かじゃないぞこれ。谷間の所の布が変にデコボコして引っ張られてる。それに、なんか、熱い風みたいなものが布越しにケツに……って、まさかこれ、ぶ、ブラックの顔じゃ……。
恐る恐る振り返ってみると……。
「わああ!! ケツに顔を押しつけるなぁああ!!」
「ん~、ふわふわモチモチ……今日はツカサ君のお尻枕で寝たいなぁ~」
「バカなこと言ってんじゃねー!!」
もう耐え切れずに叫んでしまうが、ブラックは構わず俺のケツに顔を摺り寄せてくる。おいやめろ、そこは顔を近づける場所じゃねえんだってば!
頼むから離れてくれ、と、机を今まで以上にガタガタ揺らすが、ブラックは俺の腰をガッチリと掴んでいて逃げ出せない。
「ウキュゥ……?」
あ゛っ。暴れてたらロクが起きちまった。
ブラックこのっ、お前のせいだぞ!?
「ロクが起きてるっ、離せってばもう……!」
「このくらい大丈夫大丈夫、ツカサ君のお尻枕は健全で健康にいいから」
「根拠のない効能を付け加えるなー!!」
ああもう、ロクにこんな格好を見られたくない。
でも……さっきみたいな、変なポーズでマッサージされてるのを見られるよりは……マシ、なんだろうか……。どっちにしろ恥ずかしいんだけど……。
「キュー」
「ううう、ロク、起こしちゃってごめんね……っていうか出来ればこの格好恥ずかしいから見ないで……」
「キュキュー?」
ああ、ロクちゃんが「よく解らないけどナイナイする!」って小さなお手手で、目の所を一生懸命隠してくれているっ。
なんという天使……こんなのもう圧倒的に可愛さを司る天使じゃん……!!
こんな不純な事をしている俺達を疑いもせず、目を隠してくれるだなんて……おいブラック、ロクを見ろっ、っていうかロクの優しさを見習え!
「ロクが起きただろ、離れろっ!」
「えぇ~? もう仕方ないなぁ……」
俺の言葉とロクショウの可愛いポーズに押されたのか、ブラックは渋々俺の尻から顔を離す。やはりブラックもロクの無邪気さには勝てないようだな。
スケベオヤジではあるが、純粋無垢なロクに大人の行為を見せるのはイケナイという倫理観だけはしっかり持ち合わせてくれていたようだ。
……その倫理観をもうちょっと俺にも発揮してほしいんだが、まあ、今は素直に尻から離れてくれたので何も言うまい。ヤブヘビはごめんだ。
「はあ……と、ともかく……これで話は聞ける……いやもう、ここにずっと居たらまた何か変な事になりそうだし、一旦上に戻ろう。メシも食ってないしな」
「キュー!」
「ちぇっ。……ま、でも良いか。ツカサ君、今日のご飯はなーに?」
俺の体を再び膝の上に戻して、ブラックがこちらの顔を覗き込んでくる。
……ヤケに物わかりが良いのが気になったが、しかしこの常に密着している状態から早く抜け出すには、何か行動を起こすしかない。
そうなると、俺には料理しか選択肢がないのだ。
今はとにかくブラックの機嫌を損ねないようにしつつ、俺は平静を装って答えた。
「ふっふっふ……今日は、いつもとちょっと違ったメシだぞ!」
楽しみにしていろ、と胸を張って見せる。
が……その動きで、何故かまた下腹部が熱くなったような気がした。
……あ、あれ……おかしいな……一難去って冷静になったはずなのに……。
まさか、血行がよくなりすぎて下半身の熱っぽさだけは治って無いのか。いやしかし時間が経てばコレも治るはず。
俺の愚息もヤバい状況にはなってないし、たぶん放っておけば大丈夫だ。
きっと、多分。
「いつもと違った……? どんなのか分からないけど、楽しみ! 今日はお肉たっぷり使ってね、ツカサ君!」
「キュー!」
「ったくしょうがないなあ……じゃあ、支度もあるし早く上に戻ろうぜ」
不可解な下半身の熱に少し不気味なものを覚えながらも、俺はそれを無かった事のように振る舞って、一刻も早く料理を行おうとブラックの膝から逃れたのだった。
→
※修正ルビ入れ完了しました!
もちろん、こういう治し方はありません!!
結構をよくするのは良いらしいですが、痺れの治し方は
ちゃんとしたお医者さんにご教授頂くか
信用できるサイトなどでチェックしてくださいね(`・ω・´)
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