異世界日帰り漫遊記!

御結頂戴

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飽食王宮ペリディェーザ、愚かな獣と王の試練編

18.説教にかこつけて1

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 不思議な事に、この王宮には絶対に扉がある場所が二種類ある。

 それは、トイレと風呂場だ。
 他は保管庫なども重要でない物の倉庫は大体扉がなくて、絶対に閉じられた空間になるとは限らない。だが、風呂とトイレだけは絶対に隔絶された場所になるのだ。

 これは何故だろうと常々思っていたのだが、どうやらこれは動物……っていうか、獣の習性がかなり関わっているらしい。

 平たく言うと、水浴びやトイレの時は敵に奇襲されやすくなる。
 だから、出来るだけ隠しておきたいってことなのだそうだ。

 ……人型になっても気になるものなんだろうか、とは思ったが、今までずっと変えずに扉を付けて来たんだから、たぶん本当に闇討ちならぬトイレ討ちってのがあるんだろうな。いや、伝統にしても、その二つは一番気が抜ける場所には違いないんだから扉を付けて置こうって思うのも無理はない。

 だから、ブラックが何故「風呂かトイレか」と選ばせたのかも理解出来る。
 つまりは密室……誰も覗けない空間でナニかをしたかったからで、俺はそのナニかを今から行うために、あの恥ずかしいメス服で脱衣所にいるわけで……。

 …………ブラックが、さっきのことで怒っているのは分かるけど……だからって俺に何をさせるつもりなんだろうか。えっちな事にしろそうでないにしろ、確実に怒ってるからヘタな事は言えないぞコレ。
 なんせ、さっきから謝ってるのに仮面みたいな顔でニコニコしっぱなしで取り合ってくれないし、妙にわざとらしく肩とか掴んでくるし。うう……マジで何をされるのか不安過ぎる。でも服を脱がない訳にもいかないしつらい。

 普通に怒ってるブラックも怖いけど、こうやってニコニコして怒ってるのも怖い。
 何をされるか気が気じゃないが、最早逃げるわけにも行かないのだ。

 そんなワケで、俺は今モタモタと衣装の装飾品を外しているのだが。

「ツカサ君まだぁ? 遅すぎるんだけど」
「ま、待てって……俺こういう服ホントに慣れてないんだから……」

 一応、風呂に入るという部分は守るみたいで、ブラックはシャツの胸元の紐を緩め今すぐにでも脱げるようにスタンバイしている。

 だけど、俺はそうもいかない。あの恥ずかしい布部分は置いとくにしても、その他のアラビアンな装飾品が非常に外しづらいのだ。体を覆う部分は少ないくせして、この重いアクセサリーはヤケに多くて時間がかかる。
 しかも、どうやって装着したかわからない。今回はカーラさんに着付けて貰ったので、俺には外し方がわからないのだ。

 こんなことならカーラさんを待たずに急いで帰って来なきゃよかったと思ったが、もう後の祭りだ。モタモタするのも自業自得なのである。

 そんな俺の四苦八苦した様子を見かねてか、ブラックが背後に立って装飾品などを外すのを手伝ってくれた。

「まったく……こんなジャラついた服をメスどももよく着たがるよなぁ……」

 独り言みたいに言うが、俺としては「こんなわざとらしいメスの服なんて着ないで」とでも言いたげなブラックの心が透けるような気がしてしまう。
 まあ実際、このオッサンは装飾品とかまったく興味ないもんな。

 それどころか「邪魔」とか言い出すし、女性に贈り物として送った事も無いようだ。
 ……俺と出会うまでは、娼姫のお姉さんとかメスっ子にモテまくってたみたいだが、そのくせオンナゴコロって奴が分からないから酷いよなぁ。

 前に、とある宿の親父さんに聞いた女に嫌われそうなエピソードも、なんでコイツがモテるんだろうと思うレベルだったし……女子はワルが好きってのは異世界でも同じなんだろうかとちょっと悲しくなってくる。

 ともかく、コイツは装飾品にとんと興味が無いのだ。
 そのくせ他人の装飾品を外すのは手慣れてるってんだから、色んな意味でイラッとする。俺の自分でも外せない首飾りとか簡単に外すし……。

 …………な、なんか、変な感じ……。
 人にアクセサリー外されたりするのって、なんかむず痒いんだな。

 漫画とかで美女がよく「コレ外して?」って誘惑して来るシーンがあるけど、アレって本当にえっちなお誘いなんだなと今更感じてしまう。

 他人の指が触れて、自分が身に着けている物を丁寧にはがされるって、こんな風な何とも言えない感じになるんだな。
 服を脱がされた事はあるし、アレもまあ恥ずかしいけど……でも、こう言う風にちまちまと自分の装備を外されるのも結構恥ずかしい。

 ……うう……な、なんか、今の格好も相まって居た堪れない……。
 装飾品を外されるだけでこんな気持ちになるなんて思ってもみなかった……。

 お土産コーナーで謎のドクロの指輪を買ったりしない事も無いが、結局付けることもなかったからなぁ。当然、それを人に外して貰う事も今までなかったワケで、そ、それをブラックにされてるのかと思うと……その。
 しかもブラックは今怒ってるワケで。何するかわかんないワケで。

「あーあ、ツカサ君の体が金属臭くなっちゃうよ……こんなのつけてさあ」
「し、仕事着みたいなモンなんだから仕方ないじゃんか」
「仕方なくても不満だよ僕は! 舐める時に金属の味ばっかりしてツカサ君を味わえないじゃないか」
「そもそも舐めるな!」

 なんとかツッコミを入れるが、ブラックの雰囲気は不穏なものから変わらない。
 会話してくれるってことは、俺に対して怒ってるワケじゃないんだろうけど……でもだからって「お仕置きだよ(はぁと)」的な展開にならないとは言えないしな。

 ブラックは怒ってても俺に暴力を振るわないし、ソコは偉いんだけど、絶対に「キミは僕のものでしょ」と思い知らせることをしてくるからツラい。
 俺的には正直そっちの方がダメージが多いのだ。同意の上で、その、えっちな事をするのは……覚悟が決まってる時だからいいけど、こういうのはヤなんだよ。

 別にブラックに触れられるのがイヤなんじゃなくて、やっぱり「お前はメスだ」と体をどうこうされるのには慣れないんだ。
 それに、こういう時のブラックはいつもより俺の事をいじめてくるし。
 コレで俺に非がなけりゃ俺だって怒るんだけど……はぁあ……。

「コレ、首輪外さないと胸の布も取れないの? めんどくさいなぁ」
「そ、そういう服だし……」
「所構わずセックスする獣のくせして、なんでこんな所だけ凝ってるんだろ」

 それはアンタも人のこと言えないんじゃ。という発言は飲み込む。
 さっきまでトイレでえっちな事をする気マンマンだった人に、獣人もとやかく言われたくはないだろうが、ツッコんだら負けだ。
 出来るだけ慎重に、コトを進めないとな……。

 ……まあ、進めたって待ってるのは風呂場なんですけども。

「ハハ……」
「何笑ってるのさ。ほらほら早く脱いで」

 いつもなら俺が「早く脱いで」と急かす側なのに、今回は逆だ。
 あまり風呂に入りたがらないブラックを俺が急かすのが“いつも通り”だったのに、今は俺がブラックに服を脱がされて「早く」と言われている。

 それ自体は別に何とも思わなかったけど、幾つもの装飾を外され、ついに胸を隠す布を取り払われると何とも言えなくなってくる。
 俺はおっぱいを隠す必要もないし、女性の胸のように魅力的な膨らみがあるワケでもない。むしろ有ったらホラーだが、ともかく男の俺にとっては胸など気にしようも無い部分のハズなのだ。

 むしろ、女性のブラのように乳首を隠していた布が無くなって清々してる……とでも言いたかったのだが、そんな軽口すら何故か出てこない。

「…………」
「あは……やっとツカサ君の可愛い乳首が見られるねえ」

 腕で隠さないで、と両腕を掴まれて上半身を曝され、あからさまに自分の乳首の所に視線が注ぐのを感じると、恥ずかしさで体がカッカしてくる。

 ……脱衣所なんだから、脱ぐのは当たり前だ。
 裸なんてブラックには何度も見られているし、こんな風にえっちな言葉を掛けられて触れられるのだって、こ、恋人なんだから別に、おかしなことじゃないのに。

 なのに、何だかいけない事をされているような気がして来て、体が変な感じに反応してしまう。ただ見られているだけだとしても、ブラックに“そういう気持ち”で自分の体を凝視されてるんだと思うと、俺まで変になる。

 うなじに息を吹きかけらて脇腹を軽く撫でられるだけで、ビクッと体が跳ねて、過剰な反応をしてしまって恥ずかしい。
 我慢しようにも、気合を入れれば入れるほど体が敏感になるみたいで、そんな自分に恥ずかしさが増してしまうだけだった。

 なのに、ブラックはそんな俺を更に追い詰めて来て。

「まったく……ホントツカサ君ってオス好きのするお尻してるよねえ……。こんな尻と太腿をちらちら見せられて、これじゃオスだってたまったもんじゃないよ」
「ひあっ!? やっ、そ、それ脱がすのと違っ」
「こんな薄い布じゃ、お尻の谷間に食い込んでメス尻がくっきり見えちゃうよ」

 上半身の装飾を解除されて、後はもう下半身しか残っていない。
 だからさっさと全部外せばいいってのに、ブラックは俺の尻を薄布ごと掴んで、グッと尻肉の片方を軽く上にあげて揉んでくる。

 下着を穿く事が許されてないから、薄布からダイレクトにブラックの太い大人の指の感触が伝わって来て、お腹の奥がきゅうっとなる。
 いつもブラックに執拗に触れられる場所なだけに、俺の体は勝手な勘違いをして、お腹の奥どころか……ま、前のほう、まで……変になってきて……。

「やだっ、も、揉むなって、頼むから……っ! 風呂、はい、る……はいるん、だから、脱がなきゃ……っ」
「こんな布、あってもなくても一緒でしょ? ほら……僕がツカサ君の柔らかいお尻を揉んでるだけで、ツカサ君たら顔を真っ赤にして反応しちゃってるじゃないか」
「で、でもこれっ、仕事服……っ」
「ツカサ君なら【黒曜の使者】の力ですぐ乾かせるでしょ? もう面倒臭いから、下はそのままでお風呂に入っちゃおうよ」

 そんな事のために使うチート能力じゃないやい!!

 ……とは思ったけど、も、もう正直、尻をぐいぐい揉まれるのにも耐えられなくて。

「わ、解ったっ、解ったからはなしへっ、一回離して……っ」
「仕方ないなぁ」
「っ~~~!」

 ぎゅっと上に持ち上げられた片方の尻肉を、軽く弾くようにして手が離す。
 その動きにぶるんと律儀に震えて戻る自分のケツに、余計に恥ずかしくなる。

 引き締まった体なんて言わないけど、これじゃ本当に自分の体がメスみたいだ。尻なんて肉の塊なんだからおかしくないのかも知れないけど、でも、人の手にぶるんと震わされると、何故かそのことがメス扱いされる理由みたいに思えて、変な所で俺は居た堪れなくなってしまったのだ。

「じゃあお風呂に入ろうか。二人っきりでお話しもしたいし……ねえ?」
「……う……うん……」

 この調子で、ブラックと真面目に話せるのだろうか。

 すでに変な事をされてるのに、今後何もされないとは思えない。
 そもそも、風呂に入るってのに下半身はそのままって絶対おかしいだろ。体を洗うにも、この布があったらぺたぺた張り付いて鬱陶しいだけなのに。

 ……コイツ、絶対なんかする気だ。
 怒ってるくせになにか変な事をする気なんだっ。

「ほら、ツカサ君はやく」
「…………うう……」

 だけど、それを指摘してヤブヘビを突くのはもっとヤだ。

 ……あぁ……俺ってヤツは何でこう毎回されるがままなのか。
 でも、今回はブラックが怒るのも無理ない事をされちゃったからなぁ……俺としては理不尽なんだが、何を言われたって仕方ない。

 こうなったらもう、何もかも受け入れるしかないか……はぁ……。










 
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