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大叫釜ギオンバッハ、遥か奈落の烈水編
13.空色の瞳の名前
しおりを挟む「――――おい……。おい、ガキ。おいっ」
「…………はへ……」
何か、頬を叩かれてるような気がする。
やけにぶるんぶるんと頬が揺れ……っ、痛っ、いたたたた!
強いっ、ほっぺの痛さが強い!!
なんだこれ何が起こってるんだ、めっちゃ頬に痛みが走るのは何なんだ。とにかく痛い、やめてくれと思わず起き上がると、見開いた視界に明るめな茶色がドンと飛び込んできた。こ、これは、見事なかんぴょう……じゃなくてあのオッサンの頭か。
あれっ、ここはどこだ。俺は何をしてたんだ?
っていうかオッサン戻って来てたのか。ここは……特別室なのか?
「ここ、は……」
「バカ、寝室だよ。寝ぼけた声出してんじゃねえ」
ぶっきらぼうにそう言われて、俺は自分の目がおかしくなっている事を自覚する。
まだ視界が滲んでゆらゆらしていて、妙に気持ちが悪い。瞬きをして目を慣らしながらゆっくり視線を動かすと、綺麗な白い壁と天井が見えた。
たしかにココは特別室のようだ。やけに地面が柔らかいと思ったが、どうやら俺の体はベッドに沈んでいたらしい。……しかし変だな、さっきまでの俺は美味い食べ物に満足していた気がするんだが、いつの間に寝ちゃったんだろうか。
不思議に思いつつも、重くて気怠い体をなんとか起こして周囲を確認する。
確かにここは特別室にくっついている寝室だ。何が起こったのか記憶が飛んでいるが、ともかくまだ特別室に居るのは間違いないらしい。
だけど……どうして俺はここに居るんだろう。自分でベッドに寝転んだのか?
そう思い、俺はベッドの脇から覗きこんでくるオッサンに振り返った。
「そういやアンタ帰って来てたんスか」
「気付くなら最初に気付けよ!! つーかお前、帰って来てたって……」
本調子ではないこちらを見て睨むオッサンに、俺は髪を掻き乱しながら相手が言いたい事を先読みして頷いた。
「はい、あの……返事が無いから心配で風呂場を覗いたら、いなくなってたんで」
「…………よく監督に報告しなかったな」
「いや、だって、そんな芸当が出来るのに囚人生活をずっと続けてるんだから、何か事情があるんだろうなと思って……」
そういうと、オッサンは意外そうに目を丸くした。
俺の回答がよほど意外だったのだろうか。こっちとしては、そんなに驚くオッサンの方が不思議で首を傾げると、相手は自分が浮かべた表情にやっと気が付いたのか、苦虫を噛み潰したような顔をして顔を背けた。
「チッ……まあ、お前には湖で一度姿を見られていたからな……」
「あ、やっぱアレって脱獄してた時のヤツだったんですか。でも、何であそこに?」
というかどうやって出たんだ。
しかし脱出方法を聞いたって教えて貰えないどころか相手を激昂させるような気がしたので、そこはグッと堪えて俺は「何故湖に居たのか」を聞くだけに留めた。
その考え方は正しかったのか、それとも別に腹が痛まない回答だったのか、相手は怒りもせずにムスッとした声で答えてくれる。
「…………外の様子を見てたんだよ。脱出する時にモンスターやら監視の誰かやらが居たら、遠くにも逃げらんねえからな」
「なるほど……」
しかし、今すぐにでも脱獄できる状態なのにどうしてそんなに慎重なのか。
つーかそもそも、この人なんで捕まってるんだ。罪状はなんだ?
アブない囚人だったら、四六時中監視がついてるはずだよな。なのに、それもなく新人の俺を任せるくらいに監督達にも信頼されているなんて、なんか妙だわ。
でも、そこら辺を聞くとヘソ曲げそうだしなあ……うーむ、なんかいい感じに相手の手の内を知る方法は無い物だろうか。
ゲーム的な発言でかなり失礼かもしれないが、俺に対するオッサンの好感度がもうちょっと高かったら、話してくれる可能性はありそうなんだが……どうやったらこの難攻不落なツンデレおじさんを落とせるのか解らない。
いやそもそも俺は男を攻略したくないんですけどね。仲良くなるんなら野郎よりも女子の方が圧倒的に嬉しいんですけどねえ。
にしても、俺ってばどうして倒れちゃったんだろうか。
ずっと起きていられたなら、オッサンが帰ってきた所をとっちめて「勝手にいなくなって、何してたんですか!」なーんて問い詰める事も出来たかもしれないのに……本当に惜しいことをした。
なんかオッサンの事とかブラックの事とか考えてたのは覚えてるんだけど、その後の事が頭の中でぼやけてて全然思い出せないんだよなぁ。
顔でも洗えばスッキリするかな……いや、もういっそ風呂に入るか……。
「あ゛? なんだ、どうした」
「いや、その……まだボーッとしてるので風呂にでも入って来ようかなって」
「ああ……まあそうだな。すっきりしてこい。服も着替えろよ」
意外にも素直な返事だ。
そういや俺、ツナギっぽい囚人服のまま寝てるよな。そら汚いわ。だからオッサンも何も文句を言わなかったのか……やべえ、早く入って来よう。
慌てて自分の服を確認して、俺は二度ギョッとする。
ベッドに寝転がる前までは何とも無かったはずの囚人服の胸元が、なんとどす黒い色でべったりと染まっているではないか。
ナニコレ……ハッ、ま、まさか血かっ。血なのか!?
ということは、俺ってばどっかで鼻か頭をぶつけちゃったの!?
思いっきり驚いて顔を触るが……腫れた様子が無い。
いくらチート能力で驚異的な自己治癒能力を手に入れた俺だとはいえ、失神だって短い時間のことなんだろうから、コブくらいは残ってるはずだ。なのに、俺の額にも鼻にも怪我らしい怪我が無い。
そんなに簡単な傷なら、こんなに服が汚れるワケも無いと思うんだがな……。
「なんだお前、一人で風呂に入れねえっつうんじゃねえだろうな」
「あ、いや……まあいいか。自分で行けるから大丈夫っす」
色々と不思議だったけど、もしかしたら記憶が曖昧なのだって、俺が頭のどっかを打って昏倒したからなのかも知れない。
というか、このシミはそうでないと説明が付かないよな。
どんだけ酷い激突だったんだと思うが、まあその……俺もちょっとだけ……ほんのちょっとだけおっちょこちょいな部分があるし……今は考えるより風呂で汚れを洗い流した方が良いよな。
そう思って、俺はベッドから降りようと勢いをつけて体を起こす、と――――
「お、おいちょっと待て! 急に立とうとしたら――――」
「うわあっ!?」
「バカッ!」
勢いをつけすぎたのが悪いのか、それとも俺の足が未だに目覚めてなかったせいか、飛び降りるような形で立とうとした俺の体は制止出来ずに傾ぎ、思いっきり体勢を崩してしまった。
ヤバい。これは地面に激突する。
そう思っても、鈍い思考では咄嗟に対策を取る事も出来ない。ただ体が落ちる感覚に硬直して、せめて痛みを堪えようと目を瞑った……の、だが。
俺の体は、床に倒れ込む前に何かに引っかかって制止した。
「う……ぇ……?」
なんか胸が苦しい。硬い物に押し付けられている気がする。
どういうことだと恐る恐る目を開いて己の胸部を見やると、そこには服に包まれた逞しい腕があった。そうか、これに引っかかって倒れずに済んだのか。
いや、腕って。腕って事は……おれ、オッサンに助けられたってこと!?
「わーっ、そんなベタな!」
「何がベタだバカ! そんなに地面に突っ伏してえなら再度放り投げて……」
「いえいえ違いますありがとうございますっ!」
あまりに典型的な恋愛漫画シチュすぎて思わずツッコミを入れてしまったが、俺の体を支えているオッサンは漫画のキャラじゃなくて現実だった。
つーか俺がこんな事されてどうする。俺が女の子にする側なのに。
ああでも思っていた以上に体が動かない。これはちょっと……ヤバいのでは。何か気が付いたら腕とか足がガクガクしてるし。なにこれ怖い。
「……お前、まだ治ってねえな」
「な、なんか変っすね。なんでこんなガクガク……」
「……チッ……。しょうがねえ……」
しょうがないって、なにがですか。
教えて欲しかったが、低い大人の声を聞くと何故だか頭の中で鈍痛が湧き起こって来て、何も言えずに唸る事しか出来なくなる。
そんな俺の体調を察したのか、オッサンはそれ以上何も言う事は無く、黙って俺を洗面所に連れて行ってくれた。うう、頭が痛い……ガンガンする……。
「お前、その状態で風呂に入ると溺れるぞ。それでも入るのか?」
「だ、だって……汚れたままじゃ……ベッドとかソファ、汚すし……」
「ああもう分かった分かった」
呆れられようが仕方ないだろ。
俺がこのままの状態で寝こけたら、特別室の何かを汚してしまうかも知れない。そうなった時に損害賠償請求とかされたら何も取り繕えないじゃないか。
この世界じゃそう言うのはナイかも知れないけど、俺は小心者なのだ。厄介事などゴメンだし、防げることは防いでおきたいのである。もう遅いかも知れないが。
まあともかく、風呂に入れば少しは視界もハッキリするかもしれない。
俺はオッサンの補助でなんとか自立すると、ふらふらと服を入れるかごが入った棚の方へと向かった。よし、ここで服を脱げばいいんだな……。
「ぐぉ、おとと……」
「だーっバカッ、なに倒れそうになってんだ! ったくクソが……っ、オラ脱げ!」
「うううすみませんねぇ……」
同じ男として介助されるのは情けないが、今は脱ぐことも独りじゃ難しい。
オッサンだってゴメンだろうなと思いつつ、片手で支えて貰いながら服を脱ぐ。と、俺の服を背中側から引っ張って降ろしてくれていたオッサンの手が止まった。
「お前……」
「はひ?」
「…………いや、なんでもねえ」
何に気付いたのかよく解らないが、オッサンは黙々と脱ぐのを手伝ってくれて、俺が風呂に入るまでしっかりと見ていてくれた。
さすがに体を洗う時に見られているのは居た堪れないので退場して貰ったが、その気遣いのお蔭で俺も少し謎の症状がマシになり、一人で湯船に入れるまでになった。
そうそう、こういう時はやっぱり温かいお湯に触れて血行を良くしないと。
「ふぅ…………なんとか手も足も動かせるようになったな……」
お湯の中で揺れる手足をぐーぱーと開いたり曲げたりして、自分の体が思い通りに動くか確かめる。最初はぎこちなかったけど、今は少し鈍いだけだな。
いまだに喉の奥が痺れてたり、ちょっと目が霞むような気もするけど、起きた直前よりはだいぶマシだ。これは治ったと言っても良いだろう。
一時はどうなる事かって感じだったけど、オッサンのおかげで助かった。
いけ好かない所も有るけど、やっぱりあの人は面倒見が良いんだろう。色々と変な所は有るけど、俺を助けてくれたのは確かなんだから感謝しておかないとな。
そう思い、俺は湯船の中で立ち上がって……胸を軽く叩いた物に気付き「あっ」と声を出してしまった。
「そ、そっか……オッサンが気付いたのは俺の指輪か……」
そういや、股間をまさぐる所なんて見られたくないからって、首にかけ直してたんだっけ……ああ、これ見られちゃったって事は、告げ口をされちゃうんでは……。
……でも、オッサンは何も言わなかったな。
もしかして、俺が気を使って色々聞かないようにしたから、オッサンも俺の持ち物の事は何も言わないようにしようって思ってくれたのかな。
だとしたら、何と言う気遣いだ。やっぱりあの人凶悪犯じゃないんじゃないの。
風呂から上がって新しい囚人服を着つつ、俺は今一度オッサンの尋常ではない面倒見の良さを考えて、つい唸ってしまった。
「うーむ……どう考えても普通の囚人じゃないんだけどなぁ……」
何度か助けて貰った恩も有るし、出来れば恩返しをしておきたいのだが、当の本人の性格を考えると、俺の恩返しなんていらねえとか言い出しそうだ。
そんな所もやっぱり犯罪を犯した人のようには思えなくて、俺は首をかしげた。
「でも、お互い事情があるわけだし……突っ込んだ話をして距離を置かれると、俺が困るからなぁ……情けない話だけど」
俺を他の囚人の脅威から守ってくれて、さりげなく気遣ってくれて、そのうえ面倒な事にも文句を言いながら助けてくれる。
そんな事をするせいか、なんとなく俺の世界の大親友を思い出して、離れがたくなっちゃうんだよな……。
アイツも……尾井川も、何だかんだ言いながらいつも見守ってくれてるんだ。時々殴るけど、それだって俺が泣く切っ掛けを与える為の不器用な優しさで、理由のない暴力とはまるで違う。やり方は不器用そのものだけど、尾井川は意地っ張りでバカな俺を理解して、ずっと付き合ってくれていたんだ。今だって、ずっと。
その優しさと、あのオッサンの優しさは、なんとなく似ているような気がした。
…………だから、何だかつい気にしちまうのかな。
そもそも、ぶっきらぼうですぐ罵倒して来るけど、行動は優しい奴そのままだし。だから、それを感じるたびに俺で何か手伝えることが有ればと考えてしまって、妙にもどかしくなってしまう。
そんな事を言えば相手が「面倒だ」と離れて行くのを解かっているのに、何故か俺はオッサンの事が気になって仕方が無かった。
……いや、これは……アレかな……。
ヒヨコの擦り込み現象みたいなモンで、助けて貰ってるから相手の良い部分をつい探してしまって、依存を強めちゃってる的なことなのかな……。
ああもうわからん。
「気にはなるけど……話して貰えないんだから仕方ないか……」
湖の事も脱獄できるのにしようと思わないのも謎だけど、あのオッサンは面倒見が良くて心根は優しい。それで良いじゃないか。
どうせここから出たら他人に成っちまうんだから、必要以上に話さない方が良い。
そうだ。
俺にだって帰らなきゃ行けない場所があるんだから、ちゃんと自立しないと。
ブラックとクロウに合流するまで、なんとかして冤罪を証明するか、それともヤケになって脱獄でもするか、どっちにしろ考えておかなきゃ駄目だな。
オッサンのやる事に構っている暇はない。険悪にならないように気を付けるだけにして、俺は俺でなんとか出られる方法が無いか探らないと。よし、そうしよう。
そう決めて、俺はしっかりと囚人服を着込むと部屋に戻った。
と、オッサンがソファから立ち上がって近寄ってくる。
あれ……もしかして今まで俺が風呂から上がるのを待っててくれたのか?
立ち止まっていると、オッサンが目の前までやって来て俺をジロリと見下した。
「…………湯あたりしてねえだろうな。この期に及んで迷惑かけんなよ」
「し、してないっす。大丈夫です。あの……ありがとうございます」
そう言うと、オッサンは目を細めて「フン」と鼻息を漏らす。
相変わらず不機嫌な表情だが、でも何故か……深い空色の瞳は、そんな態度とは違って穏やかなように思えた。こんな目を向けられる事が、今まで有っただろうか。
不思議に思って見上げていると……オッサンはクンと軽く鼻を鳴らして、また何かに気が付いたのか目を丸くした。
「……ッ?!」
「ど、どうしたんですか」
問いかけるが、オッサンは口を覆い隠すように鼻の下に指を置き、何かを確かめるように指で鼻を軽く押している。
どうしたんだろうかと思ったが、オッサンは俺をチラリとみると、変な顔をした。
いや、変な顔って言っても笑える顔じゃなくて、なんだか深刻そうな……。
「…………お前……まさか……」
「へ?」
急に驚いたような声を出して、どうしたんだろうか。
ワケも解らずに目を瞬かせていると、相手はチラチラと視線を外したり俺に戻したりして、どこか迷うような感じの動きを繰り返していたが、俺に一歩近づいた。
そうして、真正面から俺を睨みつける。いや、睨むって言うか凝視かコレ。いつも不機嫌そうな顔だから紛らわしい。一体どうしたんだろうか。
不思議に思っていると、オッサンは目を細めた。
「お前…………なんでこの【絶望の水底】に来たんだよ」
「だから冤罪だって言ってるじゃないっすか」
そう言うと、オッサンは再度驚いたかのような間抜けな顔をして目を逸らした。
「そ、そうだったな」と言わんばかりだが、一体何がしたいんだよ。
訝しげに相手を見上げていると、オッサンは息を吐いて再び俺を見た。
「あー……その……なんか、今まで悪かったな」
「……?」
何故急にそんな事を言うんだろう。
今度はこっちが目を丸くすると、何やら急に怒気が弱くなった相手は、まるで女子の裸を偶然見て気まずくなった奴みたいに視線を泳がせながら咳を一つ零した。
「お前が冤罪……というか、手違いなことは、今ハッキリわかった」
「えっ、マジっすか。でも話も大体聞いてくれなかったのに、なんで急に」
「う、うるせえな。……とにかく、なんだ、その……アレだ。これからも出来るだけお前を守ってやるから、今後俺の傍から離れるんじゃねえぞ」
「えぇ!?」
「なんだ、なんか文句あんのか?」
ヒィッ、また睨むぅ。
いやでも変でしょ。アンタ昨日まで俺の事うざったいと思って見てたでしょうが。
なのに何故急に優しくなったの。もしかしてお互いに貸し借りが出来たからか?
だとしたら俺としても有りがたいけど……なんというか、あんまりにも急に優しくなるもんだから、体がついていかなくてサブイボが出ちゃってるんですが。
あの、アンタ本当にどうしちゃったの。何か悪い物でも食べたのか。
監督に医師でも呼んで貰った方が良いんじゃないか。
「あの……本当に大丈夫なんです? やっぱアンタも湯あたりとかしてるんじゃ」
信じられない方向転換に問いかけると、相手は何故か少し顔を赤くして、俺の視線から逃れるように目を逸らした。
「…………べ、別に……何でもねえよ。それより……お前、名前はなんていうんだ」
「えっ、俺の名前? ああ、えっと……ツカサです」
本当に今更聞かれたな。その態度の急変、マジで謎なんですが。
でも名前を訊いて来るって事は、オッサンからすると「親しくなっても良い」って要素がどっかで見えたって事だよな。それが何なのか今は分からないけど……まあ、好感度が上がるのは悪い事じゃないし、いっか。味方は多い方が良いもんな。
じゃあ、それなら……今聞いても大丈夫だろうか。
そう思って、俺もオッサンを見上げて問いかけた。
「あのじゃあ……そっちの名前も教えてくれますか?」
出来るだけ丁寧に、また機嫌を損ねないように恐る恐る問いかけると――――
オッサンは、俺を見つめて小さく口を開いた。
「……俺の名は…………セレスト。【隠者】のセレストだ」
どこか切なそうに呟いた、名前。
何故かその名前に聞き覚えがあるような気がして、俺は無意識に息を呑んだ。
その眼差しも、そう言えば懐かしいような……不思議な感じがする。
だけど、何故そう思うのかが解らない。思い出せない。
もしかして俺は、以前にこの名前を聞いた事があるのだろうか。
そう思って記憶の海を浚ったが、湖で出逢った時より前のことを思い出しても何も該当する記憶が無くて。
確かに似たものを知っている気がするのに、どうしても思い出せなかった。
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