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巡礼路デリシア街道、神には至らぬ神の道編
24.自分で思っていたよりも
しおりを挟むそれにしても、今日中にベランデルン公国へ入ろうと話をしていたのに、それを言った口で「メシを作れ」とは無茶なお願いだ。
まあ、ブラック的には俺に早くベランデルン側の「驚く風景」というのを見せたいようなので、この無茶ぶりに対して怒る気持ちは無いんだが、どうしたものかと困ってしまう。
空中回廊からやっと古い方の【ノルダン砦】に入ったは良いものの、料理をするんなら場所を借りないといけないだろうし時間もかかるし、どう考えても今日中に山を下りるというのは無理な相談だった。
とはいえ、そこまで俺の料理を求めてくれるというのは、正直悪い気はしない。
オッサンどもにはご無体されてばっかりだが、なんというかその……頼られたり、自分の能力を求められたら嬉しいモンだろ?
そもそも俺、調合とソレ以外に褒められた事なんてあんま無いんだし……いや、俺、チート持ちのはずなのにどうしてこんなことに……。
思わず深く考えてしまったが、すぐにその思考を振り払い、三人で話し合った結果素泊まりの宿にある旅人用の調理場を使わせて貰う事にした。
高いグレードの宿は上げ膳据え膳かもしくは食堂などの食事を食べられるのだが、本来の冒険者や一般の旅人のような人達は、こうした素泊まりの木賃宿で食事代を払って食事を貰うか、もしくは薪代を払って自炊するのが普通なのである。
とはいえ、宿の食事はそれなりに高いのに味は保証できないので、ほとんどの人は外で好みの食べ物を買って来るか、もしくは俺達のように調理するのだ。
基本的にかまどと作業台が適当に並んでいるだけの広い土間なので、他人の料理がチラチラ見えてしまう「目に毒」な部分は有るのだが、それでもまあ、好きに使えるかまどを貸してくれるのはありがたいよな。
でも俺は四方八方から見られたくないので、広い調理場の端にあるかまどで料理を作る事にする。いや、だって、なんか絡まれたら嫌だし。
チートものの小説だと、人前で料理を作ってたらそういう事とか絶対あるもんな。
まあ現実でそう突っかかって来る人は少ないと思いたいが、実は俺も過去に何度かそのような体験をしているので、ちょっと警戒してしまう。何だかんだ俺って料理が上手いみたいだしな。ふふふ、デキる男ってのは嫉妬されちまうもんだぜ。
……ゴホン。閑話休題。
俺は【フレイム】でかまどに火を入れつつ、牛肉……ではなくこの世界の一般的な馬であるヒポカム(雪男のごとく毛むくじゃらな姿のカバっぽい大きい馬)のお肉をコトコト煮込んだスープでも作るかと作業をしだした。
まあ、いつもの素材の味に頼る戦法だな。
この世界には目立った調味料が無い……というか、ある所にはあるんだろうけど、旅人がマヨネーズだのブイヨンだのを使うほど調味の為の材料が一般的ではないので、いつも素朴な味になってしまう。それでも煮物は何とか味が染み込むので、必然的に汁物系が多くなってしまうのだ。
それでも、日本人の俺としては味噌醤油が欲しいのだが。
「うーん……しかし、なんか代わり映えしないよなぁ……」
今回はラクシズの街でしこたま儲けたおかげで路銀が豊富だったので、肉や具材を豊富に入れてぐつぐつ煮込んでいるのだが、結局素材の味で勝負だ。俺としてはなんとも物足りない。
やっぱ甘辛な味が恋しいな……というか、シチューならホワイトシチューかビーフシチューか……ともかく、そこらへんの料理を考えると、デミグラスだのなんだのとガツンと美味しい味が欲しくなってくる。
俺だって少ない食材で頑張ってはいるけど、それでもやっぱり出来ないことはあるワケで……。はあ……常にバターやケチャップやマヨネーズが使える俺の世界って、なんて贅沢だったんだろう。
俺だって自家製マヨかバターは作れるけど、しかしそれも凄く手間が掛かるので、時間に追われる旅の途中ではかなり作りにくい。作るのに疲れるしね。
遠心分離機だのミキサーだのあれば別だけど、そんな機械は望めまい。
俺の曜術でミキサーぐらいは出来ないことも無いけど……でも、そんなの人がいる場所で披露するワケにもいかんしな。あと一人ミキサーとかシェイカー代わりの能力を持っているヤツを知っているが、そいつを「召喚」するってのも……うーん……。
「まあ俺の怠慢ではあるんだけど、でも加工したブツは【リオート・リング】の中に入れてても時間が止まる訳じゃないからなぁ」
俺が妖精王から頂戴した【リオート・リング】は、冷蔵冷凍庫であるのと同時に、素材を入れておけば時間が止まったかのように新鮮に保存できる凄い腕輪なのだが、唯一の弱点がある。それは、作った料理や加工した何かを入れても、時間停止効果が発揮されない仕様になっているってとこだ。
とはいえ、普通の冷蔵冷凍庫として使える事には変わりがないんだけどな。
しかし時間停止効果がないなら、ストックを作るのも少し考えてしまう。
そもそも俺、解凍する術とか知らないのでレンジみたいに出来んだろうしなぁ。
素材が長持ちするってのはありがたいけど、現実ってのは上手くいかないもんだ。
まあ、鳥人達から貰った【セウの樹の若芽】を保存できてるからいいんだけどさ。
しかしアレも……いきなり料理に使うのは躊躇われる。
そもそもなんか貴重な物らしいから迂闊に取り出せないし、しかも葉っぱを食べた時の味は好き嫌いがありそうだったしな……ブラック達に試させて食べられると判断してからじゃなきゃ、とてもじゃないが料理には使えない。
うーむ、旅というか人と一緒にいると、料理についても色々考えるようになっちまうなホント……家族なら良いけど、ブラック達は俺の味の好みとちょっと違う好みがあるもんな。大体オッサンだし、なんか酒のつまみみたいなのばっか好きだし。
「色々ままならんなぁ……」
そんな事を呟きながら、俺はでっかい寸胴鍋に入ったスープをゆっくり掻き回す。
軽く焼き、灰汁を取りつつ香草(マーズロウ)と一緒に煮込んだ、ヒポカムの厚いぶつぎり肉。そのお肉が柔らかくなってきたら、タマネギにそっくりなタマグサや、ニンジンに似た味と形のルベルボーフなどの野菜を投入して、オリーブオイル代わりのカンランの実の油を一回し掛けて味を見る。
もちろん、塩胡椒も忘れない。この世界は塩と胡椒だけはどこにでも流通しているので、こういう所は感謝だな。胡椒無双とか出来ないのがちょっと残念だが。
ぱっぱと細かく手で振り小皿で味を見ている内に、良い匂いになって来た。
素材味、とは言えど、やっぱりウマそうなモンはウマそうだよな。
これだけ作っておけば、三日ぐらいはもつだろう。……もつはずだ。クロウが食欲を抑えてくれていれば……。
「なんだか良い匂いがするな」
「あぁ、作ってんのにハラが減って来た……」
「はぁー……」
少し離れた場所から、次々につぶやきが漏れてくる。どうやら、他の人達が作った料理の匂いに食欲が刺激されてしまったらしい。
ああ、みんなハラ減ってんだな。俺もハラ減ったよ。でもこのスープはお預けだ。
我ながら気の長い話だなと思いつつ、おたまで鍋の中を掻き回していると――何か横から影がかかってきた。おや。なんだこれは。
不思議に思って振り返ると、そこには見慣れない男の人が立っていた。
…………なんだこのイケメン。
「それ、美味しそうだね」
目を細めてにっこりと笑う相手は、黒髪サラサラの輪郭もスッとしている優男だ。
瞳は青が強い深めの青紫色で、弧に歪む切れ長の目。他人を常に小馬鹿にしているような感じを覚えるが、それは俺のひがみだろうか。
鼻筋も高いけど幅は日本人みたいに控えめだし、俺より背が高い。年上かな。
だけど前髪で右目を隠していて、なんというか……アレだ。「あーこんな女子受けしそうな細身のイケメンいるよなー! あーそうですかそうですか!」て感じの女子向けゲームにいそうなセンス良さげな感じの男性キャラみたいな感じがする。
……まあ、一言で言えば、思わずイラッとしてしまうくらいのイケメンだった。
なんだコイツは。イケメンを褒めてやるような語彙なんて俺は持ってねえぞ。俺とお前は相容れない関係だろうが。陰キャの料理をバカにしに来たのか。
こっち来んな、帰ぇれ帰ぇれ! お前にやるモンはなにもねえ!
…………しかし、そんな事を初対面の相手に言えるワケも無く。
俺はてやんでぇハートを何とか抑え込みながら、冷静に大人の対応で答えた。
「あんまり凝った料理じゃないですし、美味しいかどうかは分かりませんよ」
つっけんどんにならないように、物腰柔らかに答えつつ、俺はスープを凝視する。
だって相手を見たら睨んじゃうもん。俺イケメン嫌いだもん。早く自分の居場所に帰ってほしい。どうせ女連れかメスっ子連れてんだろ。知ってるんだ俺は。
そんな風にヤサグレていたのだが、相手は俺の態度に何一つ気付いていないのか、俺の横顔を覗きこんで来て猫のように目を細める。
「小生には、この場所のどの料理より美味しそうにみえるけどなァ」
しょっ、しょうせい?
待て待て待て、そんなレア一人称現実で使う奴いるのか。異世界だとアリなのか。
俺の世界でだって、創作キャラでもなきゃ爺ちゃんの一人称くらいでしか聞かないのに、そんな容姿しといてどんな一人称使っとんじゃい。
てか小生ならもうちょいお堅い言葉だろうが。口調と合わせると違和感有りすぎ。
そんな突っ込みどころ満載の相手の台詞に思わずギョッとして顔を向けてしまうと、小生などと口にした黒髪片目のイケメン野郎は意地悪な猫のように笑った。
「ね、良かったら食べさせてくれない?」
「……………………一回だけっすよ」
こういう手合いは長引かせると余計に面倒になる。俺は知ってるんだ。
ならば、さっさと約束して手渡したら知らぬ存ぜぬを通せば良い。つーかこの片目隠しイケメン、両耳にピアスとかイヤリングめっちゃつけてて怖いから早くオサラバしたい。こういうタイプやだ。以前、一回だけやったコンビニのバイトで、チャラい先輩に毎日絡まれたの思い出して口の中が苦くなるんだよぉお……。
そういえば異世界でこんなガチの人初めて見たな、と寒気を覚えつつ、俺はお皿にスープと多少の具を盛って相手に手渡した。
「ああ、食べさせてくれるってそっちかァ。てっきり『あーん』してくれるのかと」
「初対面の相手にしませんよね普通!?」
「小生はいつもソレやってもらってるけどなァ~」
なぁ~、じゃねええええええええよ!! 頭沸いてんのかこのイケメン!!
ちょっとアレな発言ってのはブラックとクロウで慣れたつもりだったが、初対面のいけ好かないイケメンに言われるとこうもサブイボが立つとは思わなかった。
早く食え。マジ早く食え。早く食って頼むからいなくなってくれ。
悪霊退散悪霊退散と頭の中で連呼しつつ、スープを啜るイケメンを警戒していると――ほどなく相手は皿を空っぽにして、イケメンスマイルで俺に返してきた。
「いやァ美味しかった。いいねぇ……こりゃァ久しぶりの美味さだよ! ふふっ……キミ、見込みアリだね」
「は、ハハハ……あ、あざっす……」
もうやだ帰って。いや俺が帰りたい。何なのこの人なんで俺に指差してくんの。
見込みとか良いから早く帰って下さい。俺は煮込みに忙しいんですってば。
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これならブラックとクロウのが何百倍もマシだと思って硬直していると、謎の奇妙なイケメンは俺に顔を近付けて来ッギャーーーー!!
「う~ん、出来れば小生の嫁の一人に欲しいところだけど……顔が並だなぁ」
うるせえブン殴るぞ。
お前の顔を俺と同レベルにしてやろうか。
「まあいっか。焦っても仕方ない」
なに、なんだって?
焦って選ぼうと思っても「いやぁ、これはなぁ……」って言われるレベルなの俺。いくら相手が憎きイケメンでも、拒否されるとショックなんだが。
無意識におたまを捻らんばかりに握り締めてしまった俺に、黒髪片目隠れイケメンは「フフッ」とか言って笑って、人差し指で俺の鼻の頭をツンとつつきやがった。
「美味しかったよ。キミの料理も、キミも、ね」
「…………………………」
笑い掛けられて、全身がゾワッと総毛立ち言葉が出なくなる。
まさか、自分がそんな少女漫画のヒロインが言われるようなアレな台詞を言われるなんて思わなかった。完全に予想していなかったのだ。
だから硬直してしまったのだが、そんな俺に構わず、いつの間にか黒髪の片目隠れクソイケメンはどっかに消え去ってしまっていた。
「ヒッ……ひ……ヒィイ……」
変な気持ち悪い声しか出てこないが、今回ばかりは許して欲しいと思う。
だって、あんな、あんな言葉初対面のヤツに言われてゾワッと来ない奴いるのか。漫画でヒロインが言われるなら別に気にしないけど、現実で生身の人間に言われたんだぞ。どう考えても相手がおかしいだろ。初対面の男に言うセリフじゃねーだろ!
「お、お、恐ろしい……恐ろし過ぎる……塩……塩撒きたい……」
掃除しなきゃ行けないから塩を撒けないが、マジで寒気がしたので自分にだけでもと思い、厄払いで頭や肩に必死にパラパラして叩き落とす。
ついでにナンマンダブと手を合わせたかったが、そこでようやく落ち着いて俺は息を吐いた。ああ恐ろしかった……女の子はよくあんなのに耐えられるな……。
いや、他の人は別にイケメンに憎しみを抱いてないいから良いのか……心が広いなみんな……俺は無理だったよ……。
「旅してるとあんなヤツにも出会うんだな…………気を付けないと……」
人が多い場所となると、それだけヘンなヤツも現れる確率が増えるって事か。
ああもう早く終わらせて戻りたい。
俺は素肌に触れる指輪をシャツの上からぎゅっと握りながら、ひたすらいい塩梅になるまでスープに集中して平静を保った。スープだ。今はスープに集中するんだ。
そうしてきちんとスープを完成させた俺は、すぐさま後片付けをして、かまどの火も消し残った薪を受け付けに返すと、脱兎のごとく外で待機している馬車に戻った。
「うわっ、そんなに急いでどしたのツカサ君」
「ムゥ、夕食の用意がととのったにしては、妙に慌てているようだが」
「べ、べ、別に……あの、その……夕食はその、山を下りてから食べよ。なっ!」
イケメンにビビッて帰ってきました……とは言えず、つい二人の声に言葉を被せてしまったが――――ブラックとクロウは顔を見合わせると、何故だか苦笑して馬車を発進させてくれた。ま、まあ、とにかく宿とはオサラバだ。
けれども何だか妙に嫌な気分が残ってしまい、御者台で揺られながら足をもぞもぞと動かしていると、ブラックは笑いながら俺の肩を抱いて強引に引き寄せてきた。
そうして肩当て付きのマントを広げて、俺を肩からすっぽり包んでしまう。
「わっ、わ、ぶ、ブラック」
「ちょっと寒いんだよ、この辺。山の中腹ぐらいだからね。ベランデルンの側も高地だし、このくらいなら誰も気にとめやしないって」
「う……うぅ……」
俺の背中から腕を回して手綱を握るブラックの熱が伝わってくる。その温かさが、不思議と俺の心を安心させてくれた。とはいえ、やっぱり恥ずかしい。
確かに、周囲を見ても誰も俺達の事を気に留めていないけど……なんだかこうして縋っている自分が一番恥ずかしくて、俺は頭までマントの中に入って隠れた。
「あはは、ツカサ君たら恥ずかしがり屋さんだなぁもう」
そう言いながらも、ブラックは笑うだけで。
暗く温かいマントの中は、外の喧騒と馬車の振動も遠く、ブラックのにおいだけしか感じなくなって、俺はその事に無意識な吐息を漏らしていた。
…………自分が情けないけど、でも……安心する。
どうしてブラックと一緒にいると、こんな風に近くに居ると安心するんだろう。
恥ずかしい事だし、男として情けない事だと思うのに、それでもそういう感情以上の安堵で胸がいっぱいになって、身を寄せたままでいたくなる。
男がそんな事してんなよと俺の理性が半目になるけど、それでも……シャツ越しに握り締めたブラックの指輪と対の……こ……婚約、指輪を思うと、なんだか胸がドキドキして、寒気もトリハダも消え去るくらいあったかくなって安心して……。
「えへ、へへへ……つ、ツカサ君、もういっそ僕の股の間に座っても良いんだよぉ」
「…………」
こんな事を言われてイラッとはするけど……そう言えば、さっきの初対面野郎とは違って、なんの怖さもないな。むしろ「ブラックの野郎またか」ぐらいの感じだ。
呆れることはあっても、それで逃げ出したいなんて微塵も思わなかった。
でも、その……でもさ、そう思うのって、その……ようするに……。
「あっ……ツカサ君なんか体温上がった?」
「なっ、なんで解るんだよ!?」
流石にそれはおかしいだろ、とマントから飛び出すと、ブラックはいつもの山賊のような顔をしてニヤニヤしながら俺を見た。
だけど、なんだか薄暗い顔色になっている気がする。
どうしてだろう、と思っていると、ブラックがちょいちょいと先を指さした。
「見て見て」
「……?」
素直にその指の示す方を向いて――――――俺は、あっと声を上げた。
「うわ……っ。な、なにこれ……!?」
薄暗い――水琅石のランプが高い場所にまで吊るされた、薄暗くも眩い空間の中、登る人々を照らす螺旋の道と降りる人々を照らす螺旋の道が交差して、巨大で広大な縦穴の洞窟を行き交っている。
きらきらと光る水琅石のランプは遠くの壁や天井まで掛けられていて、見えない程に高い天井を見上げても、最早星空のようでまったく恐ろしさは無い。
そんな仄明るい空間を、数えきれない人々が上へ下へと移動しているのだ。
この光景は、確かに他では見た事がない。
洞窟の形状も相まって、まるで卵の中に作られた回廊のようだった。
「へへ、やっぱり驚いてくれたね。ここは【ノルダン砦】の名物であり重要な出入り口、天然の縦穴洞窟を人の手で彫り上げて造った【螺旋回廊】なのさ」
「こ、これも……人の手で……」
これほど何度も輪を描き下って行く回廊を、人が作ったのか。
螺旋階段のような物といえば簡単に想像出来てしまうが、しかしそれを長く続く道として作るのは、途方もない力と時間が必要だっただろう。
二本の螺旋を作るとなれば、どれほど人が必要なのか俺には想像できない。
そんな道を、あれほどまでに美しく交差させて作るなんて、すごい。
凄いとしか言いようがなかった。
「うわ……しゃ、写真とりたい……っ」
こんな風景滅多にあるもんじゃないって。
思わずそう呟くと、また隣でブラックが笑った。
「ツカサ君の目、キラキラしてる」
「えっ……」
「そういう顔、ほんとたまんないなぁ……」
そう言って、ブラックは手綱を握ったまま俺に顔を近付けると。
軽く、音を立てて、触れるだけのキスをした。
「ッ……! ~~~~~~っ……ば、ばかっ、こんなとこで……」
「安心しろツカサ、薄暗いし皆道の方を見ているから気が付かないぞ」
「うぁっ、く、クロウまで……っ」
後ろから這い出てきたクロウが俺の頬に音を立ててキスをするのに、耐え切れなくなって顔が痛いくらいに熱くなる。
だけど二人はそんな俺を見て微笑むばかりで、何も言わなかった。
……み、見透かされてるみたいで、なんかもう、恥ずかしい……。
でも、そういう気持ちしか湧いてこない程度には……俺って、二人の事をそれなりに「特別」だと思ってるんだよな……。
「…………うぅ……」
そう思うと、また自分が恥ずかしくなってしまった。
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