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巡礼路デリシア街道、神には至らぬ神の道編
交合※
しおりを挟むこのライクネス王国がいかに【大地の気】に満ち溢れ、夜も光の粒子が舞うほどに明るかろうと、その光に体を内側から温めるような熱はない。
生命の根源などと言われる存在であっても、外界を彷徨っているそれらは人族の体に対しては何の恩寵も与えてはくれなかった。
思えば、それはこの国に初めて訪れた時に悟り、また一つ「外の世界」に落胆した要素だったような気がする。
(ま、今は何でもかんでも癒すようなモンじゃなくて良かったと思うけどね)
そんな万能の存在がライクネス王国にのみ多量に見つけられるとなれば、世界は今も戦に明け暮れて、彼が見る世界は陰惨なものになってしまっていただろう。
万能とは不平等を同時に生じさせるものだ。誰かに知られていなければ幸せだが、その力が一たび領域外の存在に知られれば、必ず争いや邪な感情が生まれる事になる。だからこそ、神などと言うふざけた存在はブラックにとっては欺瞞の象徴にしか思えなかった。自分が散々その不平等を味わって来たからこそ、なおさら。
けれど、今はそのように理不尽な怒りを他者に撒き散らす事は無い。
たき火の炎の光にすら負ける、まるで星の光のように微かな大地の気は、人族の誰にも特別に目を掛ける事など無い。ただ、そこに存在するだけだ。
大地の気が自然を潤そうと枯らそうと、それは人が制御出来得るものではないし、人が奪い尽くせるものでもないのだ。
それを思えば、自分の隣にいる存在が与えてくれるものが一層得難いものなのだと感じさせて、ブラックの中の形容しがたい感情は長らく底に沈んでいた。
(……自然相手に腹を立てるなんて、バカだったな我ながら)
誰しも、何かが憎くて憎くて仕方がない時は有る。
だが、そう振り返る事が出来たのも自分の心に余裕が出来たからだろう。そんな事を思いながら、ブラックは目の前のたき火に枯木を放り込んだ。
――今日は思いがけず旅程の短縮が出来て、目的地の一つ目である【国境の砦】に近い森に身を置く事が出来たが、ブラック達はそれ以降も森の中に留まり、一泊する事を選んでいた。
何故砦の宿屋で休まず、森で野宿をする事にしたのかと言うと、それはある懸念が湧き起こったからだ。
……急ぐ旅ではあるが、しかし立ち止まらざるを得なかった理由。
その理由とは、ツカサの両足が上手く動かなくなったからだった。
(動かなくはないんだけど、触ったらびっくりするぐらい冷たかったんだよねツカサ君の両足……。お風呂に入ればどうにかなるかもって言ってたから、熊公の能力も使って岩風呂をこさえてはみたけど……ツカサ君大丈夫かなぁ)
パチパチと爆ぜる炎を見つめつつ、ブラックは足に肘を置き頬杖をついた。
光は有れどやはりたき火がないと薄暗い森は、それだけで旅人の目には危険そうな場所に映る。夜は凶暴なモンスターが活動的になる時刻ゆえ、熊公にツカサの湯の番をさせているが、本当に大丈夫だろうか。
そう思うと眉間に皺が寄ってしまい、ブラックは自分のひげが伸びた刺々しい顎を指でざりざり擦った。
(はぁ……どうも駄熊とのじゃんけんは苦手だ。早さが互角なのか、どうも次の手の予測が出来ない……本当なら僕がツカサ君と一緒に風呂に入ってたのに……)
介助役が必要だろうと申し出たは良いが、それが元で横恋慕熊と争いになり、結局こうなってしまった。こんな事になるのなら言い出さなければ良かったと思っていると――少し遠くの方で、酷くゆっくりとしてぎこちない葉擦れの音が聞こえた。
これは、普通の足音ではない。
警戒心の欠片も無く土をずって近付いて来る音は、あとほんの少しの距離になると足を止めて、何をするかと思ったら小さく「んっ、ん……」と声を堪えるような音と、軽く何かをぱんぱんと叩く音が聞こえた。そのわかりやすい音に苦笑する。
だが相手はブラックが悟っている事にも気付かず、精一杯の虚勢を張って「いつものように」足を動かして野宿場所へと戻ってきた。
「おかえりツカサ君」
「おうっ、ごめんな一人でたき火の番させて。今クロウが入ってるから、交代するのはちょっと待っててくれよな」
そう言いながらずんずん近付いて来て、なんの疑いも無くブラックの隣に座る。
相変わらず可愛い恋人だなと思って横を向くと、ツカサは濡れそぼった黒髪が艶々と光り、いつもより少し大人しい髪型のせいか、やけに色っぽい雰囲気になっているように見えた。
思わず息が止まるが、ツカサは薔薇色の頬を隠しもせずにブラックを見上げる。
その顔は、あまりにも可愛らしかった。
「あは……ツカサ君、足の具合はどう……?」
さすがに昨日の今日で襲おうとすると口も聞いて貰えなくなるので、なんとか興奮を堪えてブラックは顔だけニコリと笑って見せた。
目の前の男がそんなさもしい努力をしていると言うのに、ツカサはブラックの真意など気にせず、素直に頷いて「どうだ元気だろう」と言い出さんばかりに、ニカッと笑い返した。
「おかげさまでだいぶ楽になったよ。明日には普通に歩けるようになると思うぜ」
そう言って殊更元気に笑って見せるツカサに、ブラックは弧に歪んだ目を細める。
(うそばっかり)
何度口にしたか知れないその罵り言葉だったが、今は冷えた気持ちにならない。
それどころか、目の前の少年の“少年らしい”純粋な意地を見ていると、体が自然と熱くなった。本当にツカサは何から何までブラックを興奮させてやまない。
そんな意地を張るのは、自分を弱く見せたくないからでもあろう。
だが、ツカサはそんな意地の中に「ブラックに迷惑を掛けられない」という気持ちを隠している。それゆえに、いつも無謀な意地を突き通そうとするのだ。
時にそれが失敗を齎す事もあるが、それでもブラックはツカサの献身を含む意地がたまらなかった。それもこれも、ブラックを好いての事だからだ。
この自分を心底好いているからこそ、ツカサは一層男らしく在ろうと空回りする。
そうして、いつもいつも自分が未熟で脆弱な存在である事を思い知らされ敗北するのである。その滑稽で愛おしい様が、いつも心を震わせて興奮を煽った。
(精一杯強がってるけど、さっきから足をさすってるし……なにより、こんな風に『元気いっぱいだ』って見せつけて来る時って、大概が空元気なんだよね、きみは)
久しぶりの風呂だし痒いな、なんて意味の分からない事を言いながら足を擦るのを見て、誰が「そうか久しぶりの入浴だからな」なんて思うのだろうか。バレていないと確信しているとしたら、それこそバカの所業である。だが、ツカサは本当に真剣に取り繕っているのだ。
本当は違和感で心の中がいっぱいになって不安なくせに、泣き言一つ言わずに明日の旅程の事を心配して我慢しようとしている。
そんないじらしさが、胸を締め付けてどうしようもない。
「……でさ、ブラック。明日はもう国境の砦に到着しちまうからペコリアを呼べないけど、砦を越えたらどっかでもう一回、出来ればロクショウ達も一緒に……」
今後の楽しい予定を語って、自分の不安を散らそうとでも言うのだろうか。
それで目を逸らして足の不具合が改善されるわけでもなかろうに、実に愚かで頭の悪い算段だ。ブラックの中の冷静な部分がそう冷笑するが、それでも手に取るように分かる相手の空回りな努力と気力を思うと熱くなって。
「つーかーさーくん」
「わあっ!?」
ついつい、相手の両脇に手を差し込み、自分の胡坐の上にご招待してしまった。
「ね、僕の膝の上の方がもっとあったかいよ」
そう言いながら、背中に回していた外套を引き寄せすっぽり包んでやると、ツカサは案の定ぎゃあぎゃあと慌て出す。
「ばっ、ばかやろっ、俺はなぁっまだお前らのした事を怒って……」
「う~んそれはゴメンってばぁ。だからさ、お詫びとして……僕に、ツカサ君の足……温めさせて……?」
耳に擦り寄り、わざとらしく低い声で囁くと、腕の中の小さな体がびくんと動いて硬直する。思わず暖かな体に手を這わせたくなったが、理性で堪えてブラックは相手の小さな耳に唇を軽く触れさせた。
「っ……」
腕の中のツカサが、小さく息を吐く。
風呂上りで上気した肌が色付いており、頬も薔薇色だ。
自分の肌とは少し違う健康的な明るい肌色のせいか、仄かに熱で赤らんでいる様は無垢な存在を思わせて、無意識にブラックの雄を煽った。
「隠してたって、婚約者の僕にはちゃあんと分かるんだからね……」
「んっ……!」
すっぽりとマントで包んで外界から遮断した暗闇の中で、ブラックは恋人を抱いたままの手を器用に動かし、ツカサのズボンの裾を上へずりあげて足を触る。
と、思った以上にひんやりとした感触を得てブラックは一瞬動きを止めた。
(……これは……ちょっと甘く見てたな……)
内心驚いたが、それをツカサに気取らせないように指でそこを撫でる。
「ちょっ……え、えっちな撫で方すんな……っ」
「え~別に変な触り方なんてしてないよぉ? ……でもさ、ツカサ君……やっぱり、足冷たいまんまだよ。……お風呂入っても治らなかったんだね」
「う……」
バレた、と、ツカサが気まずそうな声を出す。
さもありなん。先程ツカサは「平気だ」と言ったのにこのザマなのだ。彼にとっては虚勢が判明したも同然で、かなり恥ずかしかろう。
だが、ブラックは気にせず指を動かした。
「ほぉら、温かいはずの靴の中のくるぶしもふくらはぎもこんなに冷たくなって」
「あっ、わ、わかったっ、わかったからもう撫でんなって……っ!」
足を触るだけで恥ずかしさに身を捩るツカサに股間が反応しかけるが、これもなんとか我慢してブラックは小さな体をただ抱き締めるだけに留める。
すると、ツカサも「そういう事をしたいのではない」と認識したのか、抵抗しようとする力を緩めた。……まあ、ツカサごときの抵抗などなんの意味も無いのはいつものことなのだが、それはともかく。
身を委ねてくれるようになった相手を更に深く抱いて、ブラックはツカサの肩に顎を乗せると、頭で首筋にすりすりと擦り寄った。
「急ぐ旅だからって我慢するのは分かるけどさ……でも、僕とツカサ君は恋人同士でもう婚約もしてるんだよ……? 甘えて良いんだから、もっと甘えてよぉ」
どっちが甘えているんだと言う声を出すが、ツカサはブラックのねだる口調に慣れ切ってしまっているのか、更に頬を紅潮させて軽く俯く。
そんな様子が可愛らしくて頬に口付けすると、ツカサは熱を上げて身を固くした。
だが、触れている足は一向に熱を持たない。そのことに少し焦りが生まれつつも、ブラックは殊更あまえるようにツカサの首筋を唇で何度も食んだ。
「っ……は……っ……」
「僕に頼ってくれれば、風呂なんて回りくどいことせずにあっためてあげるのに」
「ぅ……え……?」
首筋を食むたびに軽くひくひくと反応していたツカサの小さい体にぴったりと己の体をくっつけて包み、体内に宿る己の炎の曜気を巡らせる。
すると、すぐに指先に走らせた炎の曜気が外に流れて行くのを感じた。
(…………)
思う所が在ったが、今は考えずに指の先から己の曜気を外へ……いや、ツカサの体に曜気を流していく。
すると、ようやく指で触れた方のツカサの足にぬるい熱が宿り、気が巡り始めた。
「ぁ……あ……っ……」
「ほら、こうやって僕がツカサ君に熱を与えてあげる事も出来る……」
腕の中で震えるツカサに囁くが、相手はその声にすら敏感に反応してしまうのか、ブラックが耳元で何かをいうたび目を細めて歯を食いしばっていた。
もしかして、感じているのだろうか。
(ぼっ……僕の、指で……僕の曜気で……? ふっ……ふふっ……そ、そんなっ……そんなのって…………)
何かがおかしい。理に反している。
ブラックの理性は冷静に予測をはじき出すが、しかし腕の中で悦楽に震える愛しい存在を感じてしまうと、もう建前も思考もかなぐり捨てたくなってくる。
なにより、ブラックの行為にツカサが感じ入ってしまっていると知ってしまえば、最早現状の問題をどうにかしようという考えなど霧散してしまっていた。
「ツカサ君……」
「あっ……! や……や、だ……っ!」
幼さを色濃く残す甲高い喘ぎ声が漏れ始めている。
抱き締めたままシャツの中に手を潜り込ませ、ツカサの素肌の脇腹を触れば、拒否をしているはずの相手は面白いように反応した。
普段は、こんなにあからさまでは無い。明らかにツカサの体はおかしくなっている。だが、その原因が恐らく自分であろうことを思えば、止まれるはずもなかった。
「ねぇツカサ君……ね……こういうこと出来るの、僕だけだよね……?」
「ぅあっ、……あ、あぁっ……」
「ほら……ツカサ君のココも、足と一緒に熱くなってる……」
そう言いながら、強引にズボンの中に指を入れれば、ツカサは一際高い声を上げて驚きに体を跳ね上げた。
「やだっ、や……っ、も……きっ昨日……したの、に……ぃ……っ!」
「そうだよ、昨日僕はツカサ君のおかげで、ツカサ君の美味しい精液のおかげで元気になったんだ……。だからさ、ツカサ君……今度は、ぼ、ぼくのっ……僕の、ふっ、ふはっ……こ、濃い精液で……試してみようよぉ……! きっとツカサ君、すっごく元気になるよ……」
「そっ……な、バカ、なっあ……あぁあ……っ!」
「ほら、ツカサ君もおへそずぼずぼしただけでズボン張っちゃってるじゃないか」
大人の人差し指では少し小さいかと思われるほどの形の良いへそを、無遠慮に指で弄り回して緩く抜き差しを繰り返す。
内臓に近く劣情とは無縁であるはずの部位なのに、ブラックに愛撫を繰り返されるとツカサは苦しさの中に被虐的な快楽を見出すのか、膝に押し当てられた尻が頻繁にびくびくと揺らぐ。
へそ内部のひだを丁寧に一つずつなぞり、奥へ指を何度も突き込むと、ツカサは太腿をぎゅっと内に寄せ、女のように股間に集まる熱を抑えようと精一杯力を籠めていた。雄の膝の上でそんな抵抗をするなんて、とても大胆だ。そんなことをすれば、相手を煽る淫乱だと思われても仕方がない行為だと言うのに。
けれど、ツカサは相手を籠絡する計略など露ほども考えていないに違いない。
そんな無垢で愚かなところも、愛しくて可愛い。逃げればいいのに、逃げようともせずブラックの手を受け入れてしまっている無意識の好意がいじらしい。思えば思うほど、もっと虐めてやりたいと思う気持ちも湧いて、ブラックはついツカサに意地悪な事を囁いてしまった。
「んふ……ツカサ君、本当におへそ弱いよね……。ここ、性感帯じゃないんだよ? 赤ん坊と繋がるための場所なのに、こんなに乱れちゃって……」
「だっ、ぇ゛、うぐっ、う゛っあ゛ぁ゛あ゛! あ゛ん゛っ……~~っ!! あん、た……がっ、い、いじるっ、から゛……ぁ……!」
可愛くない声を可愛く漏らして、ツカサは涙ぐみながら背を反らす。
腹へ行われる事への精一杯の抵抗なのだろうが、そんなものはブラックの体に身を委ねる行為にしかならず、ただただ情欲を煽るだけだった。
(あぁ……ツカサ君可愛い……っ、僕の腕の中にすっぽり収まって、目一杯やらしく体をくねらせて……! そんな風にされたら、久々過ぎてもう我慢できないよ……っ)
何日ツカサとのセックスを我慢したと思っているのだろうか。
いや、この腕の中の愛しい恋人は、そんな事など思いもよらないに違いない。その幼い見た目以上に耳年増で女体に目が無いくせに、自分の性的な行為に関しては目を疑うほど初心で無知な少年なのだ。
きっと、ブラックが途轍もない劣情を我慢してツカサを抱き寄せ眠った事だって、ツカサにしてみればなんでもない事だったに違いない。
性欲が薄いと言うワケでもないのに、ツカサはそういう処女めいた面倒臭さのある少年なのだ。けれど、そんな純粋なじれったさが、ブラックには好ましかった。
だからこそ、今こうして彼の快楽を無理矢理引き摺り出す事に、信じられないほどの興奮と劣情を感じているのである。
意地っ張りで純粋で淫乱な恋人を、腕の中で誰にも見せずに堕とす。
それがどれほど優越感と悦楽を味わわせるのかなど、比べようも無かった。
「ツカサ君……っ、ね、セックス……い、挿れるだけっ……すぐ入れて一緒に気持ち良くなるだけだから……っ! セックスしよ、ねっ、せ、セックスしようよぉっ」
「だ、だぇっもっ、こ、こん、ら……ぁっあぁあ!」
ベルトを寛げ、一気に下着の中に手を入れる。
まだ湯の名残でほこほこした狭い股間は熱く、ブラックの大人の手ではすぐに覆いこんでしまう。余った掌底に触れる無毛のつるつるした丘は、ザラついた掌の端で軽くこすると、それだけでツカサは甘く啼いた。
「ほら、ツカサ君の体も僕のペニスを欲しがってるじゃないか……」
己の股間を制御しつつ、十七歳とは思えぬほどの稚茎を揉み込み勃起させながら、ブラックはツカサの頬や口の端に横から何度もキスを繰り返す。
直接的で激しい刺激では無かったのだが、それでも昨日から体調がおかしかったらしいツカサはすぐに目を潤ませ、はぁはぁと熱い息を漏らしだした。
こうなると、もうツカサも逃げられない。
ブラックは無意識に口をだらしない笑みに歪めながら、誰にも見えないマントの中でツカサのズボンと下着をずらし、己も股間を寛げる。
湯の中でほころんだ谷間に遠慮なくペニスを押し付けてゆさぶると、ツカサは顔を羞恥や苦痛を含んだ快楽に歪めながら、いやだと必死に首を振った。
理性では無く、もうほとんど残っていないなけなしの虚勢で拒否をしているのだ。
そんな無駄な抵抗を毎回見せて来るが、残念ながらその虚勢も男の征服欲を煽る催淫剤にしかならない。当然、ブラックも抑えが利かなくなってしまっていた。
「はぁっ、あ……つ、ツカサ君……っ、ほらぁ、おっ、お風呂に入ったから、お尻が柔らかくなって、僕のペニスにちゅっちゅってキスしてきてるよぉ……っ」
「ひぐっ、ぅ……うぅ……」
ツカサは「違う」と首を振るが、先走りに濡れたブラックの怒張に触れて蠢いているのは、誰が見ても明らかだ。他に見せる予定はないが、しかし確かに自分の欲望をツカサの体が欲しがっているのだと思うと、そこでもう射精してしまいそうだった。
「ツカサ君っ、も、もう我慢できない……っ。は、はやっ、あ、早いけどっ、い、い、挿れちゃうっ、もうペニス挿れちゃってもいいよねっ、ツカサ君とセックスして良いよねぇっ!」
「っひ、やっだぇっまっ、待っへ、まっぁ……――――!」
命乞いをするように喘ぎ声の中で必死に懇願したツカサを――――予告もせずに、一気にペニスで穿つ。
その衝撃にツカサは思いきり体を弓なりに反らし、体を波打たせて絶句した。
久しぶりの男根を受け入れて、体がいつも以上の衝撃を受けたのだろう。
声を失った時に一瞬意識が飛んだようだったが、ブラックは構わずにツカサの腰をがっちりと手で捉え、座位のまま下から無遠慮に突き上げた。
「あぁああ! やっあ゛っ、ひぐっひっあ゛っあぁあっあっ、あっあぐっ、ぅっ、うあぁあっ、や゛、ぁ゛っ、あぁあ゛あ゛あ゛……!」
奥を目指して腰を大きく揺らしつつ、時折ツカサの泣き所を強く押して何度か抜き差ししてやると、相手は面白いように反応して腰をびくつかせた。
その動きと共にきつく内部が締まるのが、なんともいえず心地良い。
齢十七を数えるというのに、男らしさより少年らしさを残したその未成熟な体付きは、ブラックがかつて想像していた感触とはまるで違う。
男としての筋肉の硬くしなやかな張りも、筋張った硬さも、骨太さもない。
通常ならすぐに失われてしまう、性別が曖昧な年頃特有の“女とは違った柔らかさ”を残した体躯は、一度味わってしまえば忘れる事も出来ない。
それに、体格差によるのかもしれない内部の強い締め付けと蠢きは、今まで以上の快楽をブラックに齎し、腰を動かす以上の事を出来ないように誘うのだ。
こんなに淫乱で蠱惑的な体を前に我慢する事など、実にばかばかしい。
もっと、もっと快楽が欲しい。今はそれが一番正しい事だ。
愛しいツカサがくれる極上の気持ち良さを、もっと享受したい。
一度セックスを始めてしまえば、そんな浅ましい事しか考えられなくなる。
なにより、こんな卑しい欲望を一心にツカサが受け止めてくれる事を思えば、最早腰を留める事など出来ようはずも無かった。
「ツカサ君っ、つ、つかさくっ、う……うぐっ、ぅ……っふ……っ、ぅ、ぁ……っ!」
「や゛ぁあ゛あ゛っ! ひっぃ゛ぐっう゛っ、や、ら゛っも゛っぁ、あぁあ゛!」
更なる快楽を求めて最奥まで強く突き上げれば、ツカサは幼獣のような可愛らしい声をあげて涙を散らす。
もっともっと心地良い締め付けを求めて、深い場所に入ったままで掻き回すように動けば、ツカサは狂ったように啼き声をあげながら喉を曝した。
もっと奥まで行ってもかまわないが、ツカサは恐らくそこまでやれば狂うだろう。
(っ……さ、さすがに……それは我慢、かな……っ)
まあ、よがり狂ったツカサという最高にいやらしい姿を見たいとは思うが、彼の体はその前庭の部分もまだ未開発な所が多く、刺激は行き過ぎると危険でもある。
それに、こんな場所で、今のような気絶も出来ない状態で失神寸前まで長々と追い込めば、彼が今度こそ本当に怒ってしまうかもしれない。
それを思うと急に明日が惜しくなってしまい、ブラックはなんとか自分の暴走ぎみな欲望を抑えると、ツカサを深く抱きこんで覆い被さった。
「つっ……つかさくっ、う……ツカサくんっ、だ、出すよ……っツカサ君のナカに、僕の濃い精液だすよぉ……っ!」
小さな体を抑え込み、ちっとやそっとでは流れ出る事も出来ない奥の間にペニスをぎりぎりまで打ちつける。
その衝撃にツカサは口を大きく広げ声にならない声を出したが、その緊張によって一段とブラックのペニスを締め付け――――精液を搾り取るように蠢いた。
「あっ、ぐ……っ! うあぁ……っ!!」
ブラックが想像していたものの倍以上の堪え切れない気持ち良さに、思わず全身が硬直する。刹那、腰が震えて勢いよく熱が放たれた。
「――――――~~~~……!!」
自分でも大量の精液が解放されているのが分かる。
ツカサのナカもまた、その熱さを感じているのかびくびくと痙攣していた。
しかし今回はいつもとは違って、貪欲なまでに収縮を繰り返し、まるで男の精液を求めるようにブラックのペニスに絡みついてきゅうきゅうと締め付けて来て。
「んっ、あ゛っ、あぁっ、つ、つかしゃく……へぐっえ、あ゛っ、こ、こんなっ……え、えっちすぎるよぉっ……!」
思ってもみない事後の快楽に、ブラックは思わず間抜けな喘ぎ声を出してしまう。
だが、ツカサも無意識なのか感じ入って声も無く震えており、意識はあるものの何も答えられないような有様だった。
ブラックもこのまま心地良さに昇天しそうだったが、なんとか踏み止まって、精液を残らず出し切り体をぶるりと震わせた。
(はぁ……あ……。な、なんにせよ…………これは大変なことになったかも……)
お互いに荒い呼吸を漏らしつつ、ブラックは繋がったままツカサの体を自分の胸に凭れかけさせる。すると、ツカサは力なく頭を預け空を見上げるような格好になり、ひたすらはぁはぁと熱い息を繰り返し漏らしていた。
幾筋も涙を流し、鼻水とよだれで顔がぐちゃぐちゃになっているが、それでも今の彼は意識を失う事が出来ない。霞がかった思考に苛まれ、快楽の海を彷徨っているのである。それがツカサにとってどんなに苦しいかは、推して知るべしだろう。
無理もない。彼にとって、気絶は己の意識を逃がす唯一の手段なのだ。
ツカサが強烈な快楽に意識を飛ばすのは、彼にとっては防衛本能の成す業に他ならない。未だに「自分は男である」というワケの分からない価値観をもっているツカサにとって、恐らくこうした「メスとしてのセックス」は非常に精神に負担がかかり、気持ち良ければ良いほどつらくなるのだろう。
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ブラックの恋人であり婚約者であるツカサをこんな面倒な状態にしたのが、あんな鬱陶しい貴族なのだとしたら、どうしても我慢ならなかった。
「……っ、ら……っく……」
「はぇっ」
呼ばれて軽く首を動かすと、蕩けた顔でこちらを見上げているツカサがいる。
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それがキスを受け入れた合図なのだと思うと急に嬉しくなって、ブラックはツカサの体を抱き締めながら何度も角度を変えて口付けた。
今は、とりあえずツカサとの久しぶりの快楽に溺れる事にしよう。
足のこともなんとかなったのだし、明日はきっとツカサも全快するはずだ。
本来ならあり得ない事をすんなりと考えたが、それは恐らく実現するだろう。
そう思えば少し怖い気もしたものの、ブラックは次第に難しい事を考えるのも放棄して、ツカサとの交合に溺れて行った。
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