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海洞都市シムロ、海だ!修行だ!スリラーだ!編
熊さんは17DKがお好き2
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夜間の飛行は危険だし、そもそもロクショウに一日に何度も長時間の飛行を強いるのも可哀想だったので、俺達は馬車で少し距離を稼ぎラッタディア郊外にある小さな集落に一旦留まる事にした。
早く修行したいのはヤマヤマだが、ロクショウを必要以上に酷使したくない。
ロクは「まだ飛べるよ!」とやる気マンマンだったけど、ロクは頑張り屋だから俺の期待に応えようと無理をしている可能性もあるからな。
修行明けでまだ慣れてないのに、無理をさせるなんて以ての外だ。うむ。
だから、今日はお腹いっぱいご飯を食べさせて、ゆっくり休ませてあげるのだ。
なんてったって、ロクは今まで俺達と一緒に旅をするために頑張って「小さな姿になる変化の術」の修行してくれてたんだからな! たくさん労ってやらねば。
もちろんその準備は万端だ。
この時の為に、俺は既にセレーネ大森林でヒメオトシ(ノイチゴのような果実)をたくさん摘んできたし、肉屋さんでフンパツして良い肉を買っておいた。
あとは宿の人に頼めば料理してくれるってスンポーよ。
ブラックには「無駄遣いじゃない?」と言われたが、ロクのお蔭で陸路を使うよりずっと節約できたからな。これくらいなんてことはない。
それに、やっぱり好きな物を食べさせてあげたいからなあ。
ロクショウはヘビなのに肉食獣のような牙が有るが、俺達と一緒で肉も果実も魚だって食べる。特に、甘い物は大好きなんだ。へへへ、可愛いよな。
そんなデレデレの俺にブラックは不満げだったけど、この肉は俺達も食べるんだしなによりクロウも食べるのだ。お祝いだから良いだろうとなんとか説得した。
いや、クロウの分も有ると聞いて余計に機嫌が悪くなったような気もしたが、ロクショウの事があるからセーフだったと言った方がいいのだろうか。
……まあ……クロウが帰って来るって聞いて、ずっとぶすくれてたからなあ。本当にイヤだったのは、クロウが帰って来る方なのかもしれん……いや深く考えまい。
そんなわけで、ロクショウのために特別に宿の親父さんに肉を焼いて貰い、夕食はこれ以上ない豪華な焼肉パーティーとなったのだが……そこは割愛する。
何故なら、オッサン達が酒を飲みまくって本当に煩かったからだ。
俺だって異世界では成人なのに、ブラックは酒を飲ませてはくれない。そのくせ、俺の目の前でガブガブと酒を美味そうに飲むんだから我慢ならないんだ。
それに、オッサンに挟まれてのメシもかなりアレだった。
右側からは酔って上機嫌になったオッサンが懐いて来るし、左はメイド服のままでソレを物ともせずに平然とメシ食ってるし、なによりゼロ距離だ。肩がガッツリ触れ合ってしまっている。距離が近すぎて色々つらい。
これで普通にメシを食えという方が無理だろう。俺意外と繊細なんだぞ。
しかも、こいつら肉食って酒飲んでしてると、調子に乗って宿の親父さんや他の客に見えないように、テーブルの下でお、俺の……俺の足、触って来るし……!
だから、せっかく買った肉の味もあんまり解らなかったんだよ!!
おかげで俺はあんまり楽しめず、うとうとするロクを部屋に連れ帰ってやっと一息吐くような有様だった。
「く、くそう……せっかくの肉だったのに……」
悪態をつきながら部屋に入り、ベッドのサイドテーブルに借りて来た籠を置く。
思わずギャーっと騒ぎそうになったが、しかし今腕の中に抱いている小さな相棒の事を思い出し、俺は深呼吸をして心を落ち着けた。
冷静に、冷静になるんだ俺。肉の味は解らなかったけど、ロクが嬉しそうにお肉を食べている所を見られたし、なによりロクが小さなお手手を使って肉を持って食べている姿を見られたんだからそれで良いじゃないか。
あの姿は値千金の価値がある。間違いない。
「そもそも、ロクやクロウのためだったしな……ま、いっか」
「くきゅ……」
俺の言葉に反応したのか、すやすやと眠っているロクは可愛い声を漏らす。
ヤモリのような小さな手足を軽く握って寝ている姿は、物凄く可愛い。ヘビの時の姿も可愛かったけど、黒いトカゲヘビの姿も凄く可愛いな……世界一だな……。
まったく、蛇足なんて誰が言ったんだ。ヘビに手足が有るとより可愛いだろうが。
爬虫類としての分類が違くなるだろうというツッコミは受け付けないぞ。
「よしよし。お疲れ様、ロク……明日も頼むな」
籠の中に布を敷いて、ロクの為の簡易ベッドを用意し、ロクをそっと乗せてやる。
それでも起きないんだから、やっぱり疲れていたんだろうな……修行明けだし、久々に遠距離を飛んだんだから、そりゃそうか。
態度で見せないだけで、無理してくれてたのかもな……。
だとすると、俺も反省しないと。寄りかかってばっかじゃ相棒失格だ。
ロクは優しくて頑張り屋さんだから、俺が気を付けてやらないとな。
「おやすみ、ロク」
頭を撫でると、俺は一旦部屋を出て再び酒場へと向かった。
……何でかって言うと、オッサンどもを連れて来なきゃ行けないからだ。
ああ心が重い。なんで俺が酔っ払いのムサい中年どもを部屋に連れて帰って来なきゃいけないんだよ。
つーかアイツらザルだろ。絶対に酔っぱらったフリしてるって。
なのに「ツカサ君が連れてってくれなきゃ帰らない~」なんてダダをこねやがる。
「はぁ……」
どうして、このオッサン達にはロクショウのような可愛さがないのか……。まあ、ブラックがロクみたいな言動しても、ドンビキするだけだし良いんだけどさ。
再び心がささくれながらも、俺は「酔ったフリ」をしているオッサン二人を、苦心して部屋まで運び込んだ。……ったく、風呂もないってのに汗かかせやがって。
「ツカサくぅ~ん、介抱してぇ」
「ムゥ……オレも……」
「うるさいっ! お前らはもう大人しく寝てろよ!!」
ロクを起こさないように静かに怒りながら、俺は圧し掛かっているブラックをザツにベッドへと投げ込む。すると、相手は質素なベッドに倒れた。
ギシリと嫌な音がするが、聞こえないふりをして少し離れる。
どうせ、酔ったフリをしているだけなんだ。でなければ、こんなデカいオッサンを貧弱なオレが連れ帰れるワケがない。まったくもってふざけたオッサンだと憤る俺に、背後からクロウが問いかけて来た。
「オレも寝ねばならんのか」
「当たり前だろ……明日も早いのに徹夜してどうすんだよ」
振り返ると、メイド服なのに男らしく足を開いて立っているオッサンがいる。
不可抗力だったとはいえ、やっぱりこの格好は心臓に悪い。早く目的地に到着して服が届くまで待たねば……っていうか、何言ってんのこの人。
まるで何か寝たくない理由があるみたいな言い草だが、どういう事だろう。
特に酔っているような雰囲気も無い、いつもの眠そうな顔を見上げると、クロウは俺をジィッと見つめて――――それから「ぐぅ」と腹を鳴らした。
…………ぐぅ。グウだって?
「……クロウ……もしかして、まだ腹減ってんの……?」
言葉よりも態度で示したクロウは、コクリと静かに頷く。
「ええ……あんだけ食べてたのに……?」
俺の記憶では、クロウは出されたお肉の三分の二を平らげていた。結構な量を購入したのに、完食してしまったのだ。それなのに、まだ空腹とはどういう事なのか。
クロウってこんなに大食だっけと眉根を寄せると、クロウは口寂しいとでも言わんばかりに己の人差し指を唇で食んだ。
「船では我慢して食事の量を減らしていた。だから、あれくらいの量では全然満腹にならない……」
「そ、そうだったのか……。じゃあ、なんか夜食でも出そうか?」
そう言いながら、バッグの中から【リオート・リング】を取り出そうとすると――クロウの浅黒い色をした手が、俺の手首を掴んで制止した。
どうしたのかと見返した俺に、クロウは一つ瞬きをして熊耳を少し垂らす。
「それだけじゃ足りない……」
「え……えと……」
「ああもう面倒臭いなあ! ハッキリ言えよクソ駄熊、ツカサ君の精液くれって!」
「え゛ッ」
ベッドに寝転んでいるブラックの投げやりな言葉に、思わず変な鳴き声を出してしまったが、クロウは鼻息をむふーと吹かして頷きやがった。
「いや、それはそうだが、オレはツカサから『精液飲ませてあげる』という誘い文句が聞きたかったんだ。久しぶりだし、少しくらい甘やかして貰おうかと……」
「あー、なるほど。それはちょっと見たかった」
「バカ!! バカおっさん!!」
何をアホな事をいっとるんだ!!
つーかおっ、お前精液ってお前!
いや、そりゃ、クロウは“そういうモノ”を食事として摂取出来るけども、そういう特殊な獣人だって事は知ってるけど、でもお前再会して一日目でソレって……っ。
「馬鹿ではないぞツカサ。オレは空腹なんだ……あれっぽっちでは少しも足りない。満腹になるには、ツカサの体液が……美味い精液が必要なんだ……」
「わっわっ、ちょっ近付くなってば!」
厳つい体をしたメイド服の熊耳オッサンが、徐々に近付いてくる。
慌てて離れようとするけど、狭い安宿の部屋では逃げるところも無い。
ベッド三台でギュウギュウな部屋では、すぐに壁に追い詰められてしまった。
「あ、あぁあ」
陰が掛かる。
メイド服を着た筋骨隆々な野性的オッサンは、最早目と鼻の先だ。
思わず質素な木板の壁に爪を立ててしまったが、クロウは平然とした無表情で俺を見下ろすだけで。そうして、俺の顔の横に片手を置いた。
こ、これ、いわゆるドカベ……いや壁ドン……いやお前、う、後ろにはブラックが居るのに何をしようとしてんだよ!
「ぶっ、ブラック、良いのかお前クロウがこんなことして!?」
「ええ~? クソ熊の精液補給なんて、いつもの事じゃないか。それに、僕その時の行為ほとんど見たこと無いし……まあ今回は見学ってことで」
「ヒトデナシーッ!! 裏切りものー!!」
お前こういう時だけ異様に謙虚だよな!?
何その態度、お前って奴はどうしてそう、俺を辱める事に限っては積極的にクロウにバトンタッチするんだよ! どう考えても恋人がやることじゃねーだろ!
つうかいつもの嫉妬魔神はどこ行ったんだよ!
あああああそんなこと言ってる間にクロウの顔が目の前にいいい。
「ツカサ……オレが触れるのはイヤか……?」
「ぅ……」
真正面から真面目な顔で問いかけられて、思わず声が閊える。
――――ブラックより少しだけ若い顔立ち。野性味溢れる男らしい輪郭だ。前髪がぼさぼさで目に掛かりがちだけど……でも、男らしくて格好良い顔。
その不可思議な橙色の瞳は、表情とは裏腹に感情を雄弁に訴えて来る。
俺に対して、己の欲望を真っ直ぐに……。
「ツカサ……お前が欲しい……。船に乗り故国に帰ってからも、こちらに戻って来る船の中でも、ずっとお前に触れて抱き締めたかった。空虚な食事で足りぬ腹を誤魔化しながら、ツカサの顔を、味を、ずっと噛み締めていたんだ。お前の傍に帰って来るまで、ずっと」
「っ……」
この大きな体の向こう側に、ブラックがいる。どんな顔をしているかも判らない俺の恋人が、黙って俺達の事を見つめているのだ。
それなのに、クロウは遠慮など欠片も無く俺に睦言を囁いて来る。
俺の耳をゾワゾワさせるような声で囁いて来て、それから……空いた方の手で俺のズボンのベルトを器用に外し、手を、掛けて来て。
「オレは、二番目の雄……お前を二番目に孕ませる権利がある……。ツカサが、お前自身が、オレに“そうして良い”と言ってくれたんだ。……だから……」
「っ、ぁ……!」
ズボンの留め具が、太い指で外される。
腰の戒めが緩くなったと同時――クロウの大きな手が、強引に素肌と下着の間に割って入って、一気にズボンと下着を引き摺り下ろした。
「――――――ッ!」
下半身が外気に触れ、一気に鳥肌が立つ。
だけどそれを咎める奴なんていない。
その事に俺は喉が絞まるような感覚を覚えたが――――クロウは、無意識に硬直する俺に構わず、顔を近付けて口に触れた。
「帰って来たオレを、存分に甘やかしてくれ。ツカサ」
→
※めっちゃ遅れて申し訳ないです_| ̄|○
しかも*展開までたどり着けなかった……次は確実に*です!!
申し訳ないので明日*更新します(´;ω;`)ウッ
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