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聖都バルバラ、祝福を囲うは妖精の輪編
8.嫌よ嫌よもなんとやら?
しおりを挟むこの世界の最先端技術で作られた登山用の馬車――と言われても、正直に言えばどんな乗り心地なのかは全く想像がつかなかった。
しかしいざ乗ってみると、これが驚くほど快適なのだ。
どんな構造をしているのかは馬車の下部を見れないので分からないが、とにかく振動が少なくて山道を登っている感覚が無い。
外を見てみれば小石だらけの舗装もされていない道が広がっているのに、それでも馬車は酷く揺れる事が無いのだ。その上、ディオメデの移動速度にもギシギシと悲鳴を上げる事なく、しっかり付いて行っている。
この分なら一日程度で中間地点の村に到着できるだろう。
アドニスの話によると、村と言っても山小屋が五件ほど並んでいるだけの場所で、集落と言うより休憩場所と言った方がいいらしい。
あれかな、管理者不在のコテージとかバンガローみたいな?
昔は人がいたらしいけど、今は誰も住んで居ないんだとか。まあ、バルバラ神殿の遺跡を調査するために、今は兵士や労働者が詰めてるらしいけどね。
それはそれとして……俺は、三度再会を果たしたチェチェノさんと、その子供のピクシーマシルムに驚きながらも、車中で何故ここに居るのか話を聞いた。
チェチェノさんが必要って話だったけど……一体どういうことだろうか。
アドニスが御者担当で車内を離れている間に聞いてみると、チェチェノさんはホッホと笑いながら話し始めた。
「ツカサさんは、ギガント・フォトノル・パフ・マシルム……つまり、我々長老神茸という存在が“存在する意味”を知っておられるかな」
「存在する、意味……ですか?」
漫画とかドラマだと「存在していること自体に意味が有るんだぜ!」とか言うだろうが、この場合はそんな風に返すのは違うよな。
素直に分からないと答える俺に、チェチェノさんは頷いて続けた。
「様々なモンスターを従える……いや、友に持つ君なら知っているだろうが、本来、生物は自分の種族が扱う言葉以外の言語を話せないし、それに疑問を持つようには創られていない。それは、種を存続させるために他の命を喰らわねばならないからだ。だから、モンスターも人族も、互いに話し合う事は出来んだろう?」
「ええ……心を通わせる意思が有る者同士なら話せても問題はないとは思うけど、そんな事ばっかりしてたら、飢え死にしちゃいますしね……」
俺だって、戦闘ではモンスターを殺してる訳だけど……もしあのモンスター達が人間の言葉を扱う存在だったら、矢を突き刺すのを躊躇うかもしれない。
餓死寸前で肉を食いたいからっていう必死さが無い状態だったら、どうしたって弓を引く手は一瞬止まっただろう。
しかし、いつもそんな風になっていたらすぐに死ぬだろうし、そもそも、そんな事を考え始めたら魚も植物も食べられなくなる。だから、他者の命を奪って生きる以上は「真剣勝負」「生きるため」と割り切って、戦ったり採取せねばならない。
自分の両手で抱えて守れる物などそう多くない。だからこそ、切り捨てなければならない物だってあるのだ。言葉を分断されているのは、それを促すための……言ってみれば「神様の補助」みたいなものなんだろう。
人間も命を奪って生きる生き物である以上、奪う事は避けられないんだからな。
……まあ、だから、モンスターに出会ったらガチで勝負して、殺した分はちゃんと食ったり素材を残さず貰ったりしてるけど……そう言うのは考え方の違いも有るワケだし、俺の信条を人に強要はしないけどね。
そんな俺の言葉に、チェチェノさんは髭をもふりと動かした。
「左様、それは当然の理であり、他者の命を糧にする存在として作られた我々の心を守るために在る、決して否定してはならぬ事実なのだ。……しかし、我々……ピクシーマシルムには、時を経るごとに人語を解する能力が与えられている。……これはどういう事か解りますかな、ブラックさん」
掌に乗る程の小ささに変化したチェチェノさんは、それでも俺達よりもずっと大きくて不可思議な存在に見える。ブラックもそれを感じているのか、神妙な顔つきでチェチェノさんに返答した。
「ピクシーマシルム族には、人語を解する必要のある役目を与えられている……と言う事ですか」
静かな答えに、チェチェノさんは目を閉じてまた頷いた。
「そう、本来人族とは交わらぬはずのモンスターが人語を解する力を手に入れるのは、それを行使する役目や理由があるからだ。つまり、使わぬ能力を持つ事は絶対にない……これは人族も同じでしょうな」
確かに、俺もパソコン使えるけど、それだって画像収集しなかったらやんなかったしな。使う必要がるから使える能力が有るって事で、携帯機器で満足な人は俺のようにパソコンなんて使わないだろう。
でも、なら、チェチェノさん達長老神茸が人語を解せる理由ってなんだ?
「あの……その、人語を使わなきゃ行けない役目って……?」
「……我々長老神茸は、普通は森の奥深くに根を張り木々と一緒に暮らすものだが、森を出ねばならない時が来る。それが……」
「人語を使う役目のため……?」
「然り」
「なら、その役目と言うのはどういう物なんですか?」
さすがに偉大な存在には敬語を使うブラックに微妙に違和感を感じるが、まあ、他人を敬うのは大人として当然だしな。でもなんか尻がむず痒い。
ピクシーマシルムを頭に乗っけてもぞもぞと動く俺を余所に、チェチェノさんはブラックをじっと見つめ返しながら一つ瞬きをした。
「……掟ゆえ、この場では多くを言う事は出来ませぬが……しかし、人族は我々の名前に意味を見出したはず。ワシらは、ただその“縁を結ぶ鍵”を持つ物なのです。本来ならアドニス殿がその役目を担うのですが……」
「アドニスが?」
どういうことだと眉根を寄せた俺に、チェチェノさんは慌てたように目を丸々とさせて思いっきりカサを膨らませると、ぶんぶんとカサ……頭を振った。
「す、すまんが、これ以上は掟があって話せん。……アドニス殿と交わした約束も有るしの……とにかく、ワシは鍵を開けるために呼ばれたのだ」
「鍵、ねえ……」
「神殿に鍵が有るというのか。……そもそもの話、何故神殿に縁のなさそうなこのモンスターが鍵を持っている?」
鋭い所を突くクロウに、チェチェノさんは髭をもごもごさせながら目を逸らす。
「それは……まあ、そういうものだとしか言えませんな……そもそも、ワシは呼ぶ役目だけで、鍵を開ける役目はワシらピクシーマシルムの役目ではないし」
「うーん……?」
なんだかよく解らなくなってきた。
縁を結ぶ鍵の役目が有るけど、チェチェノさんは本当は鍵を開ける役目じゃないと言う事なのか? 鍵を持ってるのに開けないってどういう事だろう。
それに、チェチェノさんの態度からすると、バルバラ神殿と関係が無い存在なのは確かみたいだし……関係ない場所の鍵を開ける役目ってどういう事なのか。
つーかそもそもの話、神殿に鍵が掛かった場所が有ることを、どうしてアドニスは知ってるんだ。しかも開ける方法を知っているなら、どうしてチェチェノさんと秘密にするような事をするんだろう。
この様子じゃ、恐らくバルバラ神殿の兵士達は、チェチェノさん達とアドニスがどこかの鍵を開けられるって知らないよな。
神殿遺跡の鍵は、アドニスにとっては本来開けちゃいけない鍵ってこと?
でもじゃあ、どうして黙って調査させてるんだろう。
アドニスだって変だぞ。あいつ、本来関係が無いチェチェノさんがその鍵を開けられるって事を、どうして知ってるんだ。
チェチェノさんは確かにドラグ山の洞窟にいたけど、あの場所から動けなかったんだから、神殿に自分の役目を果たすためのモノがあるなんて知らないだろう。
アドニスがその役目を知っているのは、何故だ?
色んな国に出張してたからその筋で聞いたとか? でもこんなピンポイントな事聞ける人いるのかなあ……うーん……。
「まあとにかく、ワシはこの箱の中の皇帝陛下と君達を、とある場所へ連れて行くための存在と言う事だ。なので、同行させて貰うよ」
「まあそりゃ、これだけ小さいなら一緒でも構わないけど……」
「メシに入ってたら普通に食いそうだ」
「こらこらこら! こっちこそよろしくお願いします、チェチェノさん。ピクシーマシルムも、一緒に頑張ろうな」
「ムゥー!」
いつの間にか頭の上に乗っていた可愛いキノコにも改めて挨拶すると、彼(彼女か?)もムゥムゥ鳴きながら飛び跳ねた。
むさ苦しい馬車の中で唯一の癒しだなあもう。
……でも、チェチェノさんと一緒に来たって事は、この子にも何かの役割があるって事だよな、たぶん。
「あの……ちなみに、どうしてこのピクシーマシルムを連れて来たんですか」
「ああ、それはその子が『自分もツカサさんに会いたい』とピーピー泣いて、だだをこねていたもんだからの。申し訳ないが、また相手をしてやって下され」
「ムゥウ~」
チェチェノさんの言葉に肯定するかのように、俺の頭の上のマシルムちゃんはぴょんぴょんと飛び跳ねる。まったく痛くはないが、なんと言うかマシュマロで頭を叩かれているようだ。
大人の猫ぐらいの大きさが有るんだけど、実際そんなに重さはないんだよな。
ピクシーマシルムの胴体を掴んで降ろすと、相手は黒豆のようなつぶらな瞳で俺を見ながら、嬉しそうに笑って俺の顔をながーい舌でぺろぺろ舐めた。
「ムムーっ、ムー!」
「嬉しいんだな~。ハハハこらこら舐めるな、涎だらけになっちゃうぞ~俺が」
キノコのカサの下からめっちゃ動物っぽい舌が伸びてるのって凄まじい違和感があるが、まあ可愛いから良し。なんかシイタケっぽい茶色のカサのせいで、この子が犬に見えてきた。
「ずるい……キノコにはそんなに簡単に舐められるなんて……」
「ツカサ君をぺろぺろ……ハァハァ……つ、ツカサ君が液体だらけ……」
「眠り粉食らいたくなかったら黙ろうねクソ中年ども」
お前ら俺が子犬に舐められててもそんな事思うのか。ちょっと大丈夫ですか。
鉄格子付きの病棟に隔離した方が良いんじゃないだろうか。
苦笑するチェチェノさんに申し訳なさを感じながら、俺は深い深い溜息を吐いて先が思いやられると深く思ったのだった。
山の岩肌に囲まれた小さな広場に、肩身が狭いと言っているかのようにぎゅっと収まった山小屋が数件建っている。それらは全て土壁で作られており、小屋の中には暗黒騎士のような人達と、怪我をしたらしい労働者たちが屯していた。
どうやらここは傷病者などを休ませるための施設として機能しているらしい。
兵士達の話では、バルバラ神殿にはテントのような簡易の設備しかなく、怪我をした人や過労で倒れた人などを看病出来ないので、ここまで連れて来ているんだそうだ。傷病者は回復し次第、またバルバラ神殿の調査に戻るんだって。
こう言われればそんなに人が多いのかと思うが、実際は五軒の小屋に収めきれるほどの人数しかおらず、三方が崖になっている集落は存外ひっそりとしていた。
遺跡調査って意外と少人数なんだろうか。
ともかく、俺達はその内の一軒を使わせて貰い、そこで夜を明かす事にした。
兵士達が居るとは言っても、バルバラ神殿までの道はモンスターが出る。それに明日からは馬車ではなく徒歩だ。さすがにディオメデでも雪山を走る事は出来ないらしく、ヨアニスが眠っている箱はこの集落から荷物を運搬するための台車に載せて俺達が自力で運ぶ事になっている。
なので、今日はゆっくり休んで体調を整えておこうと言う訳だ。
ちなみに、遺跡調査のために駐屯している兵士達には、箱に何が入ってるのかは知らせていない。大切な物が入っているから絶対に粗末に扱うな、とだけアドニスが釘をさしている。……まあ、この箱の中に氷漬けの皇帝が入ってますなんて言えないからな……。事前に連絡してくれていた文官の人達も、さすがにそれは言えなかったみたいだし……まあ、驚かせるよりはいいだろう。
そんなこんなで、俺達は質素な小屋で雑魚寝を決め込む事にしたのだが。
「…………?」
就寝して数時間、夜もだいぶ更けた頃。
何か寒い感覚を覚えて、俺はふと目が覚めた。
「…………ぐ……」
なんかすげえ苦しいし息苦しいし物凄く狭いと思ったら、横で寝てたブラックとクロウに抱き着かれてる。そりゃもうがっちりホールド状態だった。
両手にオッサン状態とか地獄か。オッサン臭くて死ぬわ。
ゲンナリしながらずりずりと下にずれて二人の腕から逃れると、俺は布団代わりの広い布からゆっくりと這い出た。
……昼間の二人なら俺が動いたのにも気付きそうなものなのに、一緒に寝てるとなんでか鈍くなるんだよなあ。
それだけ安心してるって事なんだろうか?
だったらまあ、リラックス出来て良かったとは思うが、同時にちょっと心配だ。寝込みを襲われたらどうするんだろう。
「……ま、心配するだけムダか」
実際二人は俺より何倍も強いし修羅場も潜ってるんだから、いざという時はパッと起きちゃうんだろう。俺が心配するのはおこがましいかもな。
それにしても……なんで寒く思ったんだろう。
この家って土壁のおかげなのか結構暖かいし、窓も締めているから冷気なんて入って来るはずが無いのに。そう思って小屋を見回すと、アドニスが居ない事に気が付いた。変だな、アドニスは箱の前に居たような気がするんだが……もしかして外に出たんだろうか。
「さては……ションベンか」
なんか凄く考え難いんだが、あいつも小便とかするんだな……凄く失礼な事を言っている自覚はあるんだけど、あの人ってそういう人間的な行為から外れた感じの存在にしか見えてなくてなあ。
いや、アイドルはトイレに行かないとかいう迷信みたいな話じゃなくてね。
「…………ヤベ。俺も、もよおしてきた」
だー、考えてたら連鎖反応が。
仕方ない、尿意でもう一回起きるのも嫌だしスッキリさせておくか。
ここにはトイレが一か所しか無くて、しかもそれは汲み取り式だ。つまり、物凄く面倒臭いし、長居出来ないレベルで色々とキツい。なので、小便のような簡易な行為は、トイレを使わずにそこらへんの影でやれと教えられている。
……山では普通だと言われたが、まあ、冒険者になってからは俺も同じような事をやっているので、多くは言うまい。山って思った以上に大変だなあ。それにここはめっちゃ寒いし……。
コートの留め具をしっかりと留めて防寒した俺は、寝ているブラック達が寒くないように小さく扉を開けてさっと外に出た。
「っ、うぅ~……さぶっ……!!」
ひぃい、この気温は辛い、地上より寒さが鋭い感じがする……!
出来るだけ近い場所で済ませようと思い、ふと集落の入り口の方を見ると――
広場の中心に何者かの影が立ち竦んでいるのが見えた。
「…………アドニス……?」
そう、あれはアドニスだ。
彼は曇天の空を見上げながら、ただ黙って立っている。だけど、小屋のわずかな灯りにすら銀の髪は輝くのか、本人は動いていないのに髪だけが明かりの揺らめきに呼応するように光を不規則に散らしていた。
「…………」
綺麗だな、と思う。
ヨアニスが愛していたソーニャさんの銀の髪も、きっとあの髪に負けないくらい綺麗だったんだろう。……だけど、アドニスはあの銀髪を嫌がってるんだよな。
本来の髪は銀色だって言ってたけど、どうして銀の髪が嫌なんだろう。
チェチェノさんの事もそうだけど……アドニスって、本当に解らない奴だ。
クソ眼鏡というブラックの総評には恥ずかしながら同意だが、でも、何故か本気で嫌う事が出来なくて、こういう所を見ると変な気分になる。
散々嫌な事をされたけど、あいつのした事は「研究のため」で一貫してたし……そういう気概って伝わって来るもんだから、自然と協力しちゃってたんだよな。
……アドニスは変人で嫌味で人の事なんてまるで考えないくせに、ヨアニスだけじゃなくて色んな人を助けている。だから、アドニスは他国にも協力を懇願されるほどの薬師になった。
それはもしかしたら、私利私欲のためにやった事が結果的に美味く作用しただけかも知れないけど――それだけじゃ、他国に感謝される程の立場にはなれないよな、きっと。だから何か変に信じちゃうんだろうか。
うーん、解らんなあ。あいつだけは本当に解らん。今も何してるか解らないし。
理解出来ないなら聞いてみる方が早いかと思い、俺はゆっくりとアドニスに近付いた。すると、相手は足音で俺の事が解ったのか振り返って来た。
「ツカサ君ですか。どうしました」
「ションベンしに来た。アンタこそ、どうして曇り空を見上げてるのさ」
色々思っていた事はあえて口に出さずにアドニスの横に並ぶと、相手は少し目を瞬かせたが、口を笑ませてふっと息を吐いた。
「空をね、見ようとしていたんですよ」
「曇り空を?」
「ええ。この国を覆う、憎き雪雲をね」
変な奴だ。憎い存在なのに、そんな風に懐かしそうに見上げていただなんて。
首をかしげながら、俺はアドニスの言葉に眉を顰めた。
「なんで嫌いな物を夜中に起きてまで見てたんだよ。お前も物好きだなあ」
「ふふ、君には解らないかもしれませんね。……嫌いな物だからこそ、消してやりたいと思うからこそ……見据えたくなる事もあるんですよ」
「ええ……お前よっぽど心強いんだなあ……。俺は無理だわ、そんなのやってたら絶対疲れちゃうし、考えるのすら嫌になるもん。やっぱ、研究者だからそんな風に思えるのかな? 大変だよなあそういうの……まあ、嫌な物に立ち向かえるってのはスゲー偉い事だけどさー……俺には絶対ムリ」
アドニスの野望は、国土に緑を呼び戻す「緑化計画」だ。その事に情熱を燃やしているから、嫌いな雪雲を見つめる事が出来るのだろうか。
俺にはとても考えられない世界だ。嫌な物とか普通に忘れたいし、そんな事より楽しい事を考えたいもんなあ俺は……。
あとエロ画像を見たらすぐ嫌な事とか忘れちゃうし。
腕を組んで傾げた首を更に傾げて唸る俺に、アドニスは珍しく上機嫌でクスクスと笑って肩を揺らしている。
その姿で笑うと、なんか本当におとぎ話の中のキャラみたいだなあ。
不覚にもドキッとしてしまった俺に、アドニスは空涙を拭うとまた微笑んだ。
「…………本当におかしな子ですね、君は」
「んん? お前に言われたくないんだが?」
「ははは、そうでしょうね。……けれど、悪くない」
「?」
何を言っているんだか良く解らないが、相手が珍しく上機嫌で普通に笑っているので、まあ何だか知らんがとにかく良し。
アドニスは旅の同行者なんだから、どうせなら楽しく仲良く行きたいもんな。
人が笑顔になるのは嫌な気はしないし……笑ってくれるんならいいか。
俺も自然と笑顔になってにへらと笑うと、アドニスは俺の頭をぽんと叩いた。
「明日は大変ですから、もう寝ましょう。……おやすみ、ツカサ君」
「う、うん。お休み……」
優雅に去っていくアドニスの後姿を見つめながら、俺は目を丸くする。
だってあいつ、まともにお休みとか言ってくれる奴じゃないんだもん。しかも、あんな風に朗らかに笑って言うなんて。
「……ほんとに雪雲嫌いなのかな?」
もしかして、雲に近付くのが嬉しいから上機嫌になっていただけだったり?
それはそれで良いけど、本当変な奴だよなあ。
「おっといけねえ、俺も早く用を足して寝よう」
ぶるりと体を震わせて、俺は人が近付かないような場所を目指して歩き出した。
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