異世界日帰り漫遊記

御結頂戴

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聖都バルバラ、祝福を囲うは妖精の輪編

6.一生逃れられない選択をしたから*

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 少し身構えた俺だったが、クロウは相変わらず眠そうな目をしぱしぱさせて俺の目の前に胡坐あぐらをかいてどっかと座った。
 そして、あからさまな「ぐう」という腹の音を鳴らしてくる。

「…………とりあえず、お昼食べようか」
「ん」

 ん、じゃないっすよ。ん、じゃ。
 クロウもクロウで大人とは言えない部分があるよなあと思いながら、俺は宿屋の親父さんに詰めて貰ったパンと半生の干し肉、それに自分でれた麦茶の入ったびんを取り出した。そんな俺の昼飯だったが、親父さんは俺の食欲を見誤みあやまっていたのか、どう見ても二人か三人分くらいの食料が入っている。

 俺、成長期ですけど、さすがにこの量を昼からがっつくのは無理です……。

 この世界の人って身長デカいだけあって、本当たくさん食べるよなあ。
 まあクロウが一緒だし、今回は助かったけども。

「はい、クロウの分。麦茶あたため直すからちょっと待ってな」
「むっ、わかった」

 昼飯を受け取ってすぐ食い付くクロウに、俺は苦笑しながら瓶を両手で持つ。
 見よう見まねだけど、こうなったら炎の曜術で俺も瓶を温めてみよう。
 曜術って意外となんでも修行になるからいいな。

「えーっと、どうすれば良いんだろう」

 炎を出したら燃えちゃうし、ってことは曜気だけをてのひらで放出して温めるとか?
 俺は自分の手がヒーターのようになるのを想像しながら、瓶よ良い感じに温まれと念じてみた。すると、時間はかかったが段々と瓶が温まってくる。
 アツアツとまでは行かないが、中の麦茶はゆっくりと湯気を出し始めていた。

 うーん、ブラックみたいには行かないなぁ……俺は全部の曜術が使えるみたいだけど、やっぱいつも使ってる属性以外は扱うのが少々難しいみたいだ。
 使えない事はないけど、でも木や水の曜術よりは数段おとる。
 やっぱ他の属性はブラックやクロウに任せた方がいいか。

 いざという時のために、俺も少しは使えるようになってれば安心だけど……その「いざ」って時が大抵精神を集中できない事態で曜術がすぐ使えないからなあ。

「ツカサ?」
「あ、ごめんごめん。ほら、お茶あっためたから飲めよ」

 俺が麦茶を温めている間に昼飯を平らげてしまったらしいクロウは、瓶を受け取ってくちを付ける。自分一人で飲むつもりだったからコップを持って来ていないが、全部飲まれてしまわないだろうか。

「く、クロウ、全部飲んじゃ駄目だぞ」
「んぐ、解っている」

 のどを動かしてぐびぐび飲んでいたクロウは、口をぬぐいながら俺に瓶を返した。
 ほっ、良かった。半分より少ないけどちゃんと残ってるようだ。

「ちゃんとあたたかかったか?」
「ああ、ちょうど良かったぞ。しかしツカサは本当に色んな術が使えるんだな」
「凄いだろー……って言いたいトコだけど、その術を専門に切磋琢磨せっさたくましてる人にはやっぱ劣るよ。俺の場合は器用貧乏って奴だと思う」
「そういうものか……?」

 首をかしげて片耳をぴるぴると動かすクロウに不覚にもなごみつつ、俺は中の麦茶がちゃんと温まっているのか知りたくて、瓶をかたむけて口をつけた。
 中身を飲んでみると、ちょっとぬるいがちゃんと温まっているみたいだ。

 ブラックみたいに丁度ちょうど良い温度には出来なかったけど、まあこのくらいなら上々って所かな? 少なくとも火傷やけどするよりはマシだろう。
 駄目出しだけじゃなくて、自分をめてやる気になっていかなきゃな。

 そんな事を思いながら俺もラッパ飲みしていると、クロウがそんな俺の様子をじーっと見て、何を思ったのかボソリと呟いた。

「今、瓶のくちしで口付け……いや、キスをわしたな」
「ぶはっ!? なっ、げほっ、何を言っ、ごほっゴホ」

 いきなりの問題発言に思いっきり咳き込みながらクロウを見やるが、相手は俺を無表情な顔のままで目をしばたたかせて見つめているだけだ。
 何を考えているのか解らず混乱していると、クロウがこちらに近付いてきた。

「ツカサ」
「な……なに……?」
「お前達の交尾の声を聞いていると、知らない単語が……お前達だけがわす単語が聞こえてくる。キスというのは……ツカサの世界の言葉なのだろう?」

 壁を背にしていたせいで動けない俺に、クロウはもう手が届くほど近付いてじっと俺の顔を見やる。夕暮れの空のように色濃いだいだい色の綺麗な瞳に、困惑した顔の自分が映っていて、なんだか余計にあせってしまう。
 だけど、クロウはそんな俺に問いの答えをかすように顔を近付けて来て。

「全部覚えている。セックスも、えっちも、キスも……全部、ツカサの世界の言葉なのだろう? オレには教えてくれない……お前とブラックだけの、言葉」
「う……」

 なんだか、責められているような気分になってくる。
 そりゃ確かに、そういう単語はブラックとしか使っていない。けど、それは恥ずかしいからで、そもそもブラックに教える気なんて無かったんだ。
 だから、教えないんじゃなくて俺が言わないようにしていただけで……。

 でも、いつの間にか……俺も、そう思っていたんだろうか。だから、他の奴の前でキス程度の事も言えなかったのかな。本当は、最初は、異世界の単語なんて変に思われるだけだから、使わないようにしようってだけだったのに。
 なのに、ブラックと恋人らしい事をする為に、使う言葉だから……その……。

 考えると恥ずかしくなってきて、顔が熱くなる。
 クロウはそんな俺の様子に目を細めると、また少し近付いてきた。

うらやましいが、この群れの王……ツカサのことを独占できる首領は、ブラックだ。だから、それは我慢する。アイツが拒否するなら、ツカサが嫌なら、使わせろとは言わない。だが……約束を拒否をされると、オレだって……悲しくなる……」
「え……」

 約束って……クロウの為に、俺が定期的に曜気を分け与えるって奴だよな。
 でも待ってよ、俺はクロウの事を拒否なんてしてないぞ。って言うか、この国に来てから積極的に約束を行使こうしされていない気がするんだが。
 なのに拒否って、どうしたんだよ。
 そんなに耳を伏せて、悲しそうな顔をして……。

「クロウ、俺……ごめん、俺ってば気付かない内にお前を拒否してたのか。本当にごめんな。でも、拒否したんじゃないんだ。だから悲しい顔しないでくれよ……。だからさ、ちゃんとお前が嫌だったことを理解したいから、いつの事か教えてくれないか?」

 間近に有るクロウの両頬を手で包んで顔をさすり、それから謝罪の気持ちをめながら頭を撫でる。クロウは眉根を情けなく寄せながらも、俺の手に気持ちよさげに目を細めた。

「昨日」
「へ? きのう……?」
「昨日、あの夜……お前達が隣のベッドで交尾していた時、ツカサは意識が飛ぶまで俺を起こさないように口をふさいでいた」
「……それが……拒否したって、ことなのか?」

 だってあれは、その、恥ずかしいから……あんな姿を人に見られるのが耐えられないから、口を塞いだだけだったのに。
 クロウを拒否する気持ちなんて一ミリも無かったぞ、と言うが、クロウは首を振って不満げに少しだけ口をとがらせる。


「あの晩、ブラックはオレのいる所でお前を犯した。それは、オレが混ざっても問題は無かったと言う事だ。アイツは、オレがお前達の交尾に混ざり、オレがツカサの体を腹いっぱいに喰らう事を許可していたんだ。なのに……ツカサはオレを受け入れてくれなかった……」
「みっ……ぃ……っ」

 み、見てた、のか。
 寝ているとばっかり思ってたのに、全部、せっ、全部……!!

「ツカサ……可愛いな……お前は本当に可愛い……。見られるくらいで顔を真っ赤にして、涙目になって……美味そうな匂いをまた強くして…………あの時だって、前の時だって、いつも、いつもそうだ」
「っ、ぇ」

 な、なに。前の時って、どういう事。

「オレは、望んで二番目の雄になった。側室になった。……だから、お前を存分に食らい尽くしたくても交尾はしないし、触れるだけだとも誓った。だけど……オレを許してくれたお前がオレを拒否すると……悲しい……」
「く、ろう……」
「オレは、ツカサの気分が良くなってからと思って我慢してたのに。アイツのように約束を振りかざしてお前を喰らいたくても、ツカサが良いよと言ってくれるまで、空腹も我慢しようと思っていたのに……なのに……ツカサは、オレが混ざる事を拒否したんだ。……だから、オレは悲しかった……」

 思わず頭を撫でる手も固まってしまっている俺の手を取って、クロウはその掌に唇を寄せて、それから頬を摺り寄せて来た。
 まるで、猫が甘えてくる時のような行動に、俺は何だか胸が苦しくなってくる。
 それが切実な思いから来る行動だと解っているからこそ、クロウに何も言えなかった。そんな俺に、クロウはまたなじるような声を漏らす。

「オレが起きていれば、お前の精液も、涙も、汗も……全部、オレが食べてやれたのに。いつもオレに『食べ残すのは勿体もったいない』と言うのはツカサだろう。なのに、どうしてオレを仲間外れにする」

 「仲間外れ」と言う言葉に、俺は我に返ると慌てて否定した。

「ち、違うって! だって、見つかるとブラックが嫌がるから……」

 そうだよ、あの時の俺の頭にはそれしかなくて、本当に仲間外れにするつもりは無かったんだ。だって普通、人の目の前でえっちするなんて事は無いし……だから俺はそれが恥ずかしくて、自分の姿を見られたくなくて声を抑えただけなんだよ。

 それに、アイツは基本的に他人がえっちに加わって来るのは嫌がるような男だ。もしクロウが起きて来たら、それはそれで不機嫌になって、翌日は終日不機嫌になっていたに違いない。だから、それも考えて必死に耐えていただけで……。
 クロウを拒否したと取られるなんて、本当にそんなつもりはなかったんだ。

 だけど、クロウはそんな俺の言葉に不満を見せるがごとく少しだけ顔を歪めて、俺をじっと見つめ返して来た。

「あいつはオレが触れる事を許可しているぞ。それが嫌な時は、オレが居ない所でツカサを犯すだろう。だけど昨日の夜は、オレの目の前でツカサを犯した。なら、それはオレが参加しても良い交尾だったと言う事だ。……だったらオレにも、ツカサを食べる事は出来たはずだ。……なのに、それが出来なかった……」
「そんな……」

 ブラックがそんな事を思うはずは……。いや、そうだな……このところのクロウをアシスタントに使う手口を考えると、それを狙っていた可能性も捨てきれない。
 だとしたら、本当にブラックは「クロウが混ざっても良い」と考えていたって事になるけど……おいコラ人の許可なしに何考えてんだアイツ。変態すぎるだろ。

 ……じゃなくて!
 ああもうブラックのせいで話がとっ散らかる!

 とにかく、もし本当にブラックが混ざっても良いと考えて、あのベッドでえっちしたのなら……俺は本当に知らない内にクロウを拒否していた訳で……。
 約束だってあるのに、それを考えると……そりゃ、クロウもねるよな……。

「……ごめん……俺、そこまで考えてなかったよ。クロウ、あれはな、本当に突然だったし、俺は何も言われて無かったから、アイツが『食べて良い』って言ってるのが解らなかったんだ。……その……本当に、そういう羞恥調教みたいな物かと思って……ええと、だから、クロウを拒否したんじゃないんだ」

 何言ってんだ俺。でも、クロウが傷ついたのは事実だよな。
 だって、クロウは俺を抱きたいと思うような意味で俺の事を好きなんだ。
 なのに俺達のためにその感情を抑えて、一歩退いて付いて来てくれている。
 俺が「生きていてほしい」と願ったから、生きてくれてるんだ。

 それを考えると……俺の昨日の行動は、確かにショックだよな。

「クロウ、ごめんな……。今度からは俺もちゃんと確認するから……」

 そう言いながら再びクロウの頭を撫でると、相手は少しだけ熊の耳を浮かせて、俺の顔をうかがうように上目遣うわめづかいで見た。

「……じゃあ、今」
「ん?」
「今、約束を果たしてくれ」

 ………………んん?
 なんか、話が変な方向に進んだような……ってか、今約束を果たせって……。

「あの、えっと」
「嫌なのか。やっぱり、嫌なのか」

 またくもり出す橙色の目に、俺は必死に首を振る。

「ち、違う違う! 約束だし、クロウのことは嫌いじゃないんだってば! でも、その、今ここでって……ええと……手をつな」
「違う。教会でやったみたいに、ツカサの体を舐めたい。そっちの方がより多く、より美味くツカサからの曜気や栄養を取れる。ツカサを舐めたい」
「っ……!! ぅ、そっ、なっ、舐めって……!」
「やっぱり、嫌なのか」
「う、うぅううう~~~~……っ」

 思わずうなってしまったが、しかし、ここで拒否したらクロウが悲しむし……大体だいたい、約束しちゃったのは俺だし……。
 ち、ちくしょう、仕方ない……ここは腹を決めて受け入れるしかない。

 なめ……な、舐められるだけなんだし、その……クロウは、嫌じゃないし!
 嫌じゃないのがまた困るんだけど、今更それを言っても仕方ない。

「ツカサ」
「うぅ……わ、解った……約束だもんな……」

 そう言うと、クロウはようやく耳をピンと立たせて、嬉しそうに目を笑ませた。
 ああもう、いつもが無表情だから笑われるとなんかドキドキする。
 イケメンだけどブラックより年下だけど、こいつも紛れもないオッサンなのに。

「嬉しいぞ、ツカサ。じゃあ、下を全部脱いで上着をたくし上げろ」
「…………え?」
「下を全部脱いで、上着をたくし上げろ。オレにツカサの全部が見えるようにだ」

 一瞬何を言われているか理解出来なかったが、二回目の言葉でようやく命令が呑み込めて、俺は青ざめると首を振る。

「そ、それじゃ誰か来た時に……」
「安心しろ、誰もこない。来てもオレが半殺しにして川に放り投げてやる」
「でも、こんな所で……!」
「またオレを拒否するのか、ツカサ」
「う、うぅう……」

 も、もう、解ったよ! やりゃあ良いんだろ!?
 チクショウ、クロウも怒らせたらトコトン面倒臭い奴だ。なんで中年って奴らはこうも面倒くさい奴らばっかりなんだろう。

 悲しみながらも立ち上がった俺は、至近距離でクロウが見上げている事に強烈なたまれなさを覚えながらも、ズボンのベルトに手を掛けた。
 そして、ズボンと下着を降ろす。だけど、クロウはそれだけでは許してくれなくて、その二つを俺の足から完全に抜き去って、自分の後ろへと隠してしまった。

 これじゃ人が来た時に隠す事も出来ない。
 恥ずかしくて顔が酷く熱くなる俺を見上げ、クロウはどこか楽しそうな雰囲気をかもし出しながら、耳を一度くるんと動かした。

「あとは、自分で上着をたくし上げるんだ」
「わか、った……」

 赤いコートを脱いでシャツ一枚になった俺は、おずおずと両手でシャツを喉元へ引き寄せる。一気に引き上げれば恥ずかしくないと解ってるのに、どうしても下半身を露出している事が気になってしまい、俺は震える手を上手く動かせずもたもたしてしまっていた。

 でも、そう言う時に限ってクロウは何も言わない。
 俺の顔を無表情で眠そうな顔でじいっと見つめるだけで、それ以上何もしてこなかった。きっと、俺がやりきるまで動かないつもりなんだろう。
 こんな薄暗い納屋なやみたいな場所で、俺が情けない姿になるまで。

「っ……うぅ……」

 それでも我慢して、やっとの事で胸をさらけ出した俺に、クロウは満足そうに少しだけ口の端を引き上げると、つま先から俺の顔までをゆっくりと確認した。
 ふくらはぎ、太腿ふともも、股間の辺りを見た時は荒い息を漏らして舌なめずりをして、へそをじっと見つめた後で俺の顔と胸を同時に見上げて来る。

 その橙色の瞳は獲物を品定めする肉食獣そのもので、俺の強張こわばった顔を見てギラギラと輝いていた。

「ツカサは恥ずかしい事をされるとより快楽に忠実になるな……オレが分かりやすく欲情したのを感じて、ツカサの可愛いここが小さく反応していたぞ」

 そう言いながら、クロウはしっかりと引き締まった太い指で俺のモノの先端を指でくすぐる。今の状況も相まって、俺は簡単にその指に反応してしまった。
 息を詰まらせて体を軽くねじる俺に、クロウは喉で笑いながら俺の太腿をぐっと掴む。そうして片方だけ軽く上げると、俺の内腿をねっとりと舐めはじめた。

「ひっ、ぅ……、く、クロウ……っ」
「ツカサの腿は柔らかいな……オレが獣なら、真っ先に食べておきたい部分だ」

 ちゅっと音を立てながら吸い付き、少しざらついた独特の感触を持つ舌で、唾液を含めながら下から舐め上げる。時折軽く噛み付いて来るので、本当に食べられてしまうのではないかと思ってしまい、俺はじりじりと体を侵す熱に耐えながら残った足を内股に寄せようとした。
 だけど、クロウはそれを許してくれなくて。

「ツカサ、足は大きく広げたままでいろ」
「えっ……なんで……」
「そうした方が、お前の幼い肉棒が勃起するのが良く解るだろう」

 に゛、にくぼ……。
 ばかっ、なっ、なに直球な単語をっ……いや、えっと、まて、獣人の間ではそれが一般的な男性器の呼称なのかもしれない……いやでもにくぼうって……。

「……色んな所に鬱血した痕があるな……。あいつが本当にうらやましい……」
「ひっ、ぅあっ!? ま、まって、いきなり乳首はっ」
「昨日はココをあまり可愛がって貰ってなかっただろう? だから、今日はオレが思う存分可愛がって、さらに敏感に育ててやるからな」
「まっ、あっやっ、だぇっそ、そんな吸っちゃやらぁっ!」

 いつの間にか胸の所にまで上がって来ていたクロウの顔が、俺の制止も聞かずにまだ勃ち上がってもいない乳首に吸い付いて、じゅるじゅると吸い始める。
 まるで無理矢理勃起させられているかのようで体が痺れ、俺は思わずクロウの肩に手をやって体を震わせた。
 だけど、それだけではクロウは許してくれないようで。もう片方の乳首を指の腹でぎゅっと摘まむと、ね繰り回すようにぐりぐりと乳首全体を愛撫し始める。

「あ゛っ、あぁあ、や、ぁ゛っ、やだっもっりょおほいじっひゃっ、ひっあ、だぇ、ちくび、も、やらっ、やぁあ……!」

 両方とももう出てきたのに、それなのにクロウは強く吸って、噛んで、まるで赤ちゃんがするように執拗しつようにちゅうちゅう吸い付いて来る。
 もう片方も俺の乳首を何度も引っ張って、先端を擦ったり押し潰したり、俺を正気しょうきにする暇など無いほどにクロウは胸だけをずっと攻め立てた。

 ブラックのせいでもう立派な性感帯になっていたソコが、そんな行為に耐えられるはずもない。俺はいつの間にか口を閉じるのも忘れて喘いでばっかりで、自分の分身すらも制御できずにしっかりと勃たせてしまっていた。
 でも、もう、それを抑える事すら出来ないくらい、俺は快楽漬けになっていて。

 残り少ない理性で必死に息をして、がくがくする片足を叱咤しったしながら、涙に歪む視界のすみにある扉から人が来ないように見張っていた。
 いや、扉を見ていることこそが、俺の理性を保つ最後の砦だったのだ。

 けれど、クロウはそんな俺の行動などお見通しとでも言うように、最後に乳首に噛みつき俺に強烈な刺激を与えると、その顔をまた下へと降ろし始める。
 その顔が辿り着く所など、もう解っていた。

「っあ……ゃ、く、くろぉ……!」
「乳首を虐めただけで、もうこんなに固くしたのか。……本当に、ツカサは快楽に素直だな……可愛いぞ……。ああ、ほら、もうすぐ先走りの汁が垂れそうだ……」
「ぃあ……も、言わないで……っ」

 そんな事を実況するな。恥ずかしくて死にそうになる。
 痛いくらいに熱くなっている頬に服を擦りつける俺を見て、クロウは鼻で笑うと、その口をゆっくりと開いて俺の股間へと近付けて来た。

「あっ……あ……!」
「今日は何度でも出していいぞ、ツカサ……全部俺が食ってやるから……」

 そう言って、クロウは……俺のモノを苦も無く口に含み、その太い手で根元から強く扱き始めた。

「っあぁあああ! ひあ゛っ、ぃや、そっなはげしっ、ひ、い、いぅう゛っ! だえっ、ひっひゃ、も、いっひゃうぅ!」

 ブラックとはまるで違う性急なその動きに、先程までさんざん弄ばれていた体が一気に熱を上げて悶え苦しむ。
 辛い、こんなに一気にされたら、意識が付いて行かない。
 だけど気持ちよくて、バカになりそうで、声が抑えられなくて。

「らぇ、や、もっいあぁあ、あぁああ゛ああ゛……ッ!!」

 クロウの激しい愛撫によって、俺は呆気あっけなく一度目の射精をしてしまった。

「っ、ぅ……っは、はぁっ、は……あ、ああ……っ」

 息が、上手く継げない。急激に追い詰められた反動か腰がびくびくと痙攣けいれんして、クロウの頭を抱えるようにして寄りかからないと、立っても居られなかった。
 なのに、クロウはそんな俺を更に責めるように先端に吸い付いて、舌でカリ首をべろべろと舐め回しながら音を立てて下品に俺の精液を吸い尽くそうとして来る。
 イった直後にそんな事をされて、冷静でいられるはずも無い。
 俺はクロウにすがりつきながら、涙を流して必死に頭を振った。

「や゛っあ、あぁああ……ッ! ひあぁっ、もっ、ひぐっ、く、も、あっ、あぁあ……!」

 水車の動く音や小川のせせらぎに混じって聞こえる、自分の性器を吸われる音。
 自分の耳に最も近いせいでその音が一番大きいような気がして、俺はそれが怖くて必死にクロウに音を出さないように懇願したが、けれど結局無駄で。
 最後にリップ音のような音を立てて、ようやくクロウは俺から口を離した。

「やはり薄いな……。昨日食べていれば、きっともっと美味かっただろうに」
「う、う゛ぅ……」

 唇を親指で拭って、それを舐める。
 その仕草には性的な要素なんてないはずなのに、俺の欲望のかたまりを食らって飲みこんだ後の行為だと思うと俺は嗚咽おえつが止まらなかった。

 こんな場所で喘いでフェラされて精液を絞られてるだなんて、普通じゃない。もうやだ、こんなんばっかだ。俺は普通の高校生だったはずなのに、なのに、いやらしい事ばっかりさせられて、恥ずかしくて、その恥ずかしさが気持ちいい事だって調教されて……嫌なのに、こんなの、嫌なはずなのに……っ。

「恥ずかしくて悲しくなったのか? ……ふふ、お前は本当に初心うぶだな……」

 クロウは自分の頭に落ちる涙に気付いたのか、ひざまずいたままで俺の体を少し離して、俺の顔を引き寄せた。そうして、頬から目じりまで舌で舐め上げて来る。

「んっ、ぐ……う、うぅ……っ」
「お前の体は、本当に美味い所ばかりだ……。だが、まだ足りない」
「そ、んな……」
「オレが満たされるまで、曜気を充分に蓄えるまで、ツカサには喘ぎ狂って貰うぞ。オレだって少し傷付いたんだ。今だけで良いからお前を堪能たんのうさせてくれ」

 傷付いたって……そんなこと言われると、強く拒否できないじゃないか……。
 でも、喘ぎ狂うなんて嫌だ。そんなの、俺本当に頭がバカになっちゃうよ。
 もうこれ以上は駄目だ。
 そう思って、クロウに許しを請うような目を向けるけど、相手は微塵みじんほだされてくれなくて。

「く、クロウ……も……」
「まともに喋れるくらいに正気が残っているなら、まだまだ食っても構わないな。今まで我慢していた分、たっぷり喰わせてもらうぞ……」

 そう言いながらまた下半身に顔を近付けるクロウに、俺は情けない泣き声で必死に相手を止めながら、力の入らない手でクロウの髪を掴んだ。

「だ、だめ、お願いクロウ、もうやだ、や……」
「尻の穴で快楽を拾うのに慣れて、前で達せなくなるなんて事が無いように、オレがツカサのこの可愛い肉棒をしっかり調教し直してやろう。……ククッ……オレやブラックに軽く指でつつかれただけで精液が出る、だらしない淫乱な牝牛のようになるまでな……」
「ひっ……」

 言葉が直接的すぎて、恐怖に声が出なくなる。
 ……後ろだけでしかイけなくなる方が、余程よほどましかもしれない。体全部がクロウやブラックに作り変えられると言う本能的な恐怖に比べれば、強烈な刺激に麻痺してしまう方がよほど幸せだ。
 に都合のいい、男とは思えない呼称を付けられるほど堕とされてしまった体に成るくらいなら、快楽を拾う回路が鈍った方がまだマシだと俺は強く思った。

 だって俺は、ゲイじゃない。男に組み敷かれる快楽なんて一生知らずに、女性の尻を追いかけ回してるはずだったんだ。
 なのに、今の俺は年上の男相手に股を広げて、乳首を弄られただけ勃たせて、男にフェラされて女みたいに喘いで……。

「っ、く……ひぐ、も、や……やだ、クロウっ、く……もっ、やだぁ……っ」

 あまりにも今の自分の姿が恥ずかしくて情けなくて、俺は恥も外聞もなくガキのように泣いてしまう。もう情けなくたっていいから、クロウにこれ以上気持ちいい事をしてほしくなかった。
 だって、こんなの、怖いよ。
 嫌だ、淫乱とか言われたくない。俺はそんなのじゃないのに、なのに……っ。

「ツカサ……ああ、本当にお前は可哀想だな……。そんな風にいやがっても、誰もお前を犯すのをやめないぞ……お前の拒否は、男を煽るだけだ」
「そっ……な……」
「お前が羞恥を覚えて泣けば泣くほど、欲望がいきり立つ……極上の味でなくとも、きっと犯したくてたまらなくなるだろうな……オレだって、ブラックとの誓いがなければ壊れる程にお前を抱いたかもしれない」
「ふあぁっ!?」

 クロウは欲情した目を俺に向けたまま、片手で俺の尻肉を強く掴む。
 そして、そのまま谷間を開くようにぐっと引きながら、俺の肉を何度も揉んだ。

「ぃっ、あ、あぁあっ、やだっ、や、そこっ、揉まないで……っ!」
「嘘だ。嫌がってるのに、また前は反応しているぞ? そんな風に素直に反応するくせに抗うから、もっと虐めて、征服したくなって堪らなくなるんだ。……オレがこんなに我慢しているのに……容易たやすく理性をへし折ろうとして来る」
「違っ、あ、俺そんなっ、そ、なこと……っ」
「ツカサは悪い子だな……オレを生かしたのは、必要だと言ってくれたのはツカサなのに、オレを拒否して、追い詰めて、食事ではなく交尾をしたいと思わせるほど、物欲しげに尻を揺らめかせるんだから」

 そう言いながら、手を離して俺の尻を軽く「ぱんっ」と叩くクロウ。
 いきなりの衝撃に、俺は思わず体をビクつかせてしまった。

「ひあぁあっ!」
「どうやら、昨日ブラックに散々弄ばれて、穴の方が疼いてるようだな」

 そう言いながら谷間に指を押し込み、ぐっと窄まりに指の腹を押し当てる。
 クロウの太い指が尻肉を押し開いて襞を確かめるように動くたびに、俺はいつもとは全く違うその動きに肌を粟立たせてしまった。

 体内に入って来る事は無いと解っているからこそ、余計にそのもどかしい動きが強く感じられてしまい、下腹部がきゅんきゅんと熱くなって。
 もうきついはずなのに、俺は性懲りもなく勃起してしまっていた。
 ……快楽に素直な自分の体が、本当に嫌になる。

 そんな俺に、何故かクロウは今まで以上に興奮したのか、欲望に染まる目を見開いて、震える俺の分身を食い入るように見つめていた。

「ふっ……くくっ……オレの指でもちゃんと勃起するんだな、ツカサ……!」
「っ、うぅ……」
「ハッ、ははっ、ツカサはオレを求めてくれているんだ……っ!」
「まって、やっ、今だめっ、今フェラしたら……っ」

 本当に、狂ってしまう。

 そう言おうとして――俺は、完勃ちしたモノを再び口に含まれ叫んでしまった。

「あぁあ゛あっ!」

 ずっと喘がされ続けてかすれたのか、酷い声になっている。
 だけどクロウはそんな俺の事など気にもせず、また大きな水音を立ててじゅぽじゅぽとしゃぶり始めた。

 指で擦りあげられて、急かすように鈴口を舌でぐりぐりつつかれて、吸われる。
 クロウの舌は大きくて俺の亀頭を難なく包み込み、舌先でちろちろと撫でるものだから、それが堪らなく辛くて、俺は泣きじゃくりながらクロウに懇願した。
 だって、もう、そうしないと狂いそうだったから。

「おねがっ、も゛っ、らぇっひっ、あっ、ああ゛ぁっ! あう゛っ、ぅ、お、おちんち……ぃ、いじめらいえ゛っ、ぇう、う……っ、ひっぐ、う、うあぁあ……! あだま、おかひくなぅ、もぉ、れなぃ……っ、も、ゆるしぇえ゛……!」

 こわれる、舐めないで。もう、辛い、苦しい、頭真っ白で、もう考えられない。
 おちんちんが気持ちいいのに痛くて、その痛みすらも気持ちよくて、だから、もう、許して。精液もう出ない、出ないから。

 ぐるぐる同じ事ばっかり考えて頭が働かない。
 気持ちいいのに辛くて、そればっかりで、考えようとするのをダメにするみたいにクロウが俺のおちんちん舐めてて、考えられなくて。
 気持ちいい、しんじゃう、こんなの、もう……

「ツカサ……精液を出させてやるから、オレにも可愛く『イく』と言ってくれ」

 荒い息が聞こえる、犬みたいな、そんな息でクロウが何かを言っている。
 かわいく、イくって、言えばいいのか。ブラックとえっちする時みたいに?
 それで、許してくれる?
 もう許してくれるの……?

「ひぐっ、お、おひんちっ……くろぅにちゅうちゅうされてひっひゃう、もっ、ふあっ、あぁああっ、ぅあぁあ! ひぐっ、も、い゛くぅう……!!」

 顔がびしょびしょになって、よくわからない。
 叫んだ俺にクロウが笑ってて、もう、きもちいいのしかわからない。

 クロウが根元の苦しいのを無くすようにしてくれる。
 きもちいいのが一気に押し寄せて来て、俺は自分でも何を言ってるのかもう解らないまま、頭がまっしろになった。
 









 
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