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ゴシキ温泉郷、驚天動地編
3.DKおさわり一万円※
しおりを挟む「じゃあ……ロク君にはちょっと眠って貰おうか」
嬉しそうに目を細めたブラックは、ロクの顔に手をかざすとぼそぼそと何かを呟いた。途端、懐で首を上げていたロクの体が、がくんと項垂れる。
本当に寝てしまった。これも術?
「さ、潰さない所に置いて」
「う……うん」
なんかそんな真面目な声で言われると困る。
しかし言った手前今更ダメとも言えず、俺はロクを少し遠くに置いた。途端に、ブラックが俺をゆっくりと押し倒す。座ってた場所は寝袋の上だから、地面じゃないけど……良く考えたら野外でヤるのって凄い変態臭い。
「あの……本当に触るだけだからな」
「分かってるよ。……ねえ、口付けしていいかな?」
「ヤダ」
「う……わかった……」
分かり易くがっかりしやがって。
お前にファーストキッスを奪われた事はまだ根に持ってんだからな。
そんな思いを込めて軽く睨みつけるが、ブラックは何を勘違いしたのか頬を赤らめて顔を明るくする。何コイツ。俺このオッサンのツボもうよく解んない!!
「つ、ツカサ君……やっぱりキミ、凄く柔らかいよね……」
ハァハァしながら二の腕を揉みまくる中年。おい、これ放送事故じゃねーのか。
揉むな。脇腹も揉むんじゃない。ぞわぞわするだろ気持ち悪い。
これハタから見たら完全に変態プレイだよね?
俺襲われてる可哀想な人だよね?
軽く現実逃避しそうになるが、悲しいかなこれは現実。
パチパチと爆ぜる焚火や遠くから聞こえる何かの鳴き声が、ここは野外だと煩いくらいに訴えてくる。服を捲り上げられた素肌が感じる感覚も、部屋の中で感じた空気とは違う。冷たくて目の覚めるような空気だ。
そんな大自然の中で、俺はこんなことさせてるわけで。
あ、もう、これ人に見られたら軽く死ねるな。うん……。
ブラックの吐息を近くに聞きながら、俺は自分の体が筋張った大きな手に撫でまわされるのをじっと見る。
焚火に赤々と照らされた俺の腹や胸を、ブラックの手は何度も行き来していた。
何が楽しいんだろう。良く解らない。だけど、ブラックの顔を見ると相手は蕩けそうな顔をしていて、気味が悪かった。
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男はデリケートなんだよ本当。
でも、そうするとなんか余計ブラックに申し訳ない。
凄く興奮している相手を見てると、なんだか罪悪感が出て来てしまう。俺が触るだけなんて言ったから、律儀に上半身撫で回すだけで留めてるし、俺が興奮してないのなんか気付かないくらいハァハァしてるし。
なんか……ちょっと可哀想だし……。
俺で良いってんなら、ちょっとくらいは……サービスしてやろうかな?
「あ、あの……」
「え?」
鼻息荒く顔を上げたブラックに、俺は今まで見たエロ画像の中でも中々に萌える行動の一つをやってみた。
「もっと、触っても……いい、よ?」
自分でよりシャツをたくし上げて、恥じらいがちに上目使い。
やってる奴が俺じゃなかったら、今すぐにでもダイブしたいくらい可愛い仕草だ。だから今俺がやってるってことは忘れて欲しい。切実に忘れて欲しい。
でもブラックは俺に興奮してるんだから、これくらいは靡くよな?
そういう思いでじっとブラックを見つめると、相手は虚を突かれたように大きく目を見開いていたが……。
「つ、つか、さっ」
「はい?」
「あ、ああああ」
やだなにこの雄叫び。ちょっとやばくない?
思わず青ざめたが、後の祭り。
「ツカサ君キミって子はなんてやらしくて可愛いんだ……っ、ハァ、ハァ……!」
「ぎゃあああ!! ちょっ、ちょまっ、やだやだやだ脱がすなズボン脱がすな何考えてんだバカ! いれないって約束しただろぉ!?」
「違うっ、は、は、はさむだけっはさむだけだから!!」
それって素股かよ!!
ちょっと待って! この人マジで気持ち悪い!
「はぁああ男の子なのにこんなに柔らかい太腿をしてけしからん……っ!」
「いーーやーーーー揉むなあああ!」
太腿を激しく揉みしだかれて一気に鳥肌が立つ。
だがブラックはお構いなしに太腿から足の付け根まで、俺の足を遠慮なく蹂躙する。太腿を人に触られる事なんざないから、胸を撫でられるときよりも余計に刺激が伝わってきて辛い。
ブラックの熱い指がぐいぐいと俺の筋肉のない腿を揉むのは、流石にぞくぞくしてしまう。敏感な場所に初めての感覚を受けて、なんだか嫌な所がじんわりと熱をもってきた。
「あっ、あっ、ちょっとまってっ、も、もうそれくらいでっ」
このままだとヤバイ。俺のカンがそう告げている。
いや告げてなくても充分やばい。だって、このじわじわと一部分が熱くなるような感覚は、今まで何十回も俺が感じて来たものなのだから。
気付かれないようにと足を閉じたけど、生憎とブラックが内腿を触ってる途中で両手を挟んでしまう。その時に、相手の手が俺の股間に触れてしまった。
「あっ」
「……つ、つかさ、くん……君も、君も!!」
「いやあああ触らないでええええ」
「そ、そ、そうかじゃあ一緒に気持ち良くなろうね!?」
駄目だこのオッサン勝手に一人で盛り上がってる!
別の場所も盛り上がってる!
逃げようとする俺の体を巧みに捕えたブラックは、俺の下着を器用にずるっと抜き取ってしまう。どこで学んだんだよ俺にも教えろその技。
慌てて膝を閉じるが、そんなものが防御になるはずがない。じわりと熱を持つ合わせた内腿の間に、なにか滑ったものが無理矢理侵入してきた。
ひっ、こ、これって。
「ハァ……ハァ……い、一緒に気持ちよくなろうね……」
いーやー! それキモオタモブの台詞ですぅうう!
青ざめて涙目の俺に構わず、ブラックはにゅるりと根太いそれを太腿に食い込ませていく。先端が肉を押して広げ進むたび、俺は足の先を震わせて腿に力を込めた。けれど、それすら相手には気持ちが良いようで、怯むことなく進んでくる。そしてついに、俺の僅かばかり勃ちあがりかけているものに、先走りに塗れたそれが触れた。
ぬるり、と擦られて、思わず腰が動く。
「ひっ、ぃ……」
「ほら……」
太腿の中に入ったり出たりしながら、ブラックは俺のものを奮い立たせようとして手を添える。
止めさせようと相手の服を掴んだが、裏筋を撫でるように何度も擦られて、思わず喉を曝してしまった。
「っあ……やっ、だめっ……そこ、だめだってぇ……!」
ブラックは乱れた息を漏らしながら、指で先端を執拗に弄ってくる。それと同時に自立しかけた俺のものに逞しい熱がずるずると擦りつけられて、俺はどうする事も出来ずに反応するしかなかった。
「ひぁっ、や、やぁあ……や、だっ、それ、やだ、やっ、あ、ぁああ……!」
「気持ちよくなってきたみたいだね……さあ、一緒に……っ」
ぐっとブラックの太いのが俺の熱に押し付けられて、広い掌で一緒に覆われる。
何をするのか、と涙で滲んだ目を向けた途端、ブラックは手を上下に動かし始めた。そんな刺激に、耐えられるわけもなくて。
「うぁあっ、や、あっ、あぁああ! だ、ゃ、も、それっだめぇえ!」
「ツカサ君……はぁっ、はっ……つかさ、っくん……!」
ぐちゅぐちゅと水音がする。もう手の中で擦られている熱は、どちらがどちらのものかすらわからない。俺はただただ気持ちがいいその感覚に溺れて、思い切り背を反らした。
「っ、あ、あぁああ……!」
「ツカサ君」
「……」
「ツカサ君、怒ってる? ごめん、ごめんってば」
「………………」
「お詫びに本二冊買ってあげるから、ね?」
「…………二度と調子乗んなよ」
「ハイ……」
やっちまった夜から明けて朝。
お互い後処理で気まずい思いをした俺達は、それでも一緒に馬に乗りながら広い山道を登っていた。山道はきついし仕方ない。にしても。
ああもう本当恥ずかしすぎて穴に入りたい。乗っちゃった俺も悪いけど、触るだけって約束だったのに素股と兜合わせしてくるとか最悪すぎる。
そのせいで大自然の中むなしく賢者タイムを迎えた俺に謝ってほしい。
しかもあの後「もういっそ、やらない?」って言われたのも最悪だ。この世界の中年には賢者タイムはないのか。羨ましい。いやそうじゃなくて、憎らしい。
当然イエスなんて言う訳もなく無視して寝たけど、恥ずかしくってあいつの方を向いて寝られなかったわ。ああもう。
「で、温泉郷まだ?」
ガラの悪い声で背後の色情魔に聞くと、相手は正面を指さした。
「ほら、あそこ。湯気が見えるだろう? もうちょっとだよ」
ゆるやかな坂の先に、白く立ち上る綺麗な煙が見える。
そういえば、仄かにゆで卵のような匂いがして来た。
これって、硫黄の臭いかな。
「温泉かあ……」
絶対に別々に風呂に入ろう。
俺は固くそう誓ったのだった。
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