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廃荘ティブル、幸福と地獄の境界線編
強くなるのか、慣れるのか2
しおりを挟む「えっ……」
うで。
左手、いま、左手があった……!?
なんで、昨日はなかったのに今生えてんの、意味わかんない、ちょっと!
「ほらツカサ君、誰も居ない場所なんだから……もっと開放的にならないと!」
そう言いながら、ブラックは俺の体を右腕でガッチリとホールドして逃げられないようにすると、小麦粉みたいな真っ白な手で――
俺のシャツの前部分を勢いよく捲り上げて、恥部を曝け出した。
「うあぁっ!? やっ、やだっ、やだってブラック!!」
「あはは、やだなぁツカサ君たら。何慌ててるのさ。 ほら見て……ここには僕達の他には誰も居ないんだよ? ツカサ君が、こんな風に小っちゃくて可愛いおちんちんを『見て下さい』って曝け出しても、だぁれも見てないんだ。ね、だから安心して」
「う……ゃ、あ……っ」
やだ、と言いたいのに、ブラックに耳を食まれて言葉が出なくなる。
逃げたいけれど腕に囚われて逃げられないし、舌で耳たぶを舐められると体がぞくぞくして、力が入ってるんだか抜けてるんだかって状態になってしまった。
だけど、その事に意識が集中する事も出来ない。
布に隠され暖かかった部分に一気に冷えた空気が触れて、自分が今その部分を露出しているんだと思うと、足がガクガクして怖いくらいに震えてしまっていた。
「や、だ……これ、やだ……ッ、早く降ろせよ……っ!」
足を摺り寄せて隠そうとするけど、ブラックは俺を抱え込んで、閉じた両足の間に自分の逞しい膝を割り込んで来ようとする。
そんな事されたら、もう足で隠す事も出来ないじゃないか。
必死で抵抗するけど、ブラックはそんな俺を追い詰めようとして、頬に生暖かい息を吹きかけながら、何度も音を立ててキスをして来た。
頬に緩く吸い付かれると、無精ひげが軽く触れてチクチクする。それの感触に耐え切れず顔だけでも逃れようとした俺に、ブラックは息だけで笑った。
「駄目だよツカサ君……ほら、ちゃんと正面を見なくちゃ。散歩したいって言ったのはツカサ君でしょ……? これじゃあ何時まで経っても恥ずかしいままだよ」
「ひっ……ぅ……っ」
低い大人の声が耳の奥にまで染み入って来て、体の奥が変になる。
吹きこまれるたびにじんとして、頭が痺れるみたいだった。
「あれ、ツカサ君……僕の声でもう感じちゃってるの……? あはは、可愛いなぁ……。そんなんじゃ、もっと恥ずかしいコトになっちゃうよ?」
ああもう。チクショウ、解ってるよ。
こんなの変だって解ってるのに、なのに、俺はいつもブラックの声に動けなくなる。おっさんの声なんて今まで何度も聞いているはずなのに、スケベな事をしてくる時のブラックの声は、変に耳に残って、無駄に渋くて格好良くて。少しでも掠れたらすぐに解ってしまうくらい、俺はブラックの声に耳を集中させてしまっていた。
こんなの、変だ。俺は男なのにどうして男の、オッサンの声でこんなに頭がじんと痺れてしまうんだろう。こんなの、男失格だ。解ってるけど、どうしようもない。
ブラックに耳の傍で声を出されると、体は浅ましく反応してしまっていた。
だけど、こんな状態でいつもみたいになるのは嫌だ。
俺は何とか正気を保って必死に抵抗しようとした。
「や、だ……ってば……っ!」
そうは言うが、相手は少しも腕を緩めてくれない。それどころか、俺を更に苛むように、耳の穴に舌を突き入れてうねうね動かしてきた。
「うあぁあっ、やっ、だっ、やだそれっ、耳するのやめて……!」
くすぐったい、そんな事されると体が余計にぞくぞくして、股間が変な事になる。この恥ずかしい状態で、それは絶対に嫌だ。両足に力を入れて、それを阻止しようとするけど、でもブラックは俺を更に追い詰めるように耳の穴にぴったりと唇をくっつけて、直接声と唇の動きを送り込んできて。
「いつまでもツカサ君が恥ずかしがってるままだと……ずっとこのままだよ……? このままここで、恥ずかしい子供おちんちん勃起させちゃっていいの?」
「ぃっ、あ……いや、だ、ぁ……っ」
そんなの、嫌だ。決まってるじゃないか。こんな場所で愚息を勃起させるなんて、どう考えても露出狂じゃないか。そんなの嫌だ。絶対にそんな事になりたくない。
思わず目を細める俺に、ブラックはその声で畳み掛ける。
「この場所でずっと、おちんちん丸出しにして恥ずかしい子で居たいのかな?」
「う、ぅ……っ、ば、か……ブラックの、ばっきゃろ……っ!」
こんな恥ずかしい格好させて、恥ずかしい事ばっかり言って、馬鹿じゃないのか。
俺が嫌だって言ってるのに、なんでやめてくれないんだよ。バカ、馬鹿馬鹿馬鹿!
出来るなら今すぐ殴り飛ばしてやりたいけど、俺がブラックに敵うワケがない。
それが分かっているからこそ、悔しくて仕方が無かった。
ブラックはそんな俺の気持ちが解っているのかいないのか、熱くなってきた息を俺に吹きかけながら、膝を先程より強くねじ込もうとして来る。
声や息で体はもう震えっぱなしで、これ以上強く膝裏から叩かれると、もう堪えていられない。どうにかして逃れようとするけど、もう無理だった。
「ツカサ君、ほら……足を広げてよ……。誰も居ないんだから、遠慮する事無いんだよ……? 我慢するから余計に恥ずかしいんだよ。ここも家の中と一緒だって思えば良いじゃない。そしたら楽になるよ?」
「う、うぅ……い、いえ……?」
「そうそう。……それとも、ツカサ君は僕の事を信じられないの?」
「…………」
本当に、本当に人が来ないのかな。
恐る恐る見た真正面には大きな通りがあって、奥に曲がり道がある。あそこから、他に人が来たりしないんだろうか。本当に、そうなんだろうか。
ブラックが言う事を信じれば、楽になるのかな。
誰も来ないんだと解ったら、心は楽になるんだろうか。
「ツカサ君、ほら見て……ツカサ君がセックスしたり僕に優しくしてくれるおかげで、やっと腕が戻ったんだよ……。でも、このままじゃ上手く動かせないんだ」
「え……」
そんなの聞いてない。
反射的にブラックを振り返ると、相手は少し悲しそうな顔をした。
「ほら、今も握力がちょっとしか戻ってないんだよ……。ツカサ君がもっと僕と一緒にセックスしてくれないと、このままになっちゃう……」
「う、ぇ……で、でも……ここじゃ……」
こんな所じゃ、えっちなんて出来ない。
まさか本当にここでしようなんて思ってないよな?
不安になってブラックを見るが、相手はさっきと寸分違わぬ顔を鼻先まで近付けて来て、軽くキスをして来る。
それだけで、体の奥が熱くなって。
ブラックの顔が離れると、余計に外の空気が冷たく思うようになった。
「だってツカサ君……昨日普通にセックスした時は、あんまり曜気くれなかったじゃない……。僕、これでも自力で頑張って腕生やしたんだよぉ?」
「う、ぇ……だ、だって、俺、そんなの自分じゃ……」
「分からないよね。うんうん、解ってるよ。でも、僕が受け取った曜気は少ないんだ。どうも家の中にずっといると、ツカサ君は元気をなくしちゃうみたいだね。……だからさ、こうして大自然の中でセックスしたら、腕を完全に治すほどの曜気をくれるんじゃないかなぁって思って……」
え……そんな事になってたのか?
そう言えば俺、ずっと家の中に居てストレス溜まってたけど……まさかそんな事で曜気が減るなんて事が有り得るんだろうか。でも、曜術は基本的に感情に威力が左右される術でもあるワケだし……そう言う事も……あるのかな……。
でも、だとしたら、俺知らない内にブラックに迷惑かけてたのか?
なら……。
「ほ、ほんとに……外でえっちしたら……良いのか……?」
「まあやって見なくちゃ分からないけどね。……でも、試さないよりはいいでしょ? ツカサ君だって、散歩して欲求不満が解消されるし一石二鳥でしょ」
「で、でも……こんなの……」
こんな風に、とんでもない所でとんでもない格好なんて出来ない。
弱気になる俺に、ブラックはにっこりと笑って俺を再び強く抱きしめた。
「ああんもう大丈夫だってば! これはただの心を鍛えるための肝試しだよぉ。本当にセックスするための場所は、ツカサ君に選ばせてあげるっ。散歩にもなるし、一石二鳥でしょ? えへへ」
「…………」
なるほど、ブラックは最初からそのつもりだったのか……。
だから、俺に対して度胸を付けさせようとこんな事をして……って、それならこうやって俺を辱める必要なんてないだろ!!
「ばかっ、お、おまえっ、だったらこんなこと……!!」
「でも、ツカサ君だって興奮したでしょ……? ほら、おちんちんが勃ってるよ」
「うえっ」
そ、そんな馬鹿な。
慌てて下を見てみると、なんとそこにはブラックが言うように半立ちになった俺の可哀想な愚息が……いやおい待て待て待て! なんでちょっと勃ってんだよおい!!
俺興奮してないじゃん、してないじゃんかあ!!
「あははっ、薬の効果がまだ効いてるみたいだねえ。でも……この調子だとうっかり出ちゃうかも知れないから……」
「っ……?!」
ブラックが横から手を出してくる。
何事かと思って振り返ると、指の間に何か丸い物が見えたような気がして――
「んぎゃぁっ!?」
ブラックの手が、その丸い何かを俺の愚息に通したと思った瞬間、根元まで落ちたソレが、唐突に俺のモノをきゅっと締め付けたではないか。
何が起こったのか解らず思いっきり跳ねてしまった俺に、ブラックは上機嫌な声を出して、ようやく俺を離した。
「よかった~、上手く行ったねえ!」
「ぶっ、ぶ、ぶらっ、こ、これなに」
やだコレ、変な感じがする。なんか、痛くは無いけど常に圧迫感が有って、物凄い違和感しかないんですけど。何コレ!
もう意味が解らなくて、恥ずかしさなんて関係なく自分の股間を見ると、そこには金色の輪っかが根元に嵌められた俺の可哀想な分身が……。
ま、待て。これってまさか……いわゆるコックリング……!?
「あれ、ツカサ君こういうの知らない? これは精液を無駄打ちしないようにする為の矯正器具だよ。使役者が許可しなければ絶対に出せないようになるんだ」
「な、なにそれ、コレもツルヤの道具なの!?」
素っ頓狂な声で聞き返すと、ブラックは俺の肩を掴んで自分の方を向かせた。
ほっ……な、なんとか羞恥プレイからは逃れた……いや、ブラックに股間を見られているから恥ずかしいのには変わりないんだけどさ……。
マシにはなったがやっぱり居た堪れずもじもじしてしまう俺に、ブラックは満足げに口元を緩めた。
「まあそんな感じ。でも心配しなくていいよ。ちゃんと完全に勃起しても外れないし、締め付けもそれ以上強くならないから! あくまでも抑制するための器具だと思って許してよぉ……ね? 僕だってツカサ君の精液を無駄打ちしたくないしさ」
「う……」
そりゃまあ、そうだけど……。
今のブラックは精液に含まれる曜気すらも無駄にしたくない怪我の具合だから、コレを使いたいと考えるのは仕方がない。だけど、何か騙されてるような気がするのは気のせいなのだろうか。
でも、この状態で安心してえっち出来る場所を探すとしたら、その途中でうっかり暴発しかねないし、ブラックもどうせいらない悪戯とかしてくるだろうし……。
恥ずかしいけど、でも、お仕置きされるよりはマシかも知れない。
なにより、こうしているとずっと大通りで辱められそうだからな。
「ツカサ君、セックスするまで頑張ってくれるよね?」
「うう……分かったよ……。でも、散歩じゃないからなコレ……する場所探すまで、変な事したりすんなよ。絶対だからな!! あと散歩は改めてするんだからな!!」
「はいはい、解ったよツカサ君っ」
でえいチクショウ、ニコニコしやがって。
こっちは大変な事になってるのに、なんでこのオッサンは平気なんだよ。
理不尽さを強く感じないでも無かったが、もうここまで来たら仕方がない。
とにかく俺は、もう二度とさっきみたいな羞恥プレイをされないように頑張るのだ。ブラックと隠れてえっち出来る場所を早く探して、えっちも早く済ませよう。
そうしたら俺は解放されるし、ブラックだって腕の治りが早くなるんだ。
えっちするのは仕方がない。仕方がないから、そこは良いんだ。
頑張れ、負けるな俺。泣きそうになるんじゃない。股間が隠れただけで御の字だ。
必死で自分を奮い立たせながら、俺はブラックとえっちする場所を探すために、森と廃虚だらけのフィールドを探索することにした。
自分の分身が耐え切れず完全に勃ち上がる前に済ませようと決心しながら。
→
※次はブラック視点。セクロスは攻め視点もイイ
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