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廃荘ティブル、幸福と地獄の境界線編
7.最低な変態と知りながらも※
しおりを挟む「えへ……ツカサ君、汚れないように移動しようねえ」
俺の無言の同意を察したらしいブラックは、俺を軽々と抱える。
と、気付く事が有って俺は目を見開いた。
「ブラック、左腕……」
「あ、気付いた? 昨日からツカサ君の傍にいるお蔭か、肘のところまで回復してるみたいなんだ。ほら、だからちょっと不格好だけど曲がるよ」
そう言いながら俺の足を支える、少しだけ先が曲がる左腕。
以前のブラックの腕の長さを考えると、そりゃまあ二日経てばその程度回復するかもしれないがという感じだったが、それにしても目に見える速度での凄まじい回復に驚いてしまった。だって、一日二日で肘まで再生するとか凄くないか?
俺の黒曜の使者の力が凄いのか、それともブラックが元々持ってる自己治癒能力が凄まじいのか。どちらかは判断できなかったけど、確実に直っているのなら、まあ、良いか。というかえっちが無駄になってない事が解って良かった……。
つーか、元はと言えば、コイツが毎回毎回何かと理由を付けてえっちしようとするから、一々疑わなきゃ行けなかったんだがな。頼むからもうちょっと落ち着いてよ。
「治ってるんだったら報告してくれよ……」
「あはは、ごめんごめん。まだ感覚が無いから自分では気付かなくてさ。たぶん指の先まで戻ったら、感覚も戻って来ると思うんだけど」
「そ、そうなのか……」
「見てみる?」
そう言われれば、頷くしかない。
俺だってブラックの腕の治り具合は気になるし。
そんな俺の態度に何故かご満悦なブラックは、外廊下のようになっている屋根付きのウッドデッキに俺を座らせて、右隣に腰かける。
そうして、ヒラヒラさせている左腕の袖をまくった。
「おお……確かに、肘まである……。傷とかはないな。……っていうか、むしろ皮膚の色が元々の腕より白いんだが」
「日焼けとか曜気焼けしてないからじゃないかな。馴染むうちに普通の肌色になると思うよ。感覚もまだ戻ってないから、羽化したての蝶みたいなもんなんだろう」
「はえー」
触っていいか許可を取り、新たにくっついた肘のパーツをムニムニと触ってみるが、これといってブラックは反応を見せない。しっかりと骨も内包されていて、筋肉だってきちんと張っているようなのに、どうして感覚は戻らないんだろう?
何だか不思議で首をかしげながら指でつついていると、ブラックが俺の肩を掴み、ゆっくりとデッキに押し倒してきた。
「んもう。ツカサ君、今からセックスするの忘れてない?」
「う……」
「ツカサ君が良いよって言ったんだからね?」
「…………」
そりゃ、まあ、そうなんだけど。
でもその、やっぱり久しぶりに外でヤるってのは……。
「ああんもうそんなに恥ずかしがっちゃって! ツカサ君たら本当ウブで可愛いっ」
「いや普通の反応だってこれは……。なあ、その、やるならやっぱベッドで……」
「ベッドまで我慢できないよぉっ。あっ、だったらさ、服をずらして挿入すれば良いよ! そしたら恥ずかしくないからさっ、ねっ、ねっ!」
「えっ、お、おいちょっと!」
いつになく性急なブラックは、俺の体をひっくり返すと背中側に手を入れて、有無を言わさず俺のケツを引っ張り出しやがった。
いや、出てる、出てるってケツが! ずらすってレベルじゃないってば!
「ブラック!」
「大丈夫、潤滑液はポケットに常備してるから!」
「バカ! ちげーよバカ! この状態でヤるとか普通に野外っあっ!」
うわぁあっ、し、尻に何か垂れて来た!
思わず振り返ろうとした俺の背中を、曲げ肘が抑える。これ、左腕か。この野郎、治った途端に便利に使いやがって。なんとか阻止しようとして暴れるが、しかし相手は物ともせずそれどころか液体を馴染ませるように、俺の尻肉を揉み始めた。
「うやっ!? あっ、ちょっ……やだって……!」
「うーん。ぬちゅぬちゅ言ってて、すっごくやらしいね! おっと、お尻を揉んでるからかな? ツカサ君の可愛い穴がきゅうきゅうして」
「あ゛ーっ、もーっ、実況すんなー!!」
何を思ってお前は実況してんだよ、拷問か、拷問なのか。
ベッドの上ならともかく、燦々と日が照っている大自然の中で、なんで俺は自分のケツ穴の実況を聞かねばならんのだ。鳥のさえずりとか川のせせらぎはどうした。
オッサンの淫語とか本来聞こえてこない物を俺にぶつけてくるのはやめて!
「ねえツカサ君、挿れて良い? こんなに解れてるんだから挿れて良いよね?」
はぁはぁと息がかかる。
さっきより近くなっている事に驚き体が動いてしまうが、ブラックの肘と手が動く事を許してくれない。それどころか尻肉の片方を食い込むほどに指で掴み、ぐいっと押し広げて来て。……ううっ……やだ、ブラックの指の圧だけじゃなくて、吐息が尻の谷間に強く当たっているのが解ってしまう……。
「ツカサ君のやらしいトコが、早く挿れてってぱくぱくしてるよ。……ふふっ、ふははっ、昨日ずっと指で柔らかくしたおかげかな? 今日は凄く素直だ」
外気に触れる感覚が大きくなったことに歯を食いしばる俺を、ブラックは心底楽しそうな声で苛んでくる。完全に俺を虐めて楽しんでいた。
「もっ……それ……っ、いいから……! っれるなら、早くほぐせ……っ」
こんな場所で延々言葉責めされるよりは、さっさと終わらせた方がましだ。
尻だけ出した情けない格好で掘られるなんて恥ずかしいにもほどがあるが、すぐに済ませれば何も問題は無いのだ。とにかく人がいなくて良かった。
「そーお? じゃ、お言葉に甘えて……」
熱い息が少し遠ざかる。
ブラックも本腰を入れて解す気になったようだ。よし、いいぞ。
だけど昨日散々弄られたから、初っ端から指が二本とか来るかもしれない。
その感覚を思うと少しキツかったが、今は我慢するよりないだろう。尻を背中に肘を置かれて固定されたまま、俺は再び背後で動くブラックの気配にぐっと力を入れて衝撃に備えた。俺の上の口と同じくキュッと引き締まったソコに、ひたりと、何かが触れる。一瞬指かと思って構えた俺だったが。
「えっ……!?」
いや、ちがう。これ、指じゃない。
これって。
――――そう、直感したと、同時。
「ッ、あぁ……!!」
緊張にきつく締まったソコを、体内を裂くような衝撃と共に、無理矢理こじ開けて侵入してきた凶悪な感覚。
あまりの事に、息が止まる。
ブラックの感じ入ったような声音が聞こえた途端、一気に腸壁を圧迫し擦りながら奥へと突進してきた想像を絶する衝撃に、俺は喉を反らして目を見開いた。
「あ゛ッ、あ゛……ッ!! がっぁ……あ゛ぐっ、ッ……ぅうう゛……!!」
おとといも感じた感覚のはずなのに、覚悟が決まって無い上に理性すらもはっきりと残ってしまっているせいか、痛みとも苦しみとも衝撃ともつかない強烈な感覚に、喉がぎりぎりと引き絞られて声が出せなくなる。
無様な声ばかり零すが、ブラックはそんな俺に構わず腰を押し進めてきた。
「ああ~……っ。あはっ、あははっ、あぁっ……たまんないよぉ……! あは、っはぁ、はぁあ……ツカサ君のナカ凄く温かくてぬるぬるで気持ちいい……っ」
ぬるぬるしてんのは、お前のデカブツに塗られた潤滑液のせいだろうが。
バカ、ちくしょう、用意も無く挿れてきやがって。ひ、人の気持ちも考えないで!
「ひぐっ、う゛ッ、ぅあぁっ、あぐっ、う゛……!」
「ツカサ君、今日はナカが柔らかくて気持ち良いよぉ……っ。でもお尻の締め付けが強くて、すっごく気持ち良い……ッ! あぁっ、ぁ……あふっ……すっ、すぐにでも出ちゃいそう……っ」
ブラックのがナカで動いてるのが解る。
体内の何かを引き摺り出されるような感覚に鳥肌を立てるが、それに気を取られている間にすぐ押し込まれて、前立腺にわざとらしく擦り当てられる。
それを何度も何度も繰り返されると、体が震えて勝手に声が出た。
だけど、ここは外で、俺はまだ理性が残っていて恥ずかしくて。
手で必死に口を押えるけど、ブラックに深く入り込まれるともうどうしようもなく体が反応して、今にも俺の愚息が爆発しそうだった。
「はぁっ、はっ、ああっ、あ、ツカサ君っ、ぼ、僕、もう出ちゃうよぉ……っ!」
「まっぇ、やっ、あっ、あぅうっうあぁっ、やらっあっ、らぇっもっ、だ、めぇえ……!」
そんなに早くされたら、激しくされたら、もう、俺も……っ。
「ツカサくんん……ッ!!」
「んっ、んぅうう……!!」
◆
本当に、本当にブラックは最低なオッサンだと思う。
外で強引に俺のケツを掘ったのもそうだが、何より最低な所は、俺が嫌がるのを解っていて、あえて俺の目の前で「いやなこと」をするところだ。
そう、例えば…………
「は~、出たてのツカサ君の精液美味しいな~」
………………。
ああそうだ、こういう所だ。
コイツは俺が嫌がると解っていながら、俺にこう言う事を聞かせるのだ。
……誰がコイツを「俺の恋人」だと思うだろうか。どう考えても、俺のような健全な青少年に嫌がらせをするセクハラ性犯罪者にしか見えないだろう。
俺にはそう見える。ていうかもうそうとしか見えないから勘弁して下さい。
つーかなんなんだよコイツは!!
人が野菜を持って作業している横で、あからさまな妄言を言いながら俺の不名誉な使用済パンツを舐め回すって何、なにごと!?
なんで人が落ち着いた頃にまたそんな事すんの!?
しっ、しかも、しかも……っ。
「あっツカサ君ごめんね! 舐め取ったらすぐに洗濯して良いから。いやー、替えのパンツを買っとくべきだったねえ。ツカサ君の服、あのクソ小僧の家から着て来たもの以外、全くなかったのをすっかり忘れてたよぉ」
「うぐっ、う、うう……もう良いから何も言うな……ッ!!」
そう。そうなのだ。俺はその事を失念していた。
神族の島・ディルムで冒険者用のズボンもパンツすらも失っていた俺は、あそこで服を借りてずっと過ごしていた。なのに、地上に落ちてからはその着たきりの衣装も失い、この場所に来るまでずっとレッドの家の服を着ていたのだ。
自前の服が残機ゼロであったという事も忘れて……。
「もういっそツカサ君は下半身裸でいんじゃない?」
「はぁ!?」
ふざけんな、と横に居る変態中年を睨み付けるが、ブラックは俺の下着の、しっ、下着の、その……ああもう、とにかく最低な部分を舐めるばかりで、怒る俺の事など怖がりもせずに肩を竦めてみせやがる。
「だってズボンを今から洗濯しても乾くのに時間かかるよ?」
「ブリーズで乾かすからいいんだよ!! もっ、もう良いだろ、返せよぱんつ!」
「ああんちょっと待って、もうちょっとこの香りを……」
「ばーっ!! この変態ー!!」
何考えてんだバカ!!
いや、やらしい事しか考えてないのは解ってるけどさあもう!
だけどもう間近で自分の使用済み下着を舐められるのに耐えられず、俺は下着の端を掴んでブラックから奪い返そうとする。
しかし相手は何故か離そうとしない。
「駄目だよツカサ君! 使用済み下着、しかも精液付きの物をくんくん出来るなんて凄く貴重な事なんだよ!? 存分に嗅いでおかないと!」
「そんなもん貴重な存在にすんなーッ!!」
とにかく返せ、いや返さない、とグイグイ引っ張り合う。
もう何としてでもこの異様な羞恥プレイを終わらせたかった俺は、ブラックの力にも負けずに精一杯のパワーで自分の下着を引っ張った。
ええいこの、俺だって男なんだ。負けてたまるか!!
そう気合を入れて、火事場の馬鹿力と言わんばかりに足を踏ん張り気合の一引きをお見舞いした、その、刹那。
びり。
「あっ」
「あ゛っ!?」
嫌な音がした。だが、もう体は止まらない。
椅子から転げ、後ろに体が傾きながら、俺は……目の前で自分のラスト一枚である大事なパンツがスローモーションで裂けて行くのを、見つめる事しか出来なかった。
あ、ああ。あああ。
俺のパンツが綺麗に裂けて行く……。
「うぎゃっ」
完全に受け身もとれなかった俺は、背中から倒れ頭を床で強かに打った。
しかしもう、自分が椅子から転げ落ちたなんて事はどうでも良い。今はただ、自分の手の中に握られたパンツの片側を思って、涙を流すばかりだった。
そんな俺に、ブラックはというと。
「わーお、ツカサ君たら大胆!」
…………ああ、そういえば大股開きでしたね。
俺の惨状を見てもなおこういう事を言うオッサンに殺意が湧いたが、このド変態のクソ中年をそうと理解して居ながら、契りを結んだりキュンとしたりしたのは俺だ。
こんな奴だと解っていながら、一緒に居るのだ。俺は。
それを思うと怒る気力も失せて、俺はただただ寝転がるしかなかった。
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