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最果村ベルカシェット、永遠の絆を紡ぐ物編
34.思惑を悟らせるような悪人はいない1
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「えぇ……ツカサ君の“支配”で、腕を治すって?」
サンドイッチ……に限りなく似せた、肉や野菜などを挟んだ白パンを食べながら、ブラックは「なんだその案は」と言わんばかりに顔を歪める。
さもありなん。昼前のこの爽やかな時間にやってきて、飯を食わせた途端に突飛な事を切り出したのだ。誰だって面食らうだろう。だが、と俺はブラックに近付く。
「有り得ないこっちゃ無いと思うんだよ。だってさ、黒曜の使者って元々はグリモア達を作り出した存在なんだろ? それに、色んなモンスターも生み出したんだ。それだけの力が在るって事なんだよ。でも、俺はその力を扱えてない。……っていうか、今は何故か曜術が使えないし……だから……」
言い終わる前に、ブラックは一生懸命にむしゃむしゃとサンドイッチもどきを咀嚼して、ごくんと呑み込むやいなや焦ったように口を挟んできた。
「いやいやいや、だから、何でそれで僕がツカサ君を“支配”して命令する事になるのさ。ツカサ君そういうのイヤって言ってたじゃん」
「そりゃ自分が知らない間に色々されんのは嫌だけどさ、でも……アンタの腕を治す手段になるんなら、試してみたって損はないだろ?」
「ツカサ君……」
ああもう、ポカンとしちゃって。顔がマヌケなんだよ。
せめて髭にくっつけたパンくずとかは取れよと思いつつ、ハンカチで拭いてやる。それだけでさっきの顔がもうデレッと崩れるのには閉口してしまうが、ブラックも俺の為に頑張って探しに来てくれたんだし……深くは言うまい。
それに、ブラックは今左腕がごっそりなくなってて不自由してるんだしな。
「とにかく……モンスターだって生み出せるなら、腕だって簡単かもしれないだろ」
「えへ……ツカサ君、僕の為に肉体を投げ出してくれるのぉ……?」
「ばかっ! そういう言い方やめろって!」
「いやでもさ、さっき聞いた話だと、ツカサ君も今すぐには曜術使えないんでしょ? だったら、支配してもどうにもならないかも知れないよ。それに、僕が支配したらツカサ君の瞳の色も変わっちゃうかもしれないし……なにより、まだツカサ君があの小僧に“支配”されてる状態だとしたら、僕の支配を受け付けない可能性もある」
「あっ……そっか……」
その事をすっかり忘れていた。
今の俺は、日本人としては一般的な瞳の色である琥珀色と、レッドの支配によって現れた色である真紅が混ざり合っていると言う妙な状態なのだ。
グラデーションとかじゃなくて、マジで大まかなマーブル模様みたいになっているから、鏡を見ると俺的には正直キモい。これに興奮するブラックとレッドは大概だ。
それはともかく、確かにブラックの言う通りだよな。
何故か曜術が使えない今の状態では、グリモアが支配しても思うように力が出せないかも知れない。瞳の色が変わる可能性もあるし、逆に言えばこの瞳の色を解く術もまだ分からないし……そりゃブラックも二の足を踏むよな……。
ううむ、パッとやればすぐここから脱出できると思っていたが、現実はそう簡単にうまくいかないようだ。いや当然なんだけど。俺がアホだった。
「あとさ、曜術が使えないのは多分……この国のせいだと思うよ。だってツカサ君は“二つ名”を持ってないし……」
「ふたつな?」
何その中二病心を擽る言葉。
ちょっと胸にキュンと来てブラックに問い返すと、相手は苦笑して答えてくれた。
曰く、二つ名と言う物はこの国での「魔法許可証」みたいな物で、この国で曜術を使うにはこの“二つ名”が絶対に必要になるらしい。
その方法は二つあって、一般的な方法はこの国の冒険者ギルドで登録して仮の二つ名を貰う事なんだけど、中には偉い人に功績を認められて名を授かる事もあるんだとか。で、その二つ名を貰うと王様が持ってる本に名前が記されて曜術が自由に使えるようになるらしい。
他の国では全くありえない事だったので驚いてしまったが、要するに登録制って事かな……。どういう理屈なのかは解んないけど、でもまあ異世界なんだし一国くらいはこんな国が有っても良いか。
詳しく知ると頭が痛くなりそうだったので、今は浅い理解で済ませておこう。
「ってことは……俺には二つ名が無いから曜術が使えなかったんだな?」
「うん。そう言う事。僕は昔登録だけしてたから、こうやって曜術が使えるんだ」
そう言いながら短く詠唱して指の先に【フレイム】の炎を灯すブラック。
昔って……シアンさんや他の人とパーティーを組んでた時の話かな?
そういえばいろんな場所に行ってたみたいだし、当然このアランベールでもやる事が有って、登録だけはしていたんだろうな。ブラックの様子からすると、この国には戻って来たくないって感じだったから、不本意な登録だったのかも知れないけど。
「ま、それはそれとして……ねえツカサくぅ~ん、昨日は徹夜したの? 僕のために徹夜して、腕を治す方法考えてくれてたのぉお?」
「どわっ!?」
俺が考えていると、何を考えているのかブラックがいきなり圧し掛かって来た。
デカい体で遠慮なく体重を掛けて来るもんだから、押し負けてしまって俺は地面に手を突いてしまう。しかしそんな俺に構うことも無く、ブラックは背中にぴたりとくっついて来て、俺の体勢を強制的に四つん這いにしてしまった。
「ふ、ふへへ、ツカサ君ちっちゃくて可愛いなぁ」
「だーっ! 離れろってばっ、いま真面目な話してただろうがっ」
「真面目な話ならこのままでも出来るよ? それよりさあ、ツカサ君……昨日の夜、あのクソガキとセックスしたの……? してないよね……?」
「うぁっ……やだって、耳に息かけんな……っ!」
背後から荒い息をハァハァと吹きかけて来るブラックを振り払おうとするが、隻腕だというのにブラックは俺に圧し掛かったまま全く動かず、それどころか俺の尻にも硬いモノをぐりぐりと押し付けてくる。
ちょっ、ちょっとまて、これは駄目だろ。今そんな場合じゃ無いってば。
慌てて逃げ出そうとするが、しかしブラックは俺を離してくれなくて。
「つ……ツカサ君のお尻は無事……? ねえ、確かめさせてよぉ」
「や、だっ……い、いまっ、そんな事してる場合じゃ……っ」
「でも気になるんだよ……ねぇツカサ君、セックスしてないよね? このえっちな穴に僕以外のペニスなんて挿れてないよねえ?」
ブラックが、耳の端に舌を這わせて来る。
それだけでも体が震えてしまうのに、ブラックはハァハァと言いながら尻の谷間に凶暴なブツを遠慮なく押し当てて来て。
尻に食い込む布と熱い感触が、膝立ちの足を震わせてしまう。こんな風になりたくなんてないのに、ブラックにぐいぐいとズボンを押し込まれると、どうしても声が変に裏返ってしまって恥ずかしくて仕方なかった。
「それ……っ、も……やだぁ……っ」
「えー? ツカサ君の腰から下は僕の事待ちわびてるのに、イヤじゃないでしょ? ツカサ君も昨日僕じゃ無い奴と寝て不快感あったでしょ、口直ししたいでしょ?」
「っ……! ぃ、ぁ……っ、そっ、そんな、こと……っ」
「そんなコト無いって? 悲しいなあ……不安だなぁ……ツカサ君、もしかして本当にクソガキに犯されちゃったの? 僕のことないがしろにするのぉ……?」
そんな事を言うなんて、ズルい。
確かに、待っている事しか出来なかったブラックとしては不安だっただろうし、気が気じゃなかっただろう。だけどさ、ズルいよ。そうも不満な感じの表情を見せられたら、強く拒否できないじゃないか。
それに、ブラックだって不便な生活してるんだし、それを思うと……。
「ねぇ、ツカサ君……僕に見せて……? ツカサ君が確かに僕だけの物のままだって確信したいんだよぉ……」
「ぅ……うぅう……」
見せるって事は、ズボンを脱いでブラックの目の前で見せつけるって事で……そ、そんなの、ベッドの上でも恥ずかしいのに、こんな場所でやるって……。
でも……ブラックは、が、我慢してるんだし、俺がレッドと一緒にベッドで寝てるって事にすら、許容してくれてるんだし…………だったら、その……こ、恋人として、このくらいは俺も頑張らなきゃいけないんじゃないのか。
だって、まだブラックのためになる事なんて何も出来てないし、レッドと和解させるための手掛かりすら掴めてないんだ。だから、ブラックをこれ以上不安にさせないためなら……。
「ツカサ君……」
「わ……解った……。見せればいいんだろ……」
ぎこちない声で返した俺に、ブラックが「わぁっ」とはしゃぐ。
圧し掛かられている俺は、ブラックのヤバいブツが尻の谷間で動くのを感じて痛いくらいに顔を熱くしながらも、その恥ずかしさをぐっと堪えたのだった。
→
※次何故かエロが入りますが
丸々一話ではないです。後半別の話
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