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イスタ火山、絶弦を成すは王の牙編
だから、鍵をかけた2※
しおりを挟む※殴打とかはしてないんですが、流血描写があります注意
え……。
う、嘘……服、破かれた……?
「抵抗しないのか?」
問われてハッと我に返るが、クロウはシャツを広げて再び俺の裸を曝す。
外気が近いせいか肌が冷えるような気がして、思わず口を引き締めると、クロウは目を細めて俺の顔をじっと見た。
「怖くて動けないか」
「ぅ……」
「そうだな。今のオレは角も生えているし、牙も前より鋭く太くなった。爪は鋭くて厚い。お前達脆弱な人族とは違う」
肌に手が触れる。
だけどその手には、指から少しはみ出た爪があって、それが肌に食い込んできて。
「っ、ぃ……っ」
明らかに人族の爪の生え方とは違う獣の爪が、動く度に肌を引っ掻いて来て、胸の上を滑るたびに痛みを伴う痕が付いた。
クロウの言う通り、人とは違う。黒光りする長い獣の爪は、手の甲から五本の指の筋に沿うように生えていて、まるで鉤爪という武器のようだ。だけどこれは取り外しが出来る物じゃない。明らかにクロウの手の甲から生えていた。
「綺麗で美味そうな肌に、赤い線が何本も出来た。ここから心臓をえぐれそうだな」
「ひぐっ、ぅ、あ゛……!」
心臓が有る位置にぐっと爪を立てられて、思わず体が動く。
食い込んでくるその痛みに声を上げ思わずクロウの腕を掴むと、それが鬱陶しいと言わんばかりにクロウは俺の両腕を片手でまとめた。
「邪魔だな。あまり動くな。加減が出来ずに骨を折ってしまうぞ」
そう言って、クロウは片手で纏めた俺の両手首を握る。
だがその力はあまりにも強く、まるで万力に両手を絞めつけられているようで、俺は強烈な痛みに思わず歯を食いしばって叫んでしまった。
「ぃあ゛っ、ぃ゛っ、う゛、んぅう゛う゛う゛!」
痛い、痛い痛い痛い!
痛くて、何も考えられない。目を閉じてその衝撃に耐える事しか出来ずただ耐えていると、体が急にぐいっと動いたような気がして、腕が伸びた。
何が起こったのか解らず目を開けたと同時。土が盛り上がるような音がして、両腕が急に動かなくなった。
「あ゛っ、ぇ……!?」
なに、なにこれ。腕が動かない。
ワケが解らなくて手が有る方向を見上げると、視界の端の方で地面が盛り上がっているのが僅かに見えた。手を固定している感触が硬い。もしかして、土の曜術で腕を地面に縫い付けられたのか……?
「クロウ、これ、なに……っ」
痛みで涙が出たのか、視界が潤んでまともにクロウの顔を見る事が出来ない。
だけど、クロウの表情が穏やかじゃないのだけは解る。それが、怖かった。
「ああ、美味そうだな……」
俺がいう事なんて全く気にもせずに、クロウは体を屈めて顔を近付けて来る。
薄らと開いた口からいつも以上に鋭く長い牙といつもの分厚い舌が見えて、それをどう判断したら良いのかと脳が混乱した。
いつもと同じで、いつもと違う。
ただ見ることしか出来ずにその真っ赤な舌を眺めていると、爪で散々いたぶられて紅潮した肌の上に引かれたいびつな血の線に、舌が触れた。
「ひぐっ……!」
痛くて熱を持っていた所に少しざらついたぬめる舌が密着してきて、大きくなぞりながら血を舐めとって来る。反射的に痛みを感じてしまい嗚咽のような声を漏らしたが、クロウは俺の反応など気にもせず何度もそこを舐めた。
痛い、そう感じていた。
だけど乱暴に傷口を舐められるたびに、体が変な熱を帯びて行く。
そんな要素なんてどこにもないのに、冷たい床に触れた背筋がぞくぞくしだして、肌が勝手に粟立って来た。
「あっ、あ゛……!? ぃ、なん、でっ……なんでぇ……!?」
よく分からない。なんで。何で傷を抉られてるようなものなのに、体が疼く。
熱くなって、冷たい空気にも反応して、刺激に敏感な所に意識が集中した。でも、俺の意思じゃない。痛いのに、体が反応してるなんて変だ。こんなの違う。
何でこんな風になるんだ、違う、嫌だ、こんなこと嘘だ、嘘だ!!
「ふっ……こんな事をされて悲しいか? それとも、こんな酷い事をされても感じてしまっている自分に恐れを感じていると?」
「なっ、ぁ」
「目の端でチラチラと誘われたら、嫌でも気付く。この固く勃起した乳首はなんだ? ツカサは痛い事をされても興奮してしまう変態なんだな」
「ひぐっ、ひ、ぃっ、いあぁっ、ちがっ……ちが、ぅ、っく、うぅう……っ!」
言いながら、爪で乳首の先端をくりくりと弄られる。
加減されていても爪の先端はやっぱり少し痛くて、ちくちくする。でも擽るように刺激されたら、敏感な場所は簡単に反応してしまって。
自分の体なのに、どうにもできない。それが怖くて、俺は苛立ちで腕をがたがたと動かしながら、いつ傷付けられてもおかしくない爪に首を振った。
でも、クロウはそんな俺を見て牙を見せながら苦々しく笑うだけで。
「ははっ……。ツカサ、お前はどうせ誰にだってこうなる。お前の心はそうではないとしても、所詮体は隷属の身……お前はもう、誰にでも足を開く淫乱なメスなんだ」
「ち、が……ちが、ぅ……ちがうぅ……!」
違う、そうじゃない、絶対に違う。
誰にだってこんな風になるんじゃない。それだけは絶対に違う。
例え誰かに「支配」されて命じられる事が有っても、それは心が伴わない行為だ。クロウを完全に拒めないのは、心の問題で、体の問題じゃない。
いつの間にか胸部を揉まれていて、それすらも鈍く反応してしまう体を叱咤し首を振る。絶対にそれだけは違うとしゃくりあげながら必死で答えた俺に……クロウは、怒りをにじませた表情で眉間に皺を寄せた。
「違う? これでもそう言えるか」
そう言いながら、クロウが俺の腹に触れて、言葉を吐き出した刹那。
強烈な衝動が体全体を突き抜けて、俺は釣られた魚のように体を波打たせた。
「っ、ぃ……!? いぁっ、なっ、なに、やらっあっあぁあっあ、あ、あああ!!」
「みろ……その目で、何が起こってるか“視ろ”ツカサ!!」
喘ぐ俺に、クロウが怒鳴る。まるで獣の咆哮のような凄まじい声音に、目が動いて己の体を視る。すると、俺の体からは……橙色の気が溢れて、立ち昇っているのが見えて……え……なに、これ……どういうこと……?
これ、クロウに吸い寄せられて……
「お前は気付いていなかったろうがな、今までの快感は全てコレのせいだ。曜気を体から奪われて、そのせいでお前は抗えない程の快楽に支配されていたんだ」
「え…………」
なに、それ。どういう、こと。
「良く出来た体だな。お前は他人に気を奪われる時、相手が望めばその衝撃が快楽に変換されるようになっているらしい……。まさに、天然の媚薬だ。お前がどれほど嫌がろうと、体は勝手に支配者に従う。そうなっているんだ」
「う、そ……うそっ、嘘だそんなの!」
そんなの、聞いてない。そんなのキュウマは教えてくれなかった。
なんで、嘘だ、俺、そんなの知らない。ちがう、そんなの嘘だ、クロウは怒り過ぎて、何でもかんでも悪い方に捉えようとしている。それだけなんだ。
「今の衝撃を感じても、嘘だと? お前が淫乱ではないなら、それしか理由は無い。それに、今まで散々味わっただろう。紫狼の宿でも、あのダンジョンでも」
「……!!」
…………そう、だ……紫狼の宿でクロウに触られた時、痛みの後に強烈な快楽が襲ってきて、俺はそのまま失神してしまった。ダンジョンでもそうだった。
そんな気分じゃ無かったのに、俺は……快楽に、無理矢理追い立てられて……。
「やだ……」
嫌だ、そんなの、そんな体嫌だ。
そんなの俺の体じゃない、違う、違う違う違う違う違う!!
いやだ、いやだあああ!!
「あ゛ぁあああ゛あああ!!」
「受け入れられなくて、逃げ出したくなったか。……逃げられるわけが無いだろう。オレも本気でお前を捕まえているんだからな」
聞きたくない、そんなの違う、違う!!
腕が痛い、胸が痛い、喉が痛い全部が痛い、痛い、痛いだけだ、気持ち良くなんてない、だから俺はそんなんじゃない、そんな、こわいことになんてなってない!
「そうだ。お前がオレに触れられて感じていたのは、その作用に過ぎない……お前は本当は、オレに対して良い感情なんて持っていなかった」
「ひ、ぐっ、っ……くっ……ぅ、あ、あ……あぁああ……」
「これで分かっただろう? お前は結局オレのことなんてどうでも良かった。ただ、体を拓かれる快楽に酔って、大事な存在だと勘違いしていたんだ」
足が、冷たい床に触れる。
おしりが冷たい。何が起こってるのか解らなくてただ首を振ると、クロウが両足を掴み間に入って来た。……もしかして、俺、また脱がされて……。
「……好きでも無いオスに無理矢理組み敷かれて、強引に気持ち良くさせられるのはどんな気分だ?」
「っ、あ゛……」
「恋人だけに許したことを踏みにじられて……お前は、どう感じている」
クロウに触れられた所が、酷く疼く。
捕らわれた顎さえもじんじんして、唇に触れられても、消えない。
冷たい牙が下唇をひっかいて、俺の歯にかちんとぶつかる。何度も、何度も何度も角度を変えて口の中に入ってくる舌が、音を立てて俺の口の中で暴れた。
強張る舌を捕えて引き、舌の裏側まで責める。
苦しくて、耳の中から聞こえるような水音が体を苛んで、俺は震えながらぎゅっと手を握り締めた。気を保とうと。だけど、意識が朦朧として、お腹の奥が熱くて。
足を閉じようとしてもそう出来ないもどかしさに更に煽られ、俺はすすり泣いた。
これも、勝手に体を作り変えられたからなのか?
俺はそんなに酷い存在になっちまってるんだろうか。
……いやだ。やだよ。そんなのになんて、なりたくない。恥ずかしい、自分が気持ち悪い。俺は男で、そんなんじゃなくて、好きじゃない人に勝手に興奮するような、変な体じゃない。違うのに。
「っや……だ……っ」
クロウの顔が離れて、脇に息が掛かる。
汗ばんだ脇を舐められて、思わず体が浮いた。だけど、クロウは俺の事なんて構いもせずに、何度も荒い息で舐め続ける。
窪みの所に舌を押し付けられてちろちろと舌先を動かされると、勝手に声が出た。それすら「曜気を奪われる時の快感」に因るものなのかと考えると怖くて、俺は情けなく泣きながら嫌だと何度も首を振った。
だけど、クロウは離してくれない。
俺が嫌がっても止めず、それどころか、ざらついた舌で体をなぞりつつ下の方へと降りて来て。下腹部にまで到達した事に反応してしまうと、クロウは笑った。
「嫌でも感じるのか? 随分と従順な体だな」
「ぅっ、うぅ……っ」
「ツカサの幼いおちんちんも、はちきれんばかりだ。可哀想に」
「ひぐっ」
爪で先端をつつかれて、腰が跳ねる。
堪えようとしたのにそうする事すら出来なくて、自分の堪え性のなさに顔が歪む。その顔を見て、クロウは苛ついたような薄暗い笑みを浮かべて、噛み付くように俺のモノを咥えこんだ。
「っあぁあああ!! ひあ゛っ、ぃ、あっ、あぁあ゛! らぇっ、あえぇっ!!」
熱くなって勝手に勃ち上がっていた俺の物を、クロウは吸い上げながら舌で舐め回す。時折歯が当たるのが怖いはずなのに、それすら刺激になって腰が痙攣する。
裏筋を舐められて、舌の平らな部分で先端を全部何度もまんべんなく舐められて、そんな事をされたら、散々いじめられた俺の体は……。
「いっひゃぅ、やらっ、やっあっあぁあああ……!!」
溜まり切った熱が解放されるような感覚。
思いっきり吸われる事で体中が快楽を感じ取って震え、俺は仰け反った。
「はっ、はぁっ、は……はぁ、はぁ……っ」
息が出来なくなる。何度も何度も息をして、胸を上下させた。
「嫌がっていても美味いものは美味いものだな」
「ひ、ぅ……!? うぅ、う……も……吸っちゃ、やだ、ぁ……!」
「ここで気持ち良くなっておかなければ、お前も辛いだけだぞ」
「ぅ、え……」
なに、どういうこと。
クロウの言っている言葉の意味が解らなくて、涙まみれの視界で声のする方を見ると、急に腰を持ち上げられた。途端に、俺の上の方で大きな石でも動かすような音がして、体がひっくり返される。
やっと見る事が出来た俺の腕は、地面から生えている二つの繋がった輪に囚われていて、俺にはどうにも出来そうになかった。
……クロウ、なんで、こんなこと……。
逃げたいと言う思いよりも先に、そんな言葉が思い浮かんだ。
「まだ終わってないぞツカサ……」
だけど、俺がそれを深く考える前にクロウが俺の腰を掴んで尻を高く上げさせた。そこに、生温い液体が垂れる感覚がして、反射的に反応したと、同時。
締まった穴を強引にこじ開けて入って来たものに、俺は悲鳴を上げた。
「うあぁああ!?」
「たかが指一本で騒ぐなんて、ツカサらしくないな。いつもこれより大きなブラックの物を受け入れているだろう。こんな調子では、オレの肉棒がこの小さくて狭い穴に入ったら失神してしまうのではないか?」
「ひぐっ、ぃ゛、あ゛っああぁっ、そこっらぇ、だ、え……!」
動かしたらだめ、解そうとしないで。
終わったらもう戻れなくなる。ブラックが駄目だって、言ったのに。
「駄目? ココを触られると簡単にあえぐ癖にか」
嘲るような声が聞こえて、指が動く。鋭い爪が内壁に触れずに動き、そして、俺が一番触れて欲しくなかったところに、小さく触れた。
「あ゛……――――!!」
指とはまた違う、本当に小さな感触。
だけど、何度も何度も爪で突かれて言い知れぬ衝撃に悶える最中に、時折指の腹で全体的に押し付けられると、どうしようもなくなる。
「や゛っ、いぁっ、あ゛っ、いやっ、いあ゛ぁっ! やらっやっあぁあっあああぁあ!!」
ブラックの指と違う。違うのに、拒否できない。
太い指の感触も、爪の感触も違う。指が二本に増えただけでもきつくて、無遠慮に広げられると空気が入って来るのが解って俺は首を振った。
「ナカを探ったらまたツカサのおちんちんは元気になったようだな。……どれほど嫌だと思っていようが、体はここまで反応してしまう訳だ」
「うっ、ぅ……ひぐっ、ひ、ぅ……ぅ、あぁ、あぁああ……っ」
もう、分からない。
俺本当にそんな酷い体になっちゃったのかな。そんな体だから、クロウの手に反応しちゃって、こんなになってしまったんだろうか。
俺の意思じゃ無く。
好きじゃなくても、体がそういう風になっているから、強制的に……。
「最初から、こうすれば良かったんだ。嫌われても犯しておくべきだった」
「ひ、ぅ゛」
俺の背中にぴったりと体が重なって来る。
それと同時に、解され開いた穴に、ひたりと熱い何かが当てられた。
「ツカサ、分かるか……これがオレの肉棒だ……。ずっと、ずっとお前のナカに入るのを待ち望んでいた、哀れなもの……お前を今から犯すものだ……」
耳元でクロウの声がする。
低くて、頭が痺れるような大人の声。
いつも聞いていた……俺に向けられる、穏やかで、感情のこもった……
「あ゛……あ、ぁ……」
入っちゃう。駄目、ブラックが駄目だって言ったのに。
なのに、抵抗できない。クロウに散々弄られて、体が痺れて熱くて、蕩けて。
嫌なのに、ダメなのに、どうしようもできない。
自分の体が自分じゃないみたいで、それが本当に「体を作り変えられたから」だと思うと怖くて、俺はただ涙を零しながら首を振った。
このままじゃ、もう、二度と戻れない。
もう二度と、三人で旅する事すら、出来なくなる。
「ツカサ……」
駄目。そんな風に呼ばないで。
泣きそうな声で、俺の名前を言わないでよ。
嫌だ。俺、おれ…………
「や、だ……っ」
声が子供みたいに高くなって、震えてる。
情けなくて大人じゃなくてまた泣き出したくなるほど、無様な声。
だけど止められなくて、俺は必死に振り返っても見えない相手に振り向いた。
嫌だったから。何よりも、何よりもその事が、一番「いや」だったから。
「俺……やだ……っ、クロウと、ブラックと、一緒に……三人で、旅できなくなるの……やだ……やだよぉ……っ!!」
――もう、三人で旅が出来ない。道を歩いて、夜を明かして、仲良く笑い合って、これ以上に居心地がいい場所なんてない。そう思う程に、楽しかった旅。
それが、二度と出来なくなってしまう。
ブラックとクロウが、俺から離れてしまう。
何よりも、それが「いや」だった。だから、言わずにはいられなかった。
それ以上の嫌な事なんて、なかったから。
「……――――――」
俺の背後で、息を呑んだような音がする。
気付けば、押し付けられた熱い感覚は遠ざかっていた。
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