異世界日帰り漫遊記

御結頂戴

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世界協定カスタリア、世界の果てと儚き願い編

  育った環境が違えば感じ方も違う2

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※ただのメシ食うだけの回(;^ω^)
 なぜ長くなったし……







 
 
 食堂は、やっぱりと言うかなんと言うか……ドラマとかでよく見かける、一般的な社員食堂みたいな質素な感じだった。

 ここだけは妙にリアルっぽいというか俺の世界の様相が色濃く出ている気がして、何だか変なこだわりを感じる。

 ここを作った人は社食によっぽど思い入れが有ったのかな。
 正直よく判らなかったが、人の手が加わる建物である以上そう言う事も有るだろうと思い直し、俺は調理場に入ってみた。

「……マジでほんとに給食室みたいだな……」

 俺の通っていた小学校は給食を作る場所が有って、そこは給食室って呼ばれてたんだけど、この調理場はそこにそっくりだ。社食なんてのは言葉でしか知らないけど、もしかして同じような物なのかな。まあとにかく、調理できそうな設備が有ればそれでいい。

 俺は見慣れたコンロと流し台を見つけると、一応動くかどうかを試した。
 しかしやっぱり火は点かないし水も出てこないワケで、完全にこの遺跡は死んでいるようだ。もしかしたらライフラインを復活させる方法が有るのかも知れないけど、そこまで構ってられない。
 まあ、俺には曜術があるんだし、調理セットもあるんだから気にする事はないか。

「何か手伝うことはあるだろうか?」

 この状況を察してか、ケルティベリアさんが近寄って来てくれる。
 だけど、ぶっちゃけた話、何かポカをして怪しまれたら困るので、やる事は少ないからと丁寧にお断りしておいた。俺が料理を振る舞う役なので、食べさせる人をもてなすのは当然なのですと説明したら解ってくれたが、やっぱりそういうのは部族とか関係なく同じなのだろうか。

 おもてなしの心ってのは世界共通なんだなあと思いながら、俺はとりあえず調理室を簡単に掃除しつつ、何か使える物が無いか調べてみる事にした。
 何故かホコリとかは積もってないし、本当に劣化した壁から出た砂程度の汚れしかないので、廃墟とは言っても綺麗な廃墟って感じで掃除に苦労は無い。

 掃除用具入れにあった道具も、古めかしくなってたけど使えたしな……。
 もしかしてこの遺跡って、何かの力がまだ働いていて、そのお蔭で綺麗になってるんだろうか? でもホコリが舞い落ちない魔法ってどんな魔法だ。ピンポイントすぎないか。まあ掃除が楽だからいいけども。

「うーん……食器も調理器具もあんまり残ってないな。でも、有るだけ万々歳か」

 お皿は白い陶器のような材質だが、ちょっと違う感じがする。もしかして落ちても割れない食器だったりするのかな。怖いから落とせないけど。
 まあでも、調理器具は持ってるし食器さえあれば問題は無い。

「よし、じゃあ簡単な物でも作ってみるか」

 もちろん、事前に簡単に掃いて、調理台も【アクア】で出した水でちゃんと拭いて綺麗にしておいたぞ。これならここで料理を作っても大丈夫だろう。
 ってなワケで、俺は簡単な調理を始めた。

「コンロは使えないけど、コンロに火を落とす事は出来るからな……。どうせなら、なんかマトモなメシを作りたいなぁ……」

 世界協定も鬼では無いらしく食料は支給してくれたし、俺の要求を呑んで、半生の干し肉とか生野菜とかを用意してくれたので、どうせならそれらを使おう。
 ブラックも作業をしてて忙しいから、片手間に食べられるような物が良い。

 となると、やっぱりサンドイッチとかそこらへんかな。

「折角だし、新しく覚えたヤツを入れてみるか……」

 新しい物とは、ラゴメラ村で知ったあの味……そう、ラゴメラ村特有の蜂蜜酒で作った、あの照り焼きの味に似たお肉である。

 久しぶりに醤油の面影を掴んだ俺としては、あの懐かしさを感じる味は中々忘れられなかった。だってさ、この世界じゃあ何故か醤油も味噌もないんだぞ。それにお酢すら見かけないんだ。酒は有るってのにおかしいと思わないか。どうして日本人の心がどこにも見当たらないんだチクショー! 俺だってもうそろそろ米食いたいわ!
 というかもう偽照り焼きのせいで、最近日本食が恋しくなっちゃってもう。

 世界協定の本部……カスタリアでは自炊も禁止だったからずっと我慢してたけど、ここでなら自由に調理できる。蜂蜜酒もたんまり持って来たし、作るなら今の内だ。
 ふっふっふ、俺にぬかりはないぞ。蜂蜜酒は、ラゴメラ村のゴーバルさんに売れるだけ出して貰い、言い値で買って、五本ぐらいリオート・リングに収納してあるのだ。これでしばらくは照り焼き食い放題って寸法よ。

 なので、今日こそは照り焼き風味の料理を作るぞと張り切っているのである。

 とはいえ持って来たのは半生の干し肉なので、あの味に近付けるには少し下拵えをせねばならない。半生とは言えど干し肉だし、普通の肉よりも塩分が高いからな。
 短い時間煮込んで塩分を取ってから、肉のくさみを消すマーズロウを刻んだものと、ほんの少しだけ胡椒を擦りこむ。スパイスがあれば良いんだろうけど、今はこれが精一杯。調味料の工夫をするのは落ち着いてからだな。

 小麦粉をさっとまぶして、肉をコンロの上で燃やした火にかける。
 火が通ったら、蜂蜜酒を投入して弱火でじっくりと焼く。すると、俺には懐かしい甘辛いような香りが漂ってきた。そうそう、これですよこれ。

 厳密に言えば照り焼きとは少し違うんだけど、それでも似てればそれで良い。
 焦げないように気を付け両面を丁寧に焼きつつ、俺はパンや他の具も用意した。
 おっと、残った干し肉の煮込み汁はスープにでもしておこう。

 この世界では良く見かける小さいフランスパンみたいな形の白パンに、まだ新鮮な葉物野菜。あと、トマトも用意して貰った。

 パンの中央に切れ目を入れて、そこへ事前に作って保存しておいたタマ乳バターを軽く塗り、野菜を乗せてから手作りマヨネーズを入れる。そこに食べやすい大きさにスライスした肉を置いてパンで挟めばもう完成だ。
 タレと化した蜂蜜酒がじんわりとパンに染み込む、美味しい照り焼きサンドの出来上がりである。……まあ、俺の世界の蜂蜜酒では照り焼きにはならないんだろうけど、この世界のラゴメラの蜂蜜酒ではこうなるんだ。深くは考えまい。
 ファンタジー飯は理不尽なモンなんだ。

「…………うむ、美味しい! これならいいかな」

 ちょいと味見をして、いつも通り完璧だなと頷いた俺は、即席で作ったスープと偽照り焼きサンドイッチを持って、監視役二人が待っている食堂へと持って行った。

「はいはい、お待ちどうさまでした」

 とりあえず二つ持って来たけど、ラセットの野郎はそっぽを向いていたので、ケルティベリアさんだけにお皿とスープを渡す。

「おお……こんな冷たい場所で温かい食事をとれるとは思っても見なかった」
「わりと甘めなんで、苦手なら言って下さいね。お口に合うと良いんですけど……」

 ブラックも照り焼きは気に入ってたけど、アイツは元々甘過ぎるのは好みじゃないみたいだし、人には好き嫌いって物が有るからな。ダメだったら俺が食べよう。
 しかし、ケルティベリアさんは微笑み、両手を組んで祈るようなポーズを見せた。

「心遣い感謝する。だが心配は無用だ。全てが大地の恵みであり、作ってくれた者は大いなる施しを行った偉大な者だ。クグルギ君の優しさに感謝してかてを頂こう」
「そ、そんな大げさなモンじゃないんですけど、その……ど、どうぞ」

 気軽な気持ちで作ったのに、そんなに真剣に拝まれたら困ってしまう。
 口に合わなかったらどうしよう。申し訳ないな……。

 真摯な態度を取られると余計にドキドキしてしまって、ケルティベリアさんが照り焼き風サンドを咀嚼する所をじっと見ていると――急に、目がカッと見開かれた。

「これは……食べた事のない複雑な味だ……ッ!! 酸味のある付け合せが、濃密な蜂蜜の如き甘味と仄かに苦みを感じる奥深さを持つ肉の美味さを引き立てている! そのうえ、野菜の爽やかさがくどさを消し、肉の旨味の染み込んだパンが殊更美味……! 付け合せの汁も飲めば後味をさっぱりとさせてくれる……絶妙の塩加減と肉汁から出た仄かな風味が最高だ!」

 えっ。
 ちょっとまってケルティベリアさんそんな料理漫画の審査員みたいな顔するの。

 というか何でいきなりそんなに饒舌じょうぜつに。なに、もしかしてこの人普段はこんな感じなの。それとも部族の掟で無理矢理褒めちぎらないといけないの。なにそれ怖い。
 こんないきなり褒められると本当に喜んで貰えてるのか解らないんだけど!

「あ、あの……お口に合いました……?」

 恐る恐る訊いてみると、ケルティベリアさんは浅黒い頬を紅潮させて、俺の手を握って来た。

「合わないもなにも、我はこんなに力が湧く糧を頂いたのは初めてだ! ああ、君が重大な役割でなければ、部族の竈神かまどがみとして迎えたいところなのに!」
「と、とんでもねえあたしゃ使者さまだよ」

 思わず昭和のギャグを思い出して口に出してしまうが、神様とか畏れ多い。
 しかし変だな、こってりな料理ならこの世界にもあるはず……あ、いや、あれか。インディアンな人達なら、素材を大事にする料理を作ってるから、こんな旨味の暴力みたいな料理は作ったりしないもんなのかも……。

 俺はジャンクフードとか味の濃い料理が大好きだからバンバン作るし、ブラックとクロウもオッサンの割には俺と似通ってる舌だから、気にせず油ものとか作ってたけど、よくよく考えたら菜食主義な人もいるし、油分を好まない人もいるんだよなあ。

 ……ううむ、今回はケルティベリアさんに美味しいと言って貰えて良かったけど、今度からは何かダメな物は有るか聞いてから作らなきゃな。
 俺の父さんも、「最近トンカツがきつくなってきたな……」とか言ってたもんな。とかいいつつトンカツバリバリ食ってたけど。ああ俺もトンカツ食べたい。

 ……じゃなくて!
 ケルティベリアさん手をお放し下さい。俺にはブラックと言う色々ヤバい恋人が。
 何とか手を離そうとするが、相手は目を輝かせて俺を見るばかりで、感動から覚めてはくれない。というか偽照り焼きサンドでこんなに喜ばれても申し訳なくて困る。

 このままだとブラックが来た時に困るぞと焦っていると、さっきからこっちをチラチラと見ていたラセットが、不満げな顔をしながらボソリと呟いた。

「おい、そのもう一つのは食べないのか。冷めるぞ」
「あ、俺のなんで別に良いです。ラセットさんは食べないんですよね?」
「ぐっ……! お、お前達がそうやっていると冷めて料理が可哀想だろうが!! も、もういい私が責任を持って処理する!」

 とかなんとか言っちゃって、本当は食べたかったくせにぃ。
 だって皿を取って行く時にお腹がぐーって鳴ってたし、顔だって真っ赤だったし、これじゃ誰にだって意地を張ってるって解っちゃうよ。

 解りやすいツンデレって、面倒臭いけど微笑ましいなあ。まあ暴力振るって来る暴デレよりかはダメージ少ないし、ラセットぐらいの小憎らしい相手なら別に構わないかも。一々人の神経を逆撫でしてくるような所だけはいただけないけどな。

「け、ケルティベリアさん、俺ブラックにもメシ持ってかなきゃ行けないんで……」
「おっ、おおそうだな、すまない。とても美味かった、ありがとうクグルギ君」
「へへ……おそそうさまでした」

 やっぱり喜んで貰えるのは嬉しいなあ。
 ブラックのも張り切って作るぞと思いながら調理場に戻り、自分のと一緒に作る。
 ふと食堂の方を見ると、さっきは仕方なくと言った様子で偽照り焼きサンド食べていたラセットが、イケメンを台無しにするほどのわんぱくな食べ方をしていた。

 あーあー口にタレが。……ま、まあ、拭いてやる義理は無いか。駄目だブラックやクロウと一緒に居るせいで、ああいうのを見るとつい手がハンカチを探してしまう。

 だってクロウは食事の時は獣そのものだし、ブラックも無精髭を中途半端に伸ばしているせいか、パンくずとかをしょっちゅう口の周りに付けてんだもん。
 俺より顔が整ってるくせしてそれで平然としてるんだからムカツクんだよな。

 俺だって嫌々認めるくらいの顔なのに、普段の仕草がまんま子供なのがずるい。
 それに雑に袖で拭いて汚すし、そういうのって洗濯が大変なんだからな!!

 だから、何かせめてそこだけはちゃんとして欲しくて、仕方なく俺が甲斐甲斐しく乳母のように「あらあら坊ちゃまお弁当が付いてますわよ」とばかりに拭いてやってるんだが……ってなんの話をしてるんだ俺は。とにかく、あいつらのせいで変な癖が付いちゃったんだよチクショウ。

 駄目だ駄目だ、こんな事を誰彼かまわずやるようになったら終わりだぞ俺。
 俺も節度を持たねば。ブラックにしてるのは普通じゃない事、普通じゃないこと。でも普通じゃない事をしてる俺って一体。

 深く考えると死にそうだったので、料理を作って後始末をすると食堂を出た。
 ラセットお前は自分で口を拭ってくれ。美形だしハンカチくらい持ってんだろ。
 あまり見ないようにして、ブラックの所へと向かう。

「しかし、パンに切れ目を入れて挟むと安定していいな。形も崩れにくいし……」

 俺は普段普通のサンドイッチっぽくなるように、楕円形のパンでも四角いパンでも同じように切り分けてるんだけど、ホットドッグ型だとわりと安定してて持ち運ぶのには助かる。固定するのも簡単だし。

 バスケットにランチョンマットを敷いて、水筒と一緒にコレを入れたら、良い感じに格好いいピクニックになるだろうなあ。今はそんなほのぼの旅とは無縁だけど、せっかく空が広い世界なんだし、一段落したらブラック達と一緒に草原でも散歩してみたい。

「…………まてよ、なんであいつらなんだ」

 いや、こういう場合はやっぱり女子だろ……なんで中年二人と……。長い間ずっと一緒に居すぎて、隣にいるのが当たり前になってるのかな。
 なんか、あんまり知らない人と一緒に居ると自分達の異常さが目に付くな……い、いかん、そっちの意味でも迂闊うかつな事はしないようにしないと……!

「ううう……とんでもない事になってしまった……」

 うっかりラセット達に馴れ馴れしくしないようにしなくては。二人は俺の仲間って訳じゃないんだから。仲間はブラックだけ、ブラックだけ、ブラックだけ。
 必死に言い聞かせながらブラックが詰めている部屋へと戻ると、薄暗い部屋を煌々と緑の光が照らしていて、今は周囲もはっきりと見えるようになっていた。

 入ってすぐは機械の制御室のようだけど、左奥には簡易の休憩室っぽい物が作ってあるみたいだな。窓ガラスはもうないけど、休憩室から機械を見張るためなのか、こっち側を向いた壁には大きなガラスが嵌っていたらしい穴が有った。

 ガラスは朽ちちゃうのか……変な遺跡。
 まあいいか、休めるスペースがあればいいのだ。

 足音をなるべく立てないように移動して休憩室を覗くと、中央には固定された机が有り、椅子らしき物が転がっている。壁には電気のスイッチっぽいボタンがいくつか有るが、まあ今は触らない方が良いだろう。ロクなことにならなそうだし。

「よし、じゃあここを掃除するか」

 ブラックは集中しているので、今の内に掃除をして食べる所を作ってやろう。
 音を立てないように部屋の端の方に作られている机に向かうと、机の上をささっと綺麗にして椅子も拭いて合わせた。
 ホコリが無いと風で舞っちゃうものも無いので楽だな。
 砂はある程度重さが有るから、丁寧にしてればそうそう巻き上がる事もないし。

 んで、ラゴメラ村で作っていたランチョンマットも敷いて、準備万端だ。
 持って来た食べ物を出す前に、俺はブラックに近寄って声をかけた。

「ブラック、ごはん食べる?」

 そう言うと、今まで真剣に画面を見ていたブラックは、すぐに俺の方を向いてだらけた笑みを見せた。……さっきの横顔、ちょっと格好いいかなって思ったんだがな。気のせいだったな。

「ツカサ君ごはん作ってくれたの!? 食べる食べるよー!」
「お、お前なあ、そんなすぐ手ぇ離していいのか?」
「だってもう後は処理を任せるだけだもーん。ねねねそれより早くぅ」
「ああもう解った解った! 懐くな!」

 ……ん、ちょっと待てよ。処理を任せるって、まさかこんな短時間でこのパソコンみたいな機械をマスターしたってのか?
 俺だってパソコン扱うのに苦労したのに、ブラックお前って奴は……。いや、有能な仲間を持った事は誇るべきなんだろう。
 しかしとことん俺ってば活躍出来ねえなあ。はあ。

 おさんどん係に不満は無いけども、と思いながらブラックを休憩室に案内する。
 と、ブラックはすぐに俺が用意していた机に喜びぎゅうぎゅうと抱き着いて来た。この程度で喜ぶなんて簡単だなあとは思うけども、掃除の努力を理解して貰えたのは素直に嬉しい。
 ま、まあ、食卓だからな。掃除すんのは当然だけどな!

 とにかく食えよとまだ温かい偽照り焼きサンドを渡すと、ブラックは顔をパァッと明るくして、嬉しそうに頬張った。

「んん~~~! はふあうああうう」
「喋んないで良いから食えってば!」

 がっつくブラックに呆れながらも、俺も久しぶりの味に自画自賛しつつしばし食べる事だけを楽しむ。ブラックは相変わらず歯の浮くようなセリフで俺を褒めちぎるけど、マヨネーズやらタレやらが顔にかかっていて、大人なのにみっともない。
 手を伸ばして拭いてやると、また嬉しそうに笑って機嫌良さそうに喋り出す。
 何だか憎めなくて、俺はブラックの好きなように喋らせてしまった。

「それにしても、久しぶりのふたりっきりの食事だね~!」
「ん? そういえばそうだな……ラゴメラ村では三人一緒だったし、カスタリアでは食堂でまとめてって感じだったし……」

 天井を見上げて思い出す俺に、ブラックはニマニマと笑い顔でスープを飲んだ。

「んふふ、デートみたいでいいねえ。やっぱ僕ツカサ君と二人っきりがいいや」
「ッ……! で、で、デートってそんな場合か!」

 こ、こ、ここをどこだと思ってる、いわばダンジョンだぞダンジョン! 敵なんて全然見かけないけど、そういう浮ついた場所じゃないんだぞ!
 そんな場所でデデデデートなんてお前って奴は何を浮かれた事を!!

「あ~、ツカサ君赤くなってる~! なになに、僕とのデート想像しちゃったぁ? 僕と今デートしてると思ったら照れちゃった~? あぁあ~~可愛いなぁも~!」
「お、お前が急に変な事言うからだろ!? もーいいから早く食べろってば!」
「もう食べたもーん。ねえねえツカサ君、せっかく二人きりなんだからさ、ちょっとくらい休憩していいよね?」

 きぃいっ、外見がオッサンだから台詞が可愛くても全然萌えない!!
 休憩は、そりゃ、まあ、大事だからしていいけど、近付いてくんな。食べ終わったなら後片付けをしなきゃならんだろうが。なつくな抱き着くな!

「ええいもう鬱陶うっとうしい! 片付けの後にせんか!」
「やだー。僕だって沢山頑張って疲れたんだよ~。ツカサ君で栄養補給させてよう」
「ング……っ」

 た、たしかにブラックも頭脳労働を頑張ったし、実際の貢献度で言えばブラックが一番だとは思うけど、でも俺だって頑張ったし今はそんな場合じゃないし……。

「ねぇツカサ君、ここ数日ずっと軟禁生活だっただろう? その上ずっと監視されてたから、僕溜まっちゃっててさぁ」
「た……たま……」
「そんなんじゃモヤモヤしてこれからに支障が出ちゃうし、体にもよくないって思うんだよ、僕は」

 確かに何かを我慢していたらストレスたまるよな。
 じゃあ、うん、お前が俺をお姫様抱っこした事は不問にしよう。お前に一分くれてやるから早く降ろせ。
 違う、降ろせと言ったのは地面の上でテーブルの上じゃない!

「こら! しょっ、食卓になにを……ッ」
「どうせもう使わないし良いじゃない。そんな事よりさあ、ツカサ君……久しぶりの二人っきりなんだよ……? 僕もう正直ココがうずいてたまらないんだよ……」

 そう言いながら、ブラックはテーブルの上に乗せた俺の体を起こすと、無理矢理に手を引っ張って自分の股間へと押し当てた。
 瞬間、モニッみたいな感触じゃ無く、硬くなり始めて熱を持った感触が……。

「ヒッ……」
「ほら……ツカサ君と二人っきりになった瞬間にコレだよ……? こんなんじゃ、すぐに人前に出れないよ……。だからさ、スッキリするためにセックスしよ?」

 …………は?










 
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