異世界日帰り漫遊記

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ラゴメラ村、愛しき証と尊き日々編

4.愛しいからこそそう思う

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 ブラックに身をゆだねて、レッド達が行った“支配”を検証して貰う。

 普通なら、そんな事はとても出来ない事だったけど……俺は、ブラックになら自分の体を任せても良いとすんなり思えるようになっていた。

 そりゃまあ、スケベなコイツの事だから、俺が気を失ってる間に犯したりとかするかも知れなかったけど、今までのえっちの事を考えればあるあるだし。何より、今更そんな事に怒るほど俺はブラックを知らない訳じゃない。

 つまり、犯される事も計算して俺はブラックに任せたのだ。
 ……まあ、ブラック達は牢屋でずっと我慢していてくれたんだし、ラトテップさんの事で我を忘れていた俺の事を助けてくれたし……だ、だからって訳じゃないけど、でも、今までずっと俺の事を助けてくれた奴だし……ブラックは……そ、それ以上の酷い事はしないって、思ってる、し……だから、良いかなって……。

 ……ま、まあそれは置いといて。
 とにかく俺はブラックを信用している。俺が本当に嫌がるような事はしないって解ってたから、グリモアとしての検証をお願いしたんだ。

 そしたら、俺は目隠しをされて、それから真っ暗になって――数秒もしない内に、何故かソファの上でぱっと目が覚めた訳で。

 一瞬何が起こったか解らなかったんだが、起きるまでソファの脇で俺の顔を凝視していた少々恐ろしいオッサン二人の話によると、どうやら俺はあれから一時間ほどぐっすり眠っていたらしい。それも、ブラックので。
 ――と言う事は……やっぱり“支配”は可能だったって事なんだよな。

 まあ、意識が落ちた時点で俺もそうだろうなとは思っていたけど……本当、厄介な足枷が付いてしまったよ。自分の意思とは関係なく特定の人間に操られてしまう能力って、それチートじゃないよね。確実に呪いのたぐいだよねコレ。

 誰が俺にチート能力をくれたのかは未だに解らんが、他人の傀儡と化してしまう能力をどうしてそのまま付与したんですかどなたか。
 過去の黒曜の使者には必要だったのかも知れない呪いでも、俺は別に世界を災厄に巻き込もうなんてしてないし、そもそもグリモアに会う気も無かったんですよ。

 結果的に色んなグリモアと知り合っちゃっただけで、あとほら、その、レッド以外は優しいし世界征服は考えて……いや、アドニスはちょっと怪しかったか……。
 …………と、とにかく、ラスターやアドニス達は絶対にこんな事しないだろうに、どうして俺にまでこの呪われた改変が襲い掛かって来たのか。

 つーか、今のこの世界って、神様は存在してるのか?
 この“支配”という足枷が確実に引き起こされるんなら、この呪いを付与した神様も、どっかに存在するかもしれないんだよな?

 でも……俺は今のところ「神様が現れた」なんて情報は聞いた事も無い。
 第一、そんな事があったなら、シアンさんが指摘しているだろう。それが無いって事は、神様は長い間この世界に現れてないって事だ。

 神様ナシでも永劫に発動する呪いって事なら、まあ納得できなくもないけど……。でもなんか変なんだよなあ……だったら俺、誰にココに連れられて来たんだろう。
 俺の能力に神様の呪いが刻まれてるって事は、この能力は俺固有の力ではなく“誰かにダウンロードされた”としか思えない。
 じゃあ、俺は偶発的にこの世界に落ちたって事じゃないんだよな。

 なら、誰が俺に黒曜の使者の能力を付与したのか…………。
 ……まあ、今考えても仕方がない事なんだけどな。

 それはそれとして、腰の痛みも何事も無く起床した俺を、ブラックは心底嬉しそうに笑って抱き締めてきたわけだが……俺を離すと同時に、変な事を言って来た。

「ねえ、ツカサ君……怒らないで聞いて欲しいんだけど」
「……うん?」
「アクメってなに?」
「ぶふぉっ」

 あっ、あくめ?!
 あ、あ、あくめって、アクメってお前、何で今そんな単語を出して来るんだよ!!
 この世界にもそんなシモワードが存在す……いや待てよ、ベッドの上に関することなら百戦錬磨のブラックが、この世界の淫語を知らないはずがない。

 ということは、もしやそれって……俺が口走ったってこと……?

「~~~~~~ッ!!」

 なっなっなんでっ、お、おれそんなのっ、そんなの一言も!!

「あ、あっ、ご、ごめんツカサ君違うの、違うんだよ! あのねっ、こ、これはあのツカサ君が“支配”されてる時に確認した事でっ」
「えっ……あ……か、確認……?」

 どういう事だとブラックを見やると、相手は少々困ったような情けない顔をして、俺にぽつぽつと話し始めた。

「いや……あのね、僕、ツカサ君を支配した時にちょっと思う所が有って、ツカサ君にえっちな言葉を言って貰ったんだけど……その中に、僕が知らない単語が混ざってたんだよ。それで思ったんだけど……あの“支配”の力って、ただ単にツカサ君の黒曜の使者の力を使うだけじゃないんじゃないかなって」
「え……」
「僕はもう二度とする気は無いけど……多分、グリモアが望めば……ツカサ君が持っている自分の世界の知識も、喋るようになっちゃうんじゃないかな……」

 ……と言う事は……俺、自分でアクメとか何とか喋っちゃったって事……?
 う、うわ、う、う、うう、あ、そ、そう言う話じゃない、落ち着け、落ちつけ俺……!

 えっと、よ、要するに、支配されるともう文字通り丸裸にされるって事だよな。
 というか、もし相手が俺の事を「異世界人」だと認識してたら危ないじゃん。俺は全然知識とかないけど、頭の良い奴なら俺の適当な呟きからでも色々と思いついて、ヤバい兵器とか作っちゃうだろうし……考えるとかなり危ないな……。

「あ、あの、セックスとかはしてないからね?!」
「それはオレも保障するぞツカサ」
「今はその確認はええっちゅーに! ……でも、マジでヤバい事になってんだな、俺……。ブラックにやってもらってハッキリ解ったけど、俺って“支配”されてる時は完全に意識なくなるみたいだし……今だって、ブラックに頼んだ時から数秒も経ってない気分だし……」

 そう言うと、ブラックとクロウは眉を大仰に寄せて困ったような顔になった。
 お、おお、ブラックは解るとしてもクロウまでそんな……と言う事は、かなりヤバかったんだな、支配状態の俺……。何したのか分かんないけど。
 つーか「エッチなこと言って」って命令されてアクメ発言って何なんだよ俺は。
 エロ漫画の知識から余計な事を仕入れすぎたせいでこんな事に……。

「ツカサ君……大丈夫……? ごめんね、こんな……」
「だ、大丈夫だよっ、心配すんなって! とにかく、俺が“支配”に逆らえない事が解った以上、ここから離れる訳にはいかないな。手がかりが掴めない内は、この村で大人しく潜伏していた方が良さそうだ」
「そ、そうだね……グリモア以外にはツカサ君は支配出来ないみたいだし、ここは陸の孤島だから、普通に暮らしてたら平気だよね!」
「むっ、そうだな。そうと決まれば、ここに居られる内に英気を養おう」

 クロウの言う通りだ。
 プレインでは色々と酷い目に遭ったし、ブラックとクロウも牢屋生活が続いて体がなまってしまっているだろう。今の内にリフレッシュも悪くないな。
 シアンさんも、そのつもりで俺達をラゴメラ村に連れて来てくれたんだろうし。
 よし、そうと決まれば……まずは飯だな!

「よっしゃ! じゃあいっちょ飯でも作」
「で、ツカサ君、アクメってなに?」
「なんでお前はそう避けたい話題をぶち込んでくんなよォ!!」

 お前今その話する!?
 俺シリアスな話題でその話掻き消しましたよね!?

「ねーツカサ君アクメってなに、ケツアクメってなにー」
「はぁ!?」
「もう僕気になって眠れそうにないんだよぉ、ねーねー教えてよぉ」

 わーっもう抱き着いてくんなすり寄ってくんなぁ!!
 っていうか俺なんて事言ってんだよ! そりゃまあ知ってますけど、そういう単語ばっちり知ってますけど、俺本当にそんな恥ずかしい事言ったの!?

「ツカサ、顔が真っ赤で可愛いぞ……」
「ああ、やっぱ恥ずかしい単語だよねぇ。でもそんな単語知ってるなんて、ツカサ君たら本当にスケベな子だったんだねぇええ」
「うっ、う、うぅううう……!」

 だ、だって、えっちなもの見たいのは男なら普通じゃん。仕方ないじゃん!!
 誰だってエロい物を見ようと思ったら一回ぐらい絶対遭遇するし、俺だけがスケベなんじゃないし、だ、だから、違う、俺はそういう意味でスケベなんじゃ……!

「ツカサ君、僕気になって眠れなくて、夜ツカサ君にずっと聞いちゃうかもよ?」
「む、オレも答えが聞きたいぞ。傍で聞かせてくれ」
「そんなっ……」
「嫌? だったら聞かせてよ……ね? 僕達純粋に知りたいだけなんだよ……」

 嘘だ、嘘つけ。だったらそんなニヤニヤしてる訳がない。
 こいつら絶対楽しんでる、俺が困るのを解ってて楽しんでるんだチクショウ。何で俺がこんな説明しなきゃなんないんだよぉ。

 もう嫌だと涙目になっていると……ブラックは、そんな俺を見て、急に真剣な表情になると、俺をじっと見つめて来た。

「ツカサ君……僕、もうあの“支配”とか絶対にやりたくないんだよ……。だからさ、ツカサ君の可愛い口から、ちゃんと教えて……?」
「う…………」

 そう、言われると……なんというか……。

 ……支配しないって、言ってくれたのは嬉しいんだけど、でも。
 いやしかし「しない」ってハッキリ言ってくれたんだから、だったら俺もブラックに応えてやらないと。でも、こ、こんなの教えるなんて……。

「ツカサ君……」

 う、ううううう……!
 だあもう男らしくないっ。こ、こんなのハッキリ言ってしまえばすぐに終わるんだ。ならば思い切りよく答えるんだ俺!
 よ、よし、言うぞ。言うぞ!

 深呼吸をして、目の前のブラックを見据えると……俺は、口を開いた。

「あ……アクメって言うのは……」
「うんっ」
「そ、その…………気持ち良いのが、高まって……」

 あれ、そう言えば俺もどういう意味かうまく説明出来ないな。
 イクの最上位みたいなものだとは思うんだけど……でも、それをどう言ったら良いんだ。そのまま単語にしてもブラック達は納得しないよな。
 えっと……漫画では、女の子は、なんか……。

「びくびくって、して……えっと……頭がバカになるくらい……気持ち良くて、失神しちゃいそうなほどの、気持ち良いの……みたいな……?」

 えーっと、エロ漫画のヒトコマを口で説明するのって難しいな。
 顔が見えなくなるぐらい反り返ってビクンビクンしてるのって、何て言えば良いんだ。エビぞり? でもその状態を話しても解り辛いし……かと言って俺はアクメって状態がどんな物なのか解らないし……。
 そもそもアクメって何語? どこの言語なの?

「あの、ごめん……俺も実はよく知らない……」

 と、思わず謝ろうとブラック達を見やると。

「う゛……ふぐっ……づ、づがざぐん……そ、その可愛い説明反則だよぉ……」
「む、無知っぽさがたまらん……っ」

 それぞれ失礼な単語を発しながら、鼻血を垂らすオッサン達の姿が……。
 ……っておい!!

「お、お前らいい加減にしろよ!? 人に淫語言わせて説明させといて、何をこっ、興奮して……!!」
「はぁあああ可愛いっ、可愛いよぉツカサ君んんんん」
「つ、ツカサ、涙を舐めさせてくれ……っ」
「だーもーお前らー!!」

 ああもうどうしてシリアスな話からこうなるのかなあ!
 もうやだこの中年ども!!

 思わず心の中で嘆いてしまったが……だけど、こんなのはいつもの事で。
 そう、いつもの事なんだ。

 今日からは……またこんな風に、下らない事をだらだらやってけるのかな。
 ……そう思うと、なんだか怒りたいのに怒る気が失せてしまって。

「もう……いいから、鼻血ふけってば」

 どうしてかこんな事で怒りが失せて、心がむずむずしてくる自分が恥ずかしくて、俺はそれを押し隠すように二人にハンカチを手渡した。
 気を抜いたら、変な所で笑ってしまいそうだったから。











※フランス語らしいです。アクメ。
 話が進んでませんが次は進みます。いちゃいちゃ。
 
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