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遺跡村ティーヴァ、白鏐の賢者と炎禍の業編
12.主観というものは時に厄介な物となり1
しおりを挟むお父さんお母さん、俺はもう色々とダメかもしれません。
……いや、まあ、オッサン達が変態なのはいつもの事だし、なんかもうブラックと“こういう仲”である以上、俺が望むとも望まぬともあんなプレイをさせられるのは仕方がないかなって思ってるフシはあるよ。俺も。さすがに。だってブラックの野郎はああいう性格だし……嫌だけど、結局俺も流されちゃうから多少はまあ……。
でもさあ、やっぱ蜂蜜プレイはマズいと思うんだよ。俺みたいな純朴なみせーねんが知っちゃいけない倒錯の世界って奴だと思うんだよ、正直。
俺はあくまでも一般人なわけで、だから……あ、あんなの、本当はイヤなワケで、拘束してあんな、やらしいことされるのなんて、気持ちよくないはず……なのに。
それなのに、俺って奴は……。
「…………」
目の前の湯気で曇った鏡に自分を映して、溜息を吐く。
せっかくの風呂だっていうのに気分はあまりよくなくて、俺は泡立てた布で自分の体を拭った。
「っ、ん……っ」
胸部を布で擦った途端に、思わず声が出そうになって口を噤む。
まだ人の少ない夕方前だからセーフだったが、軽く触れただけでこんな状態になるんじゃ、もう情けないとしか言いようが無かった。
だって、やらしい事されて、まだ体が鎮まり切れてないとか……う、ううう……。
どうしよう、本当に、ほんとぉおおにどうしようぅうう……!!
そ、そりゃ俺はあれからもう二発イきましたけど、でもアレはブラックとクロウが嫌がる俺をムリヤリに弄くり回したからで、おお俺は逃げられないしイッたばかりの敏感な体を二人がかりでペロペロされたんだぞ。こんなの強制的に天国見せられたってしょうがないって。俺は悪くない、俺は悪くないんだきっと。
な、なのに、なんで……なんで、終わった後もこんなに体がおかしいんだ。
まだ時間がそんなに経ってないからなのかな。それとも、間を置かずに何度もイかされたから、体が変になってるんだろうか。
自分で触れても変な声が出そうになるなんて、こんなの異常だ。
だけど、俺にはどうすることもできない。ただ自分の体が早く通常の常態に戻るのを願いながら、蜂蜜のベタベタを取るべく体を洗うしかなかった。
うう……本当人が少ない時間帯でよかったよ……。
「はぁあ……まだいろんな所がビリビリする……」
クロウに吸い付かれた項もそうだけど、二人に触られた所全部が敏感になってるみたいで、迂闊に触れられない。かと言ってそっと触れてもビクッてなっちまうから、もう気合を入れて洗っちまうしかないんだけどさ。
「…………」
しばらく苦心して体を洗いつつ、軽く腰を上げて俺は泡だらけの布をそっと臀部に当てた。途端。
「っ……!」
触れた瞬間に、腰にじんとした感覚が伝わってくる。
それがまた体の芯を疼かせるみたいで、俺は首を振り慌ててお湯を被った。もう、頭から何度も何度も。
だけどやっぱり……自覚してしまった欲求は、消し去る事が出来なくて。
「う、うぅ……」
やっぱ、異常だ。こんなのおかしいよ。
なんで……何で俺……こんなに、欲しがってるんだろう。
ブラックの、あ……あの…………――
「うあぁあああ! 違う違うそんなんじゃないこれは付加効果みたいな物で決してヨッキューがどうってあれじゃああがばばばばごぶぼ」
「何をやっとるんだお前は」
勢い余って掛け流し状態のお湯の滝に顔を突っ込んでいると、背後からマグナの声が聞こえてきた。どうやらマグナも風呂に入りに来たらしい。珍しいな。
ちょっと気分が浮上してお湯から顔を離すと、マグナは何故か少々戸惑ったような顔をして、俺の隣に腰かけた。
「マグナ、研究はいいのか?」
「……まあ、一段落ついたからな」
そう言って体を洗い始めるマグナは、何だか不機嫌だ。
あっ、もしや俺が変な事してたからドンビキしてんのか。そりゃ悪い事をした。
じゃあ先に風呂に入るかと思い席を立つと、マグナは俺の行動に驚くような素振りを見せて、急に体を洗う速度を速めだした。
「……? 俺、風呂行くな?」
と言い終わると同時に、マグナは頭からお湯を掛けて体を流すと、俺と同じように立ち上がった。お前も背ぇ高いなこの。
「お、俺も入る」
「じゃあもっとゆっくり洗ってても良かったのに」
「ぐっ……お、俺は、元々体を洗うのは早いんだ」
そういうもんなのかね。まあ、風呂場で出会った後はマグナが風呂に入りに来た事なんて無かったしな。別におかしくはないか。
マグナの行動には解せない部分も有ったが、別段困ることも無かったので俺は彼と一緒に湯船に浸かる事にした。
「っ……はぁ~~~……やっぱ風呂はいいなぁ……」
ここまで来ると俺の体も段々と鎮まって来てくれたようで、欲求不満も影を潜めて体は正常に戻ってくれたようだ。いや、うん、欲求不満じゃないですよ俺は。
マグナも湯船の偉大な効能には思わず気が緩んでしまうらしく、先程の焦りはどこへやらと言った様子で、目を閉じて湯船の感覚に浸っていた。
……それにしても……マグナって本当にイラッとするほど格好いいよなあ。
銀色の髪に真紅の目なんて中二病の坊ちゃん嬢ちゃんが泣いて喜ぶ色味だし、顔も申し分ないくらいの美形だ。男寄りではあるけど、中性的とも言えなくもない。現にこの世界では「メス」でも問題ない容姿なんだ。そのことを考えると、マグナは俺の世界で言う所の絶世の美少年と言っても差し支えないだろう。
黙ってりゃ、切れ長の瞳と少し気難しげな唇の形のお蔭でクールな印象なんだけども……喋るとまあポンコツなのがなあ。
「……ん、なんだ」
「いや、お前ほんと喋ると残念だなって」
少し距離を置いて湯に浸かるマグナに言うと、相手は怪訝そうな顔をする。
「それはお前の方だろう。見た目は良いのに喋るとそこらへんのアホと変わらん」
「えっ、俺見た目良い!? うはっ、マジか……ってアホってなんだおい!」
「そう言う所が阿呆だと言ってるんだぞ……。まったく、人の気も知らないで……」
「んん?」
人の気ってなんじゃいなと眉根を寄せると、マグナはハッとして、頭を振った。
「そ、それはともかく……。お前、その……聞きたい事があるんだが……」
「聞きたい事?」
何だろうかと思っていると、マグナは急に真剣な顔をして俺の肩を掴む。
そうして、俺を真正面に捉えると眉間の皺を深くして問いかけて来た。
「お前……あの中年どもとどういう関係なんだ……?」
「……え」
あの、えっと……何を言って……。
「お前とあのクラークだかトランクだかと言う中年がただならない仲なのは、俺でも良く解る。だが、だったらどうしてあの熊族と仲良くしてるんだ? お前は人族なのに、一妻多夫が認められているのか? どうなんだツカサ」
「えっと、あの、ちょっと待って。それを言うなら一夫多妻……」
「どうなんだツカサ」
俺のツッコミなど関係ないとでもいうように真剣に見つめて来る相手に、俺はどう言ったら良いのか混乱してしまった。
いや、だってさ、俺とブラックとクロウの関係って、良く考えたら爛れてる関係に思われても仕方ない感じだし、それに……友達のマグナに、こんな話をして良いものかどうか……。
普通、ダチの恋愛話なんて聞きたくないだろうし、それに俺達の関係を詳しく話して気分が悪くなっちゃったら申し訳ないし……何より、マグナにドンビキされるのは嫌すぎる……。と、友達にドンビキされるのって、意外とダメージ食らうし。
俺達の関係を話したら、絶対マグナはドンビキするよ。
ただでさえロクな事してない仲なのに……。
「…………き、聞いたら絶対ドンビキする……」
「ドンビキ? よく解らんがそんなことするか。これは、俺が聞きたいから聞いてるんだ。……お、お前が話したくなかったら……その……仕方、ないが……」
……あれ……。
マグナ、なんか顔が赤いような……茹だったのかな。
肌が白いからすぐに顔が赤くなるのが判る。だけど、もしそうなら……早めに話を切り上げた方がいいよな。のぼせたら大変だし。
うう……でも……いいのかな……。
「……絶対に……真面目に、聞いてくれるのか……?」
恐る恐るそう問いかけると、マグナはしっかりと頷いた。
「何も笑わない。お前を変な目で見たりしない。……だから、話してくれ」
その言葉には、俺を心底心配するような気持ちが込められていた。
……そっか、マグナは俺の事を心配してくれてるんだ。
だったら……ちゃんと話さないと駄目だよな。
こんな事でダチを心配させるなんて、そんなの格好悪い。
ちゃんと話して、俺達が変な関係ではないと安心させてやらなければ。……いや、まあ、変な関係ではあるんだけど……うん。やばいな、大丈夫かなコレ。やっぱドンビキされても仕方ないかも……。
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