異世界日帰り漫遊記

御結頂戴

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プレイン共和国、絶えた希望の妄執編

4.そろそろ君から1

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※また長くなってしまったので切ります… (;´Д`)すみません…
 
 
 シディ様に言われるがままに、このトンデモ教会で一泊する事になってしまったが……旅人を泊めるための部屋は、案外普通なものだった。

 いや、何かドロッとしてそうな液体が入った瓶とか、これみよがしにチェストの上に置かれている「精力剤」と書かれた瓶とかはあるんだけど、部屋自体は普通の宿と変わりがないって言うか……。とにかく、小物に目を向けなければ、普通に宿泊できそうな感じだった。

 案内してくれた教徒のおじさんが言うには、「そりゃあこの素晴らしい宗教を広めたい欲はあるけど、強引に迫るのは“悪しき欲”だからね!」との事だったが……欲に素直なんだか真面目なんだかもうよく解らない。
 勧誘の気が無いのなら、なんで部屋にエロ道具が置いてあるんだよ。

 悪しき欲と良き欲の違いは何ですかと聞きたかったが、そんな事を言えば寝る時間が大幅に削られるのは解っていたので、俺は敢えて何も言わなかった。
 ……ま、まあ、悪い事はしないって誓ってるなら、エロ宗教でもいいよね!
 こんなの、エロ漫画によくある宗教だし……よくあるよね、有ったような気がするけど、実際エロ宗教ものってどんくらいあるのかな……。

 とにかく、部屋の中に散らばるやらしい道具をチェストに放り込んで縄で縛り、やっと普通の部屋に戻した俺はふうと溜息をついた。

「やっと普通に寝られる……」
「ツカサ君のケチぃ……せっかくやらしい道具が沢山置いてあったのに……」
「あんなもん見ながら真面目な話が出来るかっ!! とにかく、今後の事を考えるぞ、お前ら椅子にすわっぅぁあ!? あああイスがなんか出っ張ってるうううう!」

 なにこの椅子、なに! なんでお尻くっつける部分がもっこりしてんの!?
 座っていきなりケツに食い込んで来たから何かと思ったじゃねーかバカァ!
 普通の椅子と言う物がないのかこの教会はぁあああ!

「ツカサ、その椅子は破廉恥はれんちすぎる。オレの腹に座れ」
「クロウぅうう~……」

 俺がぎゃんぎゃん泣くのを見かねたのか、クロウが熊の姿になって伏せてくれる。もちろん、俺はすかさずクロウのもさもさしたお腹にすり寄った。はぁ……癒されるうう……。固くて密集した毛は獣そのものだが、この毛を掻き分けると出てくる毛の柔らかい部分がほんとにもう素晴らしい。

 なんで動物って奴は、こうも人を虜にする部分をそなえているんだっ。
 しかもクロウはこまめに水浴びしてるから、野生の獣臭はしないもんね。まあ、俺としては、クロウのにおいは嫌いじゃないけど。それにしても気持ち良いぃ……。

「あぁああ……もふもふ……実家のような安心感……」
「んん、くすぐったいぞツカサ」
「クソ熊め……嬉しそうな顔しやがって……」

 うるさい、ヒゲじょりじょりおじさんめ。
 ようやく安心できるプレイスを見つけてちょっと精神が安定した俺は、ベッドに座ってこっちを胡乱うろんな目で見るブラックを睨んだ。

「とにかく……明日からどうするかだ。俺達の目的地は、幸いな事にマグナの伝言と同じ方向に有る訳だけど……正直、そっちに行っていいと思う?」

 真面目なトーンで話す俺に、やらしい雰囲気は見込めないと思ったのか、ブラックも小難しげに顔を歪めてあごさする。

「うーん……正直、裏街道は僕も通った事が無いんだよね。昔っからプレイン共和国は冒険者には居辛い国だったから、ぶっちゃけ僕も依頼が無ければこんな所来るもんかって思ってたし……。まあでも、脇道に逸れるってのは良い案かもね」
「何故冒険者は居辛くなるのだ?」

 大きな鼻をふごふごと動かしながら問う熊さんに、ブラックは頭を掻いた。

「さっきの話じゃないけどさあ……この国の連中ってのは、昔っから曜術師の冒険者を勧誘して来てうざったいし、それに……娼館とか遊ぶところが全然ないんだよ」
「え」
「他国には大抵似たようなモノがあるんだけど、ここだけは無いんだ。なにせ、国の主要都市の情報は全部管理されてて、土地の一坪まできっちり把握されてるからね。村にも定期的に調査が入って、娼姫まがいの商売をする奴はしょっぴかれてたし……ほんといけ好かない国だよ。僕だってこんな明け透けな宗教はくだらないなぁと思うけどさ。でも、抑圧されてたら……こういう風に爆発するのも解らなくはないかな」
「確かに遊びがないのはつまらんな。酒も無いのか?」

 ちょっと不機嫌そうに言うクロウに、ブラックは大仰に肩をすくめて眉を上げる。

「流石に酒を売る所はあるよ。国民は一日一瓶しか買えないけどね。酒場は……この街のギルドでも見かけた事ないな。全部待合所になってたっけ」
「うわ……予想以上にディストピアじゃん……」

 娼館も無い遊び場も無いおまけに酒場も無いなんて、ブラックじゃなくても来たくないと思うよ。そら俺だって娼館だらけの街はやだなと思うけど、でも綺麗な街ってのも息が詰まるじゃん。そんな国なら……色情教みたいに、変な方向に爆発したっておかしくないよな。レジスタンスが生まれたのも解る。
 …………こんな国だったら、そりゃマグナも脱出したいって思うだろうよ。

「だとしたら、寄り道は無意味だな。大路に面する街は首都同様に危険だろう。主要都市が中枢に管理されていると言うのなら、オレ達の情報もすでに知られている可能性が高い。どのみち、大きな街には向かえん」
「ま、そうだよね……だから、裏街道を進めと言った訳か……。なーんか誘導されてる気もするけど……大都市で戦闘になるよりマシか」

 戦うこと前提かよ、と突っ込みたかったが、何が起こるか解らないし……揉め事になって逃げなきゃ行けない可能性もあるので何も言えない。
 都市部じゃ逃げにくいだろうし、ここは人気のない方へ逃げた方がマシだな。

 色々と不安要素はあったが、とりあえず俺達はマグナの伝言に素直に従う事にして、明日この街で地図を買おうと結論付け一旦いったん眠る事にした。
 ……もちろん、なにもしないで。
 だって、明日はすぐ出立するつもりなんだからな!
 いつまでもこんな凄まじい場所にいられるかってんだ!

 ブラックとクロウは残念そうな顔をしたが、このカオスな敷地に俺を長い間留めて置くのはまずいと判断したのか、素直に眠りについてくれた。
 おう、そうだろうよ。いくら俺がエロ猿だからって、こんな直球で生々しい場所に居続けたら耐え切れずに暴れるからな!
 生々しいのはやっぱ駄目だ、二次元と三次元は違うわな!

 そう。違うから……まあ、その…………。

「…………」

 寝れない……。
 ベッドに入って明かりも消してもう一時間ぐらい目を閉じていると言うのに、俺はちっとも眠る事が出来ないでいた。
 ああもう、それもこれもこの教会が悪いんだ!

 目を閉じると、今日見たフードと角耳バンドだけつけてた全裸の男女だの、女の人の艶めかしいアンアン言う喘ぎ声が浮かんでくる。
 幻聴まで聞こえて来るとは俺も相当ヤバいと思うが、その声や記憶が重なってあのSMプレイルームまでもが脳内に再現されてしまって。

「…………うぅ……」

 ベッドの中で、思わず体を縮めてしまう。
 あんな場所でお姉さんや可愛い女の子達がなにやらやってるんだろうかと思うと、勝手に目が冴えてしまってどうしようもなかった。
 それに……。


 ――――僕も期待しちゃうよ? ツカサ君が、あんないやらしい道具で犯される所を想像して、興奮しちゃったんじゃないかってさぁ……。


 ……ブラックのあの言葉が、何だか妙に耳にこびりついて。
 生暖かい息を吹きかけられて、気持ち悪いねっとりとした口調で呟かれた台詞が、嫌になるくらい耳に残っていて……今も耳の奥をぞわぞわさせていた。

「…………」

 想像するつもりなんてなかったのに、ああ言われると……ブラックに、あの場所で何かされるような想像をしてしまう訳で……。
 ………………。
 い、いや、別に具体的な事は考えられないよ!?

 だって、その……エロ漫画だと見た事有るかも知れないシチュエーションだけど、あんまり覚えてないし、その……裸とかで拘束されたりして、ブラックにえっちな事をされるって考えると、なんか……恥ずかしくて、何を言われるのかすら考えられなくて、なんかモジモジしちまうし…………。

「う……うぅ……だ、だめだ……なんかやだ……」

 上手く想像出来ないくせに、そんな事考えちまう自分が恥ずかしい。
 俺たまってんのかな。だから変な想像しちゃうんだろうか。

 そういえば、その……最近はよくセクハラされるけど、どうしてだか二人ともそれ以上の事はして来ないし……。い、いや、良いんですけど。ケツが痛くなるような事が無いのは良い事なんですけどね?

 まあ元々、部屋で一人の時にしか発散してなかったし、それに……この世界に来てから、自分でスる暇も無くブラックやクロウに弄られてたし……て、ヤバい、ヤバいですよその行為の常態化は!!

 どう考えても、他人の手で、つーかオッサン達の手とかでイッちゃうのが普通になってんのは駄目だよな人として!?
 お、俺、まだ大人になってないのに、童貞も捨ててないのに、こんな風になっちゃうのは駄目なんじゃないか。一人でオナる事も出来ずに、足で股間をぎゅっと抑えてちゃいけないのでは……って何やってんだ俺は。
 シコれよ! この場合はシコるべきだろ!?
 なんで女みたいに足でお股きゅっとかしてんのさ!

「や……やばい……やばいぞこの状態……」

 二人に聞こえないように小声で呟き、俺は血の気の引いた顔を引きつらせる。
 色々想像してしまっていたせいか、愚息はいつの間にか熱くなっており、ズボンを緩めに押し上げてしまっていた。

 …………お、お姉さんの喘ぎ声とかで勃起したんだと思いたい……。
 とにかく、これじゃ駄目だ。この部屋に居てもブラックやクロウの寝息が聞こえて来て物凄く居た堪れないし、抑えようとしても眠れないし、ずっと今日の事を考えちゃうし……。これは……い、一発抜いた方がいいよな、トイレで!

「…………」

 ブラックとクロウが寝ているのを確認して少し時間を置くと、俺はゆっくりと寝床を抜け出して部屋から脱出した。
 ブラックはしっかり寝てたし、クロウも熊さんモードのままでスヤスヤだったから、少しくらいなら抜け出しても大丈夫だよな……。

 でも、前にもこんな事をして追いつかれた事が有ったし、逐一背後を確認しながら移動しないと……ああ、それにしても愚息のこらえ性のなさが恨めしい。

「うう……テント張って移動って、こんなの誰にも見せらんないなぁ……」

 いくらここがエロ大歓迎の場所だからと言っても、俺のようなちんちくりんが興奮してウロウロしてても誰も喜ばないしな……。夜の路上に出てくる不審者かよ。
 せめて女性陣に嫌がられるのは避けたいので、トイレを探しつつ廊下をコソコソと歩くが、どうもトイレが見当たらない。

 虱潰しらみつぶしにドアを開けて確かめようと思っても、ドアに近付いた途端に色っぽい声や野太い声での喘ぎが聞こえて来るので無闇に開けられなかった。

 もしかしたら、今までスルーして来たドアのどれかがトイレだったのかも知れないが、トラウマになるような光景が広がってたら嫌だし……。
 ドア開けたら野郎がくんずほぐれつの光景がドーンなんて嫌だぞ俺は。

「ど、どうしよう……もういっそ歩き回って鎮めようかな……?」

 だけど、色んな所からえっちな声が聞こえて来るので、なんかもう治めるに治められなくてどうしようもない。
 …………やっぱ、あのまま寝た方が良かったかな……。

 そう思って、きびすを返そうとすると。

「ツカサ君、みーつけた」
「っ!?」

 背後から急に抱き付かれて、思わずひっくり返りそうになった。
 しかし声の主はそれを許さず、俺の体をしっかりと抱きしめる。誰が抱き付いて来たかなんて、もう解り切った事だった。

「ぶ、ブラック……っ」
「気付いたら部屋に居ないから、探しちゃったよ。散歩したかったのかな?」

 そんな事、一ミリも考えてない。
 はっきりと解ってしまうブラックのニヤついた声に体を固くすると、相手は笑うように息を吐き出しながら、俺の股間の辺りに強引に手を差し入れて来た。

「ふあぁっ!?」
「でも……散歩だったら、こんなにおちんちんを膨らませてないよねえ……?」
「やっ、いやだっ……こんな、とこで……っ」

 ズボン越しに大きな手でやんわりと揉みこまれて、足が震える。
 大きい手を太腿で挟んでいる感触が余計に股間をぞくぞくさせて、俺は必死に頭を振って拒否しようとした。
 だけど、こんな事で退いてくれるなら苦労はしない訳で……。

「もしかして……人の喘ぎ声で興奮しちゃったのかな? ふふ……いやらしいなあ、ツカサ君は……お蔭で僕もこんな風になっちゃったじゃないか」

 また耳元で囁かれて、背後から熱い物を押し当てられた。
 反射的に体が跳び上がって逃げようとするが、ブラックはそれを許さず、俺の尻の谷間にぐいぐいと熱い膨らみを割り込ませようとする。
 ズボン越しにでも感じてしまう相手のソレに、俺は身をよじって必死に拒否をした。

「ぅ、うぁ……やだってば、こんなとこで……っ」

 でも、ブラックに、こんな風に押し付けられたのは久しぶりで。
 すっぽりとブラックの体に包まれて、抱き締められてしまうと、もう。

「ねえ、ツカサ君…………ちょっとだけ、えっちなことしよっか?」
「ぅ……」
「大丈夫だよ……僕達は恋人同士だもん……。何してたって、誰も気にしやしないさ。だから……二人で一緒に、気持ちよくなろう?」

 そしたら、よく眠れるよ。

 耳に、舌を入れられて、そう囁かれて。
 気付けば俺は――――素直に、頷いてしまっていた。











 
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