異世界日帰り漫遊記

御結頂戴

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湖畔村トランクル、湖の村で小休憩編

 冒険するにも金が要る 2

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「やっぱギルドはどこも一緒なんだなー」

 セイフトのギルドも、酒場が併設されているRPGではお馴染みな感じだ。
 ここまで他のギルドと内装が一緒だと、何故か安心感すら湧いてくる。

 そう言えば、どこに行ってもこの感じだったな……もしかしたら冒険者ギルドはコレじゃないとダメって決まりがあるのかも知れない。
 まあ、世界各国に存在する組織なんだから、チェーン店みたいに同じたたずまいをしていた方が見つけやすくて親切だよな。現に俺も安心しちゃったし。

 ちなみに、依頼の受け方も他と全く同じらしい。

 掲示板の張り紙を見て、気になる物が有れば剥がして受付に持っていく。んで、ギルド委託の依頼ならギルドで手続き、個人依頼ならその人の家に行ってやりとりをするのが一般的だ。

 依頼内容も様々で、冒険者の能力によっては受けられない依頼も有るので、依頼の張り紙には【制限なし】、【要技能】、【特殊】と但し書きが付いている。
 【制限なし】は、能力や体力に関係なく受けられる依頼。
 【要技能】は特定の技能が必要な依頼。
 【特殊】は、種類にもよるけど“技能以外の特別な条件”がある依頼らしい。

 ちなみに、薬草採取の依頼はほとんどが【要技能】のもので、品質を見分けて高品質の薬草を採取できる【目利き】でなければ受ける事が出来なくなっている。
 つまり薬草採取の依頼は、存在していても初心者が受けられるクエストではないという事だ。

 この世界にはステータスウィンドウの概念がないので、スキル扱いなのかは俺には解らないが、何でも鑑定する人達とかが持っている【目利き】の腕も、一応は技能スキルと言う扱いになっているらしい。

 ああ、そうそう。
 技能って言えば、オーデルでは使えなかった気の付加術にもあったな。
 周囲の気配を探れる【索敵】や、相手の能力を把握できる【査術】と……あと、専用の勉強をした末に習得できるという【査術】の派生系も確かあったはず。

 たしか……物に関する奴査術で【物体特化】系だったかな?
 物品の真贋を見極める事が出来る【鑑定】と……純度や毒性などを調べられる【照合】があるんだよな。査術は基本的に対人の術だから、この二つは特殊で、ちゃんと知識を持って能力を伸ばさないと使えないらしい。

 これらは魔法技能みたいなもんだから、立派な“スキル”と言えるな。
 まあ、俺はいまだにどれも使えないんですけどね!!

 …………ゴホン。とにかく【要技能】は俺にはまだまだ無縁って事だ!
 ってことで説明終わり終わり!
 記憶の中からコピペしてきたから、多分俺の解説は完璧なはずやったね!

「えーっと……まずは【制限なし】の依頼を見てみるか」
「それはこっちだね。うーん、わりとモノは有るみたいだけど……」
「どれどれ?」

 でっかい掲示板の左端のエリアをブラックが指さすので、そちらに移動する。
 いやー、久しぶりのギルドだから何だかドキドキするな。

「うーん……ここら辺はやっぱり平和なんだねぇ。モンスター退治の依頼がまるで見つからないや……。チェッ、久しぶりに剣の練習でもしたかったのに」
「お前ほんとそう言うのやめて」

 バーサーカーかお前は。
 モンスターで剣の練習とか、お前それ実践だろうが。それで練習ってお前の実践相手どこにいるんだよマジで!!
 ああでもクロウもここに居たら同じような事を言いそうなのが怖い……。

 クロウには藍鉄を見ていて貰う事にしたので、ギルドには俺とブラックの二人でやって来たのだが、この分ならブラックも置いてきた方が良かった気がする。
 このオッサン、ろくでもない依頼しか受けなさそうな気がするし……。

 とかなんとか考えながら張り付けられた紙を確認していると、ある依頼が俺の目に飛び込んできた。

「…………ん? これ……」

 一度剥がしてしまうと自分達だけでは直せないので、掲示板に張り付いた紙を顔を近付けて見てみる。
 粗末な紙質の小さな紙片には、ギルドの認可印と共にこう記されていた。



【急ぎの依頼です
 “ベルカ村の夜間警護”
 ――半月ほど前からベルカ村に野盗の襲撃が相次いでいます。
 最初は物を盗まれる程度でしたが、最近は村人への被害も増えており
 立ち向かったものは負傷し、自警団だけでは手が回らない状態です。
 このままでは村が滅びてしまいます。
 夜間警護を引き受けて下さる方、野党の討伐・捕縛が可能な方
 応急手当などの知識をお持ちの方、どうか村を助けて下さい。

 報酬:銀貨五枚 銅貨八枚 (計180ケルブ)

  詳しい事は
  街の雑貨屋・アニタ、または村長アドルフまで】



「野盗って……」
「盗賊だね。ま、王都から離れた場所なら珍しい事じゃないよ。特にこの国は階級制度の他に、奴隷っていう特殊な制度があるからね……。ライクネスは常春の国で、蛮人街というウラモノを堂々と取引できる場所も有る。色気のない体ですら売れる場所があるんだから……なにを強奪したって金になる。野盗や山賊にとって、この国は酒池肉林の天国みたいな物なのさ。だから、ライクネスではモンスターの被害よりもからの被害が多いんだよねえ」

 うわあ……そうか、この国には「奴隷として売られたら人権は即剥奪」っていう謎のキツい奴隷制度があるんだった……!!
 それにこの国には他の国のスラム以上に無法地帯の蛮人街がある……毒薬すら堂々と店を持って販売できちゃう国なんだから、人権なんぞそら有って無いような物ですよねええ……。

 なんか俺も娼館に居た時の記憶がフラッシュバックしそう……。
 あ、そうだ、時間が有ったら湖の馬亭のみんなに会いに行こうかな。

「ツカサ君?」
「い、いや、なんでもない」
「報酬も結構割高だし、これにしとこうか。僕受付して貰って来るねー」
「わーっ!! なんでお前ちょっ、おいっ、持ってくなー!!」

 ああああ俺がイイネとも何とも言わない内にカウンターに持っていきやがった、そして受付して戻ってきやがったあああああ!!

 なに良い笑顔してんだよ、なにドヤッてんだよお前はぁあああ!

「地図を貰って来たから、さっそく話を聞きに行ってみようか! 街の雑貨屋ならツカサ君も行く予定だったでしょ? ついでついで!」
「買い出しのついでで討伐の依頼を受けるバカがいるか!!」

 帰ったら草むしりしようと思ってたのに、とんだ誤算だよ!

 ふざけんな、と怒ろうとしたが、ブラックは俺の腕を引っ掴むとさっさとギルドを出て、有無を言わさず雑貨店に向けて歩き始めやがった。
 不思議そうに首を傾げているクロウと藍鉄に説明しながら歩くのはいいが、いい加減俺を離してほしい。これじゃ連行されてるか誘拐されてるみたいなんですが。

「あ、ここが雑貨屋だね。ツカサ君、僕が店主と話して来るから、先に必要な物を選んで買っておいで。駄熊は藍鉄君の見張りしてろよ」
「おまっ……か、勝手に入っていきやがった……」

 いつになくやる気になっているブラックは、そう言うと俺達を置いてさっさと店の中に入ってしまった。

「凄くやる気だな。まあ、オレも野盗退治は楽しみではあるが」
「く、クロウも……?」
「ただ、捕縛と言う事は殺してはならんのだろう? 人族相手は久しぶりだから、少し加減を確かめておく必要があるな……」

 そんな事を言いながら、拳で掌を打つクロウ。
 ……あの……あのう……「殺しちゃいけないんだろう?」なんて言うって事は、自分の力が軽く人を殺せちゃうって解ってるんですよね……。
 クロウの事だから、以前うっかり悪人を……いや、考えないようにしよう。

「それよりツカサ、物を買わなくていいのか?」
「あ、そ、そうだな。見て来るから、あと少し藍鉄の事頼むな」
「ん。ツカサの命令なら聞くぞ」

 それ直球で「ブラックの命令だけなら聞かなかった」って言ってるのと一緒ですよね……。いや、いい。まあいい。俺も早く用を済まそう。
 とりあえず雑貨屋に入って小物などを選んでいると――小さくて丸っこい可愛いお婆ちゃんと、彼女を見事にエスコートするブラックが店の奥から出てきた。

「…………ブラック……」
「なんだいその妙な表情」

 いやだって、アンタそんな見事なエスコート出来たんですかっていうか。

 目を白黒させながら驚いていると、今回の依頼者であるアニタさんがブラックに手を引かれながら近付いてきた。

「あなたがブラックさんの言ってたツカサさんね? あらあら、本当に可愛らしいこと! ブラックさんはこんな素敵なお嫁さんをもって幸せねえ」
「いや~あはははそれほどでもぉ~」
「お前何の話してたんだよ!? つーか俺は嫁じゃねえですよ!!」

 ちょっと! 依頼の話してたんじゃなかったの!?

 慌ててつっこむと、ブラックは笑って「冗談だよぉ」と手を振る。
 冗談もクソもあるか、純粋なお婆ちゃんに変なウソ吹き込むんじゃないよ。

 思わず罵詈雑言ばりぞうごんが口から出そうになったが、可愛らしいお婆ちゃんが目の前にいるので何も言えず、ぐっと堪えて俺はお婆ちゃん……いや、依頼主のアニタさんに丁寧に挨拶をした。

「あらあら、こんなに丁寧に……お二人とも、本当に冒険者なのかしら? 私にはお貴族様にしか思えないわねえ」
「女性に優しくするのは当然ですよ。コイツはまあ、一応紳士ですから」

 俺は信念として女性には優しく接する事にしているが、ブラックはたっとい一族の出なので貴族と言うならそうかもしれない。
 しかし、冒険者ってこんな事言われちゃうくらい本当に粗野なんだなあ……。

 そう言えば冒険者仲間って俺達作った事ないなー。
 ギルドとかに出入りしてたら、友達とかできないもんかしら。

 まあ今はそんな場合じゃないか。
 俺は気持ちを切り替えて、改めてアニタお婆ちゃんから依頼の内容を聞く事にした。……ブラックが何か変な事言ってるかもしれないしね。

「それで……野盗の事なんですが……俺にも話して貰えますか?」
「ええ、何度でも……」

 そうして、悲しそうな顔のアニタお婆ちゃんから聞いた話は――――
 俺の気持ちを奮い立たせるには十分なほどの、悲惨なものだった。











※カー○ワース風依頼だいすき ヽ(*・ω・)ノ
 というわけで日帰りで野盗退治に出発です。
 野盗と言えば……女子供が襲われるのは定番ですね!(´^ω^`)
 
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