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57 祭の当日は楽しいな。そしてうさぎのお医者さん現る。
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ついに収穫祭当日がやってきた。
隣町で出会った旅の一座が来てくれて、広場で曲芸を披露する。
村人や遠方から来たお客さんたちは、歌い踊る座員たちに拍手を贈る。
屋台通りには、村人が出す店の他、なじみの商人ファクターも出店している。
小さな村だし、日本の祭と比べたらこじんまりとしているけれど、祭特有の明るくて賑やかな空気は同じ。
オレはミミと一緒にファクターの店を覗く。
小粒のマルイモを素揚げにしたものが串に刺してある。
「うまそー!! 2本くれファクター」
「やあキムラン、ミミ。ふたりは常連だし、まけとくよ」
「サンキュー」
片方をミミに渡して、二人で串にかぶりつく。
「はふはふ。ウっンマーイ! さすがファクター! 超超超料理上手!」
「あふひ、ふー、ふー、うま」
揚げたてアツアツのイモ串は、塩のみという味付け。おかげでイモ本来の食感と風味が引き立っている。
オレたちのちかくにいたお客さんたちもつられて串を買っている。
「うまいなー、ミミ。祭、楽しいな」
「うむ。まつり、たのしい」
口のまわりを塩まみれにしながら、ミミは次なるグルメを探して視線をめぐらせる。
カノムモーゲンは長蛇の列になっていて、しばらく買えそうもない。あとで行こう。
ミミが野菜の手描き看板がついた屋台を指差す。
「ニンジャ」
「お、ニンジャ買うか」
この世界のニンジン的な野菜ニンジャ。シノビではない。
ニンジャや白い野菜がスティック状に切られていて、色鮮やかなつけダレを選べるようになっている。
甘みのタレにクリームタレ、塩系のタレ。
揚げ物ばかりだと胃もたれするし、サラダもいいよね。串を仮設ゴミ箱に入れて、野菜スティック屋に並ぶ。
野菜スティック屋には一足先に、二足歩行のうさぎが並んでいた。
毛色はコーヒー牛乳、ベレー帽にワンピースを身に着けたオシャレなうさぎだ。
背丈はミミより小さい。小さい体だけど、でかいリュックを背負っていて、いかにも旅人といった風体だ。
ニンジャセットを一人で3袋も買うと、タレ無しで勢い良くほおばりはじめた。
オレとミミは1袋買って、丸太のベンチに腰掛けてシェアする。
お隣に座るうさぎはもう最後の1袋に手を付けている。
異世界でもうさぎの好物はニンジン的なものなんだろうか。
じっと見ていたせいで、うさぎが怪訝そう(たぶん)な顔でこちらを見た。
「あちきになんか用かい」
「気を悪くしたなら謝るよ。ごめん。オレのいた世界にうさぎの獣人さんっていなかったから、気になって」
「別の世界……お兄さんはもしかしてナガレビトかな。あちきもナガレビトと会ったのは初めてだ。他の人間とあまり差がないんだね。面白い」
お互い初めて見る者同士だったようだ。
うさぎは帽子を取って一礼する。
「あちきはラビィ。見ての通り獣人族のうさぎさ。あんたたちは見たところサイハテの住人だね」
「そうだよ。オレはキムラン。この子はミミ。そこの家で暮らしている」
「ふむふむ。この村に医者はいるかい?」
これにはミミが答える。
「いない。けがやびょうき、ヴェヌスまでいかないとだめ」
「なら、あちきをここに置いてはくれまいか。あちきは医師の勉強を終えたんだが、あいにくこれまで訪ねて回った都市は医者の手が足りていてね。ここでならあちきは腕をふるえるってものさ」
ラビィは前足を持ち上げ、やる気を見せる。
こんなに小さくてもお医者さんなのか。異世界ってスゴイね。
「オレたちの一存じゃきめられないから、村長に頼もう。ここに住んでもらうなら、病院も建てないといけないだろ」
「よろしく頼むよ、キムラン、ミミ」
ラビィがペコリと頭を下げ、俺も頭を下げた。
隣町で出会った旅の一座が来てくれて、広場で曲芸を披露する。
村人や遠方から来たお客さんたちは、歌い踊る座員たちに拍手を贈る。
屋台通りには、村人が出す店の他、なじみの商人ファクターも出店している。
小さな村だし、日本の祭と比べたらこじんまりとしているけれど、祭特有の明るくて賑やかな空気は同じ。
オレはミミと一緒にファクターの店を覗く。
小粒のマルイモを素揚げにしたものが串に刺してある。
「うまそー!! 2本くれファクター」
「やあキムラン、ミミ。ふたりは常連だし、まけとくよ」
「サンキュー」
片方をミミに渡して、二人で串にかぶりつく。
「はふはふ。ウっンマーイ! さすがファクター! 超超超料理上手!」
「あふひ、ふー、ふー、うま」
揚げたてアツアツのイモ串は、塩のみという味付け。おかげでイモ本来の食感と風味が引き立っている。
オレたちのちかくにいたお客さんたちもつられて串を買っている。
「うまいなー、ミミ。祭、楽しいな」
「うむ。まつり、たのしい」
口のまわりを塩まみれにしながら、ミミは次なるグルメを探して視線をめぐらせる。
カノムモーゲンは長蛇の列になっていて、しばらく買えそうもない。あとで行こう。
ミミが野菜の手描き看板がついた屋台を指差す。
「ニンジャ」
「お、ニンジャ買うか」
この世界のニンジン的な野菜ニンジャ。シノビではない。
ニンジャや白い野菜がスティック状に切られていて、色鮮やかなつけダレを選べるようになっている。
甘みのタレにクリームタレ、塩系のタレ。
揚げ物ばかりだと胃もたれするし、サラダもいいよね。串を仮設ゴミ箱に入れて、野菜スティック屋に並ぶ。
野菜スティック屋には一足先に、二足歩行のうさぎが並んでいた。
毛色はコーヒー牛乳、ベレー帽にワンピースを身に着けたオシャレなうさぎだ。
背丈はミミより小さい。小さい体だけど、でかいリュックを背負っていて、いかにも旅人といった風体だ。
ニンジャセットを一人で3袋も買うと、タレ無しで勢い良くほおばりはじめた。
オレとミミは1袋買って、丸太のベンチに腰掛けてシェアする。
お隣に座るうさぎはもう最後の1袋に手を付けている。
異世界でもうさぎの好物はニンジン的なものなんだろうか。
じっと見ていたせいで、うさぎが怪訝そう(たぶん)な顔でこちらを見た。
「あちきになんか用かい」
「気を悪くしたなら謝るよ。ごめん。オレのいた世界にうさぎの獣人さんっていなかったから、気になって」
「別の世界……お兄さんはもしかしてナガレビトかな。あちきもナガレビトと会ったのは初めてだ。他の人間とあまり差がないんだね。面白い」
お互い初めて見る者同士だったようだ。
うさぎは帽子を取って一礼する。
「あちきはラビィ。見ての通り獣人族のうさぎさ。あんたたちは見たところサイハテの住人だね」
「そうだよ。オレはキムラン。この子はミミ。そこの家で暮らしている」
「ふむふむ。この村に医者はいるかい?」
これにはミミが答える。
「いない。けがやびょうき、ヴェヌスまでいかないとだめ」
「なら、あちきをここに置いてはくれまいか。あちきは医師の勉強を終えたんだが、あいにくこれまで訪ねて回った都市は医者の手が足りていてね。ここでならあちきは腕をふるえるってものさ」
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こんなに小さくてもお医者さんなのか。異世界ってスゴイね。
「オレたちの一存じゃきめられないから、村長に頼もう。ここに住んでもらうなら、病院も建てないといけないだろ」
「よろしく頼むよ、キムラン、ミミ」
ラビィがペコリと頭を下げ、俺も頭を下げた。
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