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34 ジョウロ完成。ビリーの妄想は今日も暴走しています。

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 翌朝には、カラカラの枝をはめたジョウロが乾いていた。
 制作陣にミミと、ヒマしてたユーイさんも加わって残りの工程に取りかかる。

 水が出てくるところをシャワー状にする部品を取り付けるのだ。
 子どもの拳大ある木の実の殻に、ピックで細かく穴を開けていく。(この作業は危ないからオレとビリーの役目)
 このままだとスポンと抜けるから、カラカラの枝と木の実の殻両方に筋を入れて、ネジとボルトの要領でかみ合わせる。
 井戸水を汲んできて、試しに畑に水を撒いてみる。

 不格好だしホームセンターで売っている既製品のジョウロには劣るけど、きちんと先から細かく水が出てくる。
 これなら何度もコップですくい取って撒く手間が省ける。
 森の奥まで材料を取りに行った甲斐があるってもんだ。感慨もひとしおだぜ。

 ミミがジョウロを振ってぐるぐる回る。新しいおもちゃを見つけた子どもの顔だ。ジョウロの水が陽の光を浴びて、手元に小さな虹ができている。

「おお!! ジョーロはすごいな! キムラン、これおもしろい!」
「そうだろそうだろ。もっとオレの成果を褒めてもいいんだぞ、ミミ」
「だめ。キムラン、ほめるとつけあがる」
「ぐふっ」

 ミミが厳しいよう、ママン。
 膝を抱えて落ち込んでしまうぜ。凹んでいると、ユーイさんがオレの肩を叩く。


「ねえキムラン。これ、せっかく作ったんだしもっと改造しましょう。水を散らせるのはいいアイデアだけど、何回も水を汲んでこないといけないのにはかわりないでしょ。だから、更に便利にするためにこうするの。水魔法が刻まれた石を入れたらあら不思議!」

 ユーイさんが平たい石を入れてジョウロを傾けると、水が尽きることなくが出てくる。

「うおお! ユーイさん、すげーー!」
「ふふふ。だてに普段から魔法書を読んでないわ。本は無限の知識の宝庫よ」

 人差し指でメガネを押し上げて、ドヤ顔を決める。

「なーんて、この魔法石はこの前のトレジャーハントでたまたま見つかったオーパーツだから1個しかないの。村の全戸分作るなら魔法都市で買ってこないといけないわよ。言っとくけど、魔法士たちが作る魔法石ってお高いからね」

 ユーイさんいわく、日用品とはケタがひとつふたつ違うそうだ。懐のことを思うと、魔法石入りバージョンをたくさん作るのは無理がある。

「そっか。これ全戸分作れたらみんなの畑仕事すげー楽になるなって思ったんだけど。この1個はドロシーばあちゃんちにやろうか。足腰辛いだろうし。いいかな」

 一応制作協力の三人にも確認を取る。

「ジョーロ発案者のお前がいいならいいんじゃね。石なしでも使えるんだし、普通のジョーロはいったん配ろう。また水魔法の石が見つかったら、そのときに加工すればいい」
「あたしもそれで構わないよ」
「わたしも」

 満場一致でOKが出たから、このワンランク上の無限水撒きジョーロはドロシーばあちゃんちに渡すことが決まった。
 みんなで手分けして、各家庭に1個ずつ配布する。
 ビリーは……やはり真っ先にオリビアさんちに走っていった。

「俺はオリビアさんち担当な! うっひょー! これでオリビアさんは俺にラブラブメロリンちょ! 逆プロポーズ待ったなし!」
「ねーだろ」
「ありえないわ」

 ユーイさんとオレの意見が一致した。しまりない顔でよだれをたらすビリーを指差し、ミミが聞いてくる。

「キムラン。めろりんってなんだ。たべものか。ジョーロはいつからたべものになった」
「ミミ、あれは覚えちゃだめなやつ」
「そうよ、ミミ。ああいう大人になっちゃ駄目。絶対」

 大人二人に念押しされて、ミミは納得いかなそうにしながらもうなずいた。



 むろん、ビリーがオリビアさんにジョウロを渡して逆プロポーズされるなんていう未来はなかったことだけは公言しておこう。

 それはさておき、楽に水やりできるようになってしばらく経ち。
 ついに、ファクターから買った種が実ったのである。 
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