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14 森で食材集め。村の男性陣はとにかく強い!
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「うっぎゃあぁあああぁっーーーー!! お助けええええ!!」
〈キシャァーーーーーー!!〉
やぁキムランチャンネル登録者のみんな! キムランだよ☆
オレは今、異世界にある森の中でスライムに追われてるんだ!
走って走って走って走って、巨大な木にぶつかった。背には木の幹、眼前に迫るスライムたち。
あ、オレ死ぬかも。血の気が引く。
「せい!!!」
薪割りでもするかのごとく、村長が斧を振り下ろしてスライムを核ごと真っ二つにした。村の青年たちも一撃でスライムを狩る。
もしかしなくても、オレは村で最弱なのでは。
「ったく、キムラン。逃げないで剣を使え、剣を。さっきやったソレは歩行補助の杖じゃねえゾ!」
「う、悪かった。次こそ! 次はちゃんとがんばる!」
そう。今日は村の男手が集まって、森で食材調達をする日だ。
レクサスの牙から削り出したという白色の剣をもらい、気分は某狩猟ゲームの駆け出しハンター。
モンスター狩りやったるぜ! ゲームではハンターランク高かったからな! なんて息巻いていたものの。
リアルのオレに剣の心得なんてない。
学生時代に剣道部や薙刀部、柔道部なんかに所属していたならいざ知らず。万年帰宅部のゲーオタだった。
見様見真似でもらった剣を振り回してみたが、スライムに傷一つつけられず逃走とあいなった。
腰が抜けて、その場にへたり込む。あーあ。オレ、ホント弱っちくて足手まといだな。みんなが一撃で倒せるようなスライムに追い詰められるなんて。まだ心臓がバクバクいってる。額から滴る汗が目に染みる。
「大丈夫ですか?」
「わり。ありがとうな、ナルシェ」
ナルシェの手を借りて立ち上がる。村長たちは倒したスライムの解体に取り掛かっている。
「はぁ。みんな強いな。オレの居たところってモンスターは居なかったんだ。戦うのもスポーツする人が競技大会で競うくらいで、こんなふうに命のやり取りはなかった」
「平和なところだったんですね」
毎日毎日、命のやり取りをして食料を得てきた人たちと、スーパーに行けばいつでも食料を買えたオレ。
狩猟ゲームをちょっとかじったからって、彼らと同じくらい戦えるわけがなかった。
「でも、みんなにサポートされっぱなしってわけにはいかないよな。オレも逃げてばかりいないで、剣の使い方覚えて、ちゃんと戦えるようにならないと」
「剣は毎日特訓していれば、手に馴染んで扱いやすくなってきます。ゆっくり慣れていきましょう」
「おう。いろいろ教えてくれ」
こうしてみんなの戦いを見ていると、やはりこの世界ではステータス画面が出たりはしないようだ。誰もステータスを開いたりなんてしないし呪文詠唱や技名を叫んだりもしない。
ゲームっぽくなくても、彼らが剣をふるい戦う姿は、すごく勇ましくてかっこいい。
オレも早くああいうふうになれるようがんばらないと。
「あ、キムランさん。あれ採っていきませんか。キムランさんの目線の少し上にある……」
「ん? あの白い木の実か?」
「チーザの実って言って、実を割ると中に白い塊が入っています。そのままでも美味しいですけど、焼くと溶けて伸びるんです」
「おおっ、それ食いたい!」
焼くと溶けて伸びるってようチーズだろ。チーズが成ってるってすげー! 肉と一緒に食ったら絶対ウマイ!
手が届く範囲でもいで、袋に詰め込む。これだけあればいいかな。
スライムやチーザの実をみんなで分けて持ち、帰路につく。帰りに出てくるモンスターは、来るときよりは少ない。
村長が何か煙の出る木を掲げているからだろうか。
不思議に思って聞くと、村長の息子さん、ビリーが誇らしげに語る。
「この木はモンスターが嫌うニオイを出しているんだ。人間には特に何も感じられないけどな。だから村の家屋もこの木で作られている。村の建物は全部俺と師匠が建てたんだ」
「すっげーー!! ビリー、凄腕大工じゃん!」
ビリーのお願いは、ナルシェから華麗にスルーされた。
「そうだろそうだろ。もっと褒めてくれて構わんゾ。ナルシェも、オリビアさんに今日の俺の勇姿を伝えてくれ。オリビアさんから俺へ評価もあ……」
「あ、村が見えてきましたよ。早く帰りましょうキムランさん。ほら、ミミちゃんが手を振ってる」
「お、おう」
無関係のオレが言うのもなんだが、そういうのは自分で伝えたほうがいいぞ。
長身でモンスター相手なら強いのに、オリビアさんに対しては強気に出られない奥手くんらしい。
〈キシャァーーーーーー!!〉
やぁキムランチャンネル登録者のみんな! キムランだよ☆
オレは今、異世界にある森の中でスライムに追われてるんだ!
走って走って走って走って、巨大な木にぶつかった。背には木の幹、眼前に迫るスライムたち。
あ、オレ死ぬかも。血の気が引く。
「せい!!!」
薪割りでもするかのごとく、村長が斧を振り下ろしてスライムを核ごと真っ二つにした。村の青年たちも一撃でスライムを狩る。
もしかしなくても、オレは村で最弱なのでは。
「ったく、キムラン。逃げないで剣を使え、剣を。さっきやったソレは歩行補助の杖じゃねえゾ!」
「う、悪かった。次こそ! 次はちゃんとがんばる!」
そう。今日は村の男手が集まって、森で食材調達をする日だ。
レクサスの牙から削り出したという白色の剣をもらい、気分は某狩猟ゲームの駆け出しハンター。
モンスター狩りやったるぜ! ゲームではハンターランク高かったからな! なんて息巻いていたものの。
リアルのオレに剣の心得なんてない。
学生時代に剣道部や薙刀部、柔道部なんかに所属していたならいざ知らず。万年帰宅部のゲーオタだった。
見様見真似でもらった剣を振り回してみたが、スライムに傷一つつけられず逃走とあいなった。
腰が抜けて、その場にへたり込む。あーあ。オレ、ホント弱っちくて足手まといだな。みんなが一撃で倒せるようなスライムに追い詰められるなんて。まだ心臓がバクバクいってる。額から滴る汗が目に染みる。
「大丈夫ですか?」
「わり。ありがとうな、ナルシェ」
ナルシェの手を借りて立ち上がる。村長たちは倒したスライムの解体に取り掛かっている。
「はぁ。みんな強いな。オレの居たところってモンスターは居なかったんだ。戦うのもスポーツする人が競技大会で競うくらいで、こんなふうに命のやり取りはなかった」
「平和なところだったんですね」
毎日毎日、命のやり取りをして食料を得てきた人たちと、スーパーに行けばいつでも食料を買えたオレ。
狩猟ゲームをちょっとかじったからって、彼らと同じくらい戦えるわけがなかった。
「でも、みんなにサポートされっぱなしってわけにはいかないよな。オレも逃げてばかりいないで、剣の使い方覚えて、ちゃんと戦えるようにならないと」
「剣は毎日特訓していれば、手に馴染んで扱いやすくなってきます。ゆっくり慣れていきましょう」
「おう。いろいろ教えてくれ」
こうしてみんなの戦いを見ていると、やはりこの世界ではステータス画面が出たりはしないようだ。誰もステータスを開いたりなんてしないし呪文詠唱や技名を叫んだりもしない。
ゲームっぽくなくても、彼らが剣をふるい戦う姿は、すごく勇ましくてかっこいい。
オレも早くああいうふうになれるようがんばらないと。
「あ、キムランさん。あれ採っていきませんか。キムランさんの目線の少し上にある……」
「ん? あの白い木の実か?」
「チーザの実って言って、実を割ると中に白い塊が入っています。そのままでも美味しいですけど、焼くと溶けて伸びるんです」
「おおっ、それ食いたい!」
焼くと溶けて伸びるってようチーズだろ。チーズが成ってるってすげー! 肉と一緒に食ったら絶対ウマイ!
手が届く範囲でもいで、袋に詰め込む。これだけあればいいかな。
スライムやチーザの実をみんなで分けて持ち、帰路につく。帰りに出てくるモンスターは、来るときよりは少ない。
村長が何か煙の出る木を掲げているからだろうか。
不思議に思って聞くと、村長の息子さん、ビリーが誇らしげに語る。
「この木はモンスターが嫌うニオイを出しているんだ。人間には特に何も感じられないけどな。だから村の家屋もこの木で作られている。村の建物は全部俺と師匠が建てたんだ」
「すっげーー!! ビリー、凄腕大工じゃん!」
ビリーのお願いは、ナルシェから華麗にスルーされた。
「そうだろそうだろ。もっと褒めてくれて構わんゾ。ナルシェも、オリビアさんに今日の俺の勇姿を伝えてくれ。オリビアさんから俺へ評価もあ……」
「あ、村が見えてきましたよ。早く帰りましょうキムランさん。ほら、ミミちゃんが手を振ってる」
「お、おう」
無関係のオレが言うのもなんだが、そういうのは自分で伝えたほうがいいぞ。
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