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8 冒険の前に腹ごしらえ。ミートボールにミルクソースとジャムを添えて

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 ギャオオオオオオオンン!!

「ひいいいいいっ!! ななななな、なんだ!?」

 ゴジラかと思うようななにかの咆哮で目が覚めた。

「お~、けさもレクサスがないている」

 ミミはニワトリの鳴き声でも聞いているかのようなテンションで、のそりと起き出す。
 ここではあれが目覚ましなのか。

「あさごはん、つくる。キムランは、はたけのみずやり」
「りょーかい!」

 村の真ん中にある井戸端には、ご近所さんたちがすでに集まっていた。ゴルド村長がハッハッハ、と豪快に笑う。

「キムランおはよう! よく眠れたか」
「村長、おはようございます。そらもう、ぐっすりですよ」

 井戸の中に桶をおろして水を汲む。
 昔懐かしの映画に出てきそうな、四角く切り取った石を円に並べて積み上げたものだ。

 じょうろはないから、コップを使って種を植えたあたりにまく。
 桶の水が尽きたらまた井戸で汲む。水道が各部屋に敷かれている日本って恵まれていたんだな。
 水やりを終えたところで村長がオレの肩を叩く。

「キムラン。朝食が済んだら村の出口に来てくれ。この村の男は森に行って異界の漂着物から使えそうなものを回収したり、食料になるモンスターを狩って生計を立てているんだ」
「わかりました。食べ終えたらすぐ行きます」

 異世界の漂着物をトレジャーハントなんて、すごく楽しそうな仕事じゃないか。スライムに負けるオレでも、そっちの方では活躍できる気がする。
 家ではミミが朝食の準備をととのえていた。

「みろキムラン。あさごはんは、おにくたまのジャムそえ」

 深皿に盛られているのは、ミートボールとふかし芋。そこに鮮やかなさくらんぼ色のソースと白のソースがかかっている。部屋の中に食欲をそそる香りが漂う。
 さっそく席につく。

「おおお、匂いだけでよだれが。これ何肉?」
「くんせい、まだあるからこまかくして、こねてまるめてジュー! まるいもふかして、くだものジャムとミルクソースでたべる」
「へえー! 肉とジャムって意外な組み合わせだな~。それでは、お祈りして、いざ実食!!」

 木のスプーンでミートボールを半分に崩して、ジャムと一緒に口にいざなう。
 鼻を抜ける甘酸っぱい香り、肉のうまみ。ミルクソースもコクがあって肉とよく合う。
 そしてこのジャムとソース、ホクホクのふかし芋にも合う。

「うおおおお! すっげーーーーー美味い!! くだものジャムと肉の結婚式やーーー! ミミ、おかわり!」
「キムラン、うるさい」

 すぐにひと皿食べ終えておかわり。オレ、名実ともにミミに養われてるわー。ちっぽけなプライドなぞ美食の前では崩れ去る。
 美味い。ひたすら美味い。
 うるさいと言いながらも、ミミはちゃんとおかわりをたっぷり盛ってくれる。面倒みいいし飯はうまいし、将来いいお嫁さんになるよミミ。

 心ゆくまで朝食を堪能したあとは、村の男としての初仕事だ。

「それじゃ、ミミ。トレジャーハント行ってくるな。村長が日暮れ前には戻るって言ってたから」
「きをつけて。キムラン、スキルないから」
「だ、大丈夫だ。気をつける。足手まといにならないよう十分気をつける!」

 ミミのツッコミが痛い。そうだよ。オレってばこの世界の人間からしたら流れてきた異世界人だから、この世界の人間が使うようなスキルがない。
 戦闘や調査の経験を積めばいつかはスキルなり魔法なり使えるようになると信じたい。

 こうしてオレは村の男一同と共に、トレジャーハンティングに出発した。
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