超短編小説集「マリコから聞いた話」

笑顔のような

　夕方、駄菓子屋の上空に一機のUFOが現れる。
　UFOは辺りを窺うように飛び回った後、客が誰もいないことを確かめ着陸する。
　一体の怪物が降りてくる。怪物は澄んだ目をしている。
　怪物は駄菓子屋に入る。そして踏切の警報機のような声を発する。
　店主の老婆が出てくる。老婆は意地悪そうな目をしている。
　老婆は怪物の目を見て、
「ああ、あんたかい」
　と言う。
　怪物は腹部の襞からアイスの棒を取り出し老婆に見せる。棒には「アタリ」と書かれている。
　老婆はそれを受け取りアイスを怪物に手渡す。怪物は去ろうとする。
「何か買っていきな」
　老婆が言う。
　怪物は酢イカを手に取り老婆に星の欠片を手渡す。
「この国の金で払いな」
　しかし怪物は笑顔のような表情を浮かべ去っていく。
　老婆は星の欠片を、怪物と同じ目をしていた少年の墓前に供えに行く。