人気欲しさにBL営業なんてするんじゃなかった

第16話 帰路

約束通り春くんは俺を待とうとする颯太を何とか宿舎に追い返し、退勤を待っていてくれた。

「春くん神。大好き」

「ワー、ソレハウレシイナー」

帰りの車の中で俺は春くんの手を取りほっぺをスリスリしていた。春くんは肌質がもちもちしてて触り心地が最高だ。

「あ、写真撮ろうよ」

メンバーとのツーショットは好評なのでマメにあげるようにしているが、春くんとは久しくあげていなかった。

「えー、僕もうメイク落としちゃったのに」

口ではそう言いながらも春くんは手で前髪を直していて、写真を撮ること自体は乗り気なようだ。

「大丈夫だって！じゃー撮るよ。はいチーズ」

パシャ

「うま、瑠衣は本当こういうの得意だね」

春くんは俺の数少ない特技を褒めてくれる。

「よし、じゃあこれSNSにあげとくね。投稿文は『退勤を待っててくれる俺のことが好きすぎる春くん』でいいかな」


「だめだよ！ちょっと僕が書くから貸して！」

いつも穏やかな春くんが珍しく大慌てで俺のスマホを取り上げた。

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『春と瑠衣のツーショの投稿文"ビジネスの間柄です"ってなにwww』
『明らかに仲良しなのに何のアピール？』
『逆に怪しい』
『瑠衣また匂わせか？』

「あはは、皆困惑してるよ。春くん天然すぎる」

春くんは"ビジネスの間柄です"と書いて仲良さそうに映った2人のツーショを投稿したが、ファンの間では仲良し2人のじゃれ合いとして受け止められていた。

「颯太追い返しちゃったから申し訳ないと思って最大限配慮したのに…」

思った反応ではなくて落ち込んでいる春くんが少しかわいそうなので一応謝っておく。

「ごめんごめん」

普段であれば、軽く揶揄いあって終わるのだが今日の春くんは少し真剣な面持ちで話し始めた。

「瑠衣、何があったか知らないし俺が言うことじゃないかもだけど、颯太とはちゃんと話し合った方がいいよ」

「またその話？仲直りはしたくないって！」

「仲直りはしなくてもいい。でもろくに話合わずに一方的に距離おこうって言うのは颯太からしたらショックだろうし、少し思いやりにかけるんじゃない？」

いつも穏やかな春くんからの棘のある一言は能天気な俺にとってもそこそこ重く心に響いた。