9 / 141
入学編
第8話 散策(四)
しおりを挟む
◇ ◇ ◇
「――ねえねえ。君、首席くんだよね?」
三人が昼食を済ませて落ち着いたところで、突然声を掛けられた。
「そうだが、君は?」
掛けられた言葉に自分のことだと思い至ったジルヴェスターは、声の主に顔を向けて答える。
「ごめんごめん。名乗るのを忘れてた。わたしはレベッカ。レベッカ・ヴァンブリート。君と同じ新入生よ」
レベッカと名乗った少女は白い肌にラフゆるロングの金髪に、緑色の瞳を備えている。
凹凸のはっきりとした身体つきをしており、制服は白いブラウスの上に桃色のカーディガンを着て、その上には橙色のジャケットを羽織っている。
制服は着崩して胸元と臍周りを露出しており、赤色のスカートは下着が見えるのではないかと思うほど短い。
そしてルーズソックスを穿いていて、如何にもギャルといった装いをしている。
ピアスやネックレス、ブレスレットなどのアクセサリーも身に付けていて、とにかく派手だ。
「レベッカって呼んでね」
「ああ。よろしく、レベッカ」
ジルヴェスターに続いてステラとオリヴィアも挨拶を交わす。
「こっちはビアンカ、三年生よ」
「どうも~。わたしはビアンカ・ボナヴェントゥーラ。一応生徒会で会計をやってるよ~」
レベッカに紹介されたビアンカという少女は、手をひらひらと振って脱力感を隠そうともしない態度で自己紹介をする。
彼女は褐色肌で、左側頭部をコーンロウにし、他の部分は派手に盛り髪にしている赤みのある黄色い髪が目立つ。髪と同じ色の瞳が輝いていてより一層派手さが増している。
レベッカと同じように凹凸のはっきりとした身体つきだが、ビアンカの方がより肉感的だ。
紫色のジャケットに黒いブラウス、水色のカーディガンを着ており、胸元が見えている。紺色のスカートも下着が見えるのではないかと思うほど短い。
そしてルーズソックスを穿いている。アクセサリーも身に付けている正しくギャルであった。
数席離れた所のテーブルを囲んでいた二人の女性生徒――レベッカとビアンカ――はジルヴェスターたちの隣のテーブルへと移動して来たようだ。
「三年? それも生徒会役員が入学式の日にこんなところにいてもいいんですか?」
ジルヴェスターの疑問はもっともだ。
生徒会役員にとって今日は忙しい日のはず。入学式は終わったが、事後処理などの仕事は残っている。
「大丈夫大丈夫。今は昼休憩だから」
「なるほど」
ビアンカの説明に納得したジルヴェスターは頷く。
「まあ、みんなは学内のレストランやカフェで昼食を済ませてるけどね~」
学内にはレストランやカフェも併設されているので、生徒の大半はそちらで昼食を済ませる。だが、ビアンカは忙しい合間を縫ってわざわざ学外に繰り出していた。
「すぐ戻るから制服のまま来てるしね」
学外に出る際に制服着用の決まりはない。服装は自由だ。
いつも制服ばかり着ている学生の為、外出する際は私服で繰り出す者が多い。特に女性はおしゃれをして外出したがる傾向が強い。
そんな中、ビアンカは着替える手間を惜しんで制服のまま来ているので、一応ちゃんと生徒会役員としての自覚はあるようだ。
「ジルくんはA組だよね? わたしはB組なんだ。クラスは違うけどこれからよろしくね」
どうやらレベッカはB組らしい。
首席合格者はA組に振り分けられるのが通例なので、ジルヴェスターはA組だとレベッカも知っていたようだ。
「わたしたちもA組よ」
「そうなんだ。オリヴィアとステラもよろしくね」
オリヴィアがステラにチラリと視線を向けてから自分たちのクラスを告げると、レベッカは笑みを浮かべながらウインクをした。
その様子にステラとオリヴィアは自然と笑みを返す。
「――ところで、二人はどういう関係なの?」
オリヴィアはレベッカとビアンカの二人に交互に視線を向けながら、疑問に思ったことを尋ねる。
確かに二人はギャルという共通点はあるものの、学年は二つ異なるので一緒にいることを不思議に思うのは当然だろう。
「わたしたちは幼馴染みなんだ。ね?」
「うん」
レベッカの言葉にすかさず相槌を打つビアンカ。二人は息ピッタリだ。
「へえ。わたしたちと同じね」
「ん」
オリヴィアとステラは、自分たちと同じで幼馴染み同士だというレベッカとビアンカに親近感を抱いた。
「ビアンカがいるからランチェスター学園を選んだの」
「確かに先輩に幼馴染みがいたら安心よね」
「もちろん三大名門の一校で、尚且つ自由な校風ってのも理由の一つだけどね」
レベッカがランチェスター学園を志望したのは、ビアンカが在学していたのが最も大きな要因だ。ランチェスター学園が三大名門の一つに数えられているのも決め手である。
ビアンカからランチェスター学園のことは聞いていたので、志望校選択の際は迷うことがなかった。両親も反対する理由がなかったのか、すんなりと決まった。
もっとも、志望したからといって入学できるとも、合格できるとも限らないのだが。
ランチェスター学園は三大名門に数えられているだけあり入学試験の難易度が高く、倍率も高い。
そんな中、レベッカは見事合格してランチェスター学園の生徒になったのである。
「三年間の限られた学生生活では程々に勉学に励み、思いっきり遊んで青春を謳歌しちゃいなよ」
下級生の模範となるべき三年生のビアンカが、悪い笑みを内包した表情を浮かべて良からぬことを口走る。
「そうそう、今の内にこの限られた時間を有意義に使わないとでしょ!」
ビアンカの言葉に賛同するレベッカは屈託のない笑みを浮かべている。
「生徒会役員としてそれでよろしいのですか?」
「ん? いいのいいの。面倒だから問題さえ起こさなければね」
生徒を代表する生徒会役員であるビアンカに疑問を呈するオリヴィア。
当のビアンカは問題さえ起こさなければいいと軽く受け流す。
生徒の誰かが問題を起こすと生徒会の仕事が増えるので、ビアンカとしては勘弁願いたいことであった。
純粋に問題行為は慎むようにという注意喚起の意味合いもあるが、単純に面倒事は嫌だという本音が明け透けである。
「――ねえねえ。君、首席くんだよね?」
三人が昼食を済ませて落ち着いたところで、突然声を掛けられた。
「そうだが、君は?」
掛けられた言葉に自分のことだと思い至ったジルヴェスターは、声の主に顔を向けて答える。
「ごめんごめん。名乗るのを忘れてた。わたしはレベッカ。レベッカ・ヴァンブリート。君と同じ新入生よ」
レベッカと名乗った少女は白い肌にラフゆるロングの金髪に、緑色の瞳を備えている。
凹凸のはっきりとした身体つきをしており、制服は白いブラウスの上に桃色のカーディガンを着て、その上には橙色のジャケットを羽織っている。
制服は着崩して胸元と臍周りを露出しており、赤色のスカートは下着が見えるのではないかと思うほど短い。
そしてルーズソックスを穿いていて、如何にもギャルといった装いをしている。
ピアスやネックレス、ブレスレットなどのアクセサリーも身に付けていて、とにかく派手だ。
「レベッカって呼んでね」
「ああ。よろしく、レベッカ」
ジルヴェスターに続いてステラとオリヴィアも挨拶を交わす。
「こっちはビアンカ、三年生よ」
「どうも~。わたしはビアンカ・ボナヴェントゥーラ。一応生徒会で会計をやってるよ~」
レベッカに紹介されたビアンカという少女は、手をひらひらと振って脱力感を隠そうともしない態度で自己紹介をする。
彼女は褐色肌で、左側頭部をコーンロウにし、他の部分は派手に盛り髪にしている赤みのある黄色い髪が目立つ。髪と同じ色の瞳が輝いていてより一層派手さが増している。
レベッカと同じように凹凸のはっきりとした身体つきだが、ビアンカの方がより肉感的だ。
紫色のジャケットに黒いブラウス、水色のカーディガンを着ており、胸元が見えている。紺色のスカートも下着が見えるのではないかと思うほど短い。
そしてルーズソックスを穿いている。アクセサリーも身に付けている正しくギャルであった。
数席離れた所のテーブルを囲んでいた二人の女性生徒――レベッカとビアンカ――はジルヴェスターたちの隣のテーブルへと移動して来たようだ。
「三年? それも生徒会役員が入学式の日にこんなところにいてもいいんですか?」
ジルヴェスターの疑問はもっともだ。
生徒会役員にとって今日は忙しい日のはず。入学式は終わったが、事後処理などの仕事は残っている。
「大丈夫大丈夫。今は昼休憩だから」
「なるほど」
ビアンカの説明に納得したジルヴェスターは頷く。
「まあ、みんなは学内のレストランやカフェで昼食を済ませてるけどね~」
学内にはレストランやカフェも併設されているので、生徒の大半はそちらで昼食を済ませる。だが、ビアンカは忙しい合間を縫ってわざわざ学外に繰り出していた。
「すぐ戻るから制服のまま来てるしね」
学外に出る際に制服着用の決まりはない。服装は自由だ。
いつも制服ばかり着ている学生の為、外出する際は私服で繰り出す者が多い。特に女性はおしゃれをして外出したがる傾向が強い。
そんな中、ビアンカは着替える手間を惜しんで制服のまま来ているので、一応ちゃんと生徒会役員としての自覚はあるようだ。
「ジルくんはA組だよね? わたしはB組なんだ。クラスは違うけどこれからよろしくね」
どうやらレベッカはB組らしい。
首席合格者はA組に振り分けられるのが通例なので、ジルヴェスターはA組だとレベッカも知っていたようだ。
「わたしたちもA組よ」
「そうなんだ。オリヴィアとステラもよろしくね」
オリヴィアがステラにチラリと視線を向けてから自分たちのクラスを告げると、レベッカは笑みを浮かべながらウインクをした。
その様子にステラとオリヴィアは自然と笑みを返す。
「――ところで、二人はどういう関係なの?」
オリヴィアはレベッカとビアンカの二人に交互に視線を向けながら、疑問に思ったことを尋ねる。
確かに二人はギャルという共通点はあるものの、学年は二つ異なるので一緒にいることを不思議に思うのは当然だろう。
「わたしたちは幼馴染みなんだ。ね?」
「うん」
レベッカの言葉にすかさず相槌を打つビアンカ。二人は息ピッタリだ。
「へえ。わたしたちと同じね」
「ん」
オリヴィアとステラは、自分たちと同じで幼馴染み同士だというレベッカとビアンカに親近感を抱いた。
「ビアンカがいるからランチェスター学園を選んだの」
「確かに先輩に幼馴染みがいたら安心よね」
「もちろん三大名門の一校で、尚且つ自由な校風ってのも理由の一つだけどね」
レベッカがランチェスター学園を志望したのは、ビアンカが在学していたのが最も大きな要因だ。ランチェスター学園が三大名門の一つに数えられているのも決め手である。
ビアンカからランチェスター学園のことは聞いていたので、志望校選択の際は迷うことがなかった。両親も反対する理由がなかったのか、すんなりと決まった。
もっとも、志望したからといって入学できるとも、合格できるとも限らないのだが。
ランチェスター学園は三大名門に数えられているだけあり入学試験の難易度が高く、倍率も高い。
そんな中、レベッカは見事合格してランチェスター学園の生徒になったのである。
「三年間の限られた学生生活では程々に勉学に励み、思いっきり遊んで青春を謳歌しちゃいなよ」
下級生の模範となるべき三年生のビアンカが、悪い笑みを内包した表情を浮かべて良からぬことを口走る。
「そうそう、今の内にこの限られた時間を有意義に使わないとでしょ!」
ビアンカの言葉に賛同するレベッカは屈託のない笑みを浮かべている。
「生徒会役員としてそれでよろしいのですか?」
「ん? いいのいいの。面倒だから問題さえ起こさなければね」
生徒を代表する生徒会役員であるビアンカに疑問を呈するオリヴィア。
当のビアンカは問題さえ起こさなければいいと軽く受け流す。
生徒の誰かが問題を起こすと生徒会の仕事が増えるので、ビアンカとしては勘弁願いたいことであった。
純粋に問題行為は慎むようにという注意喚起の意味合いもあるが、単純に面倒事は嫌だという本音が明け透けである。
0
お気に入りに追加
355
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる