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真凛 桃

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6話 裏切り

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翌日、リオンが出社すると1番ボス的な女性社員がリオンのところへ来た。


「アンタ!昨日仕事終わってどこ行った⁈」

「え?どうしてですか?」

「アンタと部長が一緒にタクシー乗るとこ見たんだけど‼︎」

「あっ…それは…」


うわ…最悪…見られてたんだ…


「2人でどこに行ったのよ‼︎」

「とっ…取引先に…」

「取引先⁈どこよっ‼︎」

「それは…」


その時、話を聞いていた村山部長がやって来た。


「あっ…部長っ…おはようございますっ」

「おはよ」


リオンは昨夜のことで気まずかったが、目で助けを求めた。


「部長っ…昨日行った取引先の会社名、何でしたっけ」

「昨日行った取引先?何言ってるの?昨日は一緒に居酒屋に行ったじゃない」


え…


「いっ…居酒屋…行ったんですか?」

「うん。名井野さん結構飲んでだけど大丈夫?二日酔いじゃない?」


周りの女性社員たちもリオンを冷たい目で見ていた。


「…部長?」

「前回より昨日の方が名井野さん飲んでたよね。ストレスは発散できた?」


みんなに聞こえるようにわざと大きな声で話す部長を見て、リオンは昨夜拒否した腹いせだと思った。


リオンはその場を離れお手洗いに駆け込んだ。


すると女性社員たちがリオンの後を追って来てリオンの髪の毛を掴んだ。


「痛っっ…何するんですかっ⁈」

「よくも嘘ついたわね。アンタ1人でぬけぬけと‼︎」

「私たちには部長のこと興味ないフリして本当は狙ってたのね‼︎2人で飲みに行くなんてっ‼︎」

「誤解ですっ」

「アンタの言うことなんか信じられないわよっ」


女性社員たちは近くにあったバケツに水を入れリオンの頭を押し込んだ。


「ひっ…酷いっ…」

「あら~化粧が落ちちゃって~」


最後にリオンの体に水をかけて、女性社員たちはその場を去って行った。


リオンは泣きながら水浸しになった床を拭き、服と髪の毛を絞り重い足取りで社内へ戻った。


クスクスと笑い声が聞こえる中、部長は見て見ぬフリをしていた。


この日を境にリオンに対する陰険ないじめが始まった。





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