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第2章
95話 生死のさまよい
しおりを挟むクッソー!!
どいつもこいつも!!!
後先がなくなった裕二は外に出て倉庫から灯油を持って来ると家の周りに撒き散らし始めた。
俺を怒らせやがって…
地曽田もスミもババアも…
あーっ!どいつもこいつも!!クソが!!
これでお前らは終わりだ!!!
シュンは鍵がかかっている部屋の前に行きドアを叩いた。
「スミ!居るんだろ⁈」
口を塞がれているスミはドアを叩き返した。
ス…スミ!!
「スミ‼︎大丈夫かっ⁈」
スミはドアを2回叩いた。
「スミなの⁈」
「はい。スミがこの部屋に居ます」
「えっ…鍵…どうして外から鍵が⁈」
「前回と一緒です。監禁されてたんですよ‼︎」
「そっ…そんな!スミ大丈夫なの⁈」
「おそらく口を塞がれてるんだと思います」
「なっ…何て事を‼︎」
シュンは全力で体をドアにぶつけてみるがビクともしない。
「あいつ‼︎頑丈なドアにしやがって‼︎」
「鍵で開けるしかないわね」
「おい!鍵はどこだ?」
シュンは裕二に尋ねるが、裕二の姿は見当たらない。
家中を捜すがどこにも居なかった。
「居ないの⁈」
「どこにも居ません」
「逃げたのね‼︎とにかく今はスミをここから出すことが先よ!!」
「お母さん!僕ちょっと外に出てみます」
「えっ…どうして⁈」
「窓があるのを忘れてました!割って入ります」
「そ、そうね‼︎気をつけて」
シュンは玄関にあったゴルフクラブを持って外に出るとスミが居る部屋の裏側に回った。
え…窓がない…
シュンが唖然としていると少し離れた所から裕二が見ていた。
「残念でしたぁ~窓はありませんよぉ~」
「おい!お前‼︎そんな所で何してる⁈」
「何してるって?お前らが俺を怒らせたからこれを撒いてるんですよ~」
「そっ…それは何だ…」
「と、お、ゆ」
「えっ⁈おっ…お前!」
シュンは裕二の方へ向かおうとする。
「おっと~こっちに来たらこのライターで火ぃつけますよ~」
「お前…正気か…?狂ってる…」
「そうですねぇ~正気じゃないし狂ってますねぇ~もう周りにはたっぷり灯油撒いたから手遅れですよ~」
「そんな…」
地曽田の焦ってる姿…いい気味だぜ…
「部屋の鍵はどこだ⁈」
「鍵?さぁね~」
「教えろ‼︎どこにある⁈」
「教える訳ないだろうが‼︎」
こいつ…今にも火をつける勢いだ…
どうすればいいんだ…
シュンが周りを見渡すと倉庫があった。
扉が開いていて電動ノコギリが見えた。
これだ!!
シュンは倉庫から電動ノコギリを持ち出し家の中へ入って行った。
クッソー!あいつ!!
ノコギリでドア壊すつもりだな!!
スミの居る部屋に急いだシュンはノコギリのコンセントを差し込んだ。
「ねぇ…窓は⁈」
「窓はありませんでした。これでドアを壊します!急がないと‼︎」
シュンはノコギリをドアに当てるが頑丈なドアはなかなか切れない。
「お母さんすみませんが、お湯を持って来てもらえませんか⁈」
「お湯?わ…わかったわ」
母親は急いで台所へ行きお湯が入ったポットを手に取るとシュンに渡した。
シュンはドアにお湯をかけた。
「何してるの⁈」
「少しでも湿らせたらノコギリが入りやすくなるので…時間がないんです‼︎」
「どうして⁈」
「あいつ、火をつけるつもりです」
「えっ?火って?」
「家の周りに灯油を撒いてるんです。全焼させるつもりなんです」
「えっ⁈う…嘘でしょ⁈」
「お母さん!先に逃げて下さい!」
「スミは⁈」
「スミは僕が必ず助け出しますので」
「ス…スミを早くここから出さないと…」
「早く外に出て下さい‼︎」
「わ…わかった…必ずスミを連れ出してね」
母親は外へ出て行った。
「スミ…もう少し待ってろよ」
やっとの思いでノコギリが入った。
「…必ず助け出すから」
シュンは汗だくで必死だった。
シュンの必死さが伝わったスミは涙を流していた。
母親が玄関を出ると裕二がライターを持って立っていた。
「あっ、あなた!自分のしようとしてる事がわかってるの⁈」
「出て来たんすね。中に居ればいいのに」
「そ…そのライターよこしなさい」
「どうせ俺を警察に突き出すんでしょ。あんたらが黙っていればいいだけなのに」
「わ…わかったわ。今回の事は目をつぶるから…ライターをこっちに」
「会社は?スミは?今まで通りでいいですか?俺が社長でスミと離婚もしませんよ」
「何言ってるの⁈スミを監禁までしといて」
「それは俺を怒らせるからですよ~」
「だからってやり過ぎよ‼︎」
「娘より俺を信じたくせに」
「そ…それは…」
「最後の質問だ」
「えっ…?」
「今回の件はなかった事にして俺が社長を続けてスミと一緒に居させるか?」
「そんなの…あり得ない‼︎」
「じゃあスミは地曽田と一緒にさせる気か⁈」
「あの人なら安心してスミを任せられるわ」
このクソババア~!!!
裕二はライターに火をつけ地面に落とした。
「えっ⁈」
火は一気に燃え広がった。
「スミッ!スミーッ!!」
母親は携帯を取り出して消防車を呼ぼうとしたが裕二に携帯を取り上げられてしまった。
「なっ…何するの⁈中にスミが居るのよ‼︎」
「最後の罰だよ」
そう言って裕二はその場を走り去って行った。
母親は泣き叫びながら向かいの家に行き消防車を呼んでもらった。
だがもうすでに家は激しい炎に包まれていた。
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