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第1章
14話 新しい世界
しおりを挟むお昼過ぎ、スミが携帯を見ていると裕二が帰って来た。
裕二はスミの腕を掴み怒鳴った。
「何で黙って勝手に帰ったんだよ‼︎」
スミは裕二の手を振り払った。
「帰りたかったから帰ったのよ!」
「ス…スミ?どうしたんだよ!」
「私、仕事するから」
「は?何でだよ‼︎」
「一日中家に居ると息が詰まるのよ。子供が居る訳でもないし、別にいいでしょ」
「金に苦労してないだろ!働く必要なんてない‼︎」
「お金の為じゃない!」
「ろくに働いた事もないくせに、お前に仕事なんて出来るはずない。勝手にしろ」
「ええ」
「その代わり俺の金は、お前の物に使うなよ。わかったか?」
「言われなくてもそうします‼︎」
「チッ、どうせすぐ泣きついてくるに決まってる」
そう言って裕二はどこかへ行った。
確かにスミは今まで働いた事がなく不安もあったが、とにかく自立したかった。
携帯で仕事を探し、この日3件面接に行く事にした。
2件面接が終わり、2件とも返事待ちとなった。
最後の1件は、偶然にも地曽田グループの会社の近くだった。
そんな事も知らずにスミはお店に入った。
中へ入ると40代半ばくらいの男性がいた。
「あの…面接に来ました。柳本スミです」
「あー、電話くれた人ね。どうぞ座って」
「はいっ」
「私、ここの店長をしてます小田健です。履歴書持って来られましたか?」
「はい、持って来ました」
履歴書を渡すと店長はじっくり見ていた。
「柳本さん、今まで仕事した事ないんですか?」
「はい…」
「専業主婦か。またどうして働こうと思ったの?そんな苦労してなさそうだけど。うち給料安いよ」
「安くても構いません。とにかく働きたいんです」
「こんな小さなコーヒーショップで?」
「…働かせてもらえるなら頑張ります‼︎」
「まぁ、コーヒー淹れて渡すだけだから難しい仕事じゃないけど」
「お願いします!」
「まぁ、子供さんも居ないようだし見た目もいいし…やる気もあるようだから…いっか。明日から来れますか?」
「はいっ、来れます‼︎」
「出来たら19時まで働いてくれたら助かるんだけど」
「大丈夫です‼︎ありがとうございます」
採用となり、翌日から働く事になった。
翌朝、裕二が仕事に行った後、スミは裕二の夕飯を作ってバイトに行った。
裕二には仕事が決まった事を言わなかった。
バイト先に着くと店長から一通り教えてもらい、特に難しいこともなくすぐに慣れた。
ただ、オフィス街なだけあってコーヒーを買いに来る人が多かった。
「柳本さん、なかなかさばけるね~助かるよ。ある程度落ち着いたら休憩入っていいからね」
「はい」
あっという間に19時になり初仕事は無事に終わった。
早く帰りたくないスミはバスで帰ろうと思い、バス停に向かいバスを待っていた。
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