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第1章
9話 わざとらしい優しさ
しおりを挟むスミが家に帰ると、裕二がお皿を洗っていた。
「あっ、スミおかえり!遅かったね」
「…何してるの?」
「え、何って皿洗ってるんだよ」
スミは裕二の上着に髪の毛をそのまま付けていた。
それを裕二は発見したのだ。
「急にどうしたの?いつも洗いもしないのに」
「たまには俺だってするよ。それとさ、思い出したんだけど、昨日会社で飲んだ時やっぱ女居たわ。部下の彼女が来たんだ。一緒に飲んだけど俺の隣に座ってた。髪の長い子だったな~」
「そ…そうなの?」
「さっき上着見たら長い髪の毛付いてたから、スミはそれを見て疑ったんだよね?」
そういう事か…
「とにかくそういう事だから。あっ、お風呂溜めたから先に入っていいよ」
変に裕二の優しい態度が余計に怪しく感じた。
じゃあ香水の匂いはその部下の彼女の?
あれだけ男だけで飲んだって言い張ってたのに何なの…
何だか最近、裕二の前で上手く笑えない…
笑うどころか、怒り、悔しさ、情けなさが込み上げてくる…
何で地曽田社長の前では心から笑えるんだろ…
そう言えば、子供居ないって言ってたけど作らないのかな…
私たちは作るもの何も、夜の営み自体が全然ないから出来るはずない…
スミは色々思いながらお風呂から上がった。
翌朝、起きると裕二が朝食の準備をしていた。
「おはよ。何してるの?」
「え?何って朝食の用意だよ。って言ってもパンだけど」
「どうしちゃったの?」
「いつもスミに作らせてばかりで悪いからね。俺は食べたから、これスミ食べて」
「…ありがとう」
「じゃ、行って来るから。あ、今日も帰り早いから久々食事にでも行こうか」
「えっ」
「予約しとくから。じゃ」
裕二は仕事へ行った。
明らかにおかしい…
おかしいけど素直に裕二の優しさを受け入れるべきなのかな…
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