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第1章

8話 30分間の和らぎ

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早く帰りたくないスミは、ビールを買いコンビニの前の椅子に座って飲んでいた。
スミの唯一の息抜きだ。


「スミさん?」


え…?

見上げてみるとシュンだった。


「社長さんっ」

「どうも…こんなとこで飲んでるんですか?」

「…はい」


するとシュンはコンビニに入って行った。


まさか、こんなとこで会うなんて…
1人でコンビニ前でビール飲んでるとこ見られるなんて…最悪。


コンビニから出て来たシュンはスミの横に座った。


「僕も一緒に飲んでいいですか?」


ちょっとした台にビールとつまみを置いた。


「えっ?あっ、はっ、はい…」

「これ、つまみにどうぞ」

「あ…ありがとうございます」


シュンは黙ってビールを飲み出した。


「あの…車じゃないんですか?」

「はい。歩きだから。ハハ…」

「え?歩き?」

「家、この近くだから。外の風に当たりたくて散歩してました」

「そうだったんですか⁈え、じゃあうちと近いですね」

「フフ…はい。この前送った時、近くて驚きました」

「あっ、あの日は送ってくれてありがとうございました」

「足、大丈夫ですか?」

「はい。おかげさまで」

「それは良かった」

「社長さんでもコンビニ入るんですね」

「普通に入りますよ~何でも揃ってるし大好きです。アハハ…」

「ハハハッ」

「スミさん、もうビール空いたでしょ?もう1本飲みます?」

「はい!」

「じゃ、買って来ますね」


シュンはコンビニに入って行った。
気持ちが不安定だったスミはシュンと会って、いつの間にか癒されていた。


「はい、どうぞ」

「あっっ、ありがとうございます。お金っ…」

「そんな、いいですよ」

「じゃ…いただきますっ」

「…たまには外で飲むのもいいですね」

「はい。私たまにこうやって飲むんですけど…いいですよ」

「そうなんですね」

「社長さん…お子さんは?」

「居ないですよ」

「そうなんですか…」

「子供は好きだけど、なかなか…スミさんのとこは?」

「うちも居ません」

「まぁ、そんな感じしましたけど」

「え…そんな感じします?」

「じゃないと1人でこんな時間に飲みに来ないでしょ。ハハ…」

「ハハハ…そうですね」

「じゃ、そろそろ帰りますね」

「あ、私も帰ります」

「じゃあ」


30分間だけだったけど、スミにとって和らぎの時間だった。






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