シンデレラの娘たち

第5章 すべては夢になりにけり

８

「あ～っ！」
　その家を見付けるが早いか、柚は歓声を上げる。
物も言わずに、ジュンヤから手を離すと…一目散に駆け出した。
「おい、ちょっと！
　人の家に、勝手に入ったら、ダメだろ」
ジュンヤは泡食って、柚の後を追いかける。
（ホント、元気な子だなぁ～
　でも、ま、抱っこをせがまれて、泣かれるよりは、だいぶマシかなぁ）
彼は自分の弟妹たちのせいで、しっかり鍛えられているせいか、
小さな子供の扱いには、慣れている。
　それにしても、柚には羽根でもついているのだろうか？
そう思うくらい、柚のすばしっこさは、追いかけるのもやっとだ。
（ホントに、目が離せないなぁ）
まるで、年寄りみたいな発言だ！
ジュンヤは思わず、苦笑いを浮かべる。

「ジュンヤくん！こっち、こっち！」
　嬉しそうに、少し先の方で、柚が手を振る。
「おい、人に迷惑をかけるんじゃないぞ」
ハラハラしながら、柚の後ろ姿を見守る。
（それにしても、本当に、大丈夫なのか？）
　あまりの勢いに、ジュンヤもついていけない。
真っ赤な屋根の家の前までたどり着くと。柚は早速、玄関ポーチまで
駆けあがった。

（うわっ！やっぱり、入るつもりなのかぁ？）
　早速トントン…と柚は階段を、一段飛ばしで駆け上がると、
「さぁ、ここはどこかなぁ？」
ニコニコしながら、爪先立ちで、呼び鈴に手を触れる。
（ちょっと、本気か？）
ジュンヤはあわてる。
柚が無茶をしないか…と、気が気ではなくて、目が離せないでいた。